西洋菓子店プティ・フール

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 1696
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163904016

感想・レビュー・書評

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  • 洋菓子店を営む祖父と孫、周囲の人々、それぞれの視点で各章が描かれるオムニバス形式の短編集。

    仕事と結婚、恋愛感情、不倫と摂食障害、昔の秘密…登場人物たちの悩みや葛藤が丁寧に描かれている。

    めちゃくちゃ刺さるわけではないけれど、わかるなぁとじんわり響く、そんな感じ。
    軽くてサクサクと読み進められた。

  • 千早茜さんの本は『男ともだち』をかなり前に読んで、二作目だと思います。

    これは小さな町の洋菓子店をめぐる人たちの連作ですが、主人公の亜樹の成長譚かな、と思いました。
    でてくるスイーツはとってもスイートだけど、ストーリーはちょっとビターでもあります。
    出てくる女の子、男の子のお話しは、すれ違いあり、片想いありです。

    澄孝くんとミナがうまくいくといいのにとか、美佐江はなんで、あんな夫と暮らしているのか、別れればいいのにと思った。
    一番好きだったのは、亜樹と珠香のお話し。
    珠香の中高生の時のキャラクターは大変そうだけど、好きでした。でも珠香も成長したんですね。

    亜樹は一番最後の『クレーム』ではなんだか、今まで他の女の子たちの目に映っていた大人な亜樹じゃなくなっていて、ちょっとがっかりしたような・・・。
    でも最後は、まあよかったのかな。

  • 祖父の営む昔ながらの西洋菓子店で働く女性パティシエ、亜樹のお話。
    でも、ちょっと話があっちこっちに散らばってしまっている?特に不自然でも不快でもないけれど。
    ちょっとそんなことを思いました。

  • 洋菓子店を舞台にした連作短編集。

    甘い菓子の名前とは裏腹にピリリと辛味の効いた物語には千早さんならでは。

    女を興奮させない菓子は菓子じゃないってすごい破壊力ある言葉だなぁ。

    じいちゃんもばあちゃんも潔くて好きだし、甘い物は苦手なんだけど、亜樹のつくる菓子を食べてみたい。

  • 久しぶりにこの作者の本を手にしました。プティ•フールを舞台に描かれています。外からみると、手に職を持ってすごいなと思う人も実は当たり前だけど、悩みを抱えていたり、あがいているのかきちんと書いてくれています。
    個人的に気になったのは、身だしなみを整え、幸せそうに見える主婦が、幸せの象徴である甘いものを吐きだこができるまで消費行動していること。お店の人が気づいたのに夫はいつか気づいてくれるんだろうかそして彼女はどういう選択をするんだろうか。恋愛系のドロドロしたものにならず、お仕事小説にならず、それでも、お店でスイーツを買ってきラッピングしてくれた状態までそれぞれの章を仕上げてくれているので、じゃぁ後は、読み手の解釈かなぁってちょっと思いながら。正直それぞれ、嫌だなぁと思う内面はきちんと描かれています。主人公には職人気質な部分と後輩だから、同じ職人だからいろんなことが共有できると言う気持ちはわからなくもないけれど、恋人としてはちょっとやきもきするのは当たり前だろうなぁって思いましたし。ちょっと後輩の気持ちを利用している部分があるなーってちょっとずるいなぁって。じゃぁその後輩くんもどうかと言うと、自分に思いを寄せてくれる女性を振り回している部分もあったりで。とは言え誰でもそんなもんですかね。結局自分勝手になるよね。甘いだけじゃなくビターな部分、そういったものもきちんと描いてくれているのでそれが魅力かなと思いました。
    読むとスイーツが食べたくなるけど、ちょっとビターに思いますので、コーヒーを片手に読んでる気分です。主人公のおばあさんのように、紅茶専門店のマスターのように、いろんなことを気づき、きちんと見れる人間になりたいな。と思いました。

