母の遺産: 新聞小説

著者 :
  • 中央公論新社
3.75
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本棚登録 : 703
感想 : 121
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  • Amazon.co.jp ・本 (524ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120043475

感想・レビュー・書評

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  •  本作で描かれている娘が持つ母への情と、それと同じくらいの憎悪は身に覚えのあるものなので、物語を正視するのが辛くて何度も読むのを止めようかと思った。母が生きてたって死んだって母のある種の呪縛から解かれることはなくてゾッとするけれど、母との関係や母のことを全否定したいわけでもないのが母娘関係のややこしく複雑なところだなぁと、改めて感じる。美津紀たちや自分だけでなく、世の中にはこうした女がたくさん存在していて、それでもみんな生きているのだと感じられるラストを読んだ時、ちゃんと読破して良かったと思えた。

  • 他のレビューではそんなに母を嫌いにならないとか娘としてひどすぎるとかいうものがあったが、こんなにリアルに母娘の複雑な関係を書いていて、なおかつ希望をみせてくれる作品はない気がする。夫に対する違和感、世間でいう女ではなくなっていく中年女性の悲しみ、実母に早くいなくなってほしいと願ってしまう罪悪感、どれも胸がずきずき痛むほどだったが、結婚や人生に対する思い込みを取り払い違った一面を見せてくれた本作に私自身は本当に救われた気がする。

  • 女系家族の細やかな描写や些細なニュアンス、やり取りなどは大人になっても続く関係で現実では私自身、子供の頃は女どうしは細かくて面倒くさそうだなあと思っていたが、今ではこの小説でもやはり羨ましく思う。そして主人公も最後は悟ったが恵まれた部類の人だと思う。姉妹、兄弟はどこの家庭でも大なり小なり差別はあり、母の為に我慢をしたのだろうが母が言う“あなたはお利口ちゃんだから”ということ。そして主人公自身がなにより大事にしている体裁を保ってきたんだから本人の性格もあると思う。世間では体裁を一番に重んじる人がほとんどで、この母は女の人生と人としての喜び、世の中というものの核心をしっている賢い女性で主人公には辛い思いは、勿論あっただろうけど、この母に育てられた娘達は羨ましく思います。

  • 友人のおすすめだったが、私には合わなかった。とにかく暗くて重くて醜くて、読んでいると、どんどん滅入ってくる。申し訳ないけど後半は飛ばし読み。

  • 20150406

  • 2012.04.23

  • 新聞小説って毎回書くのに苦労するんですね。
    ストーリーに一貫性がないし、場当たり的に書いてつないでるのがよくわかる。
    終わり方も中途半端です。

  • 女系家族の母と娘姉妹の葛藤と相克、祖母からつながる明治は金色夜叉の世界からボヴァリー夫人を通り抜け近代の女性の自律と理性までを、老親の介護と看取り尊厳死、そして遺産の現実的な意味合いを絡めつつ描いた大河。
    同年代より上の女性には勧められません。勧めたら何か底意や願意があると受け取られかねない。

  • 母と娘の確執。もうひとつだなあ。

  • 生々しい。それだけ上手ってことなんだと思います。

  • 後味の悪い作品でした
    妙にリアリティーがあるところが余計に疲れて嫌でした
    主人公の美津紀さんが自分と同年代なので、余計にリアルに感じるのでしょう。

    夫の浮気、不本意な病院で最期を迎えた父に対する同情、自分勝手で早く死んでほしいと願う母のことが、だらだらと500ページ以上にわたり書いてあります
    そして、やたらと金勘定が多い

    母が自分の母にそっくりで、誰もこんなものなんだとちょっと安心もしましたが、不快でした

  • 面白い。一気に読める。けどキライ。主人公と「死んで欲しい」その母は実はそっくりなのだ。

  • 感動ものかと勝手に想像していたら、全然違った。
    あの母が死んだー。見栄っぱりで、我儘で、周囲を翻弄するあの母がー。
    から始まる、姉妹が母親の思い出を回想する話。
    最初は親子について考えさせられ、いびつな関係に驚き、感動を受けながらも、長いせいか後半若干間延びしてしまう。
    でも、人には勧められる作品。

  • 親に財産があるっていいなあ。と思った。
    どんなに付き添いが大変でも、お世話や相談には他の人の手を借りれる余裕があるって、とても恵まれている。

    あ、本の内容からはそれました。
    親の介護&死、本人の離婚、家族の歴史、そういうものが上手に織り込まれたものでした。親に死んで欲しいと願う複雑な気持ちに、なんていうか、そうだよねと寄り添うように読んでいきました。

  • 確執のあった母、夫の不倫。50代を超えてなお、女は色んな縛りから逃れられない。淡々と続く不幸。
    それにしても、この年代の女性はどこか透明感がある気がする。梨木果歩しかり。

  • 親の介護、姉妹の確執、夫の不倫…

  • 人が死後に遺すもの。。。それは預金や不動産だけでなく故人とのつながりに思いを馳せた時にのみ開かれる生きてればこその苦悩、故人の死として尚大きすぎる影響力、ストーリーの現実感があり、読む程にハマります。

