朗読者 (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900182

感想・レビュー・書評

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  • 切なく残酷な愛。胸が苦しくなります。言葉というものの限界をまた感じてしまった。読んだり見たり、そして想像したりして、その実体をつかもうとする。しかし、いろんなものすべてを総動員してもつかみきれない、このもどかしさ。人は記憶の中に生きているのでしょうか。

  • とてもいい本を読んだ。美しい物語だと思う。二人の愛は何なのだろう。15歳の少年ミヒャエルは36歳のハンナと出会い関係を持つ。彼はたちまち彼女に夢中になる。思春期の少年の一途な恋なのか、年上の女性との性への衝動なのか。いつかそれは彼が本を朗読するという儀式を無しにはないものとなる。ハンナが常に優位に立ち彼が服従するという関係が旅行先の喧嘩から変わる。彼が出て行ったと思ったハンナが怒りベルトで彼を鞭打ち泣きじゃくる。その喧嘩に隠された秘密はもっと後でわかるのだが、それ以降お互いの身体を利用したような愛し方が思いやりあるものへと変わる。ああ、ハンナもほんとうに彼を愛してしまったのだ。微妙に揺れ動く二人の心情、あっという間に成長していく少年。「あの頃を思い出すとどうしてこんなに悲しくなるのだろう。」36歳の女性を見て若いと思い15歳の少年は子供だと思うようななった頃、彼はそんなふうにこの濃密な関係だった時期のことを思い出す。最後まで読んでしまったあとではやはりその時期は何か悲しい。少年の頃の彼の抑えがたい性への衝動が、無邪気な一途さが、若さが。思いがけない形での彼女との再会。彼女の隠していた過去。そして最も彼女が隠したかった秘密。もしそこに彼がいなかったならと思わずにいられない。誰よりもその秘密をハンナは彼に知られたくはなかったのだろうから。彼女を救うことができるにもかかわらず傍観者でいることに終始した罪。それは彼女を愛したことを隠した罪と同じ様に彼を苦しめたからその後も朗読者であり続けたのだろうか。彼女の裁判を見ながら「「僕はなにも感じなかった。」そう書いてあればあるほど、彼の痛みが伝わる。そのとき彼が様々なことを感じていて、それが複雑で大きすぎて彼が言葉や知覚できる範囲以上だったからもうそれは感じていないのと同じ様に思えるのだろう。「僕は何も感じなかった。」だが、彼女の罪はやはり罪なのだと思う。それがそのときの流れの中で選んだ生き方として彼女にほかに方法がなかったとしても。彼女ももう一度罪を犯している。彼女のプライドだとしても彼女は言わなかった。そしてその後の人生で何とか代えようとしなかったのだとしたら。この本を紹介してくれた人が「第3部は償い」とかいていたが、確かにそのとおりなのだろう。そして彼はもう一度彼女を裏切るような行為をしていると思うのも私の深読みの誤読なのだろうか。彼女が刑務所の中にいることで、彼は安心していたのだ。彼女を訪問したとき一目で彼の心がハンナはわかってしまったのだろう。でもそれは責められることだろうか。「元気でね、坊や」もうその時彼女は決めていたのだろうと思う。もし彼が手紙を書いていたなら、彼女はどんな返事を書いたのだろう。彼女の守りたかったプライドを彼はまだわかっていなかったのだ。ドイツという国が抱えた過去の罪の重さ、それを抱えながら二人を繋ぐ朗読。ほんとうにいい物語を読んだと思う。

  • 友人が読んでよかった、と言っていたのですが……うーむ、正直私にはダメでした。友よすまん!(涙)今までその友人が薦めてくれたものにはハズレがなかったからかなり期待していたんだけどなあ。何か冒頭からものすごーくダークな雰囲気が漂ってて、これはどう考えてもハッピーエンドにはならんな、という感じなのね。そのダークな雰囲気を読んでる私もずーっと最後までひきずってしまって、ちょっとぐったりしちまいました。主人公やその周りの人々で共感できる人物がいたならば読後の感想も違ってたんだろうけど。帯で絶賛している人って男の人ばっかりなんだけど、もしかしたらこれ、男の人には激しくウケるタイプの小説なのかもなあ。少年時代に恋焦がれた超年上の女性が忘れられない、っていう設定だったり、ミョーに哲学的な物言いだったり。アウシュヴィッツの話は高校時代に政経の時間にやって、物凄く興味深かったんだけど、今作の中では取り上げられ方がとても中途半端だったので、一体私はどこに入り込めば……と、読みながら試行錯誤し続けていた状態でした。うーん、とにかくごめんなさい!!読了したので許して!!って感じです。

  • ナチスドイツ女性看守

  • 次のページをめくるのがこわい
    はじめからさいごまでずっと泣きそうになったけれど、どこで泣くのが適切なのかわからず、ただずっとこの本を読んでいると、

    「なにか朗読してよ、坊や!」

    ミヒャエルが彼女にお話をしてあげること。
    なんて愛しい行為だとおもう。

  • 最後、ものすごい泣いた。こんなに泣いた小説も珍しい

  • 読むものと聴くもの、どんだけセクシーか。ただの年増女&ガキのラブストーリーと思って読んだほうが面白い気がするが、セッキョーくさくはない。
    文庫よりクレスト・ブックスで。装丁とかも楽しみたい

  • 衝撃を受けた本。

  • 変哲のない日常の足跡を、ずっとたどってみる。
    すると、そこには激しく、ほの暗い“日常”があったりする。
    私はこんな恋愛をしたくはない。押し潰されてしまいそう。
    でも、こんなふうに誰かを好きになれたらいいなぁ、と考えないわけでもない。

  • 緩やかに冷たい・・・

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著者プロフィール

ベルンハルト・シュリンク(ドイツ:ベルリン・フンボルト大学教授)

「2019年 『現代ドイツ基本権〔第2版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ベルンハルト・シュリンクの作品

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