烏に単は似合わない 八咫烏シリーズ 1 (文春文庫) (文春文庫 あ 65-1)
- 文藝春秋 (2014年6月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167901189
作品紹介・あらすじ
史上最年少松本清張賞受賞作人間の代わりに八咫烏の一族が支配する世界「山内」ではじまった世継ぎの后選び。有力貴族の姫君四人の壮大なバトルの果て……。史上最年少の松本清張賞受賞作品。解説・東えりか
感想・レビュー・書評
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正直に告白します。舞台こそ「山内」という空想のものなれど、后の地位を巡る愛憎劇が繰り広げられつつ惨劇が起きるのだろう。なんて、思いながら読み始めたのだが、まるで甘すぎた。いや、自分が甘すぎたのであって、物語は全く甘くない。参りました。シリーズ第1弾でガッツリ掴まれました。解説に書かれている通り、読み終えてから冒頭に戻って読み返した。恐らく誰もが同じことをしたのではないだろうか?
山神は自らの代わりに山内の地を納めることを金烏に命じ、金烏は四人の子供たちに東西南北に分けた地を与えた。子々孫々、与えられた地を守る四家四領ができ、金烏を宿すのが宗家となった。
今作の舞台は、宗家の皇太子である日嗣の御子の后「桜の君」候補を集めた桜花宮。東家のあせび、南家の浜木綿(はまゆう)、西家の真赭の薄(ますほのすすき)、北家の白珠(しらたま)という后候補に、それぞれ順に春殿、夏殿、秋殿、冬殿という屋敷が与えられる。そして、第1章から春夏秋冬と銘打って各后候補を中心とした物語が続いていく。その中で徐々に各后候補の人柄が分かってくるが、少しずつどこか物騒な事態や政略などが明らかになってくる。その辺りからはもう先が気になりすっかりハマり込む。出来上がりつつある人物像は尽く覆され、物騒な事態はただ不運の重なりで起きたことではないと分かる。事実からだけでは浮かび上がらない多くの思惑が幾重にも重なる。『烏に単は似合わない』というタイトル、読み終えてみると目に見えることから目に見えないことまで様々なことを連想してしまう。1巻だけでは気になることも多すぎて続刊も楽しみだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ここにきて、ようやっと読み出した八咫烏シリーズ。積読が数年に及んでいたため、私の手元にあるのは旧カバーだけど、個人的にはこちらの方が好みだったりする。
ファンタジーというと中世ヨーロッパのような世界観が多数を占める中、小野不由美さんは十二国記シリーズで古典中国のような精緻な世界観と天命説を組み込んで見せた。それでは本シリーズはどうかというと、日本の平安朝のような、華やかな姫君たちのサロンが舞台である。そこは八咫烏の一族が支配する世界であって、なんと人間は鳥の姿に転変できるという。一歩間違えたら冗談になりかねない、摩訶不思議な設定だと思う。
本書の評価は大きく割れているようだが、それは始めにどういうマンインドセットで読み始めるかにかかっている気がする。
剣と魔法を期待したファンタジーファンは、貴族の権力闘争と、若宮の后の座を巡るどろどろした女の闘いに、肩透かしをくらったように感じるだろう。ましてや最後の展開には、気持ちの悪ささえ感じてしまうかもしれない。
だが、本書は松本清張賞受賞作品である。解説で東えりかさんが書かれているように、後半にきて物語はガラリと、本当にガラリと空気が変わる。まるで白い鳥だと思っていた卵から、全く予想もしなかった黒い烏が産まれたような驚きがある。そして、こういう驚きが、大好物なんですね、ミステリファンは。予想が外れて怒るどころか、喜ぶのがミステリファンである。私はとても楽しんだ。
受賞当時、なんと作者は驚きの二十歳。執筆や構想はそれよりも早いはずである。登場人物のキャラクタが固まり切っておらず、少しブレがあるように感じるのは早書きだからだろうか。シリーズが展開していき、そこがどう変わっていくのかも楽しみだ。
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十二国記のような異世界ファンタジーに平安ぽさの漂う後宮を混ぜた印象だったが、徐々に雰囲気が変化していくのはなかなか面白い。なにぶん登場人物が多く、それぞれの性格や思惑の把握、複雑な人間関係の把握に時間もかかったし、世界観に入って行き難かった。何度か読むともっと面白くなるのかもしれない。人に勧められて読んだから期待し過ぎたこともある。
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たびたびブクログのレビューで見かけて気になっていた1冊です。
舞台は八咫烏の一族が支配する世界。
若宮の后候補として四家の名門貴族から遣わされた美しい姫君たちの1年を描いた、王宮で繰り広げられるきらびやかな和製ファンタジー。
…かと思いきや、なのである。
ある者は若君への恋心を胸に、ある者は家の期待を背に負って、またある者はうかがい知れない思惑を抱え。
今上陛下の正室や大貴族の当主たちの権力争いも相まって、ストーリーはどんどん予測できない方向に転がり始めます。
次々と変わる風向きや旗色に目を白黒させつつも、ページをめくる手が止まりません。
そしてたたみかけるように真実が明らかになる第5章、夢中になりすぎて体温が上がったように思えたほど、のめりこんでいたのでした。
この八咫烏シリーズ、続編があるのだそう。
「また裏切られたい」という期待を胸に、そちらも読んでみたいと思います。 -
ようやく話が繋がった。
2作目から読んでしまったので、ところどころ話が?マークがつくことがあった。
スタートは、ここだったのか!
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初の阿部 智里作品。『八咫烏』シリーズ第1巻。最初のきらびやか雰囲気とは打って変わって、後半のミステリアスな展開には、舌を巻く程の面白いファンタジー(?)作品でした❗第19回松本清張賞史上最年少受賞も伊達ではないと、とても感心した作品です♫
あせびの印象が最初と最後で、ガラッと変わったことは驚きですが、個人的には浜木 綿が、イチオシのキャラクターです❗
ファンタジー好きは勿論のこと、ライトミステリー好きの方にもオススメ出来る秀作です♫
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2012年6月文藝春秋刊。2014年6月文春文庫化。第19回(2012年)松本清張賞受賞。阿部さんのデビュー作。八咫烏シリーズ1作目。八咫烏族の後宮ものの話が、中盤まで続き、その後の女官の死亡事件から、不穏な展開に推移する。残り20%というところで、後宮の主となる若宮が登場し、今回の出来事の謎解きが始まるというストーリー仕立になっており、予想もしない展開で、一気にラストまで読み進みました。若宮の花嫁候補となる4つの家の者、後宮を管理する者達との諍いの中での若宮の推理は、いくつもの驚きと哀しみを明らかにし、隠された事実をあぶり出しますが、爽快ではあるものの、割り切れない想いも残ります。物語りは、決して完結したことにならないという予感と続編への強い期待に繋がります。続編が、とても楽しみです。