朗読者 (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900182

感想・レビュー・書評

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  • 歴史的事件が扱われるた作品は初めて読みました。読まなければと思いつつ、ショッキングな表現が出てきたらずっとそのことを考えてしまいそうで怖かったからです。でも、読み終わってから、読んで良かったと思えました…
    Ⅰ章とⅡ章で話の色がガラッと変わります。前者は、主人公が恋に溺れていて輝いていて、春なような色。後者は、別れや裁判、過去の事件やそれに悩む主人公の苦悩から黒やコンクリート色。ハンナとの関係を誰かに話すシーンは、(色々な女性には話していましたが決定的なものは)最後に出てきました。読んでいてずっと、親しい人には誰にも相談しない一人ぼっちの主人公だなと思っていたのですが、おそらくハンナのことを非難されたくなかった、自分の春を汚されたくなかったのかなと思います。それか心に秘めたかった宝物だったのかも。
    出所するにつれて主人公同様に私の心もこれから二人の関係がどうなるか不安がありました。ハンナがなぜ自殺したか誰にもわかりません。
    当時ドイツ人はとても苦しんだということは知っていましたが、いろいろな立場にいた人があかるからこそ苦しんだのだとわかりました。現実では勧善懲悪なんてないなと思いました。

  • 最初エロチックでセンセーショナルな設定。
    そのうち強制収容所、ナチ時代の話になる。

    そんなに細かく書き込まれてなく、
    エンタメ系の物語の物語の展開で、
    読みやすいです。

  • 世界20ヶ国語で翻訳され、アメリカではベストセラー、等々 新聞にお薦め、とあったので図書館で借りた。 が、消化不良気味・・。 
    2回読むべし、と新聞にあったけど、なるほどそうかもしれない。 でも、もう1回読む気はないなあ。 

  • デザインは好みなのに本の裏にあるあおりがやたら大仰だったので、逆に興味を惹かれて読んでみました。
    最初の20ページだけでもかなりショッキングな内容で、一体どうなるのかと思いながら読んでいたのですが、これはどういう事だったんだろう、という謎が一切明かされないまま終わってしまいました。
    自伝に近いものらしいので、きれいに起承転結してオチもつく、というものではないのでしょうが、読んだ後はすっきりしないし、感動したりとか、あおりにあるような『残酷な愛の物語』とは思えなかったので★3です。
    普通に最後まで読めたので面白かったとは思うのですが……。

  • 15歳の少年の甘く切ない恋。そして21歳もの年上の相手の女性の突然の失踪。そして少年は弁護士になり偶然に女性に再会する。そして明らかになる女性の過去の秘密。ナチス時代のドイツへの批判を含みながらも「あなたならどうした?」と読者にも問いかける感動的な裁判官との対話。この中で、プライドを捨てることが出来ない一方で、健気に努力をするヒロインと「朗読者」の語り手の感動の繋がりが感動をよびます。大きく3部に分かれますが、一部の出会いと恋の場面だけ読むといきなり惹きこまれるものの、甘くて「谷間の百合」を思い出させる世界が、徐々に深刻な展開になる構成も素晴らしいです。映画化が楽しみです。

  • (2001.07.22読了)(2000.06.15購入)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    学校の帰りに気分が悪くなった15歳のミヒャエルは、母親のような年の女性ハンナに介抱してもらい、それがきっかけで恋に落ちる。そして彼女の求めに応じて本を朗読して聞かせるようになる。ところがある日、一言の説明もなしに彼女は突然、失踪してしまう。彼女が隠していたいまわしい秘密とは何だったのか…。数々の賛辞に迎えられて、ドイツでの刊行後5年間で、20以上の言語に翻訳され、アメリカでは200万部を超える大ベストセラーになった傑作。

  • 少年の、少し幼い恋の印象が強い。
    その幼さが、小説全体に漂っているような、そんな気がした。
    消化できない想い、ゆえに見えていないことも多い
    そんな靄を感じる作品だった。

