死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相
- 河出書房新社 (2018年8月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309207445
感想・レビュー・書評
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アメリカのドキュメンタリー映画監督が、旧ソ連で起こった「世界一奇妙な遭難事件」を追いかけていく様を詳細に語った一冊。
事実を丁寧に救い上げ、遭難した若者たちを単なる「不幸な犠牲者」ではなく、その時代を生きた生身の人間として取り扱い、人となりを拾い上げながら、ひとつひとつ不可能をつぶしていく。
その途方もない努力と調査力に、一つの映画を見ているようなドキドキ感で、ボリュームがあって聞きなれない地名や人名も多く出てくる本にも関わらず一気に読んでしまった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
登山をする者ならば一度は耳にしたことのある話のひとつ、それがこの事件だ。
しかしながら少し語弊が生まれてしまうのは、この山岳事故は過失や不運といった不可抗力やドラマツルギーなどが挟まれる余地のない「まったくの謎」とされ伝聞していることだった。
誇張しまくった枝葉は山岳的な謎というよりもオカルトやミステリーといった、学研ムー的な方向へ肥大してしまった。
筆者は丹念なのかどうかは正直図れないが、現地の取材旅行を行い一つの仮説に向かって調査探求を進める。並行して若くしてその命を失ってしまった若者たちにも感情移入出来る作りになっている。
「数多ある一つの説」として片づけられていきそうな気もするが僕にはひとつのカタルシスを与えてくれた。
いずれにしても今後も陰謀説やUMA的な仕業、まあ人知を超えた物見遊山に胸躍らす人々は尽きないのだろうな。 -
一部で話題になっていたので読んでみた。パラパラとページをめくってみて嫌な予感。カタカナの人名や地名が沢山出てくる。経験上、そういう本は読んでいてうまく情景を頭に思い描くことが難しい。よくわからない外国語のカタカナのせいで想像力が働かないからだ。途中で放り出した本もある。ダメかもな・・・と思いながらページを手繰っていくと、アラ不思議。サクサクと読み進めることができた。これは意外。
現在の著者の時間軸と探検・捜索当時の時間軸を交互に描く試みが功を奏している。それにしても、憎らしいくらいにジワジワと話が進んでいく。読者をジラしながら、しかし飽きさせない。外堀だけは確実に埋められてゆく。しかし核心は手付かずのままだ。こういうときに、何が原因と思うかで人間性の一面が現れると思う。私は軍事(核)実験絡みではないか?と思いながら読んでいた。4/5ほど読み進んでも、未だ事故原因の糸口すら掴めない。「今も真相は闇の中なのだ・・・」みたいな結論だったらやだなー、と思いきや、そこからが急転直下!読む前に余計なこと調べなくてよかったよ。この本はネタバレ厳禁だ。それにしても、本当にそんなことあるのかな?いや確かに、現時点で最も可能性が高い推論だとは思う。人は思い込みや先入観から逃れることは難しい。だからこの推論に達することができたのは幸運なことだろう。
しかし、そんなことが起きる場所なら、当地に何か伝承として残っているのではないか?他のメンバーの線量はどうだったのか?夜間に強風の氷点下三十度の外へテントの中から着の身着のままで飛び出したくなるような、正常な判断力を奪う、そこまで精神を蝕むものなのか?ここまで推論できたなら実証実験や再度の現地調査までして欲しかった。おまえがやれよ、と言われても断るけどさ。ロシアは近々、この事件の再調査をするそうだ。
https://www.afpbb.com/articles/-/3209372
果たしてこの本の推測通りになるのか、大変気になるところだ。
巻末には解説が収められており、この事件がなぜ21世紀の今になって人々の興味を引くのか?という時代性を簡潔に読み解いていて見事だった。現代は地図上の空白がなくなり、昔のような単純かつ純粋な冒険が難しい時代だ。しかし、この本で著者が試みたことは、時空を超えた謎に挑もうとする、現代に於ける新しい冒険なのかもしれない。 -
1959年2月に発生したディアトロフ峠事件。雪深い僻地をトレッキングした学生たちのグループが、全員死亡した。極寒の中でテントを張ったのだが、なぜか靴も履かず、服も満足に着ていない状態の遺体で発見される。不可解な事件としてロシアではよく知られている事件なのだそうだ。米国人の著書も謎に取り憑かれた人の1人であり、丁寧な取材で真実にたどり着こうとする。死亡した人が撮影した写真も残っており、普通の写真が掲載されていることで、さらに事件の突発性と奇妙さが訴えられる。著書はシャーロック・ホームズのように死亡原因を探り、ある結論にたどり着く。それは、ある気象現象だった。臨場感が高い語りで、のめり込んだ。
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遭難から半世紀以上が経過しても真相が解明されず、いくつもの陰謀論が飛び交う「事件」の謎に、米国人ジャーナリストが迫っていく。
遭難に至るまでのトレッカーたちの視点、彼らの捜索にあたる人々の視点、そして真相を追う著者の視点が交互に描かれ、なかなか焦らされる構成。著者が導き出した結論にどれくらいの信憑性があるのかは別として、著者の考え方や姿勢や、犠牲になったトレッカーたちへの敬意といった部分に共感を覚える内容だった。 -
ちゃんとこの本なりの結論を提示していて驚いた
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1959年に旧ソ連のウラル山脈で起きた遭難事故。登山していた学生グループは雪山のなかで裸足でテントを捨て、ほうぼうに散らばって亡くなっていた。
彼らに何が起こったのか?
本書は、2012年にこの事件の謎をとくためにロシアに向かったアメリカ人ジャーナリストによるノンフィクション。1950年代のロシアと現代を行ったり来たりしながら話が進み、謎はなかなか明かされないものの当時の学生たちの道行や唯一の生存者のインタビューなど含め非常に読ませる。
最終的に「真相」として提示された説が正しいかどうかは誰にもわからないけれど、遠い国で50年も前に起きた「山奥の謎の死」にここまで引き込まされたら十分かなと。 -
作者が映画監督だけあって、トレッカーの謎を解明する自身を描いた現代と、トレッカーの実際の足跡を元にした当時のストーリーが並行して進む。本当の真相か分からないが、低周波という一定の結論に達して、ラストのストーリーを作り上げていたり、ストーリーが良くできていたと思う。長々考察して、結論は闇の中というより、一定の結論を元に締め括られていて読後感も良かった。
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テレビ番組で見たことがあったディアトロフ峠事件。
トレッキンググループのリーダーの名をとったものであること。
トレッキングにも難易度があり、三級の資格を取りたかったこと。それには色々な条件をクリアする必要があったこと。
体調が優れず途中で降りたメンバーがいたこと。
どれも初めて知った。
結局何があったのか。誰も真相を知らない。