- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166607525
感想・レビュー・書評
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「常に勝ち続ける秘訣とは、中ぐらいの勝者でいつづけること。」マキアヴェッリ
日本が、国際的に勝者になるのは、難しい。
日本だけでできることに注力すべき。
ひとつは、経済力。
ただし、それだけで正面突破するのは利口なやり方ではない。
超大国とは、はた迷惑な国のこと。
その狭間を生き抜くために、日本が参考にすべきなのは、
経済大国ではあっても軍事大国には、なれなかった国。ヴェネチア。
その長寿の秘訣は、情報収集とそれを駆使しての冷徹な外交。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(2013.01.06読了)(2012.03.06購入)
【1月のテーマ・[日本人を読む]その①】
題名に「日本人…」という風についているのが、手元に4冊あるので、年頭にあたり読んでしまうことにしました。
文芸春秋に2003年6月号~2006年9月号まで掲載したものです。
塩野さんが、ローマ、ヴェネツィア、フィレンツェ、等の歴史を書きながら学んだことを、日本人が国際社会のなかで、どうすればいいのかをアドヴァイスしてくれている本です。
アドヴァイスの妥当性はわかりませんが、イタリア人ならどう考え、どう行動してきたかについては、興味深く読めました。
【目次】
Ⅰ 危機の時代は、指導者が頻繁にかわる。
首をすげ代えれば、危機も打開できるかと、
人々は夢見るのであろうか。
だがこれは、夢であって現実ではない。
イラク戦争を見ながら
アメリカではなくローマだったら
クールであることの勧め
イラクで殺されないために
「法律」と「律法」
……
Ⅱ 自己反省は、絶対に一人で成されねばならない。
決断を下すのも孤独だが、
反省もまた孤独な行為なのである。
想像力について
政治オンチの大国という困った存在
プロとアマのちがいについて
アマがプロを越えるとき
なぜこうも、政治にこだわるのか
……
Ⅲ 歴史に親しむ日常の中で私が学んだ最大のことは、
いかなる民族も自らの資質に合わないことを
無理してやって成功できた例はない、という事であった。
歴史認識の共有、について
問題の単純化という才能
拝啓 小泉純一郎様
知ることと考えること
紀宮様の御結婚に想う
……
●他民族との共生(15頁)
アメリカ合衆国は多くの人種の混合体であり、ゆえにアメリカ人は他民族との共生に長じているとの見方は、私には大変疑わしい。アメリカ人は、自分たちの国に来て仕事をしたいと願っている他民族との共生には慣れていても、アメリカには行きたくなくあの国とは関係を持ちたくないと思っている他民族との共生となると、その成果としては半世紀昔の日本を持ち出さざるをえなかったことが示すように実績にとぼしい。
●戦争と外交(29頁)
戦争は、血の流れる政治であり、外交は、血の流れない戦争である
●イタリア軍の海外派兵(33頁)
イタリア軍の海外派兵は、昔のベイルートからはじまって湾岸戦争、ソマリア、ボスニア、東チモールにまで及び、その後もアフガニスタン、イラクと、小まめに実績を重ねてきた。世界中の紛争地帯に送っている兵士の合計は、今年に限ったとしても一万に及ぶという。このイタリアこそが参考になると私が思う理由は二つある。
一、これだけの歳月、しかもこれだけの数を派兵していながら、戦死者がゼロであること。
二、戦死者ゼロでありながらイタリアは、経済上の負担もしていない。もちろん派兵の費用はイタリア持ちだが、それ以外の経費負担は求められたことがない。
●法の見方(42頁)
ユダヤ教:神が人間に与えたものだから、神聖にして不可侵。
古代ローマ人:「法」とは人間が定めたものであり、必要に応じて改めるもの
●犠牲者(57頁)
「戦死者」というイタリア語が「犠牲者」という日本語に変ってしまう
●非難でなく期待を(120頁)
人間とは、期待されるや自分では思いもしなかった力を発揮することもあるという、不思議な生き物でもある。だから、国の政治とはいかに重要か、それゆえにあなた方に期待しているのだとでも言って、激励してみてはどうであろうか。今のように、欠点をほじくり出しては軽蔑と非難を浴びせるのではなくて。
