- Amazon.co.jp ・本 (463ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151788512
感想・レビュー・書評
-
本書の著者・ラーシュ・ケプレルはスウェーデンの人気匿名作家。
本書はその作家のデビュー作ですが、本国スェーデンでの出版前に既に20カ国以上に翻訳権を売ったと言うことでも有名になった小説です。
作家が正体不明との事でその正体に関して様々な推理が行われ、中には「ミレニアム」シリーズの故スティーグ・ラーソンが実は生きていて本書を書いたのではないかと言った物まで飛び出る始末。
結局、共に作家で、実在の人物をテーマにした虚構と現実が入り交じった小説を書くアンドリル夫妻がその正体であることが明らかになりました。
本書をシリーズ1作目とする合計シリーズ8作目までの構想がねられており、現時点で邦訳されているものはシリーズ1作目の本書と2作目の「契約」のみです。
#色々とこの小説の背景を紹介しましたが、まあ、一読者としては、「ミレニアム」シリーズみたいに途中で打ち切りと言う事が無いように願うだけですね。
さて、肝心の内容の方を簡単にご紹介します。
冒頭、凶悪な一家惨殺事件が起こります。
一家を狙った憎悪による犯行と見た警察は、一人暮らしをしていて難を逃れた長女の居場所を探すため、惨殺事件のただ一人の生き残りである彼女の弟から事件の真相と姉の居場所を聞き出そうとします。
その為に、かつて催眠術を使った医療行為の研究に励みながらも10年前のあるスキャンダル以降、催眠術の使用をやめていた精神科医エリック・マリア・バルクに生き残った弟へ催眠術をかける事を依頼します。
渋るエリックでしたが、凄腕のスウェーデン国家警察警部のヨーナ・リンナの説得を受け入れて弟に催眠術をかけて事件の真相を聞き出そうとしますが、催眠状態に陥った弟の口から出た衝撃的な真相により更に事件が展開していく事態に・・・
2転3転する事態と、浮かび上がっては消えていく容疑者達。
10年前のエリックの裏切りを遠因とする彼とその妻・シモーヌのギクシャクした関係と更なる誤解。
そして・・・
そんな時、難病の持病を持つ彼らの一人息子・ベンヤミンの誘拐事件が起こり、エリックとシモーヌ夫婦は地獄に叩き落されます。
壊れていく夫婦関係、
行方どころか生死も分からない彼らの一人息子、
そして、惨殺事件のただ一人の生き残りである弟の病院からの脱走。
それらが混じり合って紡ぎ出す謎を解き明かし、敏腕警部ヨーナは、両親は、ベンヤミンを助け出せるのか?
と言った小説でした。
上記しましたが、2転3転するストーリー展開で先が見通せない小説です。
また、厚めの文庫本の上下2巻の文量ですので読み応えは十分です。
途中、エリックやシモーヌなどの回想が差し込まれており、それらの回想がある事によってより小説に対する理解が深まるのは確かですが、少し冗長すぎる回想も有りました。
加えて、登場人物も多く、繰り返しでてくる登場人物でないと「この人って誰だっけ?」と思うことも有りました。
とは言え、思いもよらぬ犯人、思いもよらぬ真相と、ミステリーの常道を行っていますので、ミステリーファンは勿論、それ以外の方もグイグイと引き込んでくるストーリー展開を楽しめるのではないでしょうか。
中々良かったです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読んでいる途中から先々の展開が読めてくるような感じがして、興味を無くしてしまいました。スウェーデンの小説というところにひかれただけ。
-
中身はバタバタしてても結果的になんとなくまとまっているのが不思議。
一家惨殺事件かと思いきや途中でころころ様相が変わる。長いエピソードだと思ったらそれがいつの間にかメインに取って代わってたり、結局何の捜査をしてるのか混乱して見失いかけたりと、ツッコミどころ満載。にも関わらず、話そのものは普通に面白いのでさくさく読めてしまう。
作者はミステリ処女作だとか。その恐いもの知らず的な部分が吉と出たのかな。リアリティは破綻しているが、心理描写に玄人っぽい目線を感じてみたりとよくわからない作者である。