    中村学園大学:ニックネーム☆WWW☆

  • 筆力のある作家の手による、
    ずっしりしっかりとした読み応えのある作品。
    本来他人からはうかがい知れず、
    黙して語られないはずの、ある意味心を打つ本音が、
    美しい日本語でなおかつ読みやすく描写されている。
    私小説的な雰囲気も漂う、レベルの高い、
    出会えたことに喜びを感じる 1 冊。

    2012 年 第 39 回大佛次郎賞受賞作品。

  • なにひとつ共感できず、登場人物にいらいらするばかりだった。

  • お、重ーい

  • 図書館にて。
    図書館のHP上の予約件数の多いリストに入っていたので借りてみた。
    母親の生い立ちから人となり、自分や姉の人生につながる物語がとびとびで出てきて時系列じゃなかったので読みづらかったけれど、実際に回想する時ってそういうものかもしれないと思った。
    父への仕打ちの恨みや、母のわがままなどのような、言ったところで解決しないことはどの家族にも実はてんこ盛りで、この物語のように解決することなくみんなそれぞれに付き合っていくしかないのかもしれない。
    最終的に夫も失った主人公が姉に助けてもらうくだりは、家族というものの強さと深さ、そして不思議さを感じた。
    個人的には一番つらい時にそばにもいない浮気夫にもっとぎゃふんと言わせてほしかったけど笑
    あれはあれでいい女を逃したと思わせる、かっこいい決着の付け方だったと思う。
    疲れ切った主人公にはああするしかなかったのだと思ったけれど。

  • [11][130504]<gmthr よくも悪くもくどい文体が、前半の卑近な描写が続くシーンにはどうも大仰で食い合わせが悪いように思う。ごく短い章のひとつごとにひとつイベントが起きて、それぞれにこってりした情景と感情の描写がつくという構成は単調だし、生々しいテーマを扱っているだけにかえって現実感に乏しく感じた。後半、旅先での場面に移るとこの浮き世離れ感がしっくりくる。こういうのが作者の得手なのだろう。オチはだいぶふわっとしていた。

  • 長いだけで、構成も品格もなし。
    らしい。

  • 2013/06
    日比谷
    随分前に予約したのが忘れたころにやってきた。5月7日に祖母を亡くした後で読むのは何ということだろう。つらい箇所が沢山ある。でも止まらない。

  • ああ、しんどかった。
    でも、途中でやめられなかった。

  • 子どもと親の関係を考えさせられました。戦後の欲求充足を至上価値とする個人主義により、親と子の関係、特に親と娘の関係は微妙に変化してきたと思います。
    家に女子しか生まれなかった場合における養子縁組の意義は、従来、家父長制による家名、家業の存続を目的としていましたが、民法改正などを受け、現在においては、親のため、子のためという意味合いに徐々に変化してきています。
    つまり、子どもが女子のみであるが、養子を取るほどの家名や家業がないため女子を全員嫁がせた場合、親の介護は誰が見るのかという問題が生じてきます。
    親であるため押し付け合うことはできず、できる範囲で行うとした場合の嫁ぎ先との関係や、負担の偏りを遺産分割で調整する打算など、姉妹間での微妙な駆け引きを生むことにも繋がります。

    本書は、2人の姉妹が母の介護と死後の遺産分割を通して,それまでの家族の歴史やそれぞれの現状を見つめ直すという小説です。

    十分な遺産や姉妹の良好な関係がありますので、ある意味ハッピーエンドですが、遺産が少ない場合や姉妹が険悪な関係であるときはどうなるんでしょうか。

  • 日本語が綺麗で目にはご馳走だったが、内容は、母にがんじがらめにされている私にはいかんせんしんどかった。
    所詮フィクション、と苦笑した部分も散見した。
    けれど、順番でいけば母親が先に逝くということを再認識させてくれたのは、大いに評価する。

  • 主人公のもんもんとした思いに息苦しくなりながら、久しぶりに「物語」をよんだなあ、という感じがする作品だった。うすっぺらい小説が多い中でたまにこういったこってりした?ものに出会うと嬉しくなる。
    ラストの(こんなにうまくいくか?と思いつつも)解放感と希望の光?にほっとしたが、まさに最近ほぼ寝たきりとなった祖母を眼前にした母にはリアルすぎて今は勧められない。
    母娘の、縛り縛られる愛憎関係は、そのまんま日本の家族の有り様なのだと思う。
    「金色夜叉」がからんでくるところは、なんだか滑稽感があった。

  • 母親と、主人公と姉の関係が、何とも理解できない感じだったのは、作者の描いている世界があまりに、私の環境と違うからなんだろうなと思いました。
    主人公の夫の育った環境のほうが、わたしには理解しやすかった。
    とはいうものの、主人公が、母親に振り回されたり、なやまさせられたりしていることには、共感というか、同情というか感じました。

    作者の体験を交えてとのことだけれど、おそらく、この介護のシーンだろうか。

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著者プロフィール

水村美苗(みずむら・みなえ)
東京生まれ。12歳で渡米。イェール大学卒、仏文専攻。同大学院修了後、帰国。のち、プリンストン大学などで日本近代文学を教える。1990年『續明暗』を刊行し芸術選奨新人賞、95年に『私小説from left to right』で野間文芸新人賞、2002年『本格小説』で読売文学賞、08年『日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』で小林秀雄賞、12年『母の遺産―新聞小説』で大佛次郎賞を受賞。

「2022年 『日本語で書くということ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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