2100年の科学ライフ

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140815724

作品紹介・あらすじ

コンピュータ、人工知能、医療、ナノテクノロジー、エネルギー、宇宙旅行…近未来(現在〜2030年)、世紀の半ば(2030年〜2070年)、遠い未来(2070年〜2100年)の各段階で、現在のテクノロジーはどのように発展し、人々の日常生活はいかなる形になるのか。世界屈指の科学者300人以上の取材をもとに物理学者ミチオ・カクが私たちの「未来」を描きだす-。

感想・レビュー・書評

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  • ・2012年に出版された2100年の未来予測。中長期で2030年、2070年、2100年までの間で我々の身近に起こり得るテクノロジー予測。
    ・本書のなかでは通勤がなくなる自宅でのリモートワークはまだ実現されていないとなっているが、
    2021年現在ではコロナによりテレワークが普及。
    ・2030年までに普及されるものとして、インターネットに接続されたコンタクトレンズや自動運転、壁面スクリーンなど。
    特にスマホなどの携帯用機器が全てコンタクトレンズに集約され、生活が拡張現実とともになる。
    ・外国人同士の言語の障壁は、万能翻訳機とインターネットコンタクトレンズやインターネット眼鏡によって次第になくなると予測。
    ・2100年までに実現が予測されることとして、心で物を支配するということ。
    すでにその土台はできており、脳卒中で身体付随となった患者の脳にコンピューターをつなげ、思考だけでコンピュータを動かすことはできている。
    ・また近いうちに脳の活動を測定するだけで、人が目で見た物の写真を再現できるかもしれないとのこと。
    また装置の電極は小型化し、人間は相手の思考を読んで、ただ考えるだけで対象に命令ができるようになる。
    ・夢までも録画できるとのことだが、人の思考はあいまいなため、録画できても画像の質はがっかりするものになる可能性がある。
    また電極を脳につけて密接になる必要があるため、離れたところから人の心を読むのは難しい。倫理的観点からも許可なく人の意識に入ることは法律で制限されるかもしれない。
    ・MRIが硬貨くらいの小型化になり、誰もがいつでも自宅で自分の体内を検査することが可能。
    ・テクノロジー進歩の行き着く先は念力(テレキネシス)の獲得。
    超伝導体というものを使えば、思考によってほとんど力が要らずに物を動かせる。
    さまざま物体の中に小さな超伝導磁石を入れ電流を流すと、強力な磁場が生じて物が動かせる。
    ・資金さえ投じれば人間の脳のモデルをコンピュータでつくることも可能。ただし大量の電力と熱が必要になる。人間の脳はほとんど電力も熱も消費しないが、スーパーコンピュータをあっさり上回る。さらに人間の脳は銀河系の自然界がつくった最も複雑なもの。
    ・未来はフレンドリーな人工知能の制作と、人間自身がロボットとの融合強化が進んでいく。
    ・究極のシナリオは、人類はお荷物の体を完全に捨て去り、人格をコードしたソフトウェアプログラムとなる。全人格をコンピュータにダウンロードする。
    ・穴居人の原理という観念。
    どんなにテクノロジーが進化しても、人間の脳は穴で暮らしていた頃と変わらない。
    ・遠い未来では、遺伝子の老化を遅らせることが可能になり、150歳まで生きられるかもしれない。
    ・カロリー制限は延命効果が保証されている唯一の手段。
    ・ナノセンサーによって発症する何年も前からガンを見つけ出す
    ・さらにバイオテクノロジーにより、無傷のDNAを採取して絶滅した生物や、死んだ人間を蘇らせることもできる可能性があるという。
    ・ただ病気に関しては、2100年になっても最先端技術で治せない病気は必ず存在する。ウィルスは常に変異してしまうからだ。
    ・ナノテクノロジーではナノ粒子を血中に入れて直接がん細胞をやっつける医療革命がおきる
    ・昔は紙や電気、水などが貴重なものであったが、紙はゴミへ進化し、電気や水は公共サービスとなる。これからはチップがゴミになる時代がくる。
    ・仕事もロボットに代替されるものは生き残れない。単純な仲介業者、銀行窓口、経理担当などは仕事がなくなる可能性がある。
    ・これからは役に立つ見識を持つ人が勝つ。
    ・この本で取り上げているテクノロジーの革命はすべて、惑星文明の創造に向かっている。
    ・文明をタイプⅠの惑星規模、タイプⅡの恒星規模、タイプⅢの銀河規模に分けると、現在の文明はタイプ0.7
    タイプⅠに到達するのに100年かかる。

  • 2012年に発刊された本ですが、非常に面白かった。
    当時あったテクノロジーの発展が、かなり広い目で見たpossibleな内容で描かれており興味を引きました。
    一方で人類の超人化による更なる長寿命など、一歩間違えたら全く味気のない人生(科学に生かされている)に陥る側面を持っており恐怖を感じた。
    人間が思いつくことは実現可能であると説得された感もあり、非連続な未来を思い描くのに役立つと思った。
    #読書履歴