●教科書(171頁)
ローマ史が政治の教科書になるのなら、中国史もなるはずだ。教科書とは、学んだほうがよい事柄だけでなく、学ばない方がよい事柄も記されてあってこそ、本当の意味の教科書になるのだから。
●職を失うこと(210頁)
「人は誰でも、自分自身への誇りを、自分に課された仕事を果たしていくことで確実にしていく。だから、職を奪うということは、その人から、自尊心を育む可能性さえも奪うことになるのです」
●「終戦」でなく「敗戦」(230頁)
「終戦」でなく「敗戦」と言おうではないか。敗戦となれば、なぜ敗北したのかを考えるようなる。
☆塩野七生さんの本(既読)
「ルネサンスの女たち」塩野七生著、中公文庫、1973.11.10
「神の代理人」塩野七生著、中公文庫、1975.11.10
「海の都の物語(上)」塩野七生著、中公文庫、1989.08.10
「海の都の物語(下)」塩野七生著、中公文庫、1989.08.10
「ローマ人の物語Ⅰ ローマは一日にして成らず」塩野七生著、新潮社、1992.07.07
「ローマ人の物語Ⅱ ハンニバル戦記」塩野七生著、新潮社、1993.08.07
「ローマ人の物語Ⅲ 勝者の混迷」塩野七生著、新潮社、1994.08.07
「ローマ人の物語Ⅳ ユリウス・カエサルルビコン以前」塩野七生著、新潮社、1995.09.30
「ローマ人の物語Ⅴ ユリウス・カエサルルビコン以後」塩野七生著、新潮社、1996.03.30
「ローマ人への20の質問」塩野七生著、文春新書、2000.01.20
「ローマの街角から」塩野七生著、新潮社、2000.10.30
(2013年1月9日・記) -
文芸春秋の連載をまとめたもの。
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911前後の話が多い。ローマ帝国史やマキャベリに基づく言説が小気味良い。
『人間ならば誰にでも,現実の全てがみえるわけではない。多くの人は,見たいと思う現実しかみていない』(ユリウス・カエサル)
このフレーズが何回か出てきておりこの本の核となる考えといえる。
「成果主義のプラスとマイナス」の章は秀逸。第一層は刺激を与えるだけで能力を発揮する人,第二層は安定を保証すれば能力を発揮する人,第三層は刺激を与えても安定を保証しても成果を出すことのできない人。歴史上,上手く機能した国の例からすると,順に2割,7割,1割の割合となる。納得。7割に保証を与えず刺激だけを与えても不安が高まるだけで生産性が上がらない。納得である。
『いかなる事業といえどもその成否は,参加する全員が利益を得るシステムを作れたかにかかっている(マキャベリ)』。これも納得。 -
個人的に文章に読みづらい、というか混乱する箇所がいくらかあった。
また内容とタイトルの関係も良く分からなかった。 -
文藝春秋のコラムか何かの寄せ集めである。その性格が影響して内容に一貫性が無い、また抽象的で伝えたいこともよく伝わってこない。
そもそも著者自身も連載が嫌になってきて編集者にやめたいと言っていたと告白している。
ただ著者はローマ史家の権威であり、その点での勉強にはなる。また時事テーマが多く、それと歴史との比較は面白い。
軽い読み物としては良いと思う。 -
新着図書コーナー展示は、2週間です。
通常の配架場所は、3階開架 請求記号:914.6//Sh75 -
相変わらず手厳しく面白い。
憲法改正について、律法と法律という分け方が面白かったが、多くの日本人にとって憲法は律法により近いのではないかと思った。何たって万世一系の元現人神から降されるものであったのだから。日本の政府は一度として国民が勝ち取ったものであった試しがないことも大きな要因だと思う。徳川が崩壊した時でさえ、農民層をはじめとした一般庶民が、自分たちの作った政府だなどと自覚したであろうか。
自分も外から見る立場の今、日本人は外交下手世界1、2を争うのは本当で、特に声がでかくて腕力があるもの勝ち(まさにメリケンそのもの)な今、どこぞの優秀な属国になってた方がいいとすら思えるほどだ。
