スクラップ・アンド・ビルド

著者 :
  • 文藝春秋
3.16
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本棚登録 : 4443
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  • Amazon.co.jp ・本 (121ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163903408

感想・レビュー・書評

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  • 老人の愚痴の件はリアルです。「自分はもう死んだほうが・・・」や「早くお迎え来ないかな」は、女子の「どうせ私なんか・・・云々」と似ている気がします。はじめのうちは「そんなことないよ」と返してやることができるんですが・・・。

  • 近頃は高齢化社会で介護問題は本当に近しい問題なので、こういう題材の小説は、色々あっていいと思います。

    祖母と同居している孫を含む家族の話だが、話は特に何かを感じるということもなかったが、ドラマ化されてイメージがより明確に感じられたのは良かったかな。
    老後どうやって生きていくのか、色々考えさせられますね。

    羽田圭介さんの作品ははじめてでしたが、読みやすかったので他の作品も読んでみようかなと思います。

  • 短い分量で十分なほどのメッセージを与えてくれた作品ではあった。ただ、これが芥川賞なのか、という印象もある。
    介護というこれから不可避なテーマに沿って、介護者と被介護者の心情の機微みたいなのは表現されてたと思うけど、どちらかというと筋トレの方に目がいってしまった。
    ただ、個人的には、本を読むような人間は若者より高齢者の方が多いように思うし、そんななかで芥川賞を取っているけれど、内容としては介護される高齢者に対してボロクソに行っている部分もあり、御高齢の方は不愉快だったのではないかなと勝手に心配をしました。
    過剰な介護、確かになと思う。手を差し伸べることで本人からその機会を奪えば、より死に近づくってのは納得。それが意図的に介護や医療の場で行われているとすれば大問題だなーと。
    話は変わって、羽田さんはテレビで見てまして、第一印象として好きじゃないなという人でしたが、作家の性格がもろに現れるような文章で非常に納得しました。

  • タイトル通り老人とその孫のよくある対比構造で、目新しさは感じない。可もなく不可もなく。

  • 素直に「よく分からん」と言おう。
    恐らく数ヶ月後に感想を読んでもあらすじを思い出せないだろうな…
    自分には苦手なタイプの作品。

  • 伝えたいこともなんとなく分かるし、悪くない ただ、そういうものを求めるべきタイプの作品ではないのかもしれないが、山場が欲しかった

  • 介護あるある。ありがとう、ごめんなさい、すみませんの形骸化。見てないところで素早く動く珍獣現象。ちょっとでも優しそうな親戚にはグイグイ要求する感じ。
    徹底的に頭も身体も使わせないことで生きる力を奪おうとするアプローチがユニーク。
    求職中の28歳主人公(孫)は身体を鍛えて祖父と自分の違いを実感し、自信をつける。
    彼女の亜美ちゃんはセックスするためだけに何回も呼び出された挙句、転職に成功した主人公が転職先に向かうエンディングでも言及がないというかわいそうな扱い。

  • 〇介護老人と孫はじめ、一人ひとりの想いが交錯するが願いは叶うか。
    就職活動中のフリーター・健斗は、同じ家に住む祖父の介護を親と代わりばんこに行いながらも、無関心に過ごしてきた。母も疎ましく思っているようだった。
    ある日、「死にたい」という祖父の言葉に、正面から向き合ってみよう、と決める。尊厳死では罪になってしまうと気づいた健斗は、自立とは反対に何でもかんでも手助けをする介護を行って弱らせようという作戦だ。
    健斗には付き合っている彼女・亜美がいる。ぽっちゃりな彼女は嫌いではなかったが、卑屈になっている様子はあまり好きではなかった。
    祖父は言葉通りに本当に「死にたい」のか?そして健斗は「死にたい」の後押しをできるのか…?

    (p41)"要介護三を五にするための介護。介護等級が上がれば、国や自治体から施設側へ支給される金の額も上がる。健斗とやっていることは同じだが、同期の違いからして似て非なるものだった。"と健斗に言わせるほど介護現場とは現実的で、慈悲のない場所だっただろうか。
    そして、孫や母が祖父を思う気持ちはこうだっただろうか。
    きっとその場所にいる者でないと経験できない感情があるのだろう。私には経験はないのでわからないが、きっと母のようにもうどうでもよくなって(本当はどうでもよくなっていないかもしれないが、おとなしくゆうことを聞いてほしい、という意味かもしれない)苛々して怒鳴りつける、ということはあり得るような気がする。

    最後に健斗は、以下のようなことを述べて締めている。
    (p121)"あらゆることが不安だ。しかし少なくとも今の自分には、昼も夜もない白い地獄の中で闘い続ける力が備わっている。先人が、それを教えてくれた。どちらにふりきることもできないつらい状況の中でも、闘い続けるしかないのだ。"
    こんな風にひとりごちて旅立つ青年にはきっと、未来はあるだろう。たとえ祖父と母の関係が悪くなろうとも、彼女との関係が悪くなろうとも、自分で人を頼りながら悩みを昇華できるに違いない。

  • 祖父と孫による息詰まる介護の攻防戦。著者らしい「黒さ」が紛れ込んだ文は悪趣味に感じつつもどこかおかしみがある。全体の描写も見事で、身勝手かつ独善的、老いによるどうしようもない人間的な弱さを抱えた老人の姿や、家族ならではの罵詈雑言、当人の納得以外に報いのない、介護の先の無さ、未来の無さなど、介護の醜く汚い場面までちゃんと描いているのは好印象。口汚い母親や老人の客観的描写もさることながら、特に主人公の人物造形がとてもよく、カーディラーの激務の後に無職、その無職期間に一発逆転を狙って宅検の勉強をする辺りは非常にリアルな行動である。自身より弱い老人の姿を身近に置き、緩やかな尊厳死の手伝いをしながら、それを機に一念発起して勉学や筋トレに励むのも面白く、特に筋肉は老齢との対比になりつつ一種の信仰のようでいて微笑ましい。ただ、それらが祖父の掌の上という印象を最後には受けたが、祖父の手ほどきなしでも主人公は自発的に立ち直れたように思う。と、いうのも無職でありながら彼女持ちで、祖父が傍らにいようがいまいが、筋トレと勉強を根気よく続けられるような人間なら、そもそも誰かの作為なしでも十分やれるだろう。それだけの人間だからこそ、最後はそれなりにいい所に就職していくわけだが、現代の若者からの共感はあまり得られないかもしれない。また家庭内介護の実体や無責任な親戚等はよく描けているので家庭内介護経験者は共感する箇所は多かったものの、介護職は主人公の自意識の贄にされた感じがあり、公平性はやや欠いているため、介護職の人の共感は得られないかもしれない。そういう意味では作品としてのまとまりはあるものの、やや読み手不在な部分も感じ、現代性の捉え方に偏りがあるようにも思えた。

  • 著者出演のTV番組の録画を見て、著書を読みたくなって手に取った。

    暗い印象の本文だが、するっと読めて、長くない。
    こちら側が操作していると思っていたら、いつの間にか対象が自分の思考や感情に影響を及ぼしていたことに気づく。人と人が生活する中では、一方的な関係というものはないなぁ、と改めて思った。

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著者プロフィール

1985年生まれ。2003年『黒冷水』で文藝賞を受賞しデビュー。「スクラップ・アンド・ビルド」で芥川賞を受賞。『メタモルフォシス』『隠し事』『成功者K』『ポルシェ太郎』『滅私』他多数。

「2022年 『成功者K』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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