私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163916149

作品紹介・あらすじ

“家族のかたち”を守るため、あの日わたしは自分を殺した。親との関係に悩むすべての人へ――失われた感情を取り戻す、ヤングケアラーの実録コミック!

統合失調症の母、家庭に無関心な父、特別扱いされる弟、 認知症の祖父――ゆいは幼稚園のころから、買い物・料理・ そうじ・洗濯など家族の世話を一手に担っている。母親の暴力に耐えながら「子どもらしさ」を押し殺して生きるのに精一杯だった彼女の子ども時代と、成人してからの「ヤングケアラー」としての自覚。 仕事、結婚、子育てを通じて、悩みにぶつかりながらも失われていた感情を取り戻すまでの再生の物語です。

『精神科ナースになったわけ』『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』( 共著:斎藤環)ほか医療系コミックで累計25万部の著者が、2年以上の当事者取材から描きおろす最新作です。「ヤングケアラー」について理解を深めるコラムや、ヤングケアラー支援団体の紹介ページも収録。(※10代の当事者も読めるよう、総ルビとなっています)

感想・レビュー・書評

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  • “ヤングケアラー”について知るのに良いコミックであった。完全なフィクションではなく、しかし一つ一つのエピソードは実際にあったことという。

    精神疾患を抱えた母、無関心な父、特別扱いされる弟、認知症の祖父…主人公は幼い頃から一人で家事をしている。
    理不尽な母の暴力・暴言に自分を抑え、いつしか感情の表し方も分からなくなり病む。そして親元を離れ、自分を取り戻していく話。

    家族と距離を置いてからも大変なんだな。依存症なのか対人関係に自信がない、家族のあり方が分からない、感情が分からない、表せない。
    同年代の仲間の考え方や感覚が掴めず、感じてしまう…「私だけ年を取ってるみたい」と。
    そして女性の場合、出産や育児中に子どもの頃のトラウマが蘇って苦しむこともよくあるという。
    看護師さんのアドバイス「愛を返せない人に愛情を求め続けるのはもうやめて」「実の親がくれなくても、代わりにくれる人はいる」はショッキングであった。

    話変わって、私の実家のすぐそばに公立高校がある。この学校が嫌いだった。なぜならばいわゆる不良と呼ばれる子が集まる学校で、しょっちゅう仲間のバイク集団がやかましい音を立ててやって来て、おっかなくて耳を塞いでいたものだ。
    最近この学校についてNHKで取り上げられ知ったのは、学習や家庭環境などに困難を抱える生徒が多く通う、“課題集中校”だということ。知らずにいた自分を恥じた。
    親からの暴力、生活費のためアルバイトを強要される、介護、また長引くコロナ禍が、高校生たちの生活を脅かしているという。通学の継続が困難になり中退者も多いらしい。教師たちの熱心な取り組みに頭が下がる思いだ。
    この番組で「親の介護」をしている子ども“ヤングケアラー”の存在を知ったのも、本書を読むきっかけとなった。

    また本書を読んでもう一つ。
    この病気のお母さん目線で考えると読むのが辛くなった。私自身、出産後に病んだ経験があるから。治癒しなかったら息子も私の世話をして苦しんだかも、いや引き離されたかもしれないと思うと泣けてくる。
    あの時、「自分はおかしいから病院に行きたい。助けて」と言って動いた自分を褒めたくなる。両親の協力を得られ、適切な治療を受けられたのは幸運であった。
    苦しんでいる本人や家族は見えないところにきっとたくさんいる。打ち明けられない人もいるだろう。寄り添いたい気持ちになる。

