星を掬う (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
4.11
  • (952)
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  • (76)
  • (20)
本棚登録 : 11863
感想 : 901
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120054730

感想・レビュー・書評

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  • 町田その子さん好きです。
    読み始めのインパクト、速い展開、迫力ある細かい描写は1度読み始めたら心を鷲掴みにされて最後まで一気に読んでしまいます。
    鍵になる登場人物の甘えのない”素の姿"も心に残ります。

    今回も大変重い内容でした。
    DV、毒親、閉鎖的田舎、愛なき結婚 、老い、病気、介護…盛り込みすぎでしょ?
    こんな悪境遇ないでしょ?と思うのですが、
    全てのシーンが画像に映し出されたように浮かび上がり、怒りも恐怖も希望も全てがリアルに感じました。

    「自分が”自分でいるために”人生は自ら切り開いて作るものなのだ」というメッセージがしっかり伝わりました。

    読み終わった後の余韻は明るいものでは無いですが、シンプルに自分の人生を大切に生きようと感じました。

  • タイトルや表紙の絵から想像する優しいイメージとは違い、DVや認知症などかなりハードな内容。

    幼いころ母に捨てられ、夫、弥一のDVに苦しむ千鶴が、若年性認知症を患った母と、その母をママと慕う恵真、その二人の同居人の彩子との共同生活を始めたものの、千鶴は母に近づきたいのに、お互いうまく伝えられずにいた。

    他方、彩子も夫や義父母から追い出され、子供を手放したという過去があるが、その子供、美保が突然妊婦となって現れ、同居することになる。わがまま放題、母親の彩子に当たり放題の美保を見て、千鶴も母への接し方を見直すが、母の認知症はどんどん進んでいく。

    家庭環境に恵まれなかったことで苦しむ登場人物が多すぎて、読んでいてかなりしんどいが、認知症を患いつつも、千鶴が寝込んだ時には昔好きだったサンドイッチを作ってくれたり、最後に弥一から千鶴を守るために体を張るなど、母としての記憶と娘への愛情があることが示されるシーンもあり、グッとくる。

    認知症が進み、母の意識が時々遠い昔に跳んだときの表情やつぶやき、そんな遠い記憶を広い上げる様子を"星を掬う"と表現するなんて、ちょっとステキ。認知症も悪いことばかりじゃないように思えた。

    そして、家族の在り方、家族が、自分が認知症になったらどうするか、色々考えさせられた。

  • 親子というか人間関係の難しさを強く感じました。
    内容が凄く現実味があり、現代社会の様々な闇や生きることの
    難しさを痛感させられました。
    内容は少し重めかもしれませんが、この先どうなる?と
    ドンドン読み進めさせられてしまいます。
    私的には「心を斬りつけられたことある?」の一文が
    頭に残って離れません。
    最後は、もっとハッピーエンドでも良かったな~~~
    私も子供が居ますが、自分の思う人生を謳歌して貰えればと
    思います。

  • 賞金欲しさに、母親に捨てられた思い出をラジオに投稿した、千鶴。
    すると、その母親と同居している、という女性から、接触があって……。

    DV、ストーカー。
    親のせいにして生きてきた子供たちと、それぞれの親子関係。

    屈託のない、いい人に見えても、それぞれ抱えるものがある。

    全体的に、重たく、読んでいてつらかった。

    それでも、ぶつかり合い、傷つけあいながらも、少しずつ変わっていく同居人たち。
    最後はジーンときた。

    ただ、加害者に知られた場所に住み続けるのには、違和感。

  • <属>
    この本もまあ面白い。本作は「本屋大賞2022」ノミネート作品。もし例のロシアの強敵女子狙撃兵がいなかったら ”又” 受賞したかもしれない。そう実は著者町田そのこの前作『52Hzのクジラたち』は「本屋大賞2021」大賞受賞作品なのだ。
    本屋大賞というやつは同じ作家が連続でノミネートされる事が良くある みたい。でも前回大賞を受賞した作家の作品が次回に又ノミネートされる、ってのは初めてなのではなかろうか。調べればわかるのだろうけど面倒。どなたか知っている読者諸兄姉さま教えてください。


