死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309207445

感想・レビュー・書評

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  • ソビエトで起きた謎の遭難事件がテーマ。事件自体が魅力的で、過去と現在が交互に語られる構成の妙もあり、なかなか読ませる。本書の結論で、全てが解決したわけではないのだろう。腑に落ちないところがいくつかあり。ただ本書の謎については、全てが合理的に解決することを求めても良くないようにも思う。

  •  1959年、冷戦下のソ連ウラル山脈を、学生登山チーム9人は登っていた。
     休日が終わり、チームは大学に戻らなかった。

     捜索隊が編成され、彼らが歩いたルートをたどった先にあったもの。
     初めにテントが見つかった。
     中には、途中で投げ出された食事の用意。
     そしてテント周辺から見つかったのは、登山メンバーの痛いだった。
     この、遺体の異様さが謎を呼ぶ。

     外は零下30度を下回る気温の中で、衣服はろくに着ておらず全員が靴を履いていない。
     そして、遺体の着衣からは高濃度の放射性物質が検出された。 
     さらに、現場から数十キロ離れた、別の登山チーム、または原住民は、夜に星が落ちてくるような謎の発光物体を目撃している。
     現場のホラチャフリ山は、マンシ族の現地語で「死の山」を意味する。

     リーダーの名前から名付けられた「ディアトロフ峠事件」は”未知の不可抗力によって死亡”と調査書に締めくくられている。
     1959年2月1日、その夜に一体何があったのか。
     60年後、一人のアメリカ人が事件を追った。


     いやな、事件だったね。
     不可解な山の事故というのは、結構よく聞く。
     こんな遭難したくないものだ。

  • 何と言ってもタイトルがうまい。普通なら「死の山」とするでしょ。「死に山」としたことで、尋常ではない雰囲気が醸し出されていて、事件の不可解さをいやが上にも強く感じさせていると思う。

    本書で初めて知った「ディアトロフ事件」、まさに副題の「世界一不気味」という言葉がぴったりの、摩訶不思議な事件だ。九人の若者が命を落とした原因として、宇宙人やら核実験やらを大真面目にあげる人たちがいる、そんな遭難事故が他にあるだろうか。著者はアメリカのドキュメンタリー映画作家だそうだが、長く西側には知られることのなかった事件の真相に体を張って迫っていく。彼の「行動」が謎を解く鍵となったところなど、よくできた映画を観ているようだった。

  • この事件…いや、およそ「奇妙な事件」系に興味のある向きならば必読。
    巻末解説にあるように、「鉄のカーテンに遮られて」近年まであまり知られていなかった事件の初の、そして決定的な研究書である。
    当時の貴重な一次資料を豊富に収録し、かつ、著者自身の足を使った調査も緻密。事件に向き合う姿勢も真摯な思い入れを含み、最後にはきちんとオチもつけている。
    ひとまず、これ以上は望むべくもないだろう。文句なくおすすめ。

    2018/9/12~9/13読了

  • 世界一不可思議な遭難事故の原因が知りたくて読み始めたけど、悲劇の被害者としてではない普段の若い大学生達の姿が描かれていて、胸をつく。白黒のメンバーの写真を見ながら、読み進めていくので、一緒に旅をしているような気分になった。分厚いけど意外と気にならず読めた。誰の責任でもなく、ベストを尽くしても避けられなかった悲劇。遺族にも慰めになるだろう。

  • 読みやすいうえ興味深くて、ザクザク読めた。
    本編350ページくらいあるけど、2日間で読めた。

    時代背景や当時の人の価値観などにも触れつつ解説されてたから、行動背景がめちゃくちゃ納得できた。
    「なんでそんなバカなことを」「わざわざ危険を冒してまで」とか、まったく思わなかった。
    女性の立ち位置もすごく良かった。きっと居心地の良いチームだったんだろうな。

    自然って本当に恐ろしい。意図も容易く人智を越えてくる。
    テント設営する場所が超低周波が危ないから避けようなんて、当時じゃ絶対分かりっこない。
    むしろおあつらえ向きまであった。
    人間は愚かだからすぐに失念してしまうけど、自然って立ち向かう対象ではないんだよな……
    冬季の登山はしないと誓った。

    さらに、当局の不審な対応が助長してた。
    拷問とか武力に晒されたわけじゃなくてよかったけど、それにしても残酷だし無念……
    せめてテント張る場所さえ違っていれば……と結果論だけど思ってしまう。
    安らかに暖かい場所で眠ってほしい。

    終盤までずっと原因不明なところが、不気味で落ち着かない気持ちにさせられた。
    本当に文章が上手いなあ!そして翻訳も素晴らしい!

  • 数年かかってしまったが読了。注目すべき彼が行き着いた、答え、は数ページであっけなく解明されたが、説得力はある。気象状態が非常にレアなケースだったのと、テント設営場所がキーだったのかも知れない。
    有名な事件だからYOUTUBEなどで概要は何度も観てはいたが、本著者は映像の監督らしく、けっこう文章は読み応えのあるドキュメントだった。

  • ノンフィクション

  •  1959年にロシア西部のウラル山脈で起きた遭難事故を、50年あまりの時を経て、アメリカ人の映画作家が再捜査する。彼は自ら事故現場の山に赴き、自国のみならずロシアの知識人たちにも協力を仰ぎ、事件当時にはなかった科学技術や新しい理論を駆使して、事故の真相を究明する。
     当時考えられていた雪崩説、強風説、殺人説、地球外生命隊の襲撃説などをひとつずつ消去法で否定していくが、その結果、最後には考えられる可能性が何も残らず、著者は途方に暮れる。しかし、事件から50年を経た2013年、世界には新しい理論が多く出現した。そのうちの一つ「カルマン渦列」という現象に、ずっと求められていた答えがあることに一人の科学者が気付く。これを元に著者は、本書の最終章で、事故当日のトレッカーたちの状況を再現することについに成功する。
     この本は、全体が3つのストーリーに分かれている。一つめは、遭難してしまったロシア人学生のグループの、出発から事故当日までの足取り。二つめは、下山予定日を過ぎても一向に帰ってこない彼らを探す家族、捜索隊、警察、ロシア当局の動き。三つめは、2013年にこの本を書くに当たって行った著者の捜査。この三つが順番に並行して語られることにより、すべてのストーリーがそれぞれ少しずつ核心に近づいていくという画期的な構造だった。文字を追っているだけなのにドキュメンタリーを見ているかのような臨場感があって、すごく分厚いけれどあっという間に読み終わった。もし著者による最終的な再現が誤っていたとしても、少なくとも大きな矛盾は孕んでいなさそうな可能性がひとつ提示されたことにより、残された遺族や関係者たちが少しでも報われていればいいと思う。

  • 1959年冬の遭難事故の謎を解くノンフィクション。著者がロシアに飛んで謎に挑む過程に恐る恐る同行するような気分になった。
    この事故については全く知らなかったが、謎にぐいぐい引き込まれて読んだ。
    スターリンの抑圧が去った時代のロシアの学生たちが山旅を謳歌する姿も描かれていて、山が好きな自分は興味をそそられた。

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著者プロフィール

フロリダ生まれ。映画・テレビの監督・製作で知られる。新しいところでは、MTVの画期的なドキュメンタリー・シリーズ『The Buried Life』を製作。カリフォルニア州マリブ在住。

「2018年 『死に山』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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