屍者の帝国

  • 河出書房新社
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感想 : 441
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  • Amazon.co.jp ・本 (459ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309021263

感想・レビュー・書評

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  • 予約待ち続けて、やっと読めました。
    「妖怪大戦争」張りの有名人がじゃんじゃん出てきます。まず其処が楽しかったです。氏の「MGS」ノベライズ作品の様なワクワク感。
    正直云うと、円城塔さんの作品は自分には読みにくく受け入れにくい物でして、先だって公開されていた伊藤さんのプロローグ部分から、どうやったらこの人が続きを書けるんだろうか(苦笑)みたいな姿勢で読みました。
    伊藤2:円城8の出来。いや、頁数の問題じゃ無く。
    概念的な話を、読者の納得を置き去りにしたままどんどんぶっちぎって進んで「え?終わったの?」って云う感じが円城さんっぽい。
    旅が進む度に繰り広げられる駆け引きや戦闘シーン、エンタテイメント的要素は伊藤さんっぽいです。
    所々、腑に落ちる円城ワードもあるので何とか付いて行けたと云う感じですが、ロンドンや山岳地帯、思惟的な夢の描写なんかも伊藤さん的で、円城さんええ人や~とか感心してみたり(笑)

    若干、ラストが煮え切らなかったのですが、
    旅(物語)の口火を切ったワトソン→伊藤計劃
    傍で物語を文字に綴るフライデー→円城塔
    とか思ったら、急に泣けてきました…
    「ありがとう」ほんとうに、ありがとう。

  • 伊藤計劃ではない、と思う。これは円城塔だ。それだけではなく、円城塔のエンターテイメント、である。

    アクションあり、ラブロマンスあり、ロードムービーありと、円城塔を一度でも読んだことのある人なら「え?」と言うこと間違いなしのハリウッド要素満載だが、それらをきちんと料理してエンターテイメントにしているあたり、その筆力は底しれない。そしてもちろん、円城塔お得意の美しい仕掛けも健在。それはキャラクターの名前に現れるオマージュであり、作品に度々現れる「誰もが自分の物語に沿ってしか物事を理解できない」という作品内法則であったり、紅一点の存在でもある。それら全てがエンディングにつながっているときづいたときのシビレは、なかなか味わい難いものだった。

  • 夭逝された伊藤計劃さん+円城さんということで興味津々。
    重たそうな、訳わかんなそうな印象でしたけれど、
    読み始めたら喰いつけた、ぐいぐいと。

    さすが、円城さんとうならせるような文章表現のハイレベルで
    上品で、密度の高さ。
    レトロ感も味わえて、しかも描かれている内容を
    頭の中で勝手にビジュアル化した時のハリウッド的なアクションも
    胸ときめかされ、登場人物のたたずまいが目に見えるようです。

    本屋大賞にノミネートされていますが、
    私的には内緒にしておきたい一冊でした。
    内緒、という訳にはいきませんね。やっぱり。

  • ☆3つ
    本屋大賞2013ノミネート作品でしかもフランケンシュタインなどの登場するSFだと言うから走っていって手に入れて、そいで急いで読んだ。いや急いで読もうとわした。

    でもSFとは名ばかりで本当は「純ブンガク」!であった。わたし、純文学は人に自慢できるほど苦手なのだ。

    というわけで、苦しみながら3日間掛かってやっと読み終えたのでありました。あー眠かった。そぉーでしょ? 純文学読んでると寝るでしょ?違う?

    でもいやはやまいったぜ。本当に苦手でして、しかもこの作品のエピローグの長いこと長いこと。ああ、やっと終わったぁ~、などと油断しているとひどい目に会う。エピローグにⅠとⅡがあるんだぜ。みなさんもじゅうぶんにお気を付けください。

    ああ、こいつがもし本屋大賞になっちまったら、書店員さん達はともかく読者はどうすんのかな。「あ、本屋大賞♪」という気分で読んだ人の半分以上が熟睡してたりして。わはは。むふふのぐふふっっ。

    『屍者の帝国』よ、目指せ本気で本屋大賞!!!!!!!

