顔 FACE (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198922337

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  • 2002年発表らしき、横山秀夫さんの警察ミステリー。
    「64」などでおなじみの、架空の県「D県」の警察、D県警を舞台としたシリーズ。
    ほんのちょろっとですが、「64」や「陰の季節」に出てきたキャラクター・二渡さんが出てくるのがファンにはご愛嬌。
    また、この「顔」の主人公の女性警察官・平野さんは、「陰の季節」に出て活躍しています。

    なんとなく、横山秀夫さんの小説が読みたくなって、ふっと買って、あっという間に読み終わりました。
    いつも通り面白い。
    でも...正直「陰の季節」「第三の時効」には太刀打ちできないかなあ、という印象。

    以下備忘録。

    連作短編です。婦人警察官・平野さんが全て主人公。

    ●「魔女狩り」
    主人公は、広報の部署にいます。今映画などで話題の「64」の主人公がいた部署ですね。
    記者対策、特ダネを漏らしている警察官を探す、「魔女狩り」。
    オチは、女性記者に岡惚れした男性警察官が犯人。ただ、女性記者は、他社の男性記者にこれまた岡惚れしていて、そっちに特ダネを譲っていた、という。
    「業界もの」の濃密さに、ついつい利害やモラルを踏みにじるヒトのサガみたいなのが描かれて、さすが表題作。


    ●「決別の春」
    主人公は部署替え、今度は電話相談の相談員みたいな仕事。
    連続放火事件が起こっていて、それ絡みで、とある女性と知り合う。
    その女性は子供のころ、自分の叔父が放火して、自分の父を亡くしていた。
    それから10年以上。成人した女性は、誰かが自分を狙っている、という...。
    オチは複雑でドラマチック。
    実は少女の頃の放火事件は。少女自身が犯人だった。
    父は、母と叔父に暴力を振う男だった。
    その理由は、叔父と母が愛し合っていたから。
    暴力に憤った少女が放火して父を殺した。
    それを知った叔父が、罪をかぶった。
    少女の実父は、叔父なのかも知れない。
    ちょっとドラマチック過ぎて、ややストロークが短い感じがして勿体なかったかな...。

    ●「疑惑のデッサン」
    かつて主人公は、鑑識課で似顔絵を書く仕事をしていた。
    本音はそこに戻りたい。
    でもそこは今、後輩婦警が担当している。
    なんだけど、その後輩婦警は、ぜんぜん絵が上手くない。
    とある犯罪が起こった。目撃者がいて、似顔絵が描かれた。
    それで犯人がつかまった。
    なんだけど、下手なはずの交配婦警の似顔絵が、「あまりに似すぎている」疑惑。
    オチは、その犯人と、後輩婦警が、男女関係があった、ということ。
    全体的に、対犯罪や組織との軋轢の緊張感が薄くって、いまひとつか。

    ●「共犯者」
    主人公は、捜査の現場勤務。
    ローカルな県警で、銀行強盗の模擬訓練がある。
    それなりに大きなイベントだが、当日、その裏で狙ったかのように本物の銀行強盗が。
    模擬訓練を知っていた者の仕業だろう、と。
    県警内で醜い調査が始まる。
    オチは、数年前の模擬訓練で、びっくりして失禁した女子行員がいて、恥をかいて自殺してしまった。
    その祖父が県警を銀行を恨んだ。
    その祖父がラブホテルを経営して受付にいる。
    そのラブホテルでその銀行の支店長が不倫していて、そこから情報を得た。
    そして、チンピラとつるんで犯罪を犯した、という。
    ちょっと強引な感じが。

    ●「心の銃口」
    主人公は刑事部勤務。
    仲の良い婦人警官がいる。その女性は射撃が上手い。
    女性警官も拳銃を携帯できるように制度が変わる。
    その矢先、その「射撃の上手い女性警官」が、悪者に拳銃を奪われる。
    犯人は「女性だった」という。
    同僚たちと捜査にかかる、主人公平野さん。
    犯人を追いつめるが撃ち合いに。
    相棒の中年男性刑事が、犯人の女性を撃ち殺した。

    オチは。
    犯人は警官マニアの女性。
    以前から、D県警の悪い刑事から、密かに警察グッズを買ったりしていた。
    その悪い刑事が、たまたま、主人公・平野さんと、この事件の捜査で相棒になった中年男性刑事。
    それを隠して、中年男性刑事は捜査にあたる。
    犯人知ってるから、すぐに探し当てた。
    主人公・平野さんを助けるふりをして、口封じに撃ち殺した。
    この構造に主人公が気づく。同時にD県警も気づいていて、中年男性刑事はつかまった。