  • 以前、本書の著者、物理学者ミチオ・カクが司会を務めた未来の科学技術を予想する科学番組シリーズをNHK-BSで放送していて、とても面白く見た
    のがあるのだが、本書はいわば、その発展版。取材を元に、2100年までにどのように科学とテクノロジーが進化していくのかを具体的に予測した
    一冊。

    著者が描き出す未来は希望に満ちているといっていいものだが、完全に薔薇色ではなく、そこにまた制約があることも描き出している。

    科学とテクノロジーがいくら発展しようとも、我々が原始から持つ「穴居人の原理」が邪魔する。たとえば、我々はバーチャルなものより
    実物に重きを置く。オフィスがIT化すればペーパレスが実現するといわれながら、結局、さらにプリント枚数が増えているという現実がそれを
    物語っている。

    コンピュータの処理能力が進化していく一方で、ソフトウェアがそれに追い付かないだろうというという指摘には深く頷けた。
    著者がいうように、ソフトウェアは、人間がノートと鉛筆を持ちながら1行ずつ書いていくしかないからだ。コードを書く人であれば、
    同意してもらえるだろう。

    未来における「富」とはなにかという著者の主張も非常に示唆に富んでいる。将来の進路やビジネスを考える一助になるだろう。

    著者が本書を書いた理由に、アメリカの若者の科学離れがあるそうだ。全米の大学で物理を教える教授のうち、約半数は移民とのこと。
    しかし、日本も決して他人事と傍観できる状況ではないことは周知の事実だ。原書は2009年発刊のため、福島原発事故は本書に含まれていないが、
    ポスト311にある今の日本人が読む価値のある本といっていいと思う。

  • iPHONE・アンドロイドスマホの爆発的な普及により、世界の企業地図が大きく変動しているいま、テクノロジーの未来をどう見ているのか、興味があり「2100年の未来」を見てみたくなった。著者も日本人のようだし、超紐理論の科学者みたいだし。
    コンピューターはノートになり、スマホになり携帯可能になってきた。インターネットを常に閲覧できるようになった。今後はコンタクトレンズにすべての機能が入る。勿論音声対応で入力もハンズフリー。また超小型MRI帽子をかぶり、脳波で機械を操作できるようになる。ロボットはあらゆるところに導入され単純労働から人間は開放される。しかし、画像認識や常識判断は相変わらず苦手で人間を超えることはできない。遺伝子治療は医療を進歩させる。遺伝子操作で老化を止めたり、デザイナーチャイルドを創造したり、新しい生き物を創造することも可能になる。まるで神の領域に達したようだ。ナノテクは分子・原子レベルになり、量子コンピューターが完成する。
    自己構築型のマイクロキューブCatomが何にでも形や機能を変えることができる。新商品を買わなくても、現在の機能から新しい機能へプログラムをダウンロードするだけで変形するスマートCatomだ。エネルギーや宇宙探査などは意外と常識的だ。社会体制の未来はハードの商品資本主義からソフトの知能資本主義へ大きく舵を切る。優秀なソフトウエア人材を育成した国が勝利を収める。今世紀に生きる我々は人類史上最もエキサイティングな時代に生きている。惑星文明Ⅰにたどり着けるか、その前に朽ち果てるか、大きな岐路にある。

    以下は、メモ。
    1.コンピューター
    インターネットの普及・無線通信の高速化でユビキタス世界が実現した。この先、コンタクトレンズサイズの通信端末により、目の前の物を見るだけでインターネットの情報を取得することができる。MRIの小型化により帽子のようなものをかぶるだけで脳のどの部分が活動しているのかがリアルタイムで分かるようになり、思っただけで、外部の機械を動かすことができる。正にテレキネシスだ!スマホはテレパシー、ARはテレポーテーション。超能力が科学の力で現実のものになる。
    ムーアの法則によりコンピューターは進化してきたが、今世紀半ばでムーアの法則の終焉が来る。トランジスタの小型化が原子サイズになるためだ。コンピューターは全てのものに埋め込まれ表から姿を消す。
    2.人工知能
    ロボットが人間より賢くなることは今世紀中はないだろう。人間との融合。
    3.医療
    ゲノム解読が10万円になり遺伝子に合ったゲノム治療が普通に行われる。幹細胞による臓器再生。老化の克服。遺伝子操作でデザイナーチャイルド、マイティーマウス遺伝子(筋肉2倍)など新しい体を作り上げる。
    4.ナノテクノロジー
    分子サイズの機械。量子コンピューター。ターミネーター2のような変形金属catom。何にでも変形できるレプリケーター。
    5.エネルギー
    最終的には核融合エネルギー。宇宙太陽光発電。
    6.宇宙旅行
    宇宙観光。宇宙エレベーター。火星基地。恒星間探査機(太陽帆・核融合ラムジェット・反物質ロケット)
    7.富の未来
    世界は商品資本主義から知能資本主義へ。人材の教育が必要。
    8.人類の未来
    惑星文明タイプⅠ:太陽から地球に降り注ぐ光=10の17乗ワットのエネルギー消費。現在の人類はタイプ0.7、もうすぐタイプⅠの瀬戸際。
    惑星文明タイプⅡ:太陽の全エネルギー=10の27乗ワットを消費。『スタートレック」の惑星連邦のレベル
    惑星文明タイプⅢ:銀河規模の数十億個の恒星エネルギー=10の37乗ワットを消費。「スター・ウオーズ」の帝国。