    • なおなおさん
      1Qさん、おはようございます。
      励みになる温かいコメントをありがとうございました。(ˊo̴̶̷̤ ̫ o̴̶̷̤ˋ)
      もう元気ですので、ブ...
      1Qさん、おはようございます。
      励みになる温かいコメントをありがとうございました。(ˊo̴̶̷̤ ̫ o̴̶̷̤ˋ)
      もう元気ですので、ブクログを通じて色々とやりますよ〜(≖͈́ㅂ≖͈̀ )
      2023/04/08
    • みんみんさん
      なおなおさんは私より年下だと思うけど
      私の中学校もリーゼントに長ラン、スカートはくるぶし!チェーンやバット持って隣の中学校が校門を取り囲む事...
      なおなおさんは私より年下だと思うけど
      私の中学校もリーゼントに長ラン、スカートはくるぶし!チェーンやバット持って隣の中学校が校門を取り囲む事もありました( ̄▽ ̄)
      でも当時その高校があったなら凄く熱心な取り組みの県だったのかなぁと。
      わたしは不良じゃないけどスカート長かった笑
      ルーズソックス履いてみたかったな…
      病んだ時に自分で認めるって治療の第一歩だと思うから本当に偉かったね(T-T)
      2023/04/11
    • なおなおさん
      みんみんさん、私もルーズソックスは履いてみたかったです。今見かけませんよね!?
      そしてチェーンやバット(°_°)!?
      スクールウォーズみたい...
      みんみんさん、私もルーズソックスは履いてみたかったです。今見かけませんよね!?
      そしてチェーンやバット(°_°)!?
      スクールウォーズみたい…(-▼_▼) ←“ヤ○○ー”って入力したらこんな顔文字が出てきた^^;
      こちらはそれはなかったと思いますが、あのバイク集団だけはおっかなくて…週末に出現率が高かったです。
      温かいコメントをありがとうございました(^^)
      2023/04/11
  • 私もヤングケアラーとは一体何か気になった事が切っ掛けでこの本を読み始めました。ゆいの入院先の精神科で作業療法を行うシーンでは、「農作業を行う事で作業療法を行う病院もあるのだな。」、「作業療法として育てた野菜を実際に調理して食べる事もあるのだな。」と感じられましたし、作業療法として育てた野菜を調理するシーンは大好きなので何度でも読み返したくなります。

  • ヤングケアラーの主人公を成人後も含めて描いた漫画。重い話も多く、しかもすべてが事実に基づいているとのことだが、絵は優しいタッチで読みやすい。ケアラーの感情が、プライドや強かさも含めて丁寧に表現されていて、作品にかける著者の強い思いが伝わってくる。

  • ヤングケアラー 漫画 読みやすく色々なケースを知る事ができる。子供の生活環境SOSには大人の助けが必要。母親の死「itと呼ばれた子」を思い出しました。

  • ヤングケアラーとは「介護や病気、障がいや依存症など、ケアを要する家族がいる場合に大人が担うような責任を引き受け、家事や看病、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子ども」のこと。

    2021年の調査では、中学二年生の17人に一人、高校二年生の24人に一人がヤングケアラーに該当していたそうです。
    ケアの対象は、きょうだい、親、祖父母の順に多く、親の場合は「精神疾患や依存症」の親を介護している子どもが多いこともわかりました。

    精神疾患は生涯を通じて、5人に一人がかかるとされ、誰にでも可能性のある病気だそうです。最近たまたまその関係の本を続けて読みました。自分だってかかるかもしれないと思いました。

    しかし、ヤングケアラーについては、テレビ等でたまに見かけるけど、実際まわりに全くききません。
    この本のいくつかのエピソードが本当にあった話ときいて、驚いています。

    子ども達は育った家庭が普通だと思っています。
    自分もそう思っていました。
    少しでも情報を得て、すべての子どもが幸せに成長できるようになったらいいと思いました。
    いえ、そうならなければなりません。

  • ヤングケアラーがテーマのコミックエッセイ。
    小学生の少女が、統合失調症の母親の面倒をみながら家族を支えていくが、大人へと成長するにつれて様々な障害にぶつかっていく。