    ハンナが姿をくらませたのも
    出所前日に命を絶ったのも
    共感できる。

  • ヘッセやマンの作品に顕著であるが、少年が人生の上で経験を積み、やがては大人になって行くまでを描いた「人格形成小説(ビルドゥンクスロマン)」という文学的伝統がドイツにはある。『朗読者』もまた、その構成を借りている。15歳の主人公は気分の悪くなったときに助けてくれた母ほども歳の離れた女性に恋し、関係を持つ。逢う度に彼女は少年に本の朗読をせがみ、いつしかそれが二人の習慣になる。ある日、突然彼女は失踪し、失意の少年は心を開くことをやめ、やがて法学生となる。彼女を再び見たのはナチス時代の罪を裁く裁判の被告席であった。刊行以来5年間で20以上の言語に翻訳され、アメリカでは200万部を越えるベストセラーになったという話題作である。日本でも発売当時、多くの書評に取り上げられたことは記憶に新しい。

    ややもすればセンセーショナルな話になるところを抑制の効いた文体と感情に流されない叙述で淡々と進めていくあたり、作者の並々ならぬ力量を窺わせる。ミステリーでデビューした作家らしく巧みに張られた伏線が、平易な文章と相俟って読者を最後まで引っ張って行くところがベストセラーたる所以でもあろうか。主人公を戦後世代にすることで、強制収容所というテーマの重さに引きずられることなく、あくまでも個人の倫理観の問題にとどめたのも法律の世界に身を置く弁護士としての作者の資質から来ているのだろう。

    全編を通じて主人公の回想視点で語られている。ハンナとの別れ以来傷を負った彼の思惟と行動は外に対して閉じられたかのように見える。15歳の時の体験に彼は捕らわれ、そこから解放されずに歳をとってしまったもののようだ。彼がそこに固着するのは全幅の信頼と愛を傾けていた存在を去らせたのが自分の不誠実な態度であると感じた事によるが、彼女の秘密を知った後でも彼のとる行動は誠実なものとはいえない。彼にはハンナが理解できないからだ。

    ハンナの場合はどうか。未成年を誘惑するような仕種やその後の行動も、文字を知らないことが分かってみれば、蛇に誘惑されて林檎を囓るまでのイブのように無辜で明るい。彼女に翳が差し、暴力的な事態が現れるのはいつも文字が介入してくるときだ。ハンナが彼の前から姿を消すときも、かつて雇われていた会社を辞め収容所の看守になるときも同じである。

    文字を知るまで、ハンナにとって世界は理解を越えていた。自分の力ではどうにもならない現実に翻弄されるように生きていたからだ。だからこそ、裁判長に向かって「あなたならどうしましたか」と、問い返せたのだ。文字を知ることで、かつての自分の行為を今の自分の意識で見つめることにより無辜のハンナは消え、年老いて寄る辺のない罪人が生まれたわけである。牢獄のハンナに朗読したテープを送り続けたミヒャエルの行為は、考えようによっては残酷な行為であり、哲学者の父を持つミヒャエルは、ハンナのいる楽園に悪魔が遣わした蛇だったのかも知れない。ハンナは人間として生きることを得ると同時に死ぬことも得た。

    知らないで犯した行為を果たして罪と言いうるのか。裁かれるのは、その行為を犯すまでに当事者を追い込んだものの方ではないのか。おそらく、いつの時代にあっても問い続けられるテーマである。ナチスという悪を背負い込んだドイツ。貧困ゆえの無知という事態を引き受けた個人。他者を知ろうとすることもなしに一方的な愛を請う恋人。輻輳した主題を絞り込んだ登場人物を通じて展開して見せた点に巧さが際だつ一編である。

  • 文章が瑞々しくて扱っているテーマが重いのに読みやすかった。

  • 中学生のときに初めて読んだが、強烈な印象をうけた。
    15歳の少年と36歳の女性の切ない恋。

  • 前半は少年とすごく年上の女性との恋。後半は、その女性の失踪と、過去の秘密。
    長い作品ではないけど、読んだ後ずっしり来ます。ラストは切ない。

  • 今回再読し、出版されてすぐに読んだときには気がつかなかったミヒャエルとハンナの心の動きに注目した。裁判・カセットテープを送るようになってから・出所が決まってからの二人の心の変化がこの本の中で重要な場面だ。自分に正直に生きる難しさを感じた。

