新装版 関東大震災 (文春文庫) (文春文庫 よ 1-41)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167169411

感想・レビュー・書評

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  • この方の作品を初めて読み、こういう作品?文体? もあるんだと圧倒された。

    • 利根川うなぎさん
      この方の作品を初めて読み、こういう作品、文体?もあるんだと圧倒された。
      この方の作品を初めて読み、こういう作品、文体?もあるんだと圧倒された。
      2022/12/07
  • ここまで詳細に調べている著者に脱帽。もうそろそろ関東大震災クラスの震災が関東地方を襲うかも...。先人たちの英知が現代に活かされることを渇望。

  • 関東大震災で朝鮮人が毒をばらまいているとかそういう噂で虐殺された、ということを漠然と知っている人は多いだろうが、なぜそれが起きたのか、どのくらいの規模でどういうスピードで起きたのか、というのは詳しく調べたこともなかった。本書で語られるその事実は正に戦慄もので、礼儀正しく優しいはずの日本人が特定の条件下では、根拠のない流言飛語によっていかに強い群集心理を育み、そして残虐になりうるのかをまざまざと見せつける。心理的にこの事象を解説することは十分可能だが、その可能性が現実になり得た経験をこの国が持っているのは9/1が来るたびに思い返してもいいのではないか。それ以外に、地震学者の対立とその熱意、あるべき都市計画など本書で考えさせられることは多い。

  • 貴重な作品ですな、これは。
    阪神淡路以降の幾つかの大地震を経験してきた現在から見ても火災含めた都市直下型地震の怖ろしさは十二分に教訓として生かさなくては。
    ただ地震そのものは自然摂理としてある程度諦めの境地も必要かと思う。一方、略奪・朝鮮人虐殺・大杉事件等の非人道的振る舞いは、まだ100年程度前のこの国での出来事だと肝に銘じるべきかと。これらの話はほんと酷過ぎるが、質としては同じ状況が実は今も目に見えて存在し続けることをこの国に生きる人間として明確に認識すべきかと思われ。

  • 話は震災の8年前、大正4年11月の千葉での群発地震に始まる。安政大地震から60年後には東京に大震災が再び来るのか、地震学者の間で論争が。そして、運命の日、悲惨な状況が詳しく再現される。あまりにも異常な社会状況に何が起こっても不思議でない状態が理解出来る。そして朝鮮人虐殺に至った風評の伝播力、自衛団による朝鮮人への暴行。社会主義者・大杉栄殺人事件の詳細。80年前の出来事が阪神大震災と重なるとともに、違いとしては正確な情報が被災地に伝えられることの有無を感じました。そういう意味で、二度とあのような騒擾事件は起こることはないのかな?と思いましたが。また最後は、震災を予知し、著名になった学者が大阪震災を予言し、社会の不安を助長する軽率な発言が社会の批判を浴びるという結末で終わります。

  • 読んでる間、本当に怖くてたまらなかった。
    吉村氏の「三陸大津波」の詳細な記述を読んだ後ですら、あまりの生々しい描写には言葉を失った。
     関東大震災は、死者の多くが焼死、溺死であり圧死者の割合は少なかった。今に比べて道は狭く、木造家屋が多かっただけではなく、逃げまどう人の多くが家財道具一式を大八車に積んだり、背負ったりして逃げたため、荷物に火がついたり、道が勧めなかったりしたためだった。
     吉原の遊女の多くが公園の池に火災から逃れて飛び込み溺死したり、隅田川にたくさんの人が身を投げたり、まさしく地獄絵図。
     それ以上に恐ろしかったのは、デマである。朝鮮人が井戸に毒を入れている、放火している、という間違った情報の恐ろしいまでの広がり方。自警団と称して朝鮮人だと思われる人を問答無用で集団リンチする普通の市井の人々。
     情報が断絶されている状況だとしても、人々の恐怖が生みだす恐ろしい心には鳥肌がたった。大杉栄事件の残酷さも、あれほどまでだったとは。
     阪神淡路大震災や東東北大震災での、どんな状況でも秩序正しく、助け合いの精神を持って世界にも賞賛されている日本人像とはあまりにかけ離れた姿。
     仕方がないとは言え、多くの新聞もデマを信じて記事にして、デマに信ぴょう性を持たせてしまった。
     人間の究極の姿を垣間見た気がして、怖かったが、読んで良かった。

  • よくここまで詳しく書けたものだと驚く。
    情報量の多さ。。すごい。

    状況が壮絶すぎて想像が追いつかないが、映画化してほしくはない。
    グロくなりすぎってのもあるけど
    読んで、それぞれの地元や地域ならどうするかを
    考えたり想像したりするのがいいと思う

    東日本大震災と比べてしまったが
    こちらは本当に火災の怖さ。
    読んでるときに都内を歩いていて、
    「ここは関東大震災のときどうだったか」に
    思いを巡らすクセがついてしまった

    奇跡的に燃えずにすんだ地域の好事例が
    今の世代に伝えられているか心配

    ----
    ・「なにがなんでも、こんな姿をお天道様にさらしていては可哀相だ」92

  • 1923年9月1日に発生した関東大震災の発生~復興への動き出しまでを人々の体験談んを元に記したルポの様な作品。

    大地震の怖さは揺れによる家屋の倒壊に伴う圧死や津波だけでなく、火災・人心・その後の疫病など広く存在する事を認識した。都市インフラ等現在と異なる点も多いが、歴史から震災の脅威を知る事ができる良書。

    ・震災での死者数は圧死ではなく、間もなく発生した火災によるものが最多という。
    当時は木造建築中心、路面の狭さに加え家財を持ち出して避難する人が多く、家財により消防が行き届かず、また家財に火が燃え移り被害を拡大させた。

    ・震災の被害により電報・新聞その他通信手段が失われた中、人々の間では流言が飛び交い、特に在日朝鮮人が井戸に毒を入れたという事実と異なる噂は新聞各社も事実として報じ、民間の自警団が組織され朝鮮人を虐殺する等の悲劇も生まれた。

    ・10万人を超える遺体処理は難航し、また居住地を失った人々はバラックに住まざるを得ず、バラックは不衛生だった事から疫病が流行った。

  • 本書、かねてより積ん読していたが、「典獄と934人のメロス」を読む前に関東大震災を予習しておこうとやっと手に取った。

    強烈だったのは、本所の陸軍省被服厰跡(二万四百三十坪)に逃げ込んだ避難者約四万人を襲った大旋風(約四万人のうち焼死者・窒息死者約三万八千人を出した地獄絵は想像を絶する)。

    そして、(当時の日本人一般が潜在的に有していた朝鮮人に対する一種の罪の意識を背景とした)朝鮮人来襲の流言が瞬く間に関東一円に広がり、各地に自警団が組織され、狂気に駆られて行われた虐殺の数々。吐き気を催すほどの蛮行だが、極限状態に置かれた人間集団がいともたやすく暴走してしまうことを示していて背筋が寒くなる。興奮から覚めて冷静になった自警団の人々は、自分の行いをどう振り替えるのだろうか?? また、社会からはどう罰せられたのだろうか??

    本書に記されている貴重な記録の数々、もっと前に読んでおくべきだったなあ。

  • 関東大震災でおきた大小様々なトラブルを思うと、東日本大震災に至る100年弱で日本が地震や災害に対して強くなったこと、そして民度の上昇を感じざるを得ない。もちろん、それでも犠牲者は出てしまうのだが・・・。
    荷物経由での火事の広がりは本当に怖いと感じた次第。陸軍被服本廠の件や吉原の件の描写は読んでいてきつかった。このあたりの文章のうまさは吉村さんだな。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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