  • 科学が2100年にどこまでになっていて、宇宙開発とかコンタクトレンズ型ディスプレイとか具体例を用いて説明してる。そういう事はあまり興味がなかったし、その時に驚きたいと思ったので最初の方の章は割愛した。だから富の未来の章にある、その科学の進歩によってどう資本主義が変わるのかっていうところが一番興味深く読むことができた。アメリカがよく映画とかでやっているようにロボットに人間の仕事が奪われて格差がさらに拡大して暗い未来が待ってますよーっていうようなことが書いてある(そこまで露骨ではないが)商品資本主義だったり、工業だったりといったものが終わる。そしてそういう社会で仕事をこれからもしていくためには、機械が出来ないこと、いわゆる知能資本分野の仕事をしていくしか無い。創造性、芸術的才能、変革、リーダーシップ、分析力などのことを指して知能資本というみたい。でもやっぱりおかしい。今まで人間がやっていた部分を機械化したんだからその分人間は裕福にならないとおかしいだろ。社会生活と資本家や権力者だけが裕福になって肝心のその社会生活を享受すべき人々のほうが世界中で職にあぶれている。資本主義が根本的に非効率的に働いてるとしか言い用がない。100億人の人間が全員創造性、芸術的才能、変革、リーダーシップ、分析力を駆使して仕事をする社会なんてのは考えにくい。そもそもの時点でいろいろと間違ってるとしか言い用がない。答えのある問題にだけ取り組んでいればよい科学者はなかなか気楽な職業だな。

  • ・科学は知識の組織化、知恵は生の組織化。―イマヌエル・カント

    専門なだけあり、核融合技術についての付近が一番深く感じた。

  • 昔なら格好良いロボットやAIに興味を持ったところが、年を取ると健康面やより良く生きるという方面に関心が強くなった自分にびっくり。

    技術が進歩すればするほど、人間自身の強化、教育が重要という事なのだろうか。

  • 内容は結構、いやかなり面白い。
    10年前の本だが、最も時代を感じさせたのは、ヒアリング相手の第一線の科学者がことごとく「彼」ばかりであることに違和感を抱かず、終章で「男が女性AIに身の回りの世話を言いつけ、マッチングアプリで10歳下の女性と出会って1年後には子を産ませる」という未来予測を恥ずかしげもなく開陳する著者の姿勢であったかもしれない。

    ?~2021/3/4読了

  • おお〜!
    ミチオ・カクせんせいです。
    ニューヨーク市立大学の教授で、宇宙もののドキュメンタリーでしょっちゅうお目にかかるかたです。
    とてもわかりやすく、いままで天文学がやってきたこと、これからの将来について書いてあります。
    学校、買い!

    2020/07/30 更新

  • 会社の方に紹介された本です。図書館で予約無しで借りられました。2012年に出版された本ですが、当時は話題になったんでしょうね。
    近未来と遠い未来にどんな技術ができあがっているか、今行われている研究をもとに書かれてます。なので、夢物語ではないリアル感があります。
    色々驚きましたが、強烈だったのは人間の体に関すること。臓器でも、指でも腕でも自分の細胞から作れちゃう。軽いケガならパッパッと粉を振りかければ、再生してくる。
    こりゃ、人間は死ななくなるね!いや、死ねなくなるね。いま、私が私だって思ってる、この意識さえ、脳さえ生きてればいくらでも生きることができちゃいそうです。
    地球上で住めなくなるのが、先かも。

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著者プロフィール

ニューヨーク市立大学理論物理学教授。ハーヴァード大学卒業後、カリフォルニア大学バークリー校で博士号取得。「ひもの場の理論」の創始者の一人。『アインシュタインを超える』(講談社)、『パラレルワールド』『サイエンス・インポッシブル』『2100 年の科学ライフ』『フューチャー・オブ・マインド』『人類、宇宙に住む』(以上、NHK 出版)などの著書がベストセラーとなり、『パラレルワールド(Parallel Worlds)』はサミュエル・ジョンソン賞候補作。『フューチャー・オブ・マインド(The Future of the Mind)』 は『ニューヨーク・タイムズ』ベストセラー1 位に輝く。BBC やディスカバリー・チャンネルなど数々のテレビ科学番組に出演するほか、全米ラジオ科学番組の司会者も務める。最新の科学を一般読者や視聴者にわかりやすく情熱的に伝える著者の力量は高く評価されている。

「2022年 『神の方程式 「万物の理論」を求めて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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