死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309207445

感想・レビュー・書評

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  • 構成が面白く一気に読んだ。この本の結論についての関係者の反応も読みたいと思った。佐藤健寿の解説も良くてただ変な写真撮ってる人じゃないんだと感心。

  • ソ連時代のロシアにおいて、大学生のトレッキンググループが冬山での遭難事故で全員が不可解な理由で死亡する事件があった。
    その事件「ディアトロフ峠事件」の真相を探るルポルタージュ。
    内容は、真相を探る著者、事件の当事者であるトレッキンググループ、事件後の捜査関係者の動向の3者の立場で構成されていて、残された遺体、遺品、写真、日記、捜査資料、関係者の証言、著者自身が現場を見た経験などを基に推理しており、ミステリー小説のような構成でとても面白かった。
    当時の環境、例えば過酷な自然環境や大学生達の動向、考え方など、西側ではなかなか知りえないソ連の状況についても書かれており、大変興味深かった。
    著者は、この事件に対する様々な可能性を検討し、消去法である結論を導き出す。仮説ではあるが、現時点で最も可能性がある原因と考えている。
    携帯電話やGPS、詳細なマップ等多くの情報が得られる現代のトレッキングと違って、地図(それも不正確な)以外に全く情報が無い時代のトレッキングは、冒険に近かった。
    国外に出られないソ連時代の若者は、自己のストレスをそういうもので発散していたようだ。危険とは隣り合わせだが、それに挑戦し、自分達のスキルを向上させて評価してもらう。これがトレッキングのモチベーションになっていたらしい。自分を成長させるためのチャレンジというのは永遠のテーマなのだろう。
    読んでみて事件の謎解きも面白いが、事件そのものよりも、当時のトレッキング活動に興味が湧いた。通信手段を全く所持せず、情報が少ない中で行う旅は、現代の基準ではとても過酷な旅に見えるが、仲間で議論したり歌を歌ったりしてそれなりに楽しかったようだ。
    たまにはスマホを置いて、旅に出るのも良いかもしれない。

  • 冷戦下のソ連で起こった世界的未解決遭難怪死事件「ディアトロフ峠事件」 
    経験豊富な大学生トレッカー9人が氷点下の中、衣服もろくに着用しておらず、皆靴を履いていない状態で遭難死した。 
    そのうち3人は頭蓋、肋骨骨折なのどの重傷。 女性メンバーの一人は舌を喪失。 
    遺体の衣服からは、異常な濃度の放射線が検出された。 
    ソ連の最終報告書は「未知の不可抗力によって死亡」と語るのみ。 
    この謎にアメリカ人ドキュメンタリー映画作家が挑む。 
    遭難した9人の遭難までの生き生きとした足取り。 
    著者のロシアでの実地調査。 
    そして、驚きの結末。 なかなか読ませます。 
    どんな、事件の真相かは 読んでからのおたのしみ・・・

  • 1959年、冷戦下のソ連・ウラル山脈で起きた遭難事故。
    登山チーム9人はテントから1km半程も離れた場所でこの世のものとは思えない凄惨な死に様で発見された。
    氷点下(−30℃)の中で衣服をろくに着ておらず、全員が靴を履いていない。
    3人は頭蓋骨折などの重症、女性メンバーの1人は舌を喪失。
    遺体の衣服からは異常な濃度の放射線が検出された。
    最終報告書は「未知の不可抗力により死亡」と語るのみ。
    地元住民から「死に山」と名づけられ、事件から50年を経た今もなおインターネットを席巻、我々を翻弄し続けるこの事件に、アメリカ人ドキュメンタリー映画作家が挑む。
    彼が到達した驚くべき結末とは…!
    (あらすじより)

    ずっと気になっていたタイトルが、ようやく読めました。

    ディアトロフ峠事件として知られるこの遭難事故。
    トレッキングに訪れた大学生男女9人はテントを切り裂き、ろくな防寒もせずに極寒の山へ逃げ出した。
    経験豊富な登山家が靴も履かずに蜘蛛の子を散らすように逃げ出した原因は何か?

