- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334733704
感想・レビュー・書評
-
念じるだけで火をつけることができる「念力発火能力(パイロキネシス)」を持った女性の物語。
「超能力を持った女性」の物語を3編まとめた「鳩笛草―燔祭・朽ちてゆくまで」の中の「燔祭」の続きになります。
宮部みゆきには超能力を主題、または道具に使ったお話が結構たくさんあります。「蒲生邸事件」で日本SF大賞を受賞しているのは、ファンであればご存知でしょう。
数ある「超能力」の中で、いかにも戦闘向きの能力を、25歳の女性主人公である青木淳子に持たせた時点で、今で言う「厨二病」的展開と、それを宮部みゆきが書いている時点でラストのカタストロフィとが予想されてしまうわけですが、この巻では「厨二病」的戦闘が外連味たっぷりに描写されます。
自らを「装填された銃」として若い女性らしさのかけらもない生活を送り、悪とみなしたものは容赦なく排除していく…ある意味痛快な戦闘ですが、その最中に、青木淳子は自分がただ殺したいから力をふるっているのではないかという恐れを抱きます。
「パイロキネシス」の存在を信じて彼女を追う牧原刑事、そしてもう一人の「パイロキネシス」持つ少女倉田かおりがストーリーに絡みだして下巻に続きます。
ファンとしては宮部みゆきの真っ向勝負の超能力ものを堪能できて嬉しい限りですが、できれば「燔祭」を先に読みたかったと思います。「燔祭」を含めた形で本にすることはできなかったのでしょうか。
あとは、牧原に青木淳子を捕まえさせてやりたいなあ。牧原も青木淳子もそれぞれがトラウマを解消して、青木淳子は罪を償って、結婚して旦那さんの煙草にパイロキネシスで火をつけてやるエピローグで大団円…なんて展開はまずありえないでしょうけれど、でもたまには宮部みゆきのそんな甘っちょろいハッピーエンドも見てみたいとちょっとだけ思いつつ、下巻を開くことにします。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
スティーブンキングの「ファイアー・スターター」にインスパイアされた作品とのことで読んでみた。
でもファイアースターターのチャーリーは本作の主人公のような子にはならなさそう。
心理描写もキングの方が一枚上手かな。 -
超能力ものは好きじゃないので・・・でもぐいぐい引き込まれる。
-
勧善懲悪ではないこの物語。
どんな結末がと思っていたら・・・なるほど。
こういった物語は結末が何通りも考えられるので想像力を刺激されます。
守護神(ガーディアン)も青木淳子も完全なる『正義』ではない。
では『悪』かというと必ずしもそうとは言い切れない。
『人を裁くのは人』
そこには必ず感情というものが介入してしまう。
手塚治虫の『火の鳥』の中にコンピューターがすべてを決定する未来の物語があった。人は判断のすべてを機械にゆだねてしまうのだ。
つまり、
『コンピューター=神』
しかし、この物語のように、仮にすべての物事に対して正しい判断を下せるコンピューターが開発されたとしても、(矛盾しているが)その判断は必ず正しいとは限らないだろう。なぜなら『正義』とは時に、見る角度によって姿を変えるからだ。
青木淳子が求める『正義』は彼女自身の存在意義を問うことに起因している。
人は生きるその過程において誰しもが考える。自分の生まれて来た、その存在意義を。
『装填された銃』として自分の自我を持つ青木淳子。彼女はその特異な能力ゆえに殺し屋となった。たとえそれが無差別でなく、罪を犯しなお社会の手を逃れのうのうと生き続けるモノたちが殺害の対象であっても、それが殺人という行動には違いない。
彼女には裁く権利はない。
しかし、彼女には裁く理由がある。
それは彼女が彼女であるために、彼女が生まれて来た、生きる理由が皮肉にもそこにリンクされてしまったからだ。