民を考えた時、2割の優秀層、7割の一般層、1割の要お助け層という分類は面白かった。優秀層に属する者が1割を羨ましがって本分を発揮したがらないケースも多くありそうだな。 -
購入書店:楽天kobo; 読書環境:kobo Touch; コンテンツ形式:EPUB; 既に読んだ本だった(笑)しかもテーマが時事問題だけに今読んでも…
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芯が一本通ってる人の論って、やっぱり読みやすい。あんまり丸々書き写すのもマズいとは思いつつ、このレベルの本を要約できる能もないので、背景が分からないと真意が伝わらないかもしれないとは思いつつ、琴線に触れたところを抜き書きしてみます。少しでも気になるところがあったら、手に取る価値はある。
「意思を持続させるに必要なエネルギーの中で、最も燃料効率の高いのが私利私欲」
「日本人も外国人と同じ言行をすべきだと言っているのではない。相手がどう考えどう出てくるかを知って勝負に臨むのは、ゲームに参加したければ最低限の条件であると言いたいだけ」
「危機の時代は、指導者が頻繁に変わる。首をすげ代えれば、危機も打開できるかと人々は夢見るのであろうか。だがこれは、夢であって現実ではない」
「(イラクで死んだイタリア人兵士について)これは、危険も知らずに行った地で巻きぞえを喰った「犠牲者」への待遇ではない。危険も覚悟のうえでの職務遂行中に倒れた「戦死者」への待遇である。だがこれが日本に伝わると「犠牲者」になってしまうのだった。…ミリタリーにも彼らなりの誇りがあるのは当然だ。巻きぞえを喰った結果である死ではなく、覚悟のうえの死、とでもいうふうな。その軍人が戦地で倒れた場合、その彼らを、無差別テロで倒れた市民と同じように「犠牲者」と呼ぶのは、この人々に対して礼を失することではないだろうか。軍人ならば「戦死者」と呼んでこそ、彼らの誇りを尊重することになるのではないか」
「(日本の政治について)このような話をすると、返ってくる答えは決まっている。今の政治家には人材がいない、というのだ。だが、ほんとうにいないのだろうか。それとも、人材を見出し育てる意欲が、マスメディアにも有権者にもない、ということではないだろうか」
「(「天国へ行くのに最も有効な方法は、地獄へ行く道を熟知することである」というマキアヴェッリの論を踏まえ、アメリカの大統領選挙の候補者対応について)国政担当者ならば、二股かけるぐらい当然ではないか。この人たちにとっての責務は、国民を天国に向かわせることであるのだから」
「長年にわたって紛争がつづいている状態とは、当事者の中に必ず、紛争がつづくほうが利益になる誰かがいる。この「誰か」にとっては解決しないほうがトクになるので、解決の道筋が見えはじめるやいなや妨害する。だからこの種の問題解決には、何よりも先にその「誰か」を見つけ、見つけしだいにその「誰か」を排除することが重要」
「一神教と多神教のちがいは、一人と多数という神の数にあるのではない。最も本質的なちがいは、一神教には他の神々を受け容れる余地はないが、多神教にはあるというところにある。要するに、他者の信ずる神を認めないのが一神教で、認めるのは多神教なのだから」
「政界でも経済界でも官界でも、指導的な立場にいる日本人の口から、一度でよいから聴いてみたい。「これこれこういう理由によって、今のところは動かないほうがよいと考えるし、ゆえに成果もあげることはできない」とでもいう、腹の坐った「説明責任」を聴いてみたいのだ」
「テレビやネットの時代で勝負するための「武器」とは、事後でも読むに耐え、情報はすでに知っていても読みたいと思わせ、それでいて読んだ後に満足を与えられるもの、つまり、情報の「読み」なり「解釈」なりで勝負したもの、を書いたり言ったりする能力でしかない。…情報に接する時間を少し節約して、その分を考えることにあててはいかが」
「(ハリウッド映画『トロイ』で死ぬアキレスを見て)弁慶のような死に方をさせられる古代ギリシアの英雄アキレスを観ながら、これも、今のアメリカ人の無知と不遜による文化破壊以外の何ものでもない、と思ったものだった」
「中国は数多のマイナスを国内にかかえているからいずれ躍進も止まるだろうという意見があるが、私には中国は、マイナスを周辺にまき散らしながら対国への道を邁進していくと思えてならない」