若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)
- 光文社 (2006年9月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334033705
感想・レビュー・書評
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バブル崩壊直後の1993年に日本で初めてアメリカ式の「成果主義」を導入したIT大手の富士通。東大法学部から同社の人事部に入社し、この不完全なシステムを取り入れた後に起こった社内の惨状を描いた『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』が大ベストセラーとなって、現在は人事コンサルタントとして活躍する城繁幸による問題提起。バブル後の1990年代以降、日本企業の良き伝統であった終身雇用と年功序列は崩壊し、今や40代以上の中高年者の雇用と給料を確保するために20~30代の若者が犠牲となっている現実を問題視する。規制緩和という美辞麗句の名のもとに自由化された「派遣労働」によって若き正社員の立場はますます危うくなり、苦労して勝ち取った内定によって何とか入った就職先で見えたのは、年金問題と同様に「火の点いた爆弾が爆発する前に上の世代から下の世代にリレーする」様子。本書は新卒社員の3割が3年で辞めるという若者の問題のみならず、日本社会が抱える大問題にスポットを当てた一冊。
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本書が出た頃に比べると、年功序列についてはだいぶ見直しの風潮が出てきてる?それでも他国と比べるとまだまだか。
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”BOSSからお借り。「現代若者気質論」を期待して読んだが、本書は「年功序列崩壊論」がメイン。
そんな中でも「なるほど!」と思えたのが以下の記述。
・優秀なグループには同時に欠点もある。彼らは就職までのプロセスにおいて、あまりにも「仕事に対する意識」が高くなりすぎているのだ。(p.37)
→だから入社後に、アサインされた業務にギャップを感じて、フラストレーションを抱える。納得!
・実際のところ、自分たち(引用注:人事部)が入り口で厳しく要求する能力など、半分くらいの若者、いや、ひょっとすると大半の若者には、生涯発揮する機会すらないのではないか。
・年功序列制度の本質は“ねずみ講”
80年代いっぱいは、経済全体が成長を続けていたからパイの取り分でもめなかっただけの話で、いったん成長が陰ると、一気に矛盾が噴き出してきたのだ。(中略)
「若いうちは我慢して働け」と言う上司は、いわば若者をそそのかして人生を出資させているようなものだ。(p.156)
・もし、いまの若者がこのまま年功序列組織のレールに乗ったまま先に進めば、将来彼を待つものとはなんだろう。(中略)
残念ながら、そこまでたどり着けるのはごく一部の人間だけだろう。むしろ、多くの若者は、そのはるか手前で人生を終えることになる。(中略)
ここで重要なのは、技術系にせよその他事務系にせよ、こういった現実に直面するのが(20代であれば)おそらくいまから15年以上先、40代になったあたりだということだ。「あれ、自分はひょっとして一生平社員で終わるのか?これ以上、給料はあがらないのか?」と気づいた頃には、もう遅い可能性が高い。(p.215-217)
★それ(引用注:昭和的価値観)さえ捨てることができれば、実はわれわれには、先人たちにはない、ある貴重な宝物があることに気づく。
それはひと言でいえば、「自分で道を決める自由」である。レールの先にはどうやら明るい未来は少なそうだが、代わりにどこでも好きな方向に歩いていけばいいのだ。(p.221)
※著者 城 繁幸氏は1973年生まれ。『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』の著者でもある。「Joe's Labo」代表” -
年功序列というシステムについての批判をしつこいぐらい叩きまくった本。
目次
<blockquote>はじめに 「閉塞感の正体」を見きわめる
第1章 若者はなぜ3年で辞めるのか?
第2章 やる気を失った30代社員たち
第3章 若者にツケを回す国
第4章 年功序列の光と影
第5章 日本人はなぜ年功序列を好むのか?
