韓国併合-大韓帝国の成立から崩壊まで (中公新書 2712)

著者 :
  • 中央公論新社
3.86
  • (6)
  • (20)
  • (9)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 251
感想 : 26
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121027122

作品紹介・あらすじ

日清戦争で清が敗北すると、朝鮮王朝は清の「属国」から離脱し大韓帝国を建国、皇帝高宗(コジョン)のもと独自の近代化を推進した。だが、帝国日本は朝鮮半島での利権を狙い同地を蚕食していく。日露戦争下、日韓議定書に始まり、1904~07年に三次にわたる日韓協約によって外交・財政・内政を徐々に掌握、10年8月の併合条約によって完全に植民地化する。本書は日韓双方の視点から韓国併合の軌跡を描く。今なお続く植民地の合法・不法論争についても記す。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 海を隔てたとは言え、隣国である現在の韓国。
    何故、併合されたのか、歴史の教科書より少し深いところがありました。
    閔妃暗殺をもう少し詳しく知りたかったのですが、そこは他の書と同様にサラッとでした。

    巻末のあたりに
    併合とは日本からの見方で
    侵略、植民地化、韓国(朝鮮)からはそう捉えるのだ
    とある
    とても考えさせられる。
    李氏朝鮮が近代化していく風景を垣間見れた本です。

  • 高校までの歴史授業では、明治維新時の内政改革を列挙した後、議会開設と大日本帝国憲法が・・くらいまでしか、聞いた記憶が無い。おそらく時間切れ、あとは自習ということであったろう。日清・日露、大正デモクラシー、太平洋戦争、また、小村寿太郎、原敬・・という単語はもちろん記憶にとどめる。しかし、「韓国併合」について、高校生がどのように理解するかと言えば、征韓論→日清日露の勝利によって日本も版図を広げ帝国主義列強の一員に??という、単視眼的な理解でのインプットを促す書き方でしか、サブテキストなどにも載っていなかったと思う。東学党だの義和団だの閔妃だのというのも片隅に書いてあったとは思うが、あまりにも断片的で頭に入らなかった。
    本書を読んで思いを至らせることになるのは、当時、清、露、欧米列強、日本がグローバリズムの中で少しでもよいポジションを占めるために複雑な政治、軍事の施策を矢継ぎ早に行っていたことである。朝鮮半島は地理的に、そして歴史の時間軸の中で、非常に不幸な位置におかれたようだ。高宗をはじめ、当時の朝鮮の指導者エリートたちは様々なやり方で必死に自分たちの国家をまとめようとした。が、及ばず、現代の私たちがイメージする独立国家への遷移は、そこでは叶わなかった。
    もう一つ、本書で印象に残るのは、他国に乗り込み、駐在して、自国にもっとも有益な結果を生むために、その国の国情を分析し、協力者を作り、工作し、世論、数的優位を整え、交渉カードを準備して、為政者に抜き身を引っ提げ交渉するという生々しい「外交」の姿である。

  • 日本の併合政策を韓国側の視点や歴史で振り返る一冊。イデオロギー関係なく冷静に分析しています。

  • 韓国併合の歴史を日清戦争あたりまで遡って、日韓双方の視点から軌跡と実態を描くという、パッと見、嫌韓本ということでは無さそうなので、購入した。

    今もなお隔たりのある、歴史認識の違いというのが、日韓でかわされた条約、ひいては植民地が合法だったのか非合法だったのかというレベルで食い違っているということらしい。

    これを白黒つけるのはいつまでたっても無理。ただ多くの朝鮮人が合意せず、歓迎しなかった、ということは読み取れる。だから日本も悲しい過去があった事は認めているので、そのあたりでいいんじゃないかと思う。