  • 街中の昔ながらの洋菓子店を営む祖父と、その店を手伝うことになったパティシエールの孫娘。彼らと彼らを取り巻く人々が描く、お菓子とともにつむがれる、温かく甘やかな物語が6つ収められています。
    お菓子の描写が繊細で、食べるのは好きでも詳しくはない私自身でもうっとりするような魅力に満ちてます。そのお菓子とともに描かれる人物たちの繊細な人間模様も楽しめて、きっと、きらびやかなプティフールのお菓子たちを手のなかに包んでいるときのようないとおしさを感じる物語になっているように思いました。
    行違ったりうまくいかなかったり、想いも必ずしも通じなかったり。それでも、自分の気持ちを信じて生きていく人物たちを素直に応援したくなります。そして、すごくすごく、お菓子が食べたくなります。昔懐かしのとにかく甘いシュークリーム、良いですよねえ…

  • 面白くて一気読み。
    「透明な夜の香り」みたいに
    妖艶な章がおおいし、
    そうでなくても
    スイーツを取り巻く色々な価値観が見えて
    とっても面白い!
    千早さん大好き

  • 昔ながらの洋菓子店で祖父と働く亜樹。
    駆け出しの弁護士で、亜樹と婚約中の祐介。
    亜樹の元同僚で、いまも彼女に想いを寄せる澄孝。
    澄孝が好きなのに言えないネイリスト、美波。
    亜樹の店でシュークリームを買い込んで、過食嘔吐するご婦人。

    商店街をうろつく人たちの様々な想いが錯綜する話。

    ---------------------------------------

    「あの人のことが好き!」とか「相手が何を考えてるのかわからなくて困惑!」とか、登場人物の皆さんがずっと楽しそうだった。

    祐介くんは亜樹さんに対して「恵まれているのかな」と言ったけど、読んでいる側からしたら、お前ら全員恵まれてるだろ!という気持ちだった。
    手に職があって、不自由のない生活を送れている。洋菓子を頻繁に食べる余裕もある。その上、彼らは婚約や片思い、婚約破棄まで楽しんでいる。恵まれていないわけがない。
    平和で豊かな彼らが眩しかった。

  • 装丁が素敵。
    文章は美しくて好きなんだけど、何故か亜樹が主人公の話とスミが主人公の話が上手く好きになれなくて。自分でも理由がわからない。スミが嫌いなのはわかるんだけど。
    「グロゼイユ」がちょっと読みにくく感じたのもあるかもしれない。
    痩せた奥さんの話とミナの話は好きだった。多分、亜樹は主人公向きでないのだと思う。周りから描写されて輝く人、のような気がした。亜樹が婚約解消しようかと言われてキレた理由もよくわからなかった。
    爺ちゃん、とてもいいですね。彼が何をしたか、どうして墓に参るのか、それをあんまりはっきり書かないところが良かった。
    珠香との一瞬がとても綺麗だった。
    もう少し難を言うなら、いくらファッションに興味ある男性でもペプラムスカートとかわかるんかいな、とちょっと思ってしまった。

    レビューを読んだら私と同じくミナと奥さんの話に惹かれている方多数。

  • 作品中とても魅力的なお菓子がたくさん登場するが、登場人物は甘くなかった。生きていく上で皆何かをすり減らしてるみたい。切れ味抜群な刃物の様に鋭利でそこには登場するお菓子の様な甘さはない。そして亜樹がどうしても好きになれなかった。ばあちゃんの言葉じゃないけれど狭い世界で生きてるせいかどうも自分本位な感じ。特に最後の章は最後に辿りつくプロセスにイライラした。本当に20代後半の女性なのか?と。ここまで人の気持ちを慮る事が出来ない人がどうして人の為にお菓子が作れるのか?と。(後輩の澄孝もそう所が見え隠れして苦手)最後に救いがあって気づくのだけれど…。もうちょっと巧く生きれないものか。と何度も思った。本当に人間って不器用でイライラする生き物だ。だがそれが人間の面白さだ(爆)

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著者プロフィール

1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。09年に同作で泉鏡花文学賞を、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で渡辺淳一賞を受賞。他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』(絵・宇野亞喜良)、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

「2021年 『ひきなみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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