- Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309460413
作品紹介・あらすじ
近年、『女帝エカテリーナ』をはじめとする多くの歴史評伝が日本でも紹介され、好評をはくしたフランスの作家、アンリ・トロワイヤによる、珍しい短篇集。どちらかといえばトロワイヤの余技に属すると思われるこの作品集は、死者や幽霊の話およびSF的な作品で構成され、結末に絶妙なおちをきかせたブラック・ユーモアあふれる洒落た幻想的コント集に仕上げられている。全7篇。
感想・レビュー・書評
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革命を逃れてロシアからフランスへ移った伝記作家の
短編小説集、全7編、翻訳は澁澤龍彦。
怪談には、不条理かつ尻切れトンボで、
割り切れない不気味な余韻を残す話と、
因果関係が意外に明瞭で「なるほどね」と
思わされるものがある気がするけれども、
この本に収録された作品は後者のタイプで、
奇妙な面白さはあるが、ゾッとする恐怖譚ではない。
ブラックユーモア系の一冊。
「殺人妄想」
妻を寝取った男に復讐しようと目論んだ夫。
「自転車の怪」
二人乗り用自転車で
睦まじくサイクリングに興じていた夫婦だったが……。
「幽霊の死」
幽霊研究の泰斗が《幽霊狩り協会》会長職を辞した
理由は……。
「むじな」
騎馬隊の男たちが厩舎で雑談、
電話機製作会社勤務時代の話をするサリヴェ。
彼が依頼された風変わりな仕事とは。
「黒衣の老婦人」
死を呼ぶババア(笑)
「死亡統計学者」
地方紙で連載が始まった死亡統計のコーナーに、
いつしか集計結果のみならず
執筆者による予想まで掲載されるようになり……。
「恋のカメレオン」
マッドサイエンティストの実験台にされた
元・自殺志願者たち。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ふいの事に潜む人間の怖さのようなものを感じた。
のっけから「窓には夜が、真黒な、敵意を含んだ汗をかいていた。」
等の表現が独特であり、非常に美しい。 -
日本の怪談とはやはりかなり違い、怖いけれどあっさりとした感じを受ける。
情念のどろどろさが全体的に無く、小噺的な話もちらほら。
暑気払いを兼ねて読んだのでちょっと方向性が違っていた。
でも文章を読みなれた澁澤訳なので違和感無く読めたので良かったかな。 -
ブラックユーモア要素が強い短編集。
怪談というよりちょっと都市伝説の怖さに近いものがあるかな。
これはフランスを舞台にしてるけど、イタリアってこの手の小説少ないですよね。
イタロ・カルヴィーニあたりがちょっとそのケがあるけど、
現実の幽霊とはちょっと違う気もするし。
森公美子さんが以前TVで話してたエピソード(彼女自身が友達の幽霊に会って話したエピソード)
によると幽霊が出るには一定の条件があるんだそうな。
詳しくは覚えてないけど、幽霊自身の精神エネルギーと静電気みたいな事を言ってた気がする。
静電気ってことは湿度も関係してくるわけで、
日本はやっぱりあの湿度が幽霊の出やすい環境にしてるんだろうか、とか
日本人の「思い」ってのは、やっぱり人情に縛られやすくてネチネチと残りやすいんだろうか、
とか考えちゃったりする。
イギリスあたりだと幽霊の出るお屋敷とかお城とかが観光名所になってるけど、
あそこも湿度高そうだし、権力闘争に敗れて死んだ人たちの恨みが今でも残ってそうだよね。
そう考えると、じゃイタリアは???
フィレンツェあたり行くとメディチ家関連で死んだ人たちの恨みは残っていそうかな?
個人的には夫の死後アバンチュールに向かおうとした年配女性が運転する
自転車の後に死んだ夫の息遣いを感じて…って話が一番怖かった。
声を聞くより、息遣いってリアルで怖い…。
2008.11.30 シエナでNさんに譲渡