- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163912394
感想・レビュー・書評
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一人称単数 つまり 僕が語る8話の話し
まるで事実のように思わされるのは流石
でもやはり事実?
表紙が印象的
そして猿がLPレコードをかけようつぃている絵も
うんうんと
ちょっとかっこつけすぎだけど
文が流れるようでひきこまれる
面白かった デス
≪ 短編を あるかのごとく 語る君 ≫ -
村上春樹さんの久しぶりの短篇集。
どの短篇にも、独特な比喩があり、遊び心もある。
タイトルの『一人称単数』が示す通り、収められた八編の短篇はすべて一人称で語られる。
村上春樹さんも、もう71歳(!)
『猫を棄てる』を読んだ時に感じた、「父の死」が影響しているのか、単に年齢ゆえか、これまでの人生を見つめ直し、自身の体験したことを物語の要素に加え、俯瞰する姿勢が、この『一人称単数』の短篇ごとに少なからず現れているように感じる。
不思議なことに、全編通じて、「これはフィクションなのか?それともエッセイなのか(あるいは「私小説」なのか)?」と思ってしまうくらい、そう、「品川猿の告白」でさえ、村上春樹さんが体験したことをもとに書いているのではないかと、思った。
「石のまくらに」
和歌が出てくる不思議な短篇。
個人的には、あまり、すとんと心に落ちてこなかった。
再読すれば、変わるかもしれない。
「クリーム」
18歳に経験した出来事について、年下の友人に語っているという設定。
不思議な体験。催されるはずだったピアノリサイタル。しかし、そこには誰もいなかった…。そして、「中心がいくつもある円や」という言葉を残す老人。
「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」
ありもしないジャズレコードの寸評をもとにした短篇。しっかりとした、本当に存在しそうな寸評。そして、後年、体験することとなるもの。
エッセイのような短篇と強く感じた作品の一つ。
物語の中に、一つの創作(ありもしないレコードの寸評)をもって、話を進めるのは、すごい。
「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」
冒頭の7行。人は誰でも遠い昔の好きだった人、それがたとえ、名前を知らなくても、しっかりと記憶されているものだと思う。
胸にしっかりとビートルズのLPレコード「ウィズ・ザ・ビートルズ」を抱えた女の子の記憶。名前を知らない、そして、もう再び会えない女の子。
そして、高校生の時に付き合っていた女の子とそのお兄さんの話。
再会できた人と、もう再び会えない人。
「『ヤクルト・スワローズ詩集』」
個人的には、どこか村上春樹自身のエッセイを読んでいるかのように感じた。
いろいろとチャーミングな表現が多い。
「謝肉祭(Carnaval)」
まず、冒頭の書き出しがすごい。醜い女性の話。シューマンの「謝肉祭」が好共通項。
「品川猿の告白」
別の短篇集に収録されている「品川猿」の人生を知ることのできる短篇。ありえない話なのだけれど、なぜか、村上春樹さんが、ほんとうに温泉地でこのような体験をしたんじゃないかと思うほど。そして、後日、ある女性編集者とのエピソード。そう思わせる不思議な力がある。
ここまでは、「文學界」に随時発表されたもの。
「一人称単数」
唯一の書き下ろし。
「私」に対して、じりじり詰め寄ってくる女性の存在。
女性に投げられた言葉。
「私」が抱く“長く鋭い針で突かれた”感情。
そして、不穏な空気。
久しぶりの一人称での小説。
また、『騎士団長殺し』とは違った、新しい一人称形式の長編小説への布石となるのか。
個人的には、「「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」」「『ヤクルト・スワローズ詩集』」「一人称単数」が、好き。 -
私には村上春樹は難しい。
一人称単数。読みながら何だか自分の中にある後ろめたさや恥ずかしさを感じたのはなぜだろう。主人公が感じるもやもやと似た感覚だろうか。遠い記憶や心の襞を突くような短編だった。真面目に生きているつもりでも何かしら人は抱えているのかな……
クリーム。中心がいっぱいあって外周のない円なんて…はぁ?と思ったけれど、ふと、宇宙や人間社会が浮かんだけれど、結局のところよく分からない。 -
村上春樹は、私にとって文体そのものが嗜好品であるから、ストーリーテラーとしての力量や中身の面白さではなく、村上春樹ワールドにおける独自の感性を、彼らしい言い回しやキーワードで表現してくれさえすれば、もはやそれで満足。
気になったのは、作中に村上春樹本人の名前が出てくるし、短編集ではあるが、自伝、私小説的雰囲気をギリギリまで保持している事。小説ではなくて、実体験に基づくエッセイなのか、しかし、物語には会話する猿も出てきたり、夢かうつつか、寓話調に上手く処理されてしまう。それを、敢えて探らない事も楽しみ方だろうと一人納得するが、至近、村上春樹自らの父を語るエッセイもあり、何かしらの方向転換という事もあるだろうか。 -
作者本人が体験したことのような切り口で、
不思議な世界に引き込まれる。
これだけ長い間、第一線で活躍している作家なら、
日常でこんなことあったんじゃ?と思わせるのが面白い。
他の人も書いていたが、私も品川猿が好きだなぁ。
猿の後ろに、人間の悲しい性が透けて見える。 -
村上春樹の感想を書くのは難しい。
一時期、というか今でもそれはあるかもしれないけれど、読書をファッションの一部のように身に付けている人たちにとって、村上春樹が定番だったために、わたしは一時期、村上春樹を避けていた。
本を読みます、と人に言うと「村上春樹?」と聞かれることに辟易してもいたから。
そのために、あまり熱心に村上春樹を読むことをやめていたけれど、これを久しぶりに手にとり、あまりにも行く先々の本屋で大量に平積みされていたので、改めて、やっぱり村上春樹、読もう、と思う。 -
石のまくらに、ウィズ・ザ・ビートルズ、謝肉祭、品川猿の告白がとても好きでした。
特に謝肉祭については、読み始めたとき「な、何と直接的な表現…」と面食らいましたが、終盤の展開には欠かせないものだったと分かり。うなるほど面白かったです。
品川猿のお話も、実際の出来事なのかと感じてしまうほど、文章の流れがスムーズで、すいすい入ってきました。
また、全体として音楽に関わる場面が多く、音楽好きの方にもたまらない短編集かと存じます。 -
8話の短編集。
エッセイなのかな?という感じで始まって、少し話が見えなくなって、結局どこに収束したんだかわからないような不思議な話たち。オチのない(読者の想像に任せる系の)謎めいた展開が好きなので楽しく最後まで読めた。
どうやったらこんな文章思いつくんだろうと思ってしまうような表現がたくさんあって、やっぱり村上春樹は天才なのだと思った。