  • 愛の物語と戦争の悲劇。
    再読したくなるように引きこまれる内容です。

  • 学校の帰りに気分が悪くなった15歳のミヒャエルは、母親のような年の女性ハンナに介抱してもらい、それがきっかけで恋に落ちる。そして彼女の求めに応じて本を朗読して聞かせるようになる。ところがある日、一言の説明もなしに彼女は突然、失踪してしまう。彼女が隠していたいまわしい秘密とは何だったのか……。

  • 原書読めたら最高なのになぁ。

  • タイトルからは中身を想像できないと思う。

    内容は・・舞台はドイツ。第二次世界大戦後、強制収容所、裁判、少年と熟女の愛(と言っていいのか)
    等が要素の一部だ。タイトルが何故「朗読者」なのかは、是非本を読んで解して欲しい。

    人の心の描写をするに「身が焼け焦げるほどのXX!!」とか「波一つたたぬ水面のような・・」とか。 そういった間接的ではあるけど、心理を直接比喩した文章は殆ど出てこない。

    淡々と、行動のみが語られていく。
    にも拘らず、人物の苦しみや葛藤がダイレクトに伝わってくる。

    何ていうか・・一発びんたを食らってる感じか?
    恨み言は言わない、ただ一発頬を殴る。

    モチーフに強制収容所はあるけれど、物語の一要素としてだけで、残酷な描写などは一切無い。

    「生き生きと悩んでる」

  • ☆あらすじ
    映画「愛を読むひと」原作。
    主人公ミヒャエルは病を介抱してもらったのをきっかけに、21歳年上の女性ハンナと恋に落ちる。ミヒャエルは彼女にたくさんの本を朗読してやり、そして濃密に愛し合う関係になる。
    しかし、ハンナはある日、ミヒャエルの前から忽然と姿を消した。

    数年後、法学生になったミヒャエルはまったく予想もしていなかった場所で、ハンナと出会う。
    その出会いにより、ハンナの過去を知り、秘密を知り、彼女が彼の元から去った理由を知ってしまう。


    ☆感想
    映画化されてるのでおおよそのストーリーはご存じの方も多いと存じますが、こりゃ切ないね…orz
    ネタバレになりそうなので、突っ込んでは書けないのですが、あまりに甘美で、あまりに切ない初恋の話です。

    あとこれ、外国の本を読むのにすごく大事なことだと思うんだけど、翻訳の文体がとても読みやすいですー!

  • 手元において何度か読み返したくなる話。
    ドイツのことをもっと知りたくなった。

  • 2011.5.22

  • 『胸を締めつけられる、残酷な愛の物語。
     15歳の少年ミヒャエルが経験した初めての切ない恋。
     けれども21歳年上のハンナは、突然失踪してしまう。
     彼女が隠していたいまわしい秘密とは……。』(裏表紙コメント)
    血の通った、過去もしがらみもある一個の人格を持った人間として相対し、互いの人生に関わり合う際に生じ得るあらゆる感情。
    それが、本作品で完璧に描ききられていると感じた。

    残酷とか、悲劇とか、物語全体を第三者目線で決め付ける言葉は似合わない。
    演出一切無しの、ただ当事者として読み手を「ぼく」に憑依させ、感情を溢れさせる文章が本当に秀逸。

    <メモ>
    ・国の過去の歴史の責任は誰にあるのか?第三帝国崩壊後のドイツ国民。親の世代を裁く。
    ・ぼくと父親(哲学論者)との会話。相手の意志決定の、自由と尊厳を守るということ。
    ・あくまでも他者としてある、ハンナの圧倒的存在感。自ら語る口を持たない人間像。

  • 以前番組で紹介されていたものでちょっと読んでみたい作品だった。
    冒頭部は確かに引き込まれる。
    ナチス時代の戦犯が重いテーマとして絡んでいるので暗く切ないイメージがある。
    再会したのは戦犯として裁判を受けているハンナ。それを傍聴席から見る法科の学生であるミヒャエル。
    意外な展開ということでミステリーに近い小説とカテゴリー付けした。

