母の遺産: 新聞小説

著者 :
  • 中央公論新社
3.75
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感想 : 121
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  • Amazon.co.jp ・本 (524ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120043475

感想・レビュー・書評

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  • 母親に振り回された娘の話とは一言に言ってしまえない話だが、読んでて共感する部分とそうでない部分があり感想もどう書いていいか考えがまとまらない。死んで欲しいと願ってしまう気持ちは理解できる。でも娘たちはそう思い憎み苦しみながらも結局母を捨てられない。
    この小説は作者が何を訴えようとしているのかと考えながら読む本ではなく読みながら読者が自分の今までの人生やこれからの生き方を考えさせられる本だと思った。
    単純な読み方をすれば彼女たちは世間一般からみたら非常に恵まれたひとたちで決して不幸ではない。

  • うーん。登場人物の年齢が近いので、なんだか引き寄せてしまうから読み進めるのが辛い。母の介護、夫との不和・・。熟年女性の日常ってこんな連続なんだろうな。

  • 我儘な母親とそれに反発する娘二人との確執などを描いている。非常に女性的な心理描写が多い。さすがに構成はうまい。

  • 読みごたえ充分で読書の醍醐味を堪能。母娘の確執から介護の臨場感。幾つものエピソードが巧く重なりハーモニーを醸しだす。生々しい描写もあるが、ラストは涙がうっすら。本好きさんにオススメしたい!

  • 新聞連載当時から掲載日の土曜日が待ち遠しかった「母の遺産-新聞小説」。そうそう、そうだったと思い出したり、ここは加筆されたのでは、と思ったり、ああここで唸らされたっけ、ともう一度感じ入ったり。

    新聞連載のあと、このノリコさんのモデルでもある作者のお母さんが自分の生い立ちをつづった「高台にある家」も読んでいたので、今回さらに理解が深まった気がする。新聞連載当時はわかりにくかった金色夜叉のくだりや自分とお宮さんを重ね合わせてしまったお祖母さんの時代の話など、ノリコさん目線で描かれている「高台」を読んでいると読んでいないとではノリコさんの印象も違うのでは。

    私にとってこの作品には、目を開かせてくれるような哲学があり、言い表せなかったがゆえに混乱し積み重なっていたものをどんぴしゃりと言い当ててくれる言葉ある。

    またきっといつか読み直す。美津紀の年に追いついた時、ノリコ世代になった時、また違う感想を持つのだろうか。

    この本を、あっという間に読み切ってしまったという母は、はたして誰の目線で誰に共感しながら読んだのだろうか。母親の性格からして、長寿だったがいろいろあった自分の母親の晩年をノリコさんに重ねていた可能性が一番高いが、私からすれば当然ノリコさんと母を重ねて読んでいたわけで、これは恐ろしくて聞くことができない問題です。

    そしてもちろん自分自身もいずれ「ああ早く死んでくれ」と思われることを強く自覚しております。それは絶対にそうなると思う。。。

  • 一気に読んだ。面白かった。私は、娘たちにどう思われて最期を迎えるのかなぁ、と考えた。

  • 母と娘の確執の物語。最近そういったテーマの本が多いように思います。世の中には悩んでいる人が多いということでしょう。主人公は50代で、母の介護と夫との関係に問題を抱えている。母親が重荷で、早く死んで欲しいと願っているが、なかなか思い通りにはいかないものです。

    その中で夫との関係とお金の話がでてくるが、後半少し母との関係についてはブレがあるような書き方になってくる。それもまた現実味がある。

  • この人の小説無条件に好き。癖になる。主人公は50代の女性。母を看取り、結婚生活に悩み、自分の人生に絶望する。さてその先をどう生きるのか。我々40代にも、実に切実なテーマ。人生決して一筋縄じゃいかず、それは自分だけじゃない、ってことを確認できる。本を読まない人は、それらの問題を一体どうやって消化しているのでしょうか。などと考えさせられた本でした。

