死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相
- 河出書房新社 (2018年8月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309207445
感想・レビュー・書評
-
ソビエトで起きた謎の遭難事件がテーマ。事件自体が魅力的で、過去と現在が交互に語られる構成の妙もあり、なかなか読ませる。本書の結論で、全てが解決したわけではないのだろう。腑に落ちないところがいくつかあり。ただ本書の謎については、全てが合理的に解決することを求めても良くないようにも思う。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1959年、冷戦下のソ連ウラル山脈を、学生登山チーム9人は登っていた。
休日が終わり、チームは大学に戻らなかった。
捜索隊が編成され、彼らが歩いたルートをたどった先にあったもの。
初めにテントが見つかった。
中には、途中で投げ出された食事の用意。
そしてテント周辺から見つかったのは、登山メンバーの痛いだった。
この、遺体の異様さが謎を呼ぶ。
外は零下30度を下回る気温の中で、衣服はろくに着ておらず全員が靴を履いていない。
そして、遺体の着衣からは高濃度の放射性物質が検出された。
さらに、現場から数十キロ離れた、別の登山チーム、または原住民は、夜に星が落ちてくるような謎の発光物体を目撃している。
現場のホラチャフリ山は、マンシ族の現地語で「死の山」を意味する。
リーダーの名前から名付けられた「ディアトロフ峠事件」は”未知の不可抗力によって死亡”と調査書に締めくくられている。
1959年2月1日、その夜に一体何があったのか。
60年後、一人のアメリカ人が事件を追った。
いやな、事件だったね。
不可解な山の事故というのは、結構よく聞く。
こんな遭難したくないものだ。 -
何と言ってもタイトルがうまい。普通なら「死の山」とするでしょ。「死に山」としたことで、尋常ではない雰囲気が醸し出されていて、事件の不可解さをいやが上にも強く感じさせていると思う。
本書で初めて知った「ディアトロフ事件」、まさに副題の「世界一不気味」という言葉がぴったりの、摩訶不思議な事件だ。九人の若者が命を落とした原因として、宇宙人やら核実験やらを大真面目にあげる人たちがいる、そんな遭難事故が他にあるだろうか。著者はアメリカのドキュメンタリー映画作家だそうだが、長く西側には知られることのなかった事件の真相に体を張って迫っていく。彼の「行動」が謎を解く鍵となったところなど、よくできた映画を観ているようだった。 -
この事件…いや、およそ「奇妙な事件」系に興味のある向きならば必読。
巻末解説にあるように、「鉄のカーテンに遮られて」近年まであまり知られていなかった事件の初の、そして決定的な研究書である。
当時の貴重な一次資料を豊富に収録し、かつ、著者自身の足を使った調査も緻密。事件に向き合う姿勢も真摯な思い入れを含み、最後にはきちんとオチもつけている。
ひとまず、これ以上は望むべくもないだろう。文句なくおすすめ。
2018/9/12~9/13読了 -
世界一不可思議な遭難事故の原因が知りたくて読み始めたけど、悲劇の被害者としてではない普段の若い大学生達の姿が描かれていて、胸をつく。白黒のメンバーの写真を見ながら、読み進めていくので、一緒に旅をしているような気分になった。分厚いけど意外と気にならず読めた。誰の責任でもなく、ベストを尽くしても避けられなかった悲劇。遺族にも慰めになるだろう。
-
ノンフィクション
-
1959年冬の遭難事故の謎を解くノンフィクション。著者がロシアに飛んで謎に挑む過程に恐る恐る同行するような気分になった。
この事故については全く知らなかったが、謎にぐいぐい引き込まれて読んだ。
スターリンの抑圧が去った時代のロシアの学生たちが山旅を謳歌する姿も描かれていて、山が好きな自分は興味をそそられた。