もしも、もっと他の出会いが早くにあったなら、彼女は別のところに生きる理由を見つけられていたかもしれない。
普段何気なく暮らしているとただただ毎日を消化しているだけで時間だけが過ぎていることが多い。人生はそれなりに充実していて、それなりに幸せであればその毎日を敢えて疑うようなことはしなくても良いのだろう。だけどたまにはその当たり前にクエスチョンマークを投げ掛けてみても悪くない。
人は悩みながら成長する生き物だから。
KEY WORD>>クロスファイア(著:宮部みゆき)
青木淳子は生まれながらにして、自分の意思で、また意思とは関係なく自然発火させる能力を持っていた。『装填された銃』自己をそう表現する彼女。その彼女が掲げる正義とは法の目をすりぬけた犯罪者を彼女自身の手によって裁くことだった。
偶然にも関わりあった事件が発端となり、彼女はまた裁きを下すため調査を開始するのだが…。 -
スピード感があって面白かったです。
-
以前に読んだ本の再読と思われる。現在下巻を少し読んだ時点だが、上巻の内容はほとんど記憶になかった。上巻の最終部分から出てくる主人公と組織の話が中心と記憶していたが、その前段階である上巻があったとは。もしかして一度目は下巻だけ読んだのかも。内容的には主人公ってこんなに暴れていいのか、あと警察側の主人公の主観的な冷静さ。宮部さんの作品の捜査する女性キャラ(歴史ものも含めて)ってこんな感じの人が多いかな。
-
【要約】
・
【ノート】
・
-
はじめて宮部さんの小説を読んだが面白い!後半が楽しみ。さすが弾さんが「小飼弾:40歳までに読んでおいてよかった40作、小飼弾が選ぶ最強の100冊+1」に選んだだけある。
-
(上巻のみ登録)
あたしは装填された一丁の銃だ。
念力放火能力(パイロキネシス)という特殊な能力を持った青木淳子は
瀕死の男を始末しようという場面にたまたま居合わせた。「あたしが必ず仇はとってあげるからね」
淳子は拉致された女性の行方と、取り逃がした犯人の一人を追う。邪魔者を凪ぎ払いながら…
少し前に序章にあたる短編を読み、久しぶりにこちらも読みたくなり再読。
ラストが近づくにつれ読んでいるこちらも疑い、裏切られ…。あぁ切ない。
後半にももう少し、ドッカンドッカンの爆発が欲しかったです。 -
今年も多数巻を平行に読むのを始めようかと。手始めに軽そうなのから着手。「鳩笛草」に入っていた短編のうち、感情によって火を放つことができる女性の話を広げた作品。
世の中の許せない犯罪者を、自らの手で処刑するという事件を起こして、東京の片隅に身を隠す女性青木淳子。その「火を放つ」能力を鎮めるため、放出しに行った先の廃工場で、殺人事件に巻き込まれる。取り逃がした「アサバ」という少年を追うが…。
なんというか「鳩笛草」を読んでいない人にとっては、相当無理やりなストーリーで、一応作者によるあらすじにも書かれてはいるものの、導入がもう少し必要だったんじゃないか。
でまあ、青木さんは最初からどんどん人を燃やします。偽名もろくに使わず、会う人会う人燃やしていくので、本文内でも「燃やし過ぎじゃないの」というツッコミどおり、やりすぎ。そうしないと、自分の存在がバレてしまうという前提なのだろうが、なんか違う感があり。
で、もう一つの視点の捜査をする方の人たちも、わかり易すぎるほどわかりやすく、薄々わかっているけど気づかないふり、みたいな作者目線からの嘘くささが出てしまっているのが残念。
それに加えて、いつも書いているあれ。調べたことをそのまま写すだけの文字数稼ぎが随所に現れており、最初は「最近の若者はわからん」その後は「放火のパターン」て、あんまりストーリーと関係なくない?
まあね、カッパノベルスからの光文社文庫、元も宝石に掲載なので、駅で買って消化できる系の小説でしかないと思って作者も書いてるんだと思うんですけどね。
後半に期待(ということに)。