屍者の帝国 (河出文庫 え 7-1)

  • 河出書房新社
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感想 : 253
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  • Amazon.co.jp ・本 (525ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309413259

感想・レビュー・書評

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  • 屍者をロボットのように安価な労働力として使役できるSF世界。

  • 伊藤計劃の遺作プロローグを引き継いだ完成させたという背景情報と切っても切れない関係の小説。なんやかんや言いながらもきっちりと伊藤計劃らしさを出しているのは見事だし、ここまでの文量に仕上げる熱量もさすがと言うしかない。時代改変としての面白さや小ネタの使い方が非常に巧みで、文章遊びはさすがの手練。ただ、円城塔を消し去ることはできず、ページを経る毎にまったくもって冗長で小難しくなっていく文章はSFエンターテイメントではなく、SF=Speculative Fictionとしての性格を強くしていくのがご愛嬌。正直、分かったような分からんような(おそらく自分の理解レベルはバーナビーだろう)感想だが、エピローグ+あとがきを読むことで完成される感情は、合作としては出来過ぎ。

  • 円城塔とは思えない振り切ったエンタメ成分は遺稿を書き継いだからこそではあるけど、テーマとしてはやはりどうしても思弁的になるんですね。
    とはいえ、フランケンシュタイン自体が異端である所に端を発して、推理小説や怪奇小説に秘密結社という風にとにかく木を隠すなら森と言わんばかりの徹底した異端思想ストーリーになってるところに悪戯っぽさがある。
    しかしこうしてみると19世紀はアマチュアの時代でもあるような気がしますね。エジソンもダーウィンも、近代国家としてのアメリカも日本もアマチュアじゃないですか。
    そういった怪しげな根拠にもかかわらず時代は急速に進んでいく。そいつを駆動しているものこそ物語であるというところで怪しさは一回りして現実の世界に戻ってくる。
    結局、自分が納得できる物語しか受け入れられないのであれば独我論の閉じた世界にいることと同じになってしまう。でも、ワトソンの物語はフライデーの裡に残り、伊藤計劃の物語は円城塔、そして読者の元に残った。
    あくまで“軽い読み物”として構想されたということではあるけれど、たとえば21g分くらいの問いかけは受け取ったんじゃないかななんて考えている。

  • やはりSFは苦手だ…_(┐「ε:)_

    虐殺器官、ハーモニーも読んだけれど、やはりこれだけかなり毛色が違う。円城さんはどこまで設定を知っていたのだろうか。プロローグだけしか知らなかったんだろうか。そうだとしたら、ここまで書き上げたのは、とってもとってもすごいことだ。

    とはいえ、なんか違うんだよなぁ。
    前2作はとても硬派なのに、今回はキャラがなんだかアニメくさい。特にバーナビー。個人的には大好きなんだけど、なんか違うんだ。あと、ハダリーもね。

    前2作は、世の中を良くしようとするシステム?が発動して終わり。今回はまた違ったエンドで、うん、それはまたそれでなんか違う気がするだ。
    ぶっちゃけると、「これ、3部作じゃなくね?」(›´ω`‹ )
    なんかなー。なんかなー。
    虐殺器官とハーモニーで一括り。屍者の帝国はまたべつかなぁ、と。

  • 興味深かったが小難し言葉の羅列で煙に巻かれた感じ。
    どこにいっても話者が変わっても延々と続く小難しい版の学級会議。
    時折挟まれる軽めのキャラクター劇がその小難しさと調和していない感じで終始ふわふわ。
    いつかまた読み返す日がくるかどうかは微妙な作品でした。

  • 面白かった!が、理解できない部分もたくさんありました。
    円城さんの文章難しい……。前2作に比べ、一番読むのに時間がかかりました。いやいやその説明1行でよくない!?一言でよくない!?っていうのがたくさん……。たぶんわたしの理解力が足りないせいですが。

    ハーモニーに続いて読みましたが、虐殺器官、ハーモニー、本作の順で読めて良かったです。
    ハーモニーでは人々の調和を保つため人の意識(脳内会議による選択)を手放した結果、器のみが生き続けることを人類は選択しました。それに対して屍者の帝国では、死んだ後の身体(魂のなくなった器)を巡り、魂とは何かをワトソンが探して行く姿が描かれています。映画と原作ではこの魂の捉え方に違いを出していたところが、とても印象的でした。