  • ありそうでなかった小説。だれかの日記を盗み見ているかのような現実感に溢れている。ここまでリアルな50女の心理描写をまともに受け容れられるキャパのある同世代の男性がいたら、かなりの少数派だろう。でも、受け止めてもらおうとは思っていないのが、きっとこの主人公に限らない多くの50女たちの本心。ここまであからさまに即物的にならざるをえないのも、もう、自力で狩りに出ていく可能性をほぼ諦めざるを得ないこの世代ならではか。何にせよ、現代の中年後期のシンデレラストーリーは、自力で小金を稼ぐより、転がり込んでくる遺産に支えられるものだったという顛末が悲しくも現実。

  • ちょうど同世代の女性が主人公で、抱えている老人問題にも興味をもって読み始めたけれど、物語の流れが私が求めていた方向と少し違って、中盤からは読み進むペースが落ちてしまった。だって所詮お金持ちの方の老人問題なんですもの><。庶民が抱える悩みとはちょっと次元が違うような。ただ老いの問題というのは、誰にとっても平等に訪れる物で、本人とそれを支える家族の、その苛酷さは少し描かれていたと思う。

  • 残念。図書館で借りたけど、雑事に追われて読み切れなかった。時間切れ。全524頁中257頁まで。

    親の介護や終末期のことなど、自分の経験と重複する点もあり、やや複雑な思いをしながら読んでいた。またの機会にゆっくり読みなおしたい。こういうお話がどういう終わり方をするのか結末が気になる。

  • うーん。
    なんだか設定もいつも通りで(上流会志向な女性たち)、ファンだったら楽しめるのかな。
    でも母親への恨み事がこれでもかって書いてあって、面白いかどうかっていったら微妙だけれど、でも、これでいいのかな。
    私小説ってことで、いいのかな、と思いました。

  • 読売新聞土曜朝刊連載2010.1.16~2011.4.2
    中央公論新社2012.3.25


    読みやすく、とても面白い小説です
    母の介護から死、遺産
    夫の浮気をめぐる小説

    著者の人生を下敷きにしながらも、小説として面白く読めるように
    自由に作りなおした新しい小説空間
    新聞に連載した66章をたどる中で戦後の日本が浮かび上がってくる

    西欧や芸術に憧れた母の人生を娘もたどっている
    夫との離婚を考える心の葛藤
    離婚を決断し実行する果断な、容赦のない手際

    老いや介護はトレンドなテーマであり、この小説もそこを外していないが読み物として成功している


    タイトルに新聞小説という言葉を掲げているだけあって
    文学的な伝統を踏まえ
    新聞小説としての様々な実験にも挑戦している

  • おもしろかった!こういう、読みやすい良い文章で書かれた厚い本、長い小説が、私は好きです。水村さんの本は初めて読みました。他の本も読んでみたい。
    余計なひとことー花が咲くのは、梅、桜、桃の順なのでは。

  • 彼女の小説は骨格が大きい。
    なぜか気になる作家の1人。
    亡くなった母に対する肉親であるが故の突き放した思い。

    現在の著者の身の上と重なるのだろうか。
    読み応えあり。

  • 『本格小説(上)(下)』があまりにも面白くて、こちらも読んでみた。親の最後を看取る場面や離婚問題、老後の暮らしなどとても現実的であまりにも生々しく、読むのがかなり苦しい。

    特に母親が亡くなるまでの病院でのシーンは自分や母親の入院体験があるだけに、将来経験するんだろうという思いと共にリアルに迫ってきた。

    母親が亡くなるまでを一晩で一気読みし、翌日、母親が亡くなった後のシーンを一気読み。後半(母親が亡くなった後)は、気楽に読めるし、箱根湖畔ホテルのちょっとミステリーチックな雰囲気やそこに集う人々との交流がなかなかよくて、人付き合いをあまり好まない私でもこんな雰囲気ならといいなと思えた。

    読後は意外にもスッキリ。むしろ勇気が沸く。最後の姉の奈津紀の配慮はとても嬉しかった。これで何となく過去が相殺されるように思えたし、姉妹愛があることにもホッとした。そして姉の夫裕二の坊ちゃん育ち故の懐の大きさもホッとして、それと同時に哲夫は別れて正解だったと思わせる…、上手いなあと思う。