    この不可解な状況から、脱走した囚人に襲われた、熊が出た、原住民の襲撃、軍の秘密を知ってしまって消された、果てはエイリアン襲撃説などなど、憶測が飛び交う。

    当時の政府がやや強引に捜査を打ち切ったり、情報公開された当時の資料が一部紛失していたり陰謀論愛好家にはたまらない事件です。

    この本ではその不可解な事件に、科学的なアプローチで当時の状況を推理する試みがなされています。

    最後にはシャーロック・ホームズも納得な名推理が提示されています。

  • 1959年ソ連のウラル山脈で9名の登山チームが遭難。捜索の結果、9名はテントから離れたバラバラの位置で遺体となって発見される。しかも、全員が靴を履いておらず、テントは刃物で切り裂かれていた。チームのリーダーの名前をとって「ディアトロフ峠事件」と名付けられたこの事件は真相がわからないまま、ソ連崩壊を経て、現在に至る。

    本書はこの事件に興味を持ったアメリカ人放送作家が解決に挑んだ記録。著者は登山チームの出発から事故までの足取りを綿密に再現することからはじめる。登山メンバーだったが、体調不良のため途中で引き返し、今も存命する男性とも接触し、さらには遭難現場の雪山も訪れる。

    こうした丹念で長期間の取材と行動の末、これまでに考えられていたいくつかの事故原因、突風や雪崩、隕石、巨大動物、地元民族、ソ連の軍事秘密兵器などを候補から抹消。そして、最後に著者の考える衝撃の結論。

    真相への到達は実にドラマチックで、これ以外考えられない。著者のすばらしい着眼点に拍手。「死に山」と名付けられた現場との因縁に、遭難者9名の不運を嘆かずにはいられない。

  • 1959年2月1日を最後に不可解な遭難事故が起こる.9人のそれぞれのメンバーが生き生きと蘇らせその事故の原因に迫ろうとして,丁寧な取材を行っている.実際に足を運んでの描写,科学的なアプローチ,どれもが興味深く,正しい解はわからないと思うが納得できる見解だった.また,ロシアの地方の雰囲気などがよくわかってその点も面白かった.

  • 1959年、冷戦下のソ連・ウラル山脈で起きた遭難事故「ディアトロフ峠事件」を扱ったアメリカ人ジャーナリストによるノンフィクション。
    著者による「真相」は、当時の科学技術では使用不可能だった知見・技術が、今日においては使用できるため発見された、というもの。その技術とは、超低周波音波(人間の耳に音として聞こえる可聴周波よりも低い、20ヘルツ以下の音波)に関する知見であり、現在においては、例えば(北朝鮮等による)核爆発実験を検知するためにも用いられているという。

    教科書が重要であることは、例えば「たとえ登山技術ゼロでも、実際に山に行って試行錯誤をつづければ、いずれは登山に必要な体力もつくし、登山の方法を独自に編み出せるはずだと反論する人がいるかもしれない。それは完璧に正しい。人類は、まさにそうやって試行錯誤しながら物理や数学を発展させてきたのだ - 猛烈に長い時間をかけて。」(「数学:物理を学び楽しむために」更新日2019年4月3日)(http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/mathbook/)と書かれている通りだが、一方、この引用文に書かれている通り、人類は「試行錯誤」により、登山技術を発展させてきたこともまた事実である(最初の間違いは当然教科書には載っていない。教科書は間違いを取り入れて進化する)。さて、この本によって得られた新知見は、教科書に書き加えられるのだろうか。

    途中で、「バイコヌール宇宙基地の廃墟 ラルフ・ミレーブズ / 三才ブックス / 2015/12/02」のバイコヌール宇宙基地の話題が少しだけ出る個所があり、旧ソ連の話であることが強く実感された。

  • まずタイトルが怖い。でもミステリでも山岳ホラーでもない。そして山岳遭難ものとしては、ちょっと異質だ。彼らが未熟なトレッカーだったわけでも、無謀な計画や装備だったわけでもないのだから。

    著者のたどりついた結論は、おそらく現在最も合理的な説明とは言えるだろう。

    謝辞でリチャード・ロイド・バリーの名をあげていて、なるほどと頷かれる。

    それにしても、20代前半の明晰な頭脳と若さと多くの可能性を持っていた彼らが、残されたたくさんの写真の中で笑ったりふざけたりしているのを見るのはつらい。

  • 事件の真相に迫る過程で描かれるソ連の学生の生き生きとした様子が素晴らしい。

  • 題名はなんとかならないの。それはともかくノンフィクションはあまり読まない。しかし、この本は書評を見て少年時代
    のように飛びついて買ってしまった。いやー部厚いしかし旧
    ソ連時代の若者の暮らしのいちぶが見えて興味深かかった。
    なかみについては、結論が私には何となく納得できなかった。やはり、謎のままである。旧ソ連の軍事的闇がからんで
    いるような気がします。
    真相は遠いウラル山地だけが知っているのかな。
    欲求不満の残った本でした。事件の経緯を知るにはいいかも。

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著者プロフィール

フロリダ生まれ。映画・テレビの監督・製作で知られる。新しいところでは、MTVの画期的なドキュメンタリー・シリーズ『The Buried Life』を製作。カリフォルニア州マリブ在住。

「2018年 『死に山』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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