第6章 「働く理由」を取り戻す</blockquote>
タイトルからしてキャッチーなんだけれど、じゃあそのタイトルの謎を。
<blockquote>こうして見ていくと、その価値観にとって何より重要なのは、本人の能力やそれによる収入ではなく、「あるシステムに乗っかかっているかどうか」であることがよくわかる。</blockquote>
著者は、この正体こそが<b>”年功序列”</b>なのだという。
そしてこのシステムの影を、以下のように例えている。
<blockquote>「それでもいまの若者は忍耐力が足りない」という人間は、こう考えてみるといい。自身がせっかくいい大学を出て、有名企業に正社員として入社して、いざ配属先が「マックの店内でポテトを揚げる仕事を向こう三〇年間」だとしたら、どういう気分になるか。</blockquote>
しかし一方で、<b>”年功序列”</b>は、”長期雇用”と対になり、社員が長く居る事で、会社の中に技術がたまった。
<blockquote>彼と、彼が作り上げ、維持してきた年功序列制度は、実に優れたものだった。誰もが安定して長い期間働くことで技術力が蓄積され、日本製品は世界の市場を席巻した。
横並びで詰め込み型の教育システムは、均質で従順な労働者を大量に供給し、彼らは超長時間労働に文句も言わず、年功序列型企業の原動力となって馬車車のように働いた。</blockquote>
まあ、実に日本的なアプローチだったんですねぇ。実のところは。
しかし、この本ではこのあたりまでしか書いていない。要は「告発本」なのだ。
だから、ここまでしつこいぐらいに<b>”年功序列”</b>を叩いてるのだ。こうやってw
答えが書いてないので、現代の問題をまず知りたい人向け。
間違えても、これに煽られて「独立」なんて勇み足はしないようにしたい。
(このあたりは<a href="http://mediamarker.net/u/kotaro/?asin=4479792252 " target="_blank">汗をかかずにトップを奪え!『ドラゴン桜』流ビジネス突破塾</a>等を参考の事) -
日本の年功序列制度は、中国の資本主義社会の縮図。
若い社員(=農村部)が高齢者(都市部)を支える構造が完成されて今でもそれを引きずっている。内側から崩壊する中国の歴史と同じ道をたどろうとしてる。
初めて日本の年功序列制度の問題を知ったのかもしれない。
さらに日本は少ない若手で多くの高給取りを支えなければいけない呪いにかかっている。
長年働いたベテランたちはサラリーをもらえると当然思っているだろうけど、若手はそれに気づいて大手に向かっているのか… -
日本的経営が崩れて久しいが、その骨子とも言うべき年功序列こそが掲題の問題に繋がると著者は指摘する。
「今耐えれば後で見返りがある」からと思えばこそ成り立ってきた日本の企業の経営陣が既得権益と目先のことだけに目を奪われた結果、若い世代を搾取し未来が暗くなるということなのだ。
今の時代が閉塞感に溢れていることを指摘し、そこに暗澹となるもの開ける可能性があるとして胸高鳴らせるもの様々だろうけど、というところで本書は終わっている。閉塞感があるという指摘だけでだからどうするとかはない。
漠然とした不安を理屈だてたものにしたという意味では面白い本だが、この本読むまで気が付かなかったようでは気が付いた後も何かしらの行動を取れるとは思えない。
ということは社会に出る前に読むべき本といえる。だとするとこの題名はないだろう。 -
タイトルからはちょっと想像しにくいが、若者に向けての本である。
現在の若者は根性がないとか忍耐がない、という評価を得ている。そして若者自身は閉塞感としかいいようのない心理状況に陥っている。これはなぜだろうか。
日本の高度経済成長を支えてきた、終身雇用と年功序列制度、そしてそれによって培われてきた昭和的価値観。
それらは一見働いている人にとって優しい制度に見えながらも、そのレールから外れた人間に対してかなり厳しい態度を取ることで日本の楽園を維持し続けてきた。
現状の日本においてすでにそれらシステムは完全に疲労し意味をなさなくなってきている。しかし、既得権益つまりこの場合中高年の雇用や賃金を維持するために若者の雇用というものが容赦なく切り捨てられ、あるいは派遣などの形に置き換えられている。
年功序列はねずみ講だと言い切る著者の語り口には怒りの色すらうかがえる。
著者は第6章において若者に自らが働く意義を自ら自信に問うことを求めている。昭和的価値観の社会から一歩身を引いて、「自分の人生にとって何が大切か」ということを問うことは、これからの社会で生きていく上でかなり重要なポイントであるかと私も思う。それは今の学校ではなかなか教えてもらいにくいものだ。大人達も明確に示してはくれない。
その問いを誠実に行わないと、30代後半、40代になってから自分の人生の先行きに落胆し、そこで初めて閉塞感の正体に気づくことになる可能性はかなり大きいように思える。 -
会社を硬い組織とみると著者の主張はその通りなのだが、彼らも生き残りがかかっているので柔軟にやるやつもいるだろう。柔軟でない人は滅びるのであろう。
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★2008年3月30日読了 『若者はなぜ3年で辞めるのか?』城繁幸著 評価B