犬は「びよ」と鳴いていた: 日本語は擬音語・擬態語が面白い (光文社新書 56)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334031565

感想・レビュー・書評

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  •  耳は奥深い世界である。胎内にいる時から機能し始め、死の直前に視覚は失われるが音は聴こえているいるという。眼は閉じることができるが、耳を閉じることはできない。その意味で耳は常に世界に対して開かれている器官なのだ。

    http://d.hatena.ne.jp/sessendo/20100327/p2

  • (2005.05.07読了)(2005.03.21購入)
    副題「日本語は擬音語・擬態語が面白い」
    擬音語・擬態語の概要は、日本語なるほど塾のテキストで、紹介済みですので、そちらを見てください。
    この本は、主に動物の鳴き声をどのように表現していたのかを文献をもとに調査した結果を述べています。昔も今も同じだろうと思うでしょうがそうでもないことが分かります。
    ●犬
    これは、本の題名にもなっているとおり、平安時代には、「びよ」とか「びょう」と鳴いていたようです。われわれになじみの「ワンワン」は、江戸時代からということです。
    ●猫
    猫は、「ねうねう」と表現されています。江戸時代には、「にゃあ」が一般的で、今は「にゃん」ですからさほど変っていないと言えるかと思います。
    「日本人は、可愛いものには「こ」をつけたがります。「ひよひよ」鳴く可愛い鶏は「ひよこ」。「べー」と鳴く愛すべき牛は「べこ」。「ねー」と鳴く可愛い生き物が、「ねこ」だったのです。」
    ●ねずみ
    平安時代のねずみは、「しうしう」と鳴いていた。スズメも同じ。江戸初期は、「ちいちい」となり、江戸後期になると「ちうちう」となった。現代では、ねずみは、「ちゅうちゅう」となり、スズメは「ちゅんちゅん」と明確に分かれています。
    ●牛
    奈良時代に牛は、「む」と鳴いていた。なぜそうだと分かるかというと、万葉仮名では、「牛鳴」と表記して「む」と読ませるので。平安時代になると「むも」「んも」となる。たD氏これは、雄牛の場合です。牝牛は、「めい」です。江戸時代には、「もー」「もう」になった。「めー」は、羊とかぶるので、使われなくなった。
    ●馬
    奈良時代に馬は、「い」と鳴いていた。万葉仮名で、「馬声」とかいて「い」と読む。
    「奈良時代には、馬の鳴くことを意味する「いなく」「いばゆ」という言葉があります。ともに、馬の鳴き声「い」に、「鳴く」や「はゆ(吠ゆ)」をつけて作った言葉です。」
    平安時代は、「いう」と表記しています。「いん」に近い音ということです。
    なぜ「ひ」ではなく「い」なのか?「江戸時代の初めまでは、は行は、hではなくfだったので、「ひん」は「ふぃん」だったのです。」
    ●狐
    狐の鳴き声は、奈良時代から「こんこん」です。「こうこう」という表記もあります。
    室町時代には、「くゎいくゎい」という鳴き方もあります。機嫌が悪い時の鳴き方だそうです。
    ●つくつくぼうし
    平安時代は、くつくつぼうしでした。鎌倉時代には、つくつくぼうしと並存した。

    結果だけ書くといまいち面白みが伝わりませんが、本では、使用例を交えながら説明していますので、かなり楽しめます。

    著者 山口 仲美
    1943年 静岡県生まれ
    お茶の水女子大学文教育学部国語国文学科卒業
    東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了

    (「BOOK」データベースより)amazon
    「私が一番最初にひっかかったのは、平安時代の『大鏡』に出てくる犬の声です。「ひよ」って書いてある。頭注にも、「犬の声か」と記してあるだけなのです。私たちは、犬の声は「わん」だとばかり思っていますから、「ひよ」と書かれていてもにわかには信じられない。雛じゃあるまいし、「ひよ」なんて犬が鳴くかって思う。でも、気になる。これが、私が擬音語・擬態語に興味をもったきっかけでした。」―英語の三倍・一二〇〇種類にも及ぶという日本語の「名脇役」擬音語・擬態語の歴史と謎を、研究の第一人者が興味深く解き明かす。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーー
    「ドキドキドッカーン!擬音・擬態語の世界」山口仲美著、日本放送出版協会、2004.10.01
    p80 ¥400 C0081 (2004.11.28読了)(2004.09.21購入)
    「NHK日本語なるほど塾」10月号
    ●「とぼとぼ」歩く
    擬音語:実際の物音や声を私たちの使っている発音でまねて写し取った言葉のこと。「コケコッコー」「がらがら」「ごとん」など。
    擬態語:物の状態や様子を日本語の発音でいかにもそれらしく写し取った言葉のこと。「べったり」「ころりん」「ひらひら」など。
    「英語学者の乾亮一さんの調査によりますと、英語では擬音語・擬態語が350種類しかないのに、日本語ではなんと1200種類に及ぶ。」
    「擬音語・擬態語は、普通の国語辞典にはあまり載っていない。」
    「理由は、3つ。一つは、辞典を引かなくても意味が分かると思っていること。二つは、生まれては消える流行語の側面を持っている語だから辞典に載せるまでもないと思っていること。三つは、いささか品に欠ける言葉なので辞典に載せるのは憚られると感じられること。」
    「日本人だって、違う地域で育ったり、昔の資料だったりすると、調べて見なければ分からない。」
    「900年前の平安時代末期に書かれた「今昔物語集」に見られる擬音語・擬態語を抜き出し、それらの語が現在どのくらい生き残っているかを調査してみると、53%の語が現在まで生き延びていました。」
    「擬音語・擬態語はどんなに嫌おうと日本語で話したり書いたりするときは、使わざるを得ない言葉なんです。」
    「擬音語・擬態語は言語のルーツにかかわる根源的な言葉でもあります。「たたく」「ふく」「すう」というごく普通の動詞は、「タッタッ」「フー」「スー」という擬音語をもとにして作られた語です。末尾の「く」は、動詞化するための接辞です。」
    「動物の名前も擬音語に由来するものが多い。植物の名前だって、ルーツをたどると、擬音語に行き着くものがあります。」
    ●犬はいつ「ワン」と鳴いたか?
    「江戸時代以前には、「わんわん」と記された犬の声が見当たりません。」
    「平安時代末期の文献には「ひよ」「へい」と出ています。当時は濁音表記しませんから「びよ」「べい」と発音していたものではないでしょうか?」
    「江戸時代初期から中期までは、古い「びよ」「びょう」と、新しく現れた「わん」が共存していた。「びよ」とか「びょう」は、犬の遠吠え、「わん」は、近くで鳴く普通の犬の声と考えていた。」
    「江戸時代以前では、犬は放し飼いでした。綱にくくられるようになると「わん」と聞こえるような吠え方をするようになる。」

