空白の叫び 上 (文春文庫 ぬ 1-4)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167682040

感想・レビュー・書評

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  • 章のタイトル通り、胎動をひしひしと感じる上巻。

    3人の物語がどうつながっていくのか?
    なぜ一人だけ一人称で書かれているのか。

    大きな期待を持たせつつ中巻へ。

  • 上巻は3人の少年たちが出会う以前のことが描かれている。3人それぞれの人物像、生い立ち、思考など。
    上巻のラストの展開は、想像していなかったために衝撃が大きかった!

  • 読み始めると続きが気になり、上・中・下巻を一気に読めた。
    ただ、読後感は高野和明の『13階段』以上に、とても悪かった。徒労感を覚えるばかりで、もう一度読み直したいとは思えない。
    第一部で、3人の少年の殺人の動機について丁寧に描写されていた。神原と葛城の動機については納得できたが、久藤については、共感できなかった。
    第二部の少年院での生活については読んでいて気分が悪くなった。特に葛城が気の毒で、読んでいて辛かった。
    第三部については、あまり意外性がなかった。また、瀬田が葛城と神原を憎み、陰湿な嫌がらせをする動機や、神原が宗像の子という設定は、あまりにも強引でご都合主義的な印象を受けた。

  • 読んだー。結構逝っちゃってる感じで好きでした。殺人を犯した男子中学生3人のお話。久藤がタイプでした。途中久藤と葛城がBLぽくなって萌えました。上中下で読みごたえもたっぷりだし、イベントも多いので飽きずに読めます。

  • 退屈な日常の中で飼いならしえぬ瘴気を溜め続ける久藤。恵まれた頭脳と容姿を持ちながら、生きる現実感が乏しい葛城。複雑な家庭環境ゆえ、孤独な日々を送る神原。世間への違和感を抱える三人の少年たちは、どこへ向かうのか。少年犯罪をテーマに中学生たちの心の軌跡を描き切った衝撃のミステリー長編。

  • 少年犯罪に手を染める三人の少年を描いた物語。上巻ではそれぞれの少年の生い立ちと罪を犯すまでの経緯が、中巻では少年院での生活が、下巻では出所後の出来事が語られている。

    少年犯罪について描いた作品は数多くあるけれど、本作はその中でも特に素晴らしいものだと思う。ただ、誤解を恐れずに言えば、この作品の核心は上巻にすべて詰まっていて、中巻・下巻はある意味、補足のようなものであると思う。

    少年犯罪を扱ったどの作品を読んでみても、力点が置かれているのは少年の心理描写であることが多い。それはやはり、「なぜ普通の少年が殺人を犯すのか?」という疑問が、読者がもっとも知りたい点であるからだろう。

    この作品の上巻では、文庫本丸々一冊分を使って、三人が殺人を犯すに至るまでの心理状況が詳細・克明に語られている。しかもそれは、普通のミステリー・サスペンス小説では考えられないほどの分量である。三人の少年が何を見て、何を聞いて、それに対して何を感じたのか。

    それを冗長に感じる読者もいるかも知れない。なぜならば、「これが彼らを犯罪へと向かわせたのだ」といえるような出来事が明確に示されるわけではないからだ。おいおい、一巻も使っておいて結局何も分かってないのかよ?とツッコミを受けそうである。

    しかし、それは違う。本作を読んだのであれば、少年達がなぜ殺人などという残酷な行為をしたのかが分かるようになるはずだ。ただそれは、「痴情の縺れ」とか「キれた」とか、そういう一文で表すことができるような性質のものではないというだけの話だ。

    さっきも書いたようにこの作品では、少年達の感情、彼らが見たり聞いたりしたものの、彼らを取り巻く環境などの描写の量が半端ではない。一つ一つの要素を取り上げてみても何かが理解できるわけではない。しかし、それらすべての要素を読み終わり、目の前に積みあがった彼らの内面と直面したとき、我々はなんとなく直感することになる。

    あぁ、犯罪者だ。と。

    親切な小説でも分かりやすい小説でもない。ついでに言えば救いもない。ただ、少年達の胸の中で高く積みあがったどす黒い「何か」を感じようとすることは、少年犯罪を理解する上で欠かせないのではないかと思う。

    テレビに出て、なんでも知っているような顔をして話すコメンテータは好き勝手なことを言う。
    「親が悪い」
    「社会が悪い」
    「テレビゲームが悪い」
    きっと、それは一つ一つは間違っているわけではないのだろう。非行へ走った要因の一つであるのは確かなのかもしれない。ただ、それらの言葉は余りに不十分すぎる。それだけが原因ではあり得ないだろう。少なくとも、コメンテーターに与えられた数分の時間で言い切ることは不可能なはずだ。

    それでもやっぱり私達は簡潔で分かりやすい原因を探そうとしてしまう。そっちの方が楽だから。親が悪いのなら「やっぱり犯罪者の親はちょっとおかしいよね」と言えばいいし、社会が悪いのなら「今の社会はおかしい!」と文句を言うだけで私達の義務は達成されてしまう。そして翻って自分のことを「私は悪い社会には影響されず、親も普通の人だから、私は犯罪者にはならない。」という結論を出すことができてしまう。

    本作は、そういった社会の風潮に警鐘を鳴らすような作品だと思う。私も彼も彼女もみんな、明確な原因などなく、社会のせいでも親のせいでもゲームのせいでもなく、いままでの人生の積み重ねの結果、たまたま、なんとなく、ある日突然と、人を殺してしまうということが、実はあり得る。

  • 1月-10。4.0点。

  • 読了日は下まで読み終わった日です。

  • 上から下まで3冊読み終えて、やっぱりこの人が書く本の終わり方がとても好き。
    決してよい結末で終わる事はないが、納得がいく。

    全体的には上はよかったのだが、3人が犯罪を犯してそれからの事をもっと詳細に書いてほしかった。
    中ですぐに少年院に入っているので殺された家族の様子や、捕まったときの様子などが全く分からない。回想であってもよかったと思う。

  • 貫井さんの小説は、深く、重く、読むには覚悟が必要だと再認識しました。続編はもう少し余裕が出てから。

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著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。「症候群」シリーズ、『プリズム』『愚行録』『微笑む人』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』『悪の芽』『邯鄲の島遥かなり(上)(中)(下)』『紙の梟 ハーシュソサエティ』『追憶のかけら 現代語版』など多数の著書がある。

「2022年 『罪と祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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