    この話も、けっこう力技な落ちなんですが、これはそこそこ長い中編で、ストロークが分厚くて楽しめました。
    人物たちの、「男性社会でも葛藤」ということも含めて。

    ##########

    総じて実は「魔女狩り」と「心の銃口」の2編を読んだらそれで良いかなって感想もありますが、
    他の短編も、それなりに楽しくするすると読めてはしまいました。

  • 婦人警官が主人公。警官にしては頼りなく、読んでいて嫌になってきた。男の読者なら、健気に思えるのかもしれないが、私が読んだ限りではいらいらしてくる。わたしだって警官なんだから、と言いながら、拳銃を使うのが怖いって???

  • 重くなりがちの警察小説だが、この本に関しては読了感にすがすがしさを感じた。
    いや、どんな犯罪も決して許されるものではないし、すがすがしいという表現は不謹慎かもしれないけど、どんな事件にも、まっすぐでひたむきに向き合う主人公瑞穂の視線が本当にすがすがしく、自分の立場が悪くなっても他人や同僚を思いやり行動に移してしまう、不器用だけど温かい人間味を感じた。
    最後の短編「心の銃口」はすごい臨場感( ゚Д゚)通勤電車内で読んでたけど、夢中になりすぎて駅を乗り過ごしそうになった(笑)

  • ドラマから入ったので、設定の違いで物足りなかった。

  • 2015.10.06

    D県警シリーズ。似顔絵婦警。

    ある事件をきっかけに、鑑識→広報→電話相談→強行犯係。

    影の季節にも登場。

  • 最初はあまり面白くないかなと思い読み進めましたが最後の話し、結末は良かったです。

  • 20150509

  • 似顔絵婦警・平野瑞穂さんが頑張るお話。

  • 2015/3/3読了

  • 別の短編で失踪した婦警のその後の物語。
    その短編で主人公だったD県警の婦警のおかあさんな七尾さんの懸念通り、二渡によって広報へ移動させられた瑞穂。
    前作に出てくる通り、まじめで可憐な娘さんのイメージは相変わらず。
    こういうタイプは男性社会において異常に持ち上げられるか、スケープゴートに選ばれるかどっちかになってしまう。
    彼女はまじめでおとなしめの性格が災いして、見事にスケープゴート。
    広報の上司も64で美人の部下を利用することをよしとせず却って本人に女性差別です!と言われてしまった三上警視のようなタイプとは正反対の「だから女は!」という典型的な男社会の男。
    一話目はリークの犯人捜し、命令ではなく、それとなく匂わすやり方で汚れ仕事をいう上司に反感を抱く瑞穂の怒りは64の八雲と同じものだ。
    どちらも汚れ仕事も仕事のうちと飲み込んでいるのに、なぜはっきり命じてくれないのかというもの。
    これは営業職の若い女性なら一度は感じたことのあるもやもやかもしれない。
    キャバクラにつれていかれても困るが、かといって箱入りにされてもという矛盾。

    大きな過ちを犯してしまった彼女はそれでもやはり警察官の職務をまっとうしようと、地味に努力を始める。
    その姿はひたむきでまっすぐだ。
    最終章ではその熱心さからまたもや失敗をしてしまうが、立ち直ってまた地道に仕事に励む。
    彼女が最後どうなるのか気になって、短編にもかかわらず一気読み。
    ハードな体験を乗り越え明るく元気に進んでいく彼女にほっとした。
    それにしても64ではそう思わなかったが、脇役の女性キャラのいやらしさ書くのうまいなぁ。
    情報の加工とかきをつけよう。

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著者プロフィール

1957年東京生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、1998年「陰の季節」で松本清張賞を受賞し、デビュー。2000年、第2作「動機」で、日本推理作家協会賞を受賞。2002年、『半落ち』が各ベストテンの1位を獲得、ベストセラーとなる。その後、『顔』、『クライマーズ・ハイ』、『看守眼』『臨場』『深追い』など、立て続けに話題作を刊行。7年の空白を経て、2012年『64』を刊行し、「このミステリーがすごい!」「週刊文春」などミステリーベストテンの1位に。そして、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞(翻訳部門)の最終候補5作に選出される。また、ドイツ・ミステリー大賞海外部門第1位にも選ばれ、国際的な評価も高い。他の著書に、『真相』『影踏み』『震度ゼロ』『ルパンの消息』『ノースライト』など多数。

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