書店主フィクリーのものがたり (ハヤカワepi文庫 セ 1-1)
- 早川書房 (2017年12月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151200939
感想・レビュー・書評
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記録
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少し捻くれた主人公が不器用なりに幸せをつかんでいくストーリー。
前半は特徴的な性格にみんなが合わせていく(周りの人に恵まれてると思った)感じ、後半になるにつれて主人公も寄り添っていく部分が見えてくるというか。
最後は駆け足気味にまとめていくようにも思ったけど面白かったです。
本が人と人とを結ぶというか、主人公にとっての言語が「本」っていう感じの進行がすごく気に入りました。 -
ほんとに最初から最後まで『書店主フィクリーのものがたり』だった。
頑固なおじさんが子どもにほだされて子煩悩おやじになっていく…ってよくある話なのかと思ったら、いや確かにそれもあるし面白いのだけど、それだけじゃない。
登場人物のひとりひとりが光ってる。
「ああいい話だなー」で終わる物語ではないけれど、いい話でしたよ。
署長さんはとにかく良い人ですよ、ほんと。
こんな署長さんがいる地域はそりゃ平和だろうなと思うぐらい。
署をあげてみんなで読書会できるぐらいだから、そりゃ平和なんだろうなあ。
地域の本屋さん、大事ですよ。
うちの町にも本屋さんほしいなあ。 -
翻訳ものは表現方法が独特で苦手なのが多いが、本書はラストまで一気に読み終えることができた。読めば読むほどにハートウォーミングなストーリー。一見すると偏屈でとっつきにくい主人公が実は愛に満ち溢れ、人生そんなに悪いものじゃないと心からおもわせてくれる展開になっている。愛すべき存在に出会えるか否か、その選択を自分でつかみとることができるのかそうじゃないのか、そんな微妙な匙加減で人生は大いにかわってくるものなのかも。
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アリス島という辺鄙な島に一軒だけある書店アイランド・ブックス。
偏屈で取っつきにくい店主のA・J・フィクリーは、妻のニックが車の事故で亡くなって以来、店の2階の住居で夜ごと酒に浸りつつ、ひとり店を営んでいます。
追い打ちをかけるように、蔵書の稀覯本が盗まれ、打ちひしがれているある日、店に小さな子どもが捨てられているのを発見した彼は、なんとその子どもを育てることを決意して…
昨年末に文庫新刊コーナーで見つけて購入したままの積ん読本でしたが、今年のベスト本を引き当てた気がします。
主人公のフィクリーはじめごく普通の人たちが、小さな島の小さな社会の中で織りなす人間模様は、派手な大事件が起こるわけでもないのに、時にコミカルで時にシリアスな様相を見せつつ、読者を絶妙に惹きつける不思議な魅力をたたえています。
偏屈で気難しいはずのフィクリーも、子どもの世話を通じて徐々に、周囲の人間ともうまくやるようになってきます。
ホンスキーにとっては、そんな彼が主催共催含め書店で催す数々の「読書会」や朗読会の様子や 、物語の端々に登場する文学作品や絵本のタイトルも楽しみの一つになること請け合いです。
それから、この本は各章のタイトルが文学作品から引用されていて、扉の部分はフィクリーが誰かに向けて、その本のレビューを書いている体になっていて、これまたホンスキーの心をくすぐると思います。
読み進めるうちに、誰に向けてのレビューかがわかってくるのですが、それがわかった時は胸の奥の方があったかくなって、少しうるっと来てしまいました。
姫野はやみさんのカバーイラストに描かれた、書店の本棚の間の床に座り込んで本を読みふける小さな女の子も、可愛らしく微笑ましく、やはりホンスキーの琴線に触れること、間違いないでしょう。
といった感じで、これはまさにホンスキーのための本ではないかと個人的には思うのです。
絶対に後悔も損もしないと勝手に保証しますので、多くのホンスキーに手にとっていただけたらと思います。 -
そうそうそう、私も本が好きな人と本の話をするのが好き!
