検察側の罪人

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (508ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163824505

感想・レビュー・書評

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  • 正義と法律は別物であります。先日読んだ「殺人犯はそこにいる」は小説ではなく重厚なルポタージュでした。本書は冤罪を作ってでも自分の中の正義を執行しようとするベテラン検事と、捜査に対する違和感から冤罪の可能性を考え始める若き検事の物語です。

    冤罪って怖いです。なんらかの証拠をねつ造されてしまえば、有罪率99.9%の裁判が待っている訳ですから勝ち目が無いです・・・。普通冤罪にしようと思ってねつ造する事は無いだろうと思います。しかしこの本では、時効により裁く事が出来ない鬼畜に対して手段を選ばず正義を遂行しようとします。エンターテイメント系小説の雫井さんではありますが、この中では重苦しく何処にも出口が無い閉塞感を上手い事描いていて、各々の中にある正義の形を思い描かせる本になっています。
    自分的には何年経ってもクソ野郎に正義の鉄槌を振り下りしてやりたいと思いますが、そんな僕の胸にもモヤモヤを起こさせます。それはやはり検事というものの影響力の大きさによって、恣意的に作られた冤罪に対してドン引きしている自分がいるからでしょう。
    これが親の復讐劇だったり、処刑ライダー的な勧善懲悪であれば応援できるんですけどね。

    法的に正しい事と正義としての正しさの違いは危うい天秤に載せられていて、普通法に則って裁かれて然るべきですが、その天秤に肉親や友人などという分銅が載ったら簡単に振り切れてしまいそうな自分がいます。結局他人事の場合しか法に従う気はしないのが本心です。

    本書は最後までモヤモヤします。結局どれが一番正解だったのか分からず考え込んでしまいます。そうあるべき本でありました。

  • 再読。映画のキャストを思い浮かべながら。

  • 最上検事の想いや、沖野検事と橘さんの葛藤など、細かな描写はよかったが、何となく先が読めてしまったのが、少し残念でした。とはいえ、映画化もされてよかったと思います。

  • なんだかだらだらすすんでいくような感じがして今いちだったかな。
    望みを読んだときはすごくよかったんだけど、、

  • 復讐劇に検察という立場が絡むことで、一気に社会派な作品になっています。
    検察による尋問もさることながら、捜査の誘導やなんやはなかなか大胆な職権濫用(?)でした。
    最上の結末と松倉の結末を見て、沖野がどうなってしまうのか、読み応えがありました。

  • 映画を観て、エンディングに納得がいかずに原作を読んでみましたので雫井さんの作品はお初です。

    納得いかなかった映画のラストだけど原田監督は観客に考えさせる戦法だったのよね、納得。

    映画と原作の大きな違いは原作では最上は逮捕される。松倉は殺されることなくのーのーと再び野に放たれる(って表現はよくないか、今回の事件では冤罪だもんね)
    インパール作戦なる下りは原田監督のオリジナル。自殺する丹野のところに最上は行っていない。
    こんなところが大きいかな。

    もう、、読んでても最上はキムタクしか浮かばないし、沖野はニノだし。仕方ないね、映画観てからの原作だし。

    映画を観た時にはタイトルがはてなだったけど、原作はタイトル通りの内容。
    検察である最上だからこそ松倉を冤罪で苦しめるという最高級のシナリオで罰を下したかった、彼なりの正義。でもそれは罪。
    そのシナリオのために今回の犯人である弓岡を殺害した、これって大きな罪。
    でも最上は沖野が壊れて検察を辞めてしまったこと以外は間違ってないって思ってる。
    最上を弁護しようと買って出た同期の弁護士も(名前忘れちゃった、ごめんちゃい)泣きながら「お前の気持ちがわかる」って。

    もう何が正義やらわけわかんなくなるよ。
    沖野も最終的に自分の貫いた正義が正しかったのかわけわかんなくなってしまってる。

    モヤモヤするわ。

    ということで、原作も映画もモヤモヤ、作者にしてやられた感いっぱいでした。

  • 物語としては面白いけど、胸くそ悪い後味の話だった。。。。
    誰も救われないし、誰も幸せにならない。
    最上の生き方は高潔だけど、家族はたまったもんじゃないし、沖野は20代でこんな思いを抱えたらこれからの人生のどうなんだろうと思うし、松倉はクソすぎるし、白川は金に振り切りすぎてるし、、、はぁ。悲しい。前川の接見で泣いた。

  • "人が人を裁く"ことの限界を感じさせた作品だった。
    正義とは何か?
    何を持って正しいとするのか?
    正義の捉え方は人によって違う。それなのに人が人を裁いている。
    犯罪を減らすためには必要なことなんだけど。
    やっぱり裁く側も人である限り、絶対に間違いのない裁き等、存在しないのだろう。

    かなりの長編だったが、だからこそ最上にも沖野にも、はたまた冤罪の罪を着せられたクソ野郎にさえも、感情移入することができた。

    ハッピーエンドではないが、後味の悪さだけではない深さがある。
    ラストの最上の穏やかさと、沖野の咆哮が対照的で印象に残った。まだ若い沖野に救いがあると良いと願う。

  • 映画から本へ。

  • 2013-10-21予約。2014-03-09現在、予約順位1位。
    2014-03-11手元に届き、読み始めた。
    2014-03-15読了。おもしろかった。胸くそな結末であったが。
    検察官の仕事が少し分かった。ストレスフルな仕事なんだなーと思った。

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著者プロフィール

1968年愛知県生まれ。専修大学文学部卒。2000年、第4回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作『栄光一途』で小説家デビュー。04年に刊行した『犯人に告ぐ』で第7回大藪春彦賞を受賞。他の作品に、『火の粉』『クローズド・ノート』『ビター・ブラッド』『殺気!』『つばさものがたり』『銀色の絆』『途中の一歩』『仮面同窓会』『検察側の罪人』『引き抜き屋1 鹿子小穂の冒険』『引き抜き屋2 鹿子小穂の帰還』『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』『犯人に告ぐ3 紅の影』『望み』などがある。

「2021年 『霧をはらう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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