    で、中身だけれど全ぇん部がネガティブストーリで出来ているのな。町田さんは多分今のところこのネガティブさが持ち味なのだろうなぁ。件の52Hzも果たしてそうだったろうか。なんというか作品全体に漂う暗ぁい感じ。でもこういう暗い感じを持ちながらも読者を引き付けて読ませる、というのはなかなか大したもんだのだなぁとも思う。

    今回しばしばその時の語り手が誰なのかを見失ってしまう事があった。特に「母」という言葉を吐きながら語ってゆく人を良く取り違えてて読んでいた。途中でその事に気づきボーゼンとする。面倒なのでいつ語り手が変わったのかが分かるであろう場面/部分に戻って読み直したりはしない。そこまでする程の作品でもないし多分原因は集中して読んでない僕の方にあるのだろうから。まあでも集中しづらい作品というのもそれはそれで良くないのだろうとも思うけど。

  • すっかり町田そのこののファンになった私
    この作品も読みごたえがあった
    辛かったけれど

    そうね、誰かのせいにして痛みの中に埋もれていては
    だめだよね
    自分のできること
    自分が選んだ道
    見つめて歩かなきゃあ

    四人の女性から学びましたよ

    「わたしの人生は、わたしのものだ!」

    過去から未来から
    無数の星の中から掬い上げるんだね
    星を

    ≪ すれ違う だけど交わる 母と娘は ≫

  • 心の中の隕石が砕けて発光し、まるで流れ星のように涙が流れる。
    希望を掬い上げる温かな手に、想いが浄化されていく。
    星が瞬くように、一歩前へと踏み出す道を照らしてくれる。
    この物語には人を生かす力があります。
    星を掬い、人を救う作品です。

    大切な思い出も水底に冷えた記憶も全部、かけがえのない生きてきた証であって、それら全てを糧にして私は生きていこう、と勇気が湧きました。

    人生に押し寄せる苦しみに屈せず乗り越えてやる。
    やられっぱなしになんかなるもんか!
    マイナスの経験なら、1を得てプラスに変えてやる。
    いつか自分と同じような誰かを救えるくらいの力に変える。けっして無駄になんてしない。
    そんな力が漲るのを感じました。

    温かい大きな手で掬い上げてくれた、町田さんに感謝せずにはいられません。
    きっとその強さは、いつかの弱さから生まれた優しい力なのだと思います。
    自分の未熟さで痛感した全ての事柄が、他の誰かを理解し寄り添い、大きな手となり沈んだ想いを掬ってくれる。痛みを知る人こそ痛みに寄り添える。そう感じました。
    弱さを強さに変えるように、これからずっと受け継いでいきたい素晴らしい作品です。

    • 溝口真希さん
      さあはなまあさきあらた
      さあはなまあさきあらた
      2021/10/20
    • 溝口真希さん
      さあはなまあさきあらた
      さあはなまあさきあらた
      2021/10/20
    • refrain∮さん
      mariさん
      あたたかいコメントありがとうございます。
      mariさんの素敵なコメントが、私の心を救ってくれます。嬉しいです◡̈*
      mariさん
      あたたかいコメントありがとうございます。
      mariさんの素敵なコメントが、私の心を救ってくれます。嬉しいです◡̈*
      2021/11/03
  • 読みながら私もこの物語の世界に入り込んでいました。
    冒頭から始まる芳野千鶴の人生が印象的です。(途中感情移入をし過ぎて胸がしんどくなりました)

