真夏の方程式

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163805801

感想・レビュー・書評

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  • 容疑者Xの二番煎じ的な・・・。

    映画には向きそうな演出いっぱいだけど、事件は本当に普通。東野圭吾読みすぎたからかな。
    ど真ん中王道ミステリー。
    逆に映画のほうが見ごたえあるかも。

  • 「献身」と「贖罪」。ガリレオが科学的興味ではなく人に動かされて事件を追う、容疑者Xの献身のパターン。子供アレルギーの湯川助教授が子供と過ごすところに暖かい人間味を感じる。予想外の結末はやはり期待を裏切らず◎

  •  『容疑者Xの献身』には、泣けた。ガリレオ短編シリーズにしても、物理ミステリーを標榜しながら、しっかり人間ドラマが描けていたので驚かされた。時に、理系出身とは思えぬほどの凄みを帯びた文学的なミステリを生み出すこともあった。『百夜行』『幻夜』は凄みさえ感じる。また加賀恭一郎シリーズは、東京下町の人情ミステリにより、個性的で魅力的な市井の人々を数多く造形してきた。ミステリ畑の天才作家であり、売れっ子作家。それが東野圭吾である。

     しかしなぜか少しだけ歯がゆい思いがするこの頃である。どの小説も、アイディアは素晴らしい。でも、どこかで、薄っぺらな印象を覚える。この作家が術に溺れている部分を、ページの隙間からどうしても感じ取らないわけにはゆかない。人間優先でストーリーを紡ぎ出してゆく気持ちは、正しいと思う。上手くいっていると思う。ストーリーテリングも一流だと思う。でもこの歯がゆさはなんだろう。面白すぎる? 出来が良すぎる? 百点満点のつまらなさ、みたいなものを、ぼくはどうしてもこの作家に感じる。

     そう、ぼくには少しひっかかる部分がいつも残る。それは、あまりにも大衆的で、平板化した、特徴のない文章だけで綴られる、いやらしいほどの読みやすさだ。一切のレトリックを廃した、単純至極な文体だ。純粋培養された無菌状態の文章だ。時には、口語体かと思われるほどの、マイルドでけれんなき文章だ。音にすれば、まこと、聴きやすい言葉だ。すべてが、ただ説明されているだけであるように見える個性のない文章だ。論文よりもさらに非文学的に感じられるほどに、あどけない、ある種、国語テストの解答集と言ってもいい言葉たちによって綴られるからこそ、人間の側の毒性が消えて見えなくなってしまうのだ。そう、この作家には、毒が足りない。登場人物たちには毒が足りない。整理された情緒があっても、乱雑で撮り散らかされたままの救いようのない情念は、どこにもない。

     あくの強さは、そう、どこにも見えない。善人ばかりが席巻する能天気な空間しか見えない。青い空と、青い海原ばかりが、コンパスで引いたような水平線を限っている。だからこそ、そこで果てしもなく明るく闊歩する湯川学という非現実的にして、とてもデフォルメされた探偵像が、なぜか活き活きとして、見える奇妙な世界なのだ。

     本書は一部、子供の眼を透して見つめる、一夏の経験といった物語である。子供にとっての海辺の田舎町・玻璃ヶ浦の夏休みが、様々なイベントで埋められてゆく構造だ。多忙な両親に対し、抵抗、および愛情の飢餓感を、隠し持った少年・恭平。訪れた町・玻璃ヶ浦では、華々しいシンポジウムが行われる。観光不景気からレアメタル発掘景気へと乗り換えようと夢を追う町の商売人たちの願望、それに対し、美しい海を守ろうとするナチュラリストたちの対立が町の空気を支配している。そんな光と影に満ちた夏の海岸、寂れた、とある旅館を中心にして、起こった殺人事件。被害者は元刑事。彼が死んだ理由は何だったのか?

     町に群がっている様々な人々の眼を透して描かれる、ひとつの殺人と、死んだ刑事の過去。人と人がどう結びつき、時代と時代がどのように隔てられ、誰と誰が同じ過去を共有してきたものなのか? 堅く結索された結び目をほどくように、ガリレオこと湯浅、地元の刑事、県警、そして警視庁本部の草薙・内海コンビが動き回る。よくできた構成だし、よく作られたミステリーだ。結末は予想できると思う。少なくともぼくには容易に予想できた。ストーリーの枠さえも。そいつが、本書の最大の欠点かもしれない。これほどのファクターを一場に集めたにもかかわらず、それが仇となった感さえ残すトリック・サスペンス。