「催眠」というタイトルをつけると、こういうストーリーもあり得るのだなという感じ。堅実なバカというかバカ正直というか、ひねりがないのが致命的だが、サスペンスとしては成り立っている。内容は豊富なので退屈することはないだろう。本国ではリンナ警部を主人公としたシリーズを刊行しているそうだが、この空気みたいなキャラが主人公になりうるのか甚だ疑問である。 -
故児玉清さんがNHKの番組で推薦していた一冊。サスペンス系はあまり読まないのだが、すっかりはまってしまった。面白い。次回作もあれば、読みたい。
-
突然猟奇殺人からの導入。
日本感覚での犯人の少年で捉えると導入部で「?」となる。(なった)
主人公ヘタレ。(催眠術の第一人者)
奥さんのシモーヌ嫌い。
子ども、難病。
刑事のキャラがよい。
おもしろい。
どうなるのだろう、わくわく、という前編。 -
予備知識なく、本屋の平積みで購入した。スウェーデン産ミステリー。この手の題材には興味を引かれるが、成功させるのは難しそう。精神科はともかく、催眠術を題材にするとは暴挙な感じがした。ものすごく馬鹿らしくなる恐れもある。しかしその扱いはうまかった。ICUの描写などはすごくリアルだし、催眠に関しては水に潜るという美しいイメージで処理されて馬鹿らしさを免れつつ緊迫感を保つている。催眠の描写は現代アートのように静謐で印象的だ。内容は結構エグくて、ページをめくらせるパワーがあり決して上品ではない。上下巻一気に読ませるリーダビリテイあり。ただ、2つの事件が収束していくかと思いきや、結局バラバラな事件だったのが残念。楽しめるのは確かだ。今後に期待。ミレニアムを含めスウェーデン産ミステリーをいくつか読んで、スウェーデンが怖くなってきた。漠然と平和で進歩的な国をイメージしていたが、いろいろ問題もあるのだろうか。
-
あまりのめり込めなかった。タイトルは「催眠」だが、ストーリーの根幹に関わっていない気がする。
-
あらすじ:
ストックホルムで起きた、家族5人中3人を殺害する残虐な殺人事件。
行方不明の少女を探すため、重症を負いながらも生き残った少年から話を聞き出す必要があった警察は精神科医のエリックに依頼する。
エリックは過去に封印した催眠術を使って、事件の様子を聞き出すのだが…
------------------------------
レビュー:読みやすい。
いくつかの出来事が絡みあって起きるのだが、絡みあい方が足りず、それぞれの出来事が絡みあう必然性がないように感じた。そのせいで、読みやすいけれども深みがなくてグイグイ引き込まれる感がなかった。 -
偏見かもしれないけど、スウェーデンが舞台の作品って、何かグロいというか猟奇的というか、そんな雰囲気のものが多いような気がする。この本も含め。そこは読む人を選びそうな感じが。
視点がコロコロ変わるところは、少し苦手。感情移入しにくいからかな。大まかな章ごとに変わる……とかなら、まだ読みやすいんだけど。
上巻を読み終えた今のところは、「続きが気になって仕方ない!早く真相を知りたい!」とまではいかないものの、「読み始めたからには最後まで読むぜ。ちょっと辛いけどな」といった感想。
下巻でドンデン返しあるかな? -
匿名作家の作として上梓された本書の処女作らしからぬ完成度に、スウェーデン出版界は大騒ぎになったという。後にこのラーシュ・ケプレルはスウェーデン文学界の大物アンドリル夫妻だということが判明する。
この完成度と筆力はさもあらん。
このセンセーショナルなデビュー作は全く期待を裏切らない。
巧みに捻られたプロット。スリリングな展開、圧倒的な臨場感とスピード感。
環境によって捩じ曲げられた人間の狂気の恐ろしさと不快さに追いつめられていくようだ。
物語全体を靄が包み込み、先は全く見えない。
謎は次々に現れる。
なぜ、エリックは催眠を封印していたのか?謎を解く鍵はここにあるが、これが一筋縄ではいかない。
物語終盤まで真相は巧妙にカムフラージュされている。
読者は、綴り手の思いのままにコントロールされ誘導される。
「催眠」とはまた、これ以上ないタイトルだと思う。
ちょっと詳しいストーリーはこちらをどうぞ。
http://spenth.blog111.fc2.com/blog-entry-20.html