さよなら、ニルヴァーナ

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902562

感想・レビュー・書評

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  • 2015.10.20.少年Aの事件をモチーフにした作品。つい最近、被害者の一人である山下彩花ちゃんのお母さんの手記を読んだので、読み進めるうちに抵抗感が強くなっていった。と思ったら参考資料にこの手記があってびっくり。あの手記を読んでどうやったらこの作品を書けるのだろうと芯から不思議に思った。少年Aが書いたという『絶歌』は全く読む気にならなかったのだが、この作品も読んで後悔。ここまで忠実にあの事件を再現してまで書きたかったことが全く読み取れなかった。書いていいことと悪いことがあるんじゃないの?と思った。

  • 少年Aと、奇しくも彼に翻弄されることになった3人の女性の話。

    フィクションなのは分かっていますが、明らかに参考にしている事件があって、物語のどこまでが事実なのかが分からず、混乱しました。
    興味本位で手に取ってしまいましたが、読後感はよろしくありません。
    物語の中の被害者遺族までにも、どうにも納得できず、実際の遺族の方が本作を読んだら、どう思われるのかと勝手に心配しています。

    著者の本は4作目。
    今回は、私には合わなかったのだなと、ちょっと残念です。

  • 【辛口御免】この作品のモチーフが何か、予備知識ありで読み始め、2話目で早々に挫折。
    作家さんにとって、本を生み出すことがどういうことなのかわからないけれど、現実離れした悲しすぎる事件を、追体験するような読書、私は嫌だということはわかりました。
    フィクションとノンフィクションの境界を、全ての人がはっきり認識できているわけではないと思います。だからこそ、あり得ないような事件が現実に起こるわけで…。
    少しでも人の痛みを想像できれば、こんな小説は書けない、と正直思ってしまいました。
    人物を特定し、名指しで小説にしているようなもの…そこまで人を傷つけて、欲しいものはなんですか?

  • 神戸事件をモチーフにした物語で、だからこそ私は書店で手にとった。一人の作家が、あの事件をどのように表現するのか?その興味のみ。

    どうしても納得できなかったのは、事件の概要をすっぽりこの物語に埋め込んでしまったこと。だからこそ、物語の中盤まで、私はひどく残念な気持ちで読むこととなった。
    あの事件は、決して誰かが真似るべきではなく、酒鬼薔薇という存在を生産してはならない。だが、この作者は創ってしまったのである。彼が犯した罪は、彼だけのものであり、彼のそれまでの人生であるはずなのに、この物語で都合よく使われたエピソードのように感じざるを得なかった。

    また、多くの視点が入り混じったために、それぞれの人物の内面の変化に唐突さを感じたのも事実である。

    登場人物はどれも作中でしっかり生きており、愛しさを感じる。
    だからこそ私は、この作品には、現実に起きた神戸事件を取り込んでほしくなかった。作者自身が消化したものを、全くの創作として読みたかった。

    長い期間神戸事件を考え続けた立場としては、腑に落ちない物語だった。参考文献をベースにした感が強くある。
    作者自身が事件を創作したのであれば、全て納得して読めた。それだけ登場人物らの傷みが生きている。もったいない、という感想に尽きる。

  • これを書ききった著者を凄いとは思う。だけどなぜ、このような題材にしたのだろうかと疑問だらけ。とにかく不快。不快で仕方ない。描くのなら少年犯罪を題材にしただけの完全なフィクションにすべきだったのではないだろうか。それかここまで書くのであれば小説ではなくドキュメンタリーを描くべきだったのではないだろうか。なぜ背景も事件設定も現実に起きた全てをもとに、さらに脚色したうえで小説としてこの著者は発表したのだろうか。これを手にした遺族は救われないだろうし憤りを覚えるのではないであろうか。極めて遺憾。14才の犯罪者という設定だけじゃダメだったのだろうか。架空の話では満足できなかったのであろうか。事件背景をそのままにして使用する必要がどこにあったのだろう。酒鬼薔薇聖斗をモデルにした小説はいくつか読んだことがある。この作品は酷過ぎるうえに疑問だらけだ。
    猫を切り裂き射精し、純粋無垢な幼女に手をかけ首を切り落とし射精し血を吸い祈りの言葉とともに首を置く。
    実際に起きた事柄に加えなぜ著者は少年Aをアイドル顔負けの美しい容姿の設定にしたのだろうか。聖地巡礼としてファンが耐えず、ファンサイトもあり、本気で恋する女たちを描く意味は。加えて少年Aの歪んだ性はカルト宗教にはまる母親からの愛情の欠如とにおわせる設定の意味は。。