     本書は映画化され封切られる日まで一ヶ月を残している。映画化作品はきっといいものになるだろう。そう、想像がつく。主要な舞台がガリレオの旅先である玻璃ヶ浦となることで、ロケ地はさぞかし美しい映像を拾い集めたものとなるだろう。そして、ドラマや映画によって、読者の脳内でまで固定化されてしまった常連たちの顔。湯川はもう小説界であっても福山雅治でしかなく、内海は柴咲コウでしかない。ちなみに、キャスティングの関係上、柴咲コウ演ずる内海薫は映画には出演しない。女刑事は吉高由里子演じる岸谷美沙となっている。本書には登場していない女刑事なので、ドラマに合わせたことが明らか過ぎ、キャスティングの都合おあったのだろうが、何となく残念。

     何度も言うようだが、物語としては完璧。色合いは『容疑者Xの献身』と相似形の愛の物語。ただし、形と環境を変えているために、自作盗作(焼き直しと言ったほうがいいのか?)とは、微妙に言えない。以上、どうもぼくには引っかかるところが多い本作なので、素直には「良い」と言い切れないし、「好き」だとも絶対的に言えないのだが、面白く大衆受けするだろうことは、これも絶対的に否定できない。ぼくの中では何となく、面白いが、嫌いな作家、という括りになりそうな最近の東野圭吾事情なのである。ああ、複雑!

    • koshoujiさん
      こんにちは。
      東野圭吾論、興味深く拝読させていただきました。
      おっしゃるとおり、彼の文章は一切のレトリックを排除した故に、
      文学性の欠...
      こんにちは。
      東野圭吾論、興味深く拝読させていただきました。
      おっしゃるとおり、彼の文章は一切のレトリックを排除した故に、
      文学性の欠片も感じられないと評されていますよね。
      ただ、だからこそ読みやすいと言われ、一般のさほど読書家でもない方々にも愛好され、
      当代随一の人気流行作家になるのでしょう。
      二律背反、本は人に読まれてこそ成り立つものだという考えは、
      本屋大賞を受賞した百田尚樹氏にも通じるものがあると思われます。
      或いは、東野氏自身の売れなかった雌伏10年間の影がそこに反映されているのかもしれません。
      読みやすさか文学性かという評価はどちらが優先されるべきかは難しいものでしょうが。
      これからも興味深いレビュー楽しみにしております。
      2013/06/03
  • ガリレオシリーズ。

    大体の予想は的中するから、そーいった部分では衝撃が少なくて残念。
    子ども嫌いやのに、一人の少年に大きな優しさを傾けてく姿は印象的。

    早く映画が観たいー!

  • 一日で読破
    映画を前にしてようやくGET

    容疑者Xの献身みたい
    でも違った愛のお話
    そんな感じに捉えました

    容疑者Xの献身や聖者の救済のトリック
    ではすごく衝撃的だったからか
    今回は衝撃は少なかった

    でもなんだかほんわかするような
    悲しい感じなのか
    自分の感想がまとまらない

    とりあえず映像として見たいシーンが
    いくつかあった
    楽しみにしておこう

  • ここのところ読んでいた、東野圭吾作品がたて続けにダメで、「夜明けの街で」と「カッコウの卵は誰のもの」。本当に東野圭吾が書いたのか?くらいでしたが、これは普通に読めました。

  • 相変わらず、読みやすい。面白かったけど、ちょっと強引かな

  • ガリレオシリーズ第6作。

    映像化したことにより、湯川学=福山雅治のイメージが定着し、
    ドラマ→原作に登場するキャラクター(内海薫)も出てきて、
    メディアミックスの代表格な作品だけに、柴崎コウさんの降板が残念です。
    (映画の話ですけれどね)

    今回は、とある海が中心の町で起こる殺人事件。
    文章は、いつもの東野氏通り、あっさり軽快に読めます。

    ただ、東野氏の作品にたまにある「後味の悪さ」がちょっと…。
    ネタバレになるので詳細は書きませんが。

    実際にこういう事件はあるんでしょう。
    でも、利用された側にしたらたまらない。
    読み終わった後に、嫌な読了感がありました。

    いつになく子供にやさしい湯川先生は良かったです♪

  • こういう終わり方もあるんだなとびっくりしました。ただ、モヤモヤはありません!

    久々の東野作品読んでこんな展開も悪くないし、また大きくなった恭平にあってみたいって思う作品でした。

  • ガリレオシリーズ。
    「答えを出すためには、自分自身の成長が求められていいる場合も少なくない。だから人間は学び、努力し、自分を磨かなきゃいけないんだ」
    初めと終わりでの少年の成長がみてとれる。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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