    最初は自分の殻に閉じこもっていた千鶴ですが、恵真との出会いがきっかけで幼い頃に別れた実の母と暮らすことに。しかし、母は完治することのない病に侵されていました。

    さざめきハイツの暮らしを経て少しずつ千鶴自身も変わっていきます。

    家族とは何か、親とは何かを考えさせられるストーリです。

  • 重たいテーマを扱うお話なのになんでこんなにスイスイ読めちゃうんだろう。そして心が温まる。
    今回も感動のあまり泣きました。

    出だし最高:
    おめでとうございます。芳野さんの思い出を、五万円で買い取ります。

    町田その子さんの本を読むときに楽しみにしている一つは出だしです(( *´艸`)グィッと引き込まれます。

    感動レベルはこれまで読んできた町田そのこさんと比べたので星3ですが、めっちゃいいお話です。

  • 町田その子さんの作品は、どうやら私にどハマりで毎回レビュー★5つだなぁと気付いた。
    本作はあらすじを見ずに、町田その子さん作というだけで読み進めたが、やっぱりこの選択は間違いなかった!!


    幼い頃に実母に捨てられてから、自分の価値が見出せず、人生を終わらせようと考えていた主人公の千鶴。
    物語は千鶴がラジオ番組に出した1通の手紙をきっかけに思いもしない展開に・・・

    扱う題材が、DVに認知症に介護、未成年の妊娠や強姦未遂からの男性恐怖症など、重たい内容が中心となっている為、目を背けたくなる残虐な描写や、怒りで胸が震わされる描写が臨場感たっぷりに迫って来た。
    それでも読む手が止まらず夢中になれるのは、作者の筆力の凄さだと思う。特に、場面切替や登場人物の描き方が秀悦で、会話ひとつひとつの言葉の選び方まで、作り込み過ぎず、人物の個性を存分に引き出しながらもあくまで自然体で真っ直ぐに心に響いてきた。

    『星を掬う』このタイトルの意味が分かった時には、涙無しでは読めなかった。まぁ、実はそれまでに十分泣いて目が腫れてしまっていたが笑
    感涙必須=ハンカチ?いやタオル必須の物語。
    そんなわけで通勤途上とかは、かなり危険だと思う・・・

    ラストどの様に締めるのか気になったが、とても現実的でそれでいて前へ進む光を灯してくれる絶妙な加減がたまらなく素晴らしかった。

    読後、自分の人生や、家族や親、兄姉の人生、これからの生き方など、様々に思いを巡らす内容だった。
    特に、自分の大切な方へオススメしたい作品!


    以下、特に心に響いたフレーズ

    「自分の手でやることを美徳だと思うな。寄り添い合うのを当然だと思うな。ひとにはそれぞれ人生がある。母だろうが親だろうが、子どもだろうが、侵しちゃいけないところがあるんだ。」

    「あんたの人生のために、私の人生があるんじゃない」

    「家族や親って言葉を鎖にしちゃだめよ」

    「鎖でがんじがらめになって、泥沼でみんなで抱きあいながら沈むのが家族だっていうの?尊厳も何もかも剥ぎとって、子どもたちに死ぬまでぶら下がるのが親だっていうの?私はそんなの、認めたくない」

    「私の人生は、最後まで私が支配するの。誰にも縛らせたりしない」

    「加害者が救われようとしちゃいけないよ。自分の勝手で詫びるなんて、もってもほかだ。被害者に求められてもいないのに赦しを乞うのは、暴力でしかないんだ」

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著者プロフィール

町田そのこ
一九八〇年生まれ。福岡県在住。
「カメルーンの青い魚」で、第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。二〇一七年に同作を含む『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュー。他の著作に「コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―」シリーズ(新潮社)、『うつくしが丘の不幸の家』(東京創元社)などがある。本作で二〇二一年本屋大賞を受賞。
近著に『星を掬う』(中央公論新社)、『宙ごはん』 (小学館)、『あなたはここにいなくとも』(新潮社)。

「2023年 『52ヘルツのクジラたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

町田そのこの作品

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