    それにしても、どうみても主人公と著者が重なってしまうので、故に浮気夫は岩井氏なのかといぶかってしまう。

  • 面白かった
    50代の女であれば、どれかは体験、あるいは身近で見聞きしたことのあるできごとと、全く経験できない部分が混然一体となっている。人によってフィクションとノンフィクションの部分が少しずれると思うが、エンタテインメントとリアルのミルフィーユじゃあー。

    確かに「新聞小説」は明治から昭和にかけては世界を知る窓だった。子どもの私が大人の小説を初めて目にしたのも新聞小説ではなかったか。「娯楽」であるがゆえにひきつける力が大きく、メディアリテラシーにうぶな明治の女がすっかり「自分のことが書かれている」と思い込んでしまっても不思議はない。

    「新聞小説」であったからには挿絵があったはず。筆者のインタビューでは「絵の力によらないもの」を目指したとか。新聞連載時には山口晃の絵が付いていたのね。ふ~ん。で、本には入れなかった、と。
    なんかこうわかるような気も。山口画伯も途中からいまいちだったと評している人もいたし。それはそれで見てみたいような気もする。

  • 女性の生き方を主人公とその母を中心に描かれる。母親の描写は娘だからこそな感じ。同性だと気づくこと、あるある。前半は暗いが読みきったら救われたラスト。この著者は裏切らない。久しぶりに読みごたえある日本の小説だった。

  • 母の死を願っている、というよりは、元気でキレイなままずっと生きていて欲しい、という思いが感じられました。過去にいろいろあった上に、我儘言い放題の老いた母にうんざりしていたとしても、やっぱり母娘。

    それに引き換え、夫婦の絆は・・・。

  • 『ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?』
    本の帯のこのフレーズにドキドキして手に取りました

    母の死を待ち望む娘…どんないきさつがあったんだろう、と

    読み始めから母や姉や夫に振り回され不定愁訴に苦しむ主人公
    気重さに読むの断念しようかとたびたび思いつつ
    ラストまでたどり着けて良かった

    主人公と同じ年代になったとき、もう一度読んで見たいと思います

  • おんなもの。というか、母娘、家族の愛憎混じる物語から、最後は思いもよらなかった浄化へ。といったところか。
    時代背景が物語のベースとして見えてきて、同じく新聞小説であった金色夜叉のエピソードが物語内の現実と、物語の中で読まれる物語としてうまい感じで絡んでくる。そして、フランスで金色夜叉に当たるのがボヴァリー夫人。
    物語のようなドラマチックな人生を人間が求めてしまうのは、物語を知ってしまったからかもしれない。という問いかけには、なんとも考えさせられる。
    意味と物語を求めすぎて、私たちは自然の流れでなんとなくどこかに流されていき、それを受け入れるのが下手になっちゃったんじゃないかと思った。

  • 母の介護と学者である夫の悩む大学講師兼翻訳家の50代女性が主人公。重いですが、リアルなテーマです。夫って、まさか、岩井克人がモデルじゃないと思いますが。『續明暗』は大学の時に買って以来、積読。『明暗』も読んでないから。その後、『私小説from left to right』『本格小説』はスルー。『日本語が亡びるとき 英語の世紀の中で』は最近興味深んだ記憶が…

  • 母という人は自分に最も近い存在です。
    母は大好きであり、大嫌いな人でもあります。
    娘だからといって言ってもいいことと悪いことはあります。
    どんな娘も母の言葉に深く傷つき、それはないよなーとそれを恨みます。
    どんな娘も母に褒められ、認められることは至福の喜びです。
    憎らしいけど、大好きそれは永遠に続きます。でも自分だけじゃない、母も祖母もそうやって繋がっているのです。
    最近こういうことを小説に書くことが流行ってますね。

  • あと何冊、水村美苗の小説を読めるだろうか。

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著者プロフィール

水村美苗(みずむら・みなえ)
東京生まれ。12歳で渡米。イェール大学卒、仏文専攻。同大学院修了後、帰国。のち、プリンストン大学などで日本近代文学を教える。1990年『續明暗』を刊行し芸術選奨新人賞、95年に『私小説from left to right』で野間文芸新人賞、2002年『本格小説』で読売文学賞、08年『日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』で小林秀雄賞、12年『母の遺産―新聞小説』で大佛次郎賞を受賞。

「2022年 『日本語で書くということ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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