- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103808060
作品紹介・あらすじ
大丈夫、きっと切り抜けるだろう。-体も心も満ち足りていた激しい恋に突然訪れた破局、その哀しみを乗り越えてゆくよすがを甘美に伝える表題作、昔の恋人と一つの部屋で過ごす時間の危うさを切り取る「手」、17歳のほろ苦い恋の思い出を振り返る「じゃこじゃこのビスケット」など、詩のように美しく、光を帯びた文章が描く、繊細な12の短篇。
感想・レビュー・書評
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描写が儚く、きらきらしている。しかし、色彩は限りなく薄い。どこか遠い異国の地の話か?って感じさせるところもある。
江國香織の短編は、こんなにも短く、えっ?って感じでサラッと終わる。大人の恋愛と性で静けさが漂うが燃えるような恋の情念を感じさせる。読みながら何度も誰かの事を思い出すであろう。本気で好きだったあの人の事を。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
どの短編もなんだか物悲しい話でした。
恋愛のままならない感情が美しい文章で語られていて、共感まではいかなくても、浸れる場面が多かったです。
明確な救いがあるわけではないけれど、嫌な気持ちで終わるのでもないところに暖かさを感じました。
失恋した時は少し支えになってくれそうな本です。
中でも私は「どこでもない場所」が好きでした。 -
あとがきの本人解説によると、
短編集、といっても様々なお菓子の詰め合わされた箱のようなもなではなく、ひと袋のドロップという感じです。色や味は違っていても、成分はおなじで、大きさもまるさもだいたいおなじ、という風なつもりです。
いろんな人たちが、いろんな場所で、いろんな記憶を持ち、いろんな顔で、いろんな仕草で、でもたぶんあいも変わらないことを営々としている。
その通りの12のドロップでした。
『煙草配りガール』が何故だか心に残った。話の筋書きには全く影響のない煙草配りガールが何故だか表題。たまたますれ違っただけの人にもいろんな営みが潜んでいる。 -
いろんな人の間のいろんな愛の形
あとがきで、
人々が物事に対処する仕方は、つねにこの世にとって初めてで一度きりであるために、びっくりすほどシリアスで刺激的です
一話一話はサラッとしてるんだけど、読後にフワッと心に残る感じ
2021.2.20 -
よく言えば、水面に映るキラキラとした光のような、綺麗で、掴もうとすると流れて行ってしまう感じ。あえて悪い言い方をするなら、ものすごく掴みどころがなく、どの話も強く印象には残らないという感じかな。1話1話が短くて読みやすく、ふう、と息をつけるような雰囲気なので、難しくて全然読み進められない小説を読んだ後の箸休めにはすごくちょうど良かった。
江國さんは初読だったのだけど、前に知人が「江國さんは雰囲気を楽しむ作家」と言ってたのがわかった。難しいこと考えたくない時にまた江國さん作品読みたいな。 -
冬の海の白浜に打ち寄せる冷たい波しぶきが、細かい粟粒となって砕け散り、あとから来た波に呑み込まれていく・・・映画のワンシーンを見ているような12の短編集です。甘く苦い青春の記憶、恋愛と失恋、家族との死別、離婚と再婚、嫁と姑の立場、不倫関係・・・今にも崩れ落ちてしまいそうな女性心理の浮き沈みを、 繊細で流れるような文脈で語られていきます。世間体に縛られず、もがき苦しみながらも、生きていこうとする心意気が偲ばれる直木賞受賞作品です。
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この本を読み終わったときの感情は「やるせなさ」である。
映画『阪急電車』の冒頭部分のナレーションで語られる、
人は、それぞれみんな色んなやりきれない気持ちを抱えて生きている。死ぬほどつらいわけではないけれど、どうにもならない思いを抱えて生きている。
そして、その気持ちは誰にも言えないのだ。...(以下略)
という内容をまさに表現したような短編集ではなかろうか。
また、この作品には「孤独」という言葉がよく登場する。
喪失するためには所有が必要で、孤独を感じるためには誰かといた記憶が必要である。そして、ずっと孤独な人は孤独を感じることもないのだろう。
日々悶々と抱える得も言えぬやるせなさと、誰かといたからこそ感じる「孤独」を抱えながら、我々は生きているのだと改めて感じた作品であった。
ハッピーエンドやバッドエンドが語られる小説が多いなかで、どちらにも分類しきれぬが私たちが日々直面しているストーリー(感情)を、やわらかく繊細に表現した、面白い作品だと感じた。 -
手に入れば失う予感がしたり、心は意に反して移り変わったり。
ゆえに一人の男を愛し続けられなかったり、昔の男の記憶を拠りどころにしたり。
タイトル通り、特別ななにかがなくても、いつも思い切り泣けるだけの状態に女はある、ということかな。 -
完全に幸せな人というのは、いないのです。たとえ愛する人と出逢っても、時間はその気持ちに綻びを生む。一緒にいたい、でも一人になりたい。二人が好き、でも孤独はもっと好き。日常の中の棘や、恋の深淵、そういう表象を描き出す江國さんは、鋭い感性をもつ詩人のよう。不思議で気になる作家です。
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短編集です。ひとつひとつの時間、場面、人物は全く異なるけどどれも似たり寄ったりな内容でした。昔、ハートを熱く燃やして今は別れて孤独で喪失してるけど、でも…な感じの展開でした。出てくる人たちはみんな自分のやりたいことを素直にやっているような気がするんだな( ⁼̴̶̤̀ω⁼̴̶̤́ )
それを批判されてもいいのみたいな強さを持ってる感じがした。
…ミランダジュライの『いちばんここに似合う人』に似てる。
2014.9.25(1回目)