新装版 関東大震災 (文春文庫) (文春文庫 よ 1-41)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167169411

感想・レビュー・書評

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  • 関東大震災についてすこし詳しく知りたいと思い手に取りました。本所被服廠跡や吉原の悲劇について知り、大火の恐ろしさに戦慄しました。流言や朝鮮人虐殺、大杉栄事件などの章には大災害で動揺する人々が記録されていました。愚かとは思えません。コロナの初期にも様々な噂が流れたのを思い出しました。
    吉村昭の記録文学は手堅くしかも読みやすいという点で大好きです。

  • 著者の「三陸海岸大津波」と同様の感想になってしまうが、元々知っている内容ばかりだったので新たに知ることのできるものはほとんどなかったが、私が既にいろいろな媒体で知ることができたのは、そもそもこのルポルタージュを元にしてできた記事なり映像だったりするのではないだろうかと思った。それほど詳細に調べてあるということだろう。ルポルタージュということで社会情勢や被害数字もかなり分量的に多くて、新聞を読んでいるような感覚だった。

  • 焼死や溺死が非常に多い。木造密集の家屋が多く、多くの荷物を持った人が多かったのだろう。
    通信の途絶による流言や錯乱が最も恐ろしかった。朝鮮人や社会主義者の虐殺など目を背けたくなる事件の数々が記録されている。

  • あまり知らなかった関東大震災のことをしれてよかった。本所被服本廠跡のことは全然知らなかった。朝鮮人のことは、中学の教科書とかにでてたかな?という感じで、学びが多かった。関東大震災から来年で100年。生きてるうちに経験するかもね

  • 今現在の東京で大震災が起こっても同じようなことにはならないだろうが、これはタメになる。
    この大震災に関しては想像を絶する事態に驚愕した。
    地震による建物の圧死者よりも焼死、溺死者が多かったということ。
    社会情勢による混乱。
    流言による殺人。
    復興の大変さ。
    報道のあり方。
    正確な情報により行動することが大事だと感じたが

  • 震災で大きな被害が出たのは、地震による圧死とかではなく、火災によるものであった。とくに、家財道具を大八車に載せて逃げている多くの人たちがいたため、これに引火したのだ。また、薬品への引火も多かった。消火活動をしようにも、水道管も被害にあって機能せず、池の水を使うしかなかったようだ。
    朝鮮人の来襲説もあった。流言の全ては事実無根だということが、後に警察や裁判所検事局の調査でも明らかになった。当時、人々には、朝鮮人を安価な労働力としてこき使っており、自分たちの朝鮮人に対する態度を後ろめたく思っており、また、恨まれているだろうとも感じていた。その後ろめたさが、この流言を人々に信じさせたのだろう。当初は自警団として活動していたものが、凶器を持つと、単に暴徒と化し、怪しい人間を手当たり次第に殺戮していった。大震災と同時に、日本人が異常な精神状態に陥ってしまった。それでもこの所業は絶対に許されることではない。千人を超える無実の朝鮮人が殺されたのである。これを、もう昔のことだ、と言ってはいけない。過去の罪を償う意味からも、朝鮮の人たちにより優しく、寛容な心で接し、少しでも過去の罪を悔い改めたい。最近は災害が多いが、そんな時は、言葉が通じない外国の方々にも手厚い保護が行き渡るようにしていくことが必要である。新聞も、流言を真実だと伝え、より一層混乱に歯車をかけた。自分の目でしっかりと善悪を判断する能力もまた重要である。報道に対しても、それが本当なのか、事実に則しているのか、判断が難しいところがあるかもしれないが、そうだとしても、寛恕の心で物事にあたっていかなければならない。
    ただ、この本は、特定の1人の体験談ではなく、様々なひとに聞き取りしたりしたもののから、震災の悲惨さ、とくに、どの様に人の心や行動がなされるかを綴っている。淡々と。

  • 大震災の記録が克明に書かれています。
    被害の詳細な数字、混乱の生々しい記憶などあまりにも具体的で身に迫る物を感じました。
    時代は変われど、受け継いでいかなければならない内容だと思いました。

  • 震災の類型では、関東大震災は火災だと教えられる。また、「井戸に朝鮮人が毒を入れた」などといった流言から虐殺が行われたことも知識としては知っていた。しかし、本書を読むとそれ以上の酷いことが行われていた。また、震災直後の避難民が過ごした過酷な環境も想像を絶していた。読むのが辛い部分もあった。軍、警察、消防の通信インフラは脆弱で、東京が孤立することになった一因と思われた。現代では、通信インフラが完全にダウンすることはなくなった。しかし、SNSなどによるデマの拡散という悪い面も看過できなくなったのは皮肉なものだ。

  • 地震の被害以上に、被災後の人々の悲惨さに唖然とした。死体の山を被服廠跡でまとめて火葬にし、骨の山が3メートルにもなるとは想像を絶する。人々のパニックと政治の無力さが重なって読んでいて胸が苦しくなった。朝鮮人虐殺や大杉栄殺害など、デマに振り回される愚かな群衆には怒りさえ覚えた。今後大地震が襲った時にも同じような事が起きるかもしれない。愚かさが招く二次災害だけは防ぎたい。もっと多くの人に読んでもらう本だと思った。

  • 日本人の民度の低さに唖然。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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