  • 李氏朝鮮から大韓帝国 韓国併合までの歴史がよくわかった

  • 日露戦争以降、大韓帝国は日本に外交・内政などを徐々に掌握され植民地となる。その軌跡と実態とは。今もなお続く日韓間の論争も追う

  • 【請求記号:221 モ】

  • 近年の研究成果を反映しながら、大韓帝国が成立して崩壊していく過程に着目し、韓国併合に至る軌跡と実態を史料に基づき実証的に描く。また、1990年代以降の韓国併合をめぐる合法・不法等の論争についても整理している。
    これまで日本視点での韓国併合論についてはいくつか読んだことはあったが、大韓帝国の視点から韓国併合までの歴史をたどるというのは新鮮で、知らなかった史実も少なくなく、勉強になった。
    特に、大韓帝国や高宗が当初明朝をモデルとした(小)中華思想に基づく国家を目指していて、西欧流の近代国家にいち早く切り替えた大日本帝国と最初から齟齬があったという点は興味深かった。このことを象徴するものとして、日朝修好条規締結前に、日本使節をもてなす宴会で日本側が西洋式の大礼服を着用しようとしたことについて、朝鮮側が明朝中華の服装こそ正式で、西洋式の衣服の着用を認めることは夷狄・禽獣の文化を受け入れることだとして一悶着あったというエピソードが印象的だった。
    大韓帝国側にも、独立協会や一進会など、日本を利用して近代化を進めようという動きが相当程度あったということも理解した。
    最後の韓国併合をめぐる論争の整理もよくまとまっていて、ありがたかった。韓国併合や第2次日韓協約の国際法的な合法・違法の論点はなかなかどちらが妥当なのか
    判断しがたいところがあるが、紹介されている坂元茂樹氏の当時の国際法では有効であるが明治政府の行為は正当化できないという「有効・不当論」の立場に一定の説得性を感じた。
    少なくとも、著者が史料的根拠から結論づけているように、多くの朝鮮人が日本の支配に合意せず、歓迎しなかった一方、日本が朝鮮人から統治に対する「合意」や「正当性」を無理やりにでも得ようとしたというのはそのとおりなのだと考えるので、そのような事実は踏まえた議論が望まれよう。

  • 19世紀後半の列強諸国の東アジアへの関わりから、当時の朝鮮及び日本の立場を説明する。

    長い間中国の所謂「属国」として朝貢体制をとり、正統な中国として見ていなかった清に対し、朝鮮こそ中華思想を継承できる国であると考える非近代的な国家であったようだ。そこに植民地を拡大する列強が侵食してくる。日本にとっては脅威であり、また列強の仲間入りを目指すチャンスでもあったのは確かだ。

    日清戦争、日露戦争、韓国の植民地化は、同じ文脈で語られるが、本書ではそれを含め韓国併合までの日韓両国の条約締結までの背景や史実を淡々と述べてくれているので、読者に正統性の判断を任せているように感じた。

    日韓はよく言われるように近くて遠い国だ。
    歴史認識の合意を探るとしても、政治の在り方や、それに伴う史実の記録や整理の仕方も大きく異なる両国で、現在にまで残され確認できる史料を突き合わせて、日本ではこう記されている、大韓帝国ではこう記されていると議論しても、合意を求めることは難しいだろうと言う。
    そもそも条約体制の外交を実践した国とそうでない国の記録を、対等に突き合わせて議論すること自体が難しい。

    文在寅大統領の登場で、再び最悪の関係となったが、先日訪日した尹錫悦大統領と岸田首相との会談で、お互いの国に対する感情が少しだが改善したようだ(岸田首相に直接お詫びの言葉を発して欲しかったが)。

    私たちは互いに良い未来を構築していく必要があるが、多くの朝鮮人が日本の支配に合意せず歓迎しなかったこと、一方、日本が朝鮮人から統治に対する「合意」や「正当性」を無理やりにでも得ようとしたことは事実であり、これこそが韓国併合ではないだろうかと結んでいる筆者の言葉は、我々も認識しておくべきことだろう。

全26件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1983年生 東京女子大学現代教養学部准教授
著書 『朝鮮外交の近代』(名古屋大学出版会、2017年、大平正芳記念賞)

「2021年 『交隣と東アジア 近世から近代へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森万佑子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×