    原作では、「魂=言葉」であり、人の意識は菌株による決定で、結局自分の意志や意識は何をもってして選択されているのかという結論は曖昧であったと思います。映画ではそこのところをワトソンとフライデーの関係性に重きを置き、魂を意志と捉え、フライデーの中に魂を見出すことに必死になります。特に機械人形という設定のアダリーはもっと感覚的に魂を求め、感じようとしていたように思いました。

    また、3作品すべて読んでみて、エンタテイメントとして面白いだけでなく、戦争という現象を引き起こす人間の本質に迫るテーマや世界観設計は、どこかこの世界の地続きのように感じます。

    あとがきにもありましたが、今の世界を、そしてこれからの世界を伊藤計劃さんの目を通してみたらどのように見えるのか、どのような物語になるのか、もっともっと見てみたかったです。

  • 映画化の影響で読み始めたのだけれど、読み終わるまでに結構かかった。もともと読むのは早く無いしたくさん読む方でも無いですが、それにしても初めて聞く単語や設定が多く、特に後半、それらを飲み込むのに時間を要しました。
    ただ全体としては感情をほとんど持ち込まなない淡々とした文章や(その中で感情を感じる文章には惹き込まれました)、練られた内容、用意された答え、クライマックスの疾走感と楽しんで読むことが出来たと思います。おもしろかった。

    • くらげさん
      すごく納得してしまいました。円城先生の文章の魅力だと思います。
      >"感情をほとんど持ち込まなない淡々とした文章や(その中で感情を感じる文章...
      すごく納得してしまいました。円城先生の文章の魅力だと思います。
      >"感情をほとんど持ち込まなない淡々とした文章や(その中で感情を感じる文章には惹き込まれました)"
      2016/01/20
  • 文庫にて再読。前回読んだときの記憶がまばらにしかない状態で映画を観てこんなんだったっけ?とは思ったんですがまさかこんなに違うとは。映画はザ・ワンとワトソン足してしまった感じであれはあれで面白かったので円盤出たら買おう。

    エピローグのフライデーの語りは以前読んだときにもそういう事なのだろうなとは思っていたのですが、文庫あとがきでしっかり言葉にされたのを読むともう...。そうか、お二人が過ごされた時間とワトソンとフライデーの旅の時間と...そうか...。

  • ブクログがレスポンシブ対応になってた。びっくり。PCで見てると文字が大きいな~

    少し前に購入してそのまま置いておいた屍者の帝国。この頃映画の宣伝がよく流れてますが君の言葉の続きが聞きたい、みたいなセリフは本編では出てこなかったような。まあ良いんですが。よくできた娯楽作品だなあと思いました。

    ワトソン博士やグラント将軍、レッド・バトラーやらなんだか史実やフィクション取り交ぜた有名人が贅沢に登場して繰り広げられるミステリーのようなラブロマンスのような。何となくパロディ小説みたいだなあ、と面白く読みました。死体が屍者となって労働力として使役されている世界って…面白いけど腐敗とか病原菌とかは大丈夫なんだろうか、と心配になりました。一度ホルマリンか何かにつけてから加工するんだろうか。
    言葉の力とパターンで操られる人格。魂という概念が人間と共存する未知の生命体、という考え方も面白かったです。結末を知って、違う…屍者観点から読み返してみるとまた新たな発見がありそうで面白そう。

    そして後書きがしみます。賛辞は両名に送りたいと思います。

  • やっと読み終わった。映画観てみたいからどうせなら原作読んでから、と思って読み始めたもののけっこう時間かかってしまった。
    途中まで面白くてスイスイ読めたけど、ザ・ワン登場あたりから終盤の、物語のヤマ場が正直言葉だけではついていけなかった。何が何だか。ここの部分は映像のがいいんだろうな。ただ、魂の本質とは、という問いに最後提示される可能性にほほう、と。全然理解出来てないけど。
    メタルギアのノベライズも読んでみようかな。あと円城塔のも。

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著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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