  • 好きな伊藤計劃氏の遺作を円城氏が引き継いで完成させた物語。
    1900年前後の歴史をなぞらえた不思議な世界観や冒険を交えた緻密なストーリー、生者でも死者でもない屍者という設定は面白かったが、いかんせん小難しく風呂敷を広げた感があって難解だった。

    それでもハーモニーや虐殺器官のような揺さぶられる衝撃はなかったものの「魂」と「言葉」という伊藤計劃氏らしいメッセージは感じられた。死を目前にしながら死について心血を注いで考え抜いた氏らしい作品だった。

    世界をまわり、過去をみつめ、未来を考えたワトソンの最後の行動には奇妙な感動を憶えた。

    自分のなかに咀嚼できた感じはないの改めてまた読んでみたい。

  • 虚実入り混じる膨大な1900年代サンプリングと、壮大なストーリー、なにより「死者の残した文章から謎を探る」設定そのものが、円城塔が今回行った執筆と被る部分にグッとくる。
    これで本当に伊藤計劃とはお別れになるのか。

    そして主人公ワトソンのラストの展開も思わず涙を誘う終わり方に……
    純文学じゃない。最高のエンタメ小説‼

    円城塔の若干のオタク要素も垣間見える、文中の小ネタも計劃リスペクトだよなぁとか思いながら読んでた。元ネタに当たりつつ、二週目も読みたい作品。

    ただ相変わらず、一読しただけでは分かりにくい展開が数点あったので満点はキツいかと。

  • プロローグと第一部からで文体が変わるので、ここからが円城氏かと非常にわかりやすかった(笑)。
    しかし終わってみれば、面白いけれど、思ったより深みがないなという印象を受けた。
    着想はとても魅力的なのに、読者を煙に巻かんばかりに変にこね繰り返しているような……そのせいで、かえって輪郭がぼやけ、ただ重厚に見せかけているだけという感じがした。設定等と文章があっていないという違和感を、この本で言っても仕方ないのだが、やはり借り物のにおいがぬぐえなかった。
    とはいえ、実在・架空問わず有名な人物や戦争が入り交じっての展開にはついつい口元がゆるんでしまう。あれこれ文句は言ったが、ここまでのものに仕上げた円城氏はすごいと思うし、拍手を送りたい。

  • 現代におけるゴシック小説として秀逸な出来。
    基本的にゴーストバスターズだが、自意識を取り扱う小説でもあり、その流れでいけば、アガサ・クリスティ的な独白ミステリ(信頼できない語り手)の流れもくむ。(とはいえ、すぐ連想したのは田中芳樹のお涼様シリーズだったのだが、それでいくと両者ともホームズ-ワトソン関係のパロディでもある)

    作品において一貫する問いは常に、「誰がこの物語を語っているのか」という点にある。舞台装置やキャラクターに酔ううち、読者はいつの間にかこの事実を忘れ、時として、混乱しつつ読み進めることになる。

    エピローグは、個人的には少し冗長に感じた。
    だが、自意識、あるいは語り手、という点で物語りの結びとしては必要だったかもしれない。
    それに、円城としては、伊藤との合作という形で書いた以上、どうしても書いておきたかったのだろう、とも思う。

  • 伊藤 計劃が書いたエピローグは面白そうで軽い展開を想像させる感じだが、円城塔の執筆(本のほぼ全て)は哲学的な部分と、世界の有名人の名前が登場でクスっと笑える部分が混合していて、何とも不思議な感じがした本でした。
    フランケンシュタインを探す旅に出かけるワトソン君。
    ワトソン君(シャーロックホームズ)がいて、ヴァン・ヘルシング教授がいて、カラマーゾフの兄弟がいて、ダーウィンがいてアメリカの南北戦争
    まで登場。そして日本の大村益次郎の登場。
    屍者が当たり前のように存在し、労働力として使ってる生者達。
    意識とは何なのか?魂とは何なのか?生命とは何なのか?
    物語の残り4分の1は、哲学的要素満載。
    そしてラストのワトソン君への独白は、胸を打つ言葉がたくさん有る。
    少し読み難い本でしたが、久しぶりに一気に読了できました。

  • 出版までの経緯を省くにせよ、何と言っても、「円城さん、ありがとうございました」に尽きると。

    以前に伊藤計劃の遺稿であるあの硬質なプロローグを読んでからのち、円城さんがインタビューでおっしゃる「悪ふざけ」展開は予想できていなかった。
    そういう極々エンタテインメントな作品として両手に載ってきて、ゆかいなタイムトラベルをもたらしてくれた。繰り返しの読み返しを、様々な読みを許容する懐があり、しかしこれはなにより、真摯な、魂の悪ふざけなのであって、エピローグには熱く胸打たれた。
    作家はうつせみを生き、死ぬことを繰り返すのだなと、それはとりもなおさず過去から未来へ繰り返されていくあらゆる人生の似姿であるかもしれない、と時折感じることが陳腐とは思わない。
    おふたりともほんとうによくお書きになられたと感謝したい。

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著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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