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翻訳物のクセはあったけれど、ウィットに富む会話にくすりとするシーンが多々あった。最後は少しあっさりしていたかな。聡明で読書かなマヤが可愛らしかった。
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翻訳物の割に読みやすく、重みも感じず、くどくないのでストーリー展開の割に読後の後味は良かった。
日本の本屋と流通システムが違うとは思うのですが、店主のこだわりのあるこんな書店、あれば是非行ってみたかったと思えるお話です。
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頑固で偏屈な小さな島の店主が、娘と"出会い"、そして妻と出会い少しずつ変わっていく。
そして店主が心を開けば、島に住む人たちも惹かれていく。
頑固になるのは自分の意志がはっきりしているから、偏屈になるのはその分野を深く精通しているから。そんな彼さえも誰かの愛は柔らかくしてしまう。 -
読了後は、左程心が揺らぐことはなかったが、夜中目覚め、(フィクリーや書店)一時代が終わり、そしてまた別の形で続くのね、としみじみ思った。それは当たり前のことなのだけれど、愛着を覚えた方がいなくなるのは寂しいものだ。
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#書店主フィクリーのものがたり #読了
フィクリーは大変価値のある一冊を失ったかもしれない。
しかし、それは計り知れない価値を彼に与えるきっかけになっただろう。
本への愛が伝わる小説であり、出てくる人物が愛おしい小説でもあった。
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離島で本屋を経営しているフィクリーという男性の人生の話。
登場人物が大学院でエドガーアランポーを研究していて、妻の勧めで妻の故郷で本屋を始めた…という設定なので、本に関する知識がすごい。各章が有名な短編のタイトルになってて、章の前にフィクリーが述べた、短編に関する話が載っている。そして話の中にも有名作品の話がたくさん出てくる。悲しいかな、自分にはそれら全てを理解する知識がなかったけど、もしわかったらもっと楽しめたと思う。
ストーリーは決して楽しいものじゃない、というかむしろずーっと物悲しい。なのに落ち着く話の展開。悲しい事実もすーっと受け入れられるというか。感動する話だと思うけど、泣かせようとしてないところがいい。読んでよかった。 -
本好きには、それぞれ思い入れのある本屋さんというものがあると思います。ぼくの場合は、実家から自転車で10分くらいのところにあった、あの本屋さんだなあ・・・。この小説を読んでいて、そんなことを思い出しました。【2023年11月22日読了】
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慣れるまでに時間がかかった。
島に一軒だけある書店の店主フィクリーのものがたり。
作中に出てくる本に馴染みがなく、知っていればもっと楽しめるのかな と。
過去の出来事や出会いの真相が、案外さらっとした感じで終わった印象。
再読したら、また別な感想を書けるかもしれないが、また読むかは別の話 -
作品の構成と訳に慣れるまで少し時間がかかったけれど、『本』が繋ぐそれぞれの人生、面白く読めた。
ミステリーやサスペンスでない海外作品はあまり読まなかったけど、作品の中で紹介されたてい小説を読んでみようかな3.6 -
4.5
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・途中疲れるんだけど、最後には泣いてた
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アリス島で唯一の書店であるアイランド・ブックス。
店主フィクリーは、この島の出身である妻のニックとともに、この店を開業した。
しかし、妻は事故で他界し、一人取り残されてしまう。
すさんだ生活を送るフィクリーの店に、2歳の子ども、マヤが捨てられる。
週末だけ預かるつもりが、離れがたくなって、彼女をひきとることにする。
これを機に、つぶれそうなアイランド・ブックスに人が集まり始める。
警察署長のランビアーズ、ニックの姉夫婦、そしてA・J・フィクリーの伴侶となる、ナイトリー・プレスの営業アメリア。
そして、マヤを残して命を絶ったマリア。
どの人もピカピカの人生を送っているわけではない。
ある人は人生に絶望し、ある人はつながりの中で少しずつ回復していく。
そして、アイランド・ブックスが、人々を緩やかにつなげる場になっている。
一つ間違うとお涙頂戴のメロドラマになりそうだが、人物の造形がすばらしくて、安っぽいドラマにはなっていない。