  • 書評が良くて興味を持ったのがきっかけで、
    読みだしたらじっと読んでしまった本。
    映画を見て、また読み返したくなりました。

  • 映画『愛を読む人』(邦題)の原作。

  • なぜ年上の彼女は本を読んでくれと頼んだのか、そして突然消えたのか。
    それにはナチスドイツ支配下での彼女の暗い過去に原因があった。
    文章を読むという疑似体験をすることと現実を体験するということこれは車の両輪のようなもので、疑似体験を実体験より1ランクさげてとらえてよいのだろうか。疑似体験があってこそ実体験が生きてくるということはないだろうか。読書という行為のためにナチに与したとして罪に問われるべきかは、その社会的罪の軽重は問うことができても、個人的必然性を云々することは難しい。
    なかなかの良書である。
    映画にもなっているようだが未見。

  • 断捨離本。出版直後くらいに買って積ん読だったのだけど、映画「愛を読む人」の原作だと気づいて読んだ。ががが、なんだこれ。うじうじするだけで結局何もできないダメオヤジの徹頭徹尾自己陶酔ストーリー。帯の賞賛の句をよく見れば、すべて作者と同じ年代。おじさまは、こういうロマンスがお好きなのね。もしあるとすればだけど、彼女のほうに焦点を当てた小説のほうが好きだと思う。

  • 意外すぎる展開、涙なしには読めない結末――。
    ベルンハルトシュリンクの非凡な才能と、経験があってこそ生まれた小説でしょう。
    「ナチス」「年齢を超えた愛」「文盲」3つのテーマが絡み合い、連関しあい、感動の最終場面へ向かう一文字一文字を、時間を忘れて読み進んでしまう一冊です。

  •  学校帰りに気分が悪くなった15歳のミヒャエルを助けてくれたのは、通りがかりの年上の女性。元気になり、母に言われるままにお礼を言いに女性の家に出かけるミヒャエルだったが、いつしか21歳も年上の彼女ハンナに夢中になっていく。
     ハンナとつき合うことで、自信をもち、たくましく成長していくミヒャエル。ハンナもまた、ミヒャエルを愛し、穏やかな時間が流れていく。ミヒャエルが本を朗読し、それをじっと聴くことを何より好んだハンナ。しかし、そのハンナが突然何も告げずにミヒャエルの前から姿を消してしまう。
     数年後、大学生に成長したミヒャエルは、思わぬ場所でハンナと再会する。教授に言われ、ゼミの研究のために公判に出かけた学生と、アウシュビッツの収容所で囚人たちを見殺しにした被告人として…

     
     前半は21歳も年の差のある男女の恋愛、そして後半は再会した2人のその後を…。
     いくらでも言い逃れできるはずなのに、あえて自らの不利な証言をしていくハンナ…過去の姿と重ねながら、ふとその理由に気づいたミヒャエルは、迷い、悩み、苦しみます。そして、考え抜いた彼の決断とは…
     読後は…うまく言葉になりません。ハンナの尊厳を何よりも大切にしたミヒャエルの選択は、ハンナにとってはどうだったのか…。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ハンナの尊厳を何よりも大切にした」
      悩むところですね、、、生き長らえたら、もっと苦しい毎日だったかも知れないし。ミヒャエルが尽くす事で別の...
      「ハンナの尊厳を何よりも大切にした」
      悩むところですね、、、生き長らえたら、もっと苦しい毎日だったかも知れないし。ミヒャエルが尽くす事で別の人生があったかも知れない。判らないコトです。
      きっと、ミヒャエルの選択は正しかったのでしょう。でも私なら違う行動に出たような気がする(それが正しいかどうかは別として)。。。
      2012/07/19
  • カレッジで歴史を勉強していたとき、過去に人々が犯してきた間違いについて考える機会がたくさんありました。
    この本「朗読者」の中で、急に失踪してしまう主人公の恋人が持つ秘密も歴史的な「間違い」と関連しています。

  • 再読。
    やっぱりこの本、好き。
    深い愛。

  • 何回も何回も読み返している。読む度に解釈の度合いが深まり、違った見え方を成してくる。そして涙が止まらなくなる。

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著者プロフィール

ベルンハルト・シュリンク(ドイツ:ベルリン・フンボルト大学教授)

「2019年 『現代ドイツ基本権〔第2版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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