    凄いとは思う。意欲的だとも思う。特にそれを題材に小説家となった女の視点は見事。だが、不快。読んでいて疲れた。読者も疲れたのだから著者はもっと苦しかったようにも思える。だけど、これを書いて著者は果たして何を伝えたかったのだろう。そしてそのモデルであり実在する酒鬼薔薇聖斗は手記を出版した。それについて著者はどう感じているのだろう。結局何も、誰も報われない。疑問だらけ。

  • あらすじも確認せずに、窪美澄の新刊、ということだけで手に取った本書。
    まさか、時を同じくして手記を出版した、少年Aの事件を題材にしているとは思いもしませんでした。
    実際の事件をモチーフにしている小説は多々ありますし、今まで、そういったことに不謹慎だとか、抵抗を感じたことはなかったのですが……これは無理。

    私は、人を殺すような人間が更生などするわけがないと思っています。
    それが例え少年であっても然り。
    少年法というものが存在する以上、一定の年月で彼らが世に出てくることは理解せざるを得ないですが、幸せになる権利は絶対に無いはずです。
    殺人者や事件を美化するなんて信じられない。
    単純に事件をなぞるような話であれば良いものの、なぜイケメン設定かつ愛を知りその人と最後を遂げるような展開にしたのか。

    これは小説だと分かっていますが、やはり事件がここまで類似(というかそのもの)だと、自己陶酔のポエムを書き、自身は安全なところに身をひそめたままの酒鬼薔薇聖人が浮かんで本当に気分が悪いです。
    こればっかりは、タイミングが悪かったとしか言いようがないのでしょうか。

    少年Aと少女はともかく、遺族の描き方にも疑問を感じます。
    自分の娘を殺したサイコパスに惚れてる女に優しくできるなんてどうなの?あまつさえ娘の姿を重ねるだなんて。
    とても考えられません。
    子供を亡くす、ましてや子供があの様な残酷で凄惨な事件の被害者になってしまうなんて、想像を絶することだと思います。
    作中にも地味な作家が出てきていますが、部外者が安易に物語として昇華させるものでも無いでしょう。

    私は、窪美澄の小説はすごく好きで、この話も正直続きが気になってどんどん読みすすめました。
    手記出版の件で憤慨していたところだったので、とばっちりというか八つ当たり的な面があるのは認めます。
    だけど……うーん。

    それと、やたらとどの作品でも震災ネタ絡めてくるのも何がしたいんでしょうかね。

  • 神戸の少年Aをモチーフにした小説。
    少年Aに恋する年代の違う女性たち、被害者の母親などの人生が交錯していく。
    テーマが重すぎて読み進めるのがしんどかった。
    著者はなぜのこのテーマで描こうと思ったのか。
    登場人物の中には長い下積みの末にデビューする作家もいるので、物書きの業や、被害者の遺族と犯人とその周辺の関わりを描きたいというのはわからなくもないんだけど、あまりに現実の事件に寄せていて辛かった。

  • 途中までは面白かった。最後の方で説明的になり残念。
    窪さんの文章は読んでいて心地よくて好き。この作品は終盤の展開が好みでなかった。

  • 実際に起きた事件、加害者や被害者をモデルにしているからか、読んでいると「あ、これは...」と止まることが多かったかも...
    なっちゃんが切ないなぁ...

  • 2018.9.19(水)〜2018.11.19(月)

    神戸児童殺傷事件を元に書かれた小説。題材が事実なものだけにリアル感があった。
    やはり自分を重ねるのは殺された少女の母親だが、踏み入れてはいけない領域でありながらも無関心ではいられないことから、事件の関係者や犯人である少年Aに憧れる少女との心のやりとりが巧みに描かれていると思う。

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著者プロフィール

1965年東京生まれ。2009年『ミクマリ』で、「女による女のためのR-18文学賞大賞」を受賞。11年、受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、「本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10」第1位、「本屋大賞」第2位に選ばれる。12年『晴天の迷いクジラ』で「山田風太郎賞」を受賞。19年『トリニティ』で「織田作之助賞」、22年『夜に星を放つ』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『アニバーサリー』『よるのふくらみ』『水やりはいつも深夜だけど』『やめるときも、すこやかなるときも』『じっと手を見る』『夜空に浮かぶ欠けた月たち』『私は女になりたい』『ははのれんあい』『朔が満ちる』等がある。

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