検察側の罪人

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (508ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163824505

感想・レビュー・書評

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  • 老夫婦殺人事件の容疑者として浮かび上がった男は、かつて自分が住んでいた寮の少女殺害事件の容疑者として時効を迎えた男。
    さらに取り調べの間に、少女を殺害した事を語り始めると同時に、今回の事件の容疑は否認。
    主任検事は、過去の事件の罪を購わせる為に、今の事件の犯人に仕立てようと、自らが罪を犯して犯人に仕立てようとするが、その罪も露見する。
    釈放された男は、吐露した少女殺人を再び否認しし、検察を愚弄する。
    正義とは何なのか。法とは何なのか。
    罰せられない法の限界と、人としての正しさの中に、まっすぐに生きる事への現実の壁が立ちふさがっている事を示してくれる。

  • +++
    検事は何を信じ、何を間違えたのか。

    東京地検のベテラン検事・最上毅と同じ刑事部に、教官時代の教え子、沖野啓一郎が配属されてきた。ある日、大田区で老夫婦刺殺事件が起きる。捜査に立ち会った最上は、一人の容疑者の名前に気づいた。すでに時効となった殺人事件の重要参考人と当時目されていた人物だった。男が今回の事件の犯人であるならば、最上は今度こそ法の裁きを受けさせると決意するが、沖野が捜査に疑問を持ちはじめる――。

    正義とはこんなにいびつで、こんなに訳の分からないものなのか。
    雫井ミステリー、最高傑作、誕生!
    +++

    500ページを超える長編ということを感じさせない面白さである。現実にこんなことがあったら大事件であり、一般市民は一体何を信じればいいのか、不信感の塊になってしまうような事件であり、起きた事柄だけを並べて見せられたら、最上は人間として最低だと圧倒的な確信を持って決めつけるだろうと思う。だが、その人間として、という部分でこそ、最上の苦悩とここまでの決断があったのだということがこの物語にはにじみ出ていて、犯した罪は到底許すことはできないが、人間として憎み切れないのである。松倉を断罪することができなかったという結果に、最上は一生晴れない思いを抱き続けることになるのだろう。松倉憎し、である。法という剣をもってしても、正義という思いをかざしていても、どうにもならないことがあるのだというもどかしさや無力感を思い知らされる一冊でもある。

  • アガサ・クリスティの、あの戯曲を思い起こさせる
    タイトルだけれど、こちらの方がぐっと重苦しい。

    正義とは何か。
    司法とは何か。
    どうするのが正しかったのか。

    金貸しをしていた老夫婦が殺害され、容疑者の1人として
    23年前に少女を暴行し殺害しながら逃げおおせた男の名が
    あがってきた。
    検察にも、警察にも、過去の事件に思い入れのある人間が
    捜査に関わっていた、、、


    決定的な証拠がないのをいいことに、否認を続け、
    罪を逃れるだなんて、ましてや、それが、いたいけな
    少女に対する卑劣な犯罪だなんて、正直、反吐が出るし、
    そんな奴、どんな目にあっても同情なんてする気になれない。
    その少女を可愛がっていた検事最上が、今度こそそいつが
    犯人であってくれればと思うのも、よく分かる。
    今度こそ、罪に問うてやると熱心になるのも無理はない。
    捜査をそちらに誘導するぐらいは「あり」だと思う。

    周囲に認められた優秀な検事である最上。
    そこで踏みとどまってほしかった。
    そして、罪を犯したものには、時効であろうと、
    なんらかの形で報いをうけてほしかった。
    事態が、過酷なほうに流れていくのには、目を覆いたかった。
    最上に、覚悟があるのが、いっそう辛かった。
    それでも、支えるものがあるのは、せめてもの、一筋の光。

  • 映画を見てよく分からなかったので、原作を読みました。ストーリーが丁寧に組み立ててあったので、よく分かり面白かったです。しかし、問題のベテラン検事の考えには共感できません。

  • 映画と話が全然違った。
    本の方が断然好きだ。

  • なんで、検察側の罪人?タイトルが不審だったけれど。検事がねぇ、そこまでするとはね。

  • あー、こうなっちゃうのか・・・と思う作品。
    勧善懲悪とは真逆の、懲悪しようとした側が失敗して犯罪者となった検察官に、殺人の罪を犯しながら時効になって罪を免れて逃げおおせた男。
    法治国家である国において私人による制裁はできないのだろが、被害者感情に立ったとき、なんとかならないのだろうか・・・と思う。

  • 最上の気持ちも分からないでもない。お世話になった娘の由季さんが殺されたが、犯人が捕まらないまま時効を迎えた。しかし、蒲田の事件で由季さんを殺した犯人が分かっても逮捕出来ないだったらと、その男を犯人に仕立て上げようとする。確かに検察官がやってはいけないが、だったら正義とは何かと若い沖野も間違ってはいないと思うけど。時効が廃止になって良かった。

  • どちらを塀の中に閉じ込めるべきだったのか。
    最初は少し入りづらかったけど、中盤からぐいぐいと引き込まれた。映画もアマプラで見てみようかな。

  • 文庫本上下巻にて読破。
    前半は面白いが、後半はあまり・・・

    最上を美化しすぎというか、彼がやったことが犯罪としか思えず、私刑を肯定するような内容に疑問を感じた。

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著者プロフィール

1968年愛知県生まれ。専修大学文学部卒。2000年、第4回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作『栄光一途』で小説家デビュー。04年に刊行した『犯人に告ぐ』で第7回大藪春彦賞を受賞。他の作品に、『火の粉』『クローズド・ノート』『ビター・ブラッド』『殺気!』『つばさものがたり』『銀色の絆』『途中の一歩』『仮面同窓会』『検察側の罪人』『引き抜き屋1 鹿子小穂の冒険』『引き抜き屋2 鹿子小穂の帰還』『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』『犯人に告ぐ3 紅の影』『望み』などがある。

「2021年 『霧をはらう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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