猫を抱いて象と泳ぐ

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 781
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163277509

感想・レビュー・書評

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  • 2012/02/09
    チェスの海の深い場所を、精一杯泳ぐリトル・アリョーヒンの姿は美しかった。
    ひんやりとした、悲しいお話だったけれど、ミイラがぽっと放つ小さな温かさに救われる。
    とてもいい小説だった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      多分、小川洋子の小説では一番好きです。
      そして老婆令嬢の印象が、私には一番強く残っています。。。
      多分、小川洋子の小説では一番好きです。
      そして老婆令嬢の印象が、私には一番強く残っています。。。
      2012/07/24
  • チェスのルールを知っていたら、最高に面白かったと思う。
    でもルールがさっぱりわからなくても十分泣けた。

  • やっぱりこの人は文が綺麗ですね。
    さらさらと頭に入ってくるし、読もうと思えば早く読めるんだけど、ちゃちゃっと読んでしまうのがもったいないというか
    ゆっくり味わうのが幸せ。

    描かれることは結構えぐかったりもするけど。
    でも良い意味で生々しくなくて、べたべたしてない。
    ただ切なくて、悲しくて、うつくしい。

  • 静かに静かに話は進むのだけれど、でもこれほどゆたかな読書を与えてくれる。愛おしさが残る。

    一つ一つの文を、言葉を味わって、ゆっくりと読んでいくっていうのはなかなか本を選ぶし、読者を選びます。でもこれは、誰にでもそういう、じんわりとした幸福な読書の時間を与えてくれる本じゃないかな。

  • 面白かった。こういった物語が好きだ。以前読んだ小川洋子とはまったく違った感じがした。
    ラストになって伏線として写真のことが出た来たあたりから展開は想像できるのだが、最後の章を読むのがためらわれる。予想通りの結末ならそれは少し悲しいから。そしてちょっと優しいこの物語が終わることが淋しいから。久々にそんな気分になる本に出会った。

  • 最初この作者の妊娠カレンダーを読んだ時は合わないと思ったのだが、最近博士の愛した数式やこの本を読むと、薄暗くひんやりした美術館の静謐の中で一人座っているような安らいだ気持ちになるのがいいね。

  •  チェスを彩るどこかわからない不思議な世界。舞台は現代なのだろうけど、登場人物の名称から、小道具から、どこかよその世界のよう。深いほど心情に切り込むかんじではないけれど、少年の生き方がとても切なくて、読み終わったあとの余韻でしんみりした。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「どこかよその世界のよう」
      タイトルが優しくて、気になったので読んだら、リトル・アリョーヒンの話で、前田昌良の作品が使われていて。もうクラク...
      「どこかよその世界のよう」
      タイトルが優しくて、気になったので読んだら、リトル・アリョーヒンの話で、前田昌良の作品が使われていて。もうクラクラでした。。。
      2012/06/20
  • 「猫を抱いて象と泳ぐ」
    不思議なタイトルだけど、読み終えて改めて見ると、そこからこの本の中で出合えた静かでどこか寂しげな、でもまっすぐでやさしい様々な情景が浮かび上がってくる。
    全体を通して、朝霧の中にいるようなしっとりとした感じ。

    言葉を超えたチェスの世界がそこあり、同時に言葉のぬくもりが心に残る。

    “ 慌てるな、坊や ”

  • 再読。今一番好きな小川洋子さんの作品です。

    インディラも、ミイラも、そしてリトル・アリョーヒンも。
    彼らは決して不幸ではないにも関わらず。
    読んでいる最中、すぅすぅとどこか悲しみを含んだ空気が感じられるのです。
    それが麻薬のように私をからめとり、この物語に惹きつけているのです。

    物語の後半、老人用マンション"エチュード"で、リトル・アリョーヒンと老婆令嬢が会話をかわす場面、読むたびに泣きそうになります。

    小川洋子さんの文章に魅了されました。
    チェスの一局・一手を、こんなにも美しく描き出すことができるなんて!
    物語の海の中を波に身を任せて漂う、濃厚なひとときでした。

  • 彼女の小説は静かな湖のようだ。教養と知性があって、忍耐と根気強さを持ち合わせた賢い人なのだろう。

    およそ物作りをする人はみんな共通するものを持ち合わせているのではないかと推測する。ただ方法が違うだけで目指すものは同じなのではないかと。
    物作りとは目に見える物質的なものを作る人ばかりではなく、音を読み取ったり風を感じたりできる人たちも含まれている。平たく言えばアーティスト、芸術家である。盤に音符を紡いでいく本作の主人公もアーティストのひとりだ。

    彼はその才能を保つがために生涯大きくなろうとしなかったが、その心は誰よりも広大であった。それはこの少年がチェスの深海を誰よりもよく理解していたからである。随分強い男の子だけれど、あまりにもか弱くて儚いから最後は散ってゆく予感を覚えずにはいられなかった。予感が当たってしまって涙が堪えられなかったけれど、彼が世の人には知られずひっそりとチェスを楽しんでいたことを無名の私は誇りに思う。彼が自分の道を公の場ではなく、ごく一般の、しかし心からチェスを愛する老人たちに捧げたことがどれだけ彼らの励みになっただろう。それで救われた人たちを思えば、私は彼の判断を見誤らないというこのもうひとつの才能を称えずにはいられない。賞賛の目をもって涙ぐまずにはいられないのだ。

    タイトルだけでも心惹かれて敵わなかったけれど、一読の後はさらにこれ以上の名タイトルはないだろうと思わせる。作者の創作性に文字通り脱帽。

    (20110505)

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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