    作者が色々な人から話を聞いて編み上げているので、完全なフィクションではない物語です。

  • ヤングケアラーの子ども達がどういう生活を送っているのか、ニュースの特集やドキュメンタリーでその表面的な部分はわかっていたつもりでしたが、その内面や成長するにつれて生じる歪みまではほとんど想像できていませんでした。
    成長して経済的に自立して「はい、リスタート」となれるわけではない。
    親になる事への葛藤、フラッシュバック等々、読んでいて胸が締め付けられる思いに何度もかられました。
    山根さんの「自分のことで泣けるようになってよかったじゃない」という言葉、驚くと同時にズシッと重く響きました。

  • ヤングケアラーという言葉も、どういう人のことかも知っているつもりだったけれど、こんなふうに感じながら生活しているのか、とリアルに受け取められる作品でした。
    ケアをする家族から離れられておしまい、ではなく、長く続いてきたヤングケアラーとしての生活の中で身についた思考の癖やフラッシュバックなど、外からでは気付きにくい様々な苦しみも抱えながら生活していくものなのか、と、この問題の根深さに心が痛みます。
    コミックで読みやすいので、意外と数多くいると言われているヤングケアラーを知るきっかけの本として、是非お勧めしたい一冊です。

  • 『感想』
    〇図書館でたまたま目に入って借りたのだが、めちゃくちゃ考えさせられた。

    〇夫婦は相手を、親は子を手放すことができるかもしれないが、子は親を手放せない。だから子は親にしがみつく。辛いことをされても我慢するし、どうやったら好かれるか・愛情をもらえるかを必死に考える。

    〇子どもに我慢をさせ過ぎると、周りの気を遣うことばかりになり自分の感情が出せなくなってしまう。それは一見優しく感じるが、そうすることでしか自分の存在を保てないからではないだろうか。

    〇子が周りの空気を読むことばかりに慣れると、周りからは便利屋にされてしまうかもしれない。また大人のようで、本当の愛情を知らない未熟な精神の人間にしか過ぎないのかもしれない。

    〇子をヤングケアラーにさせてしまう周囲も大変なことは分かる。そして子どもがすることではないと分かっていても、愛情を求めて動いてくれる子にすがることで自分が助かる弱い心を持ってしまうことも分かる。でも子どもはどこに助けを求めればいいのだろう。

    〇子どものころの経験が人格形成に強く表れるから、大人になったからって簡単に変われるわけではない。

    〇せめて感じるストレスを少しでも晴らせる場所、自分の気持ちに共感してもらえる人が近くにいるといいな。

    『フレーズ』
    ・愛を返せない人に愛情を求め続けるのはもうやめて。

    ・自分のことで泣けるようになってよかったじゃない。

    ・人とつながりたいけど、つながるのが怖い。

    ・私は人が喜ぶツボを知っているだけ。ほんとはぜんぜん優しくないよ。

    ・親が何か我慢していると子どもに影響が出るってこと忘れないでね。

    ・愛情は余裕から生まれる。

  • 最後まで読んで、「ヤングケアラー再生日記」という副題の意味がわかりました。

    統合失調症を発症した母親をもつ、娘さんの物語。
    「家族の病気」という観点だけでなく、「性別に基づく役割の違い」という観点からも考えさせられるお話でした。

    マンガなのですっと読めてしまうのですが、内容はとても密度が濃く、絶妙なバランスで描かれている作品だと感じました。

    子どもさんの側からみてどうなのかを知るための一歩として、いろんな方に読んでいただけたらと思う本でした。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ、東京在住。2014年に「あたふた研修医やってます」(KADOKAWA)でデビュー。
主な著書に『こころのナース夜野さん』( 小学館 )、『私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記』(文藝春秋)、『男との付き合い方がわからない』(大和書房)、『精神科ナースになったわけ』(イースト・プレス)、『32歳で初期乳がん、全然受け入れてません』(竹書房) 、『まどか26歳、研修医やってます!』、『コミュ障は治らなくても大丈夫』(KADOKAWA)等。

「2023年 『僕は春をひさぐ~女風セラピストの日常~(1)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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