- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120054730
感想・レビュー・書評
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二組の母娘と一人の女性たち五人の再生物語。母親に捨てられ、夫のDVに悩まされている『芳野千鶴』の目線から描かれている。避難先の「さざめきハイツ」で家事を担当する『彩子さん』の娘、『美保ちゃん』の言葉使いの"悪さ"に、著者の凄さが感じられた。これまで読んだ町田そのこ作品の中で、一番面白いと思った。
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凄い本でした
出てくる女性たちの境遇が
悲惨すぎる…
残酷な描写に読むのが辛いのに
読むのを止められませんでした
これでもかと追い討ちをかけられ
見ていて苦しくなりました
主人公の千鶴は母親に捨てられ、
父親と祖母も亡くし
夫にDVを受け、金を取られ
ボロボロになります
ひょんなことから母親と他の女性と
共に生活をしていきます
その母親がたまに発するセリフが
なかなか突き刺さりました。
突き放しているようで
自分の力で生きていってほしいという
願いを感じました
そして他の女性の境遇もなかなかのもので
被害者、加害者
捨てた者、捨てられた者、
いろんな思いが交錯します
そこで少しずつ千鶴が変わっていく様が
とてもよかった。
ラストでは私も背中を押されました。
あたしの人生はあたしのものだ
誰かの悪意を引きずって
人生をおろそかにしてはダメだ
母親の考えにとても共感しました
もう一度じっくり読みたいです
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「52ヘルツのクジラたち」でも、孤独やつらさの描写がエグかったけれど
悲しみ、つらさの描写が、さらに鋭く、研ぎ澄まされている。凄みが増している。
容赦がなかった。
今の自分が不幸なのは、親のせいだ。
そう思うときがなかったとは言えない。
そして身近に、大人になろうとしている歳となってもそう主張している人がいる。
自分の境遇は、自分自身で責任を取るべきだ。
…確かにそうなんだけど、言ってることは真っ当なんだけど、でもやっぱり、ちょっと冷たい気もする。
「自分の人生は、自分で決める」。
至って当たり前なはずの言葉が、そうではないのは、周りによって人生を送る人の多さのためだと思う。
人のせい、特に親のせいにしている人も多い。
素直に対話すれば、きっとお互いを分かり合える、わだかまりを解消できるはずなんだけれど
そんなことがなかなかできない、素直になれない人の多さ。
理由はもちろん、「親子だから」である。
一番近い、やっかいな間柄だ。
容赦がない描写に、読んでる途中何度もつらくなった。
千鶴、ママ、恵真、彩子、美保。
出てきた全ての女性たちが、どうか今後幸せな人生を送れるよう願った。
私も、私の道を歩みたい。 -
母に捨てられた娘
娘に捨てられた母
血の繋がりはない母娘
いろいろな形の母娘が訳あってひとつの建家で共同生活をおくる
捨てられた側、捨てた側にもそれぞれ心に思うことがある
相手に怒り罵り不満をぶちまける!
心で思っていてもなかなか口にできない感謝の気持ち…
互いに本音を言い合うことで別れてしまった母娘の絆が深まっていく
そんな物語に感じました
もし、みなさんの子供が元気がないときには『うそっこバナナサンド』を作ってあげて、落ち込んでいるときには『大丈夫。○○はできる子だから』とおまじないの言葉をかけてあげて!(何これ?気になる方は『星を掬う』を読んでみよう♪) -
「宙ごはん」を読んで、一気にファンになった。
この本は2作目。
DVを受ける千鶴の描写があまりにも凄すぎて、
最初から、どきどきハラハラしながら読んだ。
いつまた、現れるか、逃げ切れるのか、
最後に、やっぱり出てきたときは、胸が張り裂けそうだった。
DVにしろ、虐待にしろ、痛みと恐怖で洗脳されて、
長い間苦しむことになる。
家族、親子、深く掘り下げていて、すごく考えさせられた。
子供の記憶は、大人の事情も社会のことも知らず、
自分の受けた感情だけで作られる。
楽しかった思い出が本当はとんでもない事だったり、
辛かった思い出が本当はいい事だったり、
成長しながら、少しずつ分かってくるものだと思う。
千鶴の場合は、ぶつりと途切れた思い出の中で、成長が止まってしまった感じだ。
「家族という言葉の呪いに縛られるな」という、
母聖子の言葉は、グサッときた。
家族だろうと、親子だろうと、一人一人の人生がある。
自分の人生は自分のもの。
若年性認知症の聖子の行動や言動を、とてもリアルに表現されていて、読んでいて、辛くてしょうがなかった。
よく、介護は最後の子育て、などと言われるが、
現実に家族は地獄を味わうことになる。
自分はとても子供たちに味合わせたくはない。 -
元夫の理不尽な暴力から逃れるために、子供のころに自分を捨てた母聖子の暮らす家に身を寄せるようになった千鶴…聖子は若年性認知症を患い日々症状は悪化していた…。母の生活の面倒をみていたのは、聖子をママと呼ぶ恵真と娘から捨てられた彩子…心に深い傷を負った者同士での新しい生活が始まった…。
千鶴の母に捨てられたせいで私の人生こんな風になった…これには共感できませんでした。それでも聖子さんが、千鶴との大事な思い出や母が子を思う気持ちを記憶の海から掬い出しそれを目の当たりにすることで、千鶴の気持ちが変化していく。そして聖子さんの「あたしの人生は、あたしのものだ…」という言葉…認知症になっても守りたいもの、大事なことがある…そんなメッセージを強く感じました。