    著者 山口 仲美
    1943年 静岡県生まれ
     御茶の水女子大学文教育学部国語国文科卒業
     東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了
    第三回日本古典文学会賞受賞
    第12回金田一京助博士記念賞受賞

  • 「日本語は擬音語・擬態語が面白い」というサブタイトルにひかれて。
    だってオノマトペ好きなんだもん。
    なぜ大学の卒論でオノマトペをやらなかったのかと悔やむくらいです。
    だから、『スイーツ オノマトペ』(筑摩書房)を見たときには
    「おお!」と思いました。買うにはいたらなかったのだけど。
    発想はおもしろいなぁと。

  • 題名に惹かれ、購入。

    ころころ、くるくる、すらすら、ざらざら、ごつごつ。。

    多種多様な日本語の擬音語、擬態語。
    サブタイトルにあるように、これらのおもしろさを、色んな視点から教えてくれる、そんな一冊。

    こほろ、と開いた、昔の蓋。
    想像すると、わくわくしてきます。

    やっぱり日本語って、いいな。

  • 「爆笑問題のニッポンの教養」でこの先生の研究に興味を持ったので読んでみた。日本語に関する新書は多いけれど、オノマトピアについて書かれた本はこれだけ? というより、著者によれば擬音語・擬態語の研究がまずあまりないとのこと。ちょっと意外。オノマトピアの多さは日本語の特徴として真っ先に思い浮かぶのに。まあ面白かった。第一部で日本語の擬音語・擬態語の特徴が概説され、第二部では犬、猫など8種類の動物の鳴き声に対する擬音語の移り変わりを辿る。擬音語や擬態語が掛詞として重要だったというのは驚いた。なんとなくダサい感じがするんだけど。まあ短歌とかまるで分らない僕が言えることではないのですが。あと、解説なしで音声学(国語学かも)用語が使われていてビビったのですが、その割にはその音を表す記号がIPAじゃないんですよね。IPAにしたほうがいいんじゃないかな。例えば192ページのをちゃんと書くと多分こう。声門音[h]→無声声門摩擦音[h]両唇摩擦音[F]→無声両唇摩擦音[Φ]こういうややこしい書き方しなくても、「ハ、ヒ、ヘホの子音がフの子音で、ファ・フィ・フ・フェ・フォだった」と書けば済むのだけど。

  • 大きく二部構成で、前半は「擬音語・擬態語の不思議」、後半は「動物の声の不思議」になっている。本書は言語学的なアプローチというよりは、文献学的な立場から、文学的な視点で様々な擬音語・擬態語を過去の文献に遡って考察を加えたものである。前半部では「擬音語・擬態語の変化」の話や、擬音語、擬態語に見られる「語形の変遷図」などが面白い。後半部では、タイトルにもある犬の鳴き声の話や、「メー」となく牛の話、モモンガの泣き声についての考察などが興味深く、読みやすく楽しい本であった。
     ただ特に後半部は個々の事例の分析やその紹介に終始しているのがやや物足りない感じがした。全体として日本語の擬音語、擬態語の意味や用法に関する網羅的な解説がもっとあればいいなと思った。

  • おもしろそうである。

  • 平易な語りかけるような文体で、とても読みやすい。英語では350種類程度の擬音語・擬態語が、日本語では1200種類もあるとか、1000年近く前のそれの、6割近くが現代にも残っているとか、へぇ〜と思わされることばかり。もちろん現代では使われない語も多いが、そのなかで、“コホロ”(今で言うと、コトリ)、“タソタソ”(同・フサフサ)、“ユブユブ”(同・ブヨブヨ)なんて言葉、響きが新鮮!

  • 外国語の擬音が日本のそれと異なるのはわかる。ワンワン→バウワウなんてね。しかし日本語でも昔と今ではこんなに違うのが驚きでした。

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著者プロフィール

一九四三年生まれ。お茶の水女子大学卒業。東京大学大学院修士課程修了。文学博士。埼玉大学名誉教授。文化功労者。古典語から現代語までの日本語の歴史を研究。特に『犬は「びよ」と鳴いていた』(光文社)、『ちんちん千鳥のなく声は』(大修館書店)など、擬音語・擬態語の歴史的研究は、高く評価されている。論文「源氏物語の比喩表現と作者(上)(下)」で日本古典文学会賞、『平安文学の文体の研究』(明治書院)で金田一京助博士記念賞、『日本語の歴史』(岩波書店)で日本エッセイスト・クラブ賞受賞。また、「日本語に関する独創的な研究」が評価され、二〇二二年に日本学賞を受賞。二〇〇八年紫綬褒章、二〇一六年瑞宝中綬章を受章。

「2023年 『日本語が消滅する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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