例えば、マヤが過剰にかわいらしくなっていたりとかしないし、優秀なセールス担当者であり、何事にも積極的なアメリアも、ちょっと不思議なファッションセンスであったりもする。
それから、登場人物の文学や本への関わり方も面白い。
高校生になったマヤの創作の授業の様子は、いかにもアメリカの学校といった感じがする。
学生時代に本嫌いになったランビアーズが、紙の本が好きで、本が好きな人が好きで、フィクリーに導かれて自分なりに本を読みはじめるのがとてもすてきだ。
もちろん、各章の冒頭で、A・Jの、マヤにあてたブックノートが掲げられる趣向も、おしゃれだ。
どちらかというと、自分はこの本の筋より、こうしたディテールに惹かれている気がする。 -
登場人物が魅力的だった。たくさんの重大な事件がおきるけど、あっさりした文体のせいか淡々と時間が経過する感じが、現実にも似ている。
読書や、本を通じて人とつながることなど、改めていいよなと思える本。 -
2022年11月1日購入。
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書店主フィクリーのものがたり
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私はどうも翻訳本が苦手だ。…というか相性があって、合わないと全く読み進めることができない。
ちなみにナルニア国物語は、何度ライオンと魔女の触りを読んでも進むことが出来ず、全巻持ってるのにそれ以外は新品同然で終わった。
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この本は翻訳が合わない本だと思って
…もしかしたら翻訳のせいではなく
オリジナルの文体とか文化の違い
もあると思う…何度も挫折しかけたのだけど、なんだか主人公の不器用なフィクリーがどう生きていくのか、気になってしまい読み切ってしまった。
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沢山の実在する本のエッセンスが散りばめられているみたいだけどいかんせん苦手な外国本なのでピンとこなかった。
妻と作った書店を、妻亡き後、一人で不器用に切り盛りするフィクリー。その書店にマヤという女の赤ちゃんが置き去りにされ、その子をフィクリーが育てるということで様子を毎日伺いにきていたら本が好きになった警察官がいたり、フィクリーの担当になった出版社のアメリアだったり、フィクリーを取り巻く周りの人達によってフィクリーが変わっていくのをみているのはとても微笑ましかった。 -
ほのぼのとしたものがたりだった。
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島で唯一の本屋を営むフィクリー。妻を事故で亡くし、将来のためにと大切に取っておいた希少な本を無くし、絶望する。
あるとき、店には小さな女の子が残されていて。
この子をお願いします、という置き手紙、
自分に任されたという運命を感じて、フィクリーは男手ひとつで子どもを育てる決意をする。
地域の人々に支えられながら、フィクリー自身も少しずつ変化していく。
作者の本に対する愛情が溢れている作品。
各章の初めには、養女に読んでほしいブックリスト。
登場人物はみな本を読み、本を通じてつながる。
読みたい本が一気に増えた。
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翻訳本が苦手ゆえこの評価ですが、後半の後半の一気読み感は好きです。
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本屋大賞・翻訳部門受賞ってことで。本に関する小説、書店を舞台にした物語、そのあたりは特に心惹かれるところ。本作も例外ではないんだけど、個人的に物足りなかったのは、魅力の大部分をクライマックスが担っている点。あくまで自分にとってなんだけど、そこに至るまでの過程を、いまひとつ楽しめなかった訳で…。
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父のおすすめで読む。
愛おしいお話だった。
偏屈親父が捨てられた子を拾って、父親になって、そこから彼の人生は上向きになっていき、最後は…みたいな、よくあるといえばよくあるハートウォーミングな話かもしれない。でもこの物語の中心に常に「本」があるのがとてもいい。
『ぼくたちはひとりぼっちでないことを知るために読むんだ。ぼくたちはひとりぼっちだから読むんだ。ぼくたちは読む、そしてぼくたちはひとりぼっちではない。』
主人公フィクリーの言ったこの言葉が好きだ。私が本を読む時、何となく安心するような、気持ちが温かくなるような、そんな気分になるのは、つまりはフィクリーの言うことと同じだと思う。ひとりぼっちだけど、ひとりじゃない。
『本屋はまっとうな人間を惹きよせる。本のことを話すことが好きな人間と本について話すのが好きだ』この言葉にはひどく共感する。本好きな人に悪い人はなかなかいない。