- Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167557027
感想・レビュー・書評
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夫に裏切られている瑠璃子は林の中の別荘に家出し、チェンバロ作りの新田氏と助手の薫さんに出会う。
二人の、チェンバロを通じた深いつながりを感じつつも、そこへ割り込もうとする瑠璃子。二人はそれを拒まないどころか、優しく受け入れるのが不思議。
瑠璃子は薫に嫉妬したり、新田氏を誘惑したりするが、三人の不思議な関係は変わらない。
結局、瑠璃子は離婚し、再出発するが、あの別荘での出来事はきっと意味があったんだろう。
チェンバロの奏でる『やさしい訴え』とはどんな曲なんだろうと、検索して聴いてみたら、本当にイメージぴったりだった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
林の中にある別荘に夫の元から逃げてきた瑠璃子は、チェンバロ製作者の新田とその弟子である薫と知り合い、それぞれ心に傷を負った三人で、不思議な三角関係が形成されていく。
濃い緑の匂いや、少し哀愁を帯びたチェンバロの音が感じ取れるような美しい文章の中に、時折混ざる嫉妬の表現がなんとも不安をかきたて、読んでいると癒されるのと同時に、胸がざわついた。
読み終えた後、胸に突き刺さるよな強烈な印象ではないものの、ちょっと悲しくて切なくてほろ苦い……そんな余韻に包まれました。 -
チェンバロの音楽をバックにかりぐらした小川ワールドが広がる。
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大好きな小川洋子さんの4冊目めです。
そしてもちろんやっぱり私の期待通りでした。
夫から逃れ山あいの山荘に隠れ住む主人公の女性が、そこで出会った
二人の男女と共に互いの傷をやさしく癒しあっていく...。
とても淑やかでありながら、それでいて少し大胆なところもあり
今までの小川洋子さんの作風からすれば今回の「やさしい訴え」は
いつもより高潮している部分もあって、そういった意味では
今までとは違った新鮮さを味わえたようにも思います。
「やさしい訴え」とはバロック時代の作曲者ジャン=フィリップ・ラモーの
チェンバロの曲のタイトルなんだそう..。どんな曲なんでしょうか。
バロック時代の音楽とチェンバロの楽器は大好きなのでぜひ探し出して
聴いてみたいと思っています。 -
登場人物に名前がついてるからかな、
とても生々しい。 -
心の中の出来事なのかなあ、と思われる物語でした。
皆それぞれに、林の中にとどまり
自分自身を癒していく。
言葉にならない思いを抱えながら、静かに
生きてゆく。 -
たまたまそばにいた普通の男性がよく見えちゃったのかな。なんだか心に壁があるような主人公。薫さんと新田氏の深い関係には及びもしなかった。お姉さんがいたのか・・・。お姉さんになんの相談もしないような関係なのかな。
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林の中にいるようで涼しくなれる物語。
静かな気持ちになれる。
ただ主人公が女くさくて、イマイチ好きになれないかも。ただ引き際は潔い。 -
夫から逃げ、森の奥の別荘に隠れ住むカリグラファー業の女性。偶然出会ったチェンバロ作りの男性とその女弟子。三人の不思議な関係と挫折を描く愛の物語。
早速、YOUTUBEで♪やさしい訴えを聴きました。この物語のイメージどおり、哀しく切なく、でも優しい音色でした。舞台でもある森の美しさが、人の悪魔的本性を引き出してしまうのも、このメロディに合っていました。 -
結局瑠璃子さんは脇役に過ぎなかったんだろうか。ひたすらに孤独に終わるのが悲しい。