雪の鉄樹 (光文社文庫 と 22-2)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334772734

感想・レビュー・書評

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  • 凄いんだけど、なんだか気持ちが悪い話である。褒めているひとが圧倒的に多いけど、少し方向を変えてみるとホラー要素が満載で薄気味悪い、雪雅の姿しかり、無口、若白髪、火傷のあと・・・ラストの感動よりも、その先に不穏な空気を感じさせる。

  • 前半はずーっとザワザワ、モヤモヤ。。
    雅雪がなぜ償っているのか分からないし、火傷で身体が不自由な描写も痛々しいし、読んでてとても息苦しかった。
    だんだん事件のことが分かってきて、雅雪が不憫で不憫で仕方がなかった。
    ラストに近づくにつれどんどん状況が悪くなっていくし、これはもう絶対に救いが無いパターンだと思ってたけど、、素晴らしいラストでした。
    はぁ、でも、すごく、、心が疲弊するお話でした。
    一番悪いのは親方。間違いない。

  • いい小説というのは、字面を追いながらもまるで映画を観ているかのように音を伴った映像が脳内に再生されるものだが、この作品はまさしくその類の小説で、なかなか事情が明かされず詳細不明なままではあるが、冒頭からものすごい存在感と重量感を以て読者に圧し掛かってくる。
    重い、暗い、湿っぽい、辛気臭い、といった形容詞を連想してしまう、鈍色に染まったような世界。
    その犯罪行為で本当に殺人罪が適用されるか? 舞子が面会や仮釈放を拒絶し続けた根源は一体何で、出所後はあっさりと雅雪を受け入れたのはなぜ? 徹底的に贖罪を全うしようとする雅雪の理屈の筋道がやっぱり腑に落ちない等、個人的に瑕疵と感じるものはあったが、場合によっては大きく足を引っ張り得るそういった点が非常に些末に思われるほどの完成度だった。
    品格が高い、と称すべきか。

    読者の声を代弁する、という意味合いも含め、原田が非常にいい役割を果たしている。

  • 『雪の鉄樹』ユキノテツジュ 遠田潤子トウダジュンコ

    『本の雑誌』でプッシュされてる遠田潤子さんを読んでみました。
    重いストーリーで高倉健さんの現代劇っぽい雰囲気
    『不器用ですから』https://youtu.be/0emcxNiEbp8

    最後は泣いちゃいました
    『雅雪さん、あんた阿保やないで、
    正解なんか誰もわからへんのやから』と言ってあげたい。

    『構想の段階で決まっていたのは、タイトルとラストシーンだけです。あのラスト一行のためだけに、『雪の鉄樹』という物語はあるようなものです。読み終えた方に「雅雪、おまえ、よかったなあ」と思っていただけたなら、作者として本望です』by遠田潤子

  • 前半は真相が見えないまま話が進み、徐々に明かされる真実。
    後半はじんわりと涙が出た。
    愛の物語だと思う。男女の愛、血縁の愛、血の繋がりを超えた家族の愛。
    雅雪の名前の真意。
    泣ける。

  • 一気に読める。
    主人公のもどかしい性格がうまく反映されているんだろあけど、ものがたりももどかしい。この本を何度も読み返したくはならない。

  • 両親を亡くした少年の面倒を見る庭師の主人公。過去に何か大変なことがあって「償い」をひたすら続ける彼と少年の現在と過去を行ったり来たりしながら少しずつ謎が明かされていく。何もかも自分のせいだと我慢して頭を下げ続ける彼の言動は明らかに行きすぎていて、善意の押し付け、頑な過ぎて鬱陶しくイライラすることが多かった。何で人の忠告をここまではねつけるのか、最後まで納得はできなかった。でもここまで阿呆を貫いて不器用な熱さを見せつけられると、納得できるできないなんてどうでもいいと思えたり。

  • 全体的に重く苦しい話なのですが、温かみを感じる事が出来たので読んでいてそこまで苦しくはなかった。

    庭師一家の三代目に産まれた主人公。
    何やら色々と背負っている雰囲気の序盤。
    小出しに主人公の過去が明らかになってくるのですが、
    自分の過去を語り始めたくらいから一気読み。

    無関心とはなんと罪なことか。こんな家庭が本当に存在するのでしょうか。
    食べ終わった食器を灰皿にしてしまうシーンは本当に頭をガツンとやられた様な衝撃を受けました。
    主人公のこれから先の幸せを願わずにはいられない。

  • 庭師の雅雪は両親を喪った少年遼平を幼い時から庇護していた。しかし遼平の祖母はそんな彼を罵倒し憎み続ける。
    「たらしの家」と呼ばれる家で肉親の愛情をうけずに育った雅雪。彼は13年前の事件で全身に火傷を負い、心にも大きな傷をかかえていた…
    事件とはなんだったのか。雅雪が遼平に愚直につくし屈辱に耐える理由はなんなのか。

    「たらしの家」の冷たく暗い空気が全篇を覆って重苦しい。
    謎の核心が見えてくるまでの、物語の引力は物凄い。
    終盤、13年前の真実が明かされる段になって、やや駆け足になっている印象。

  • 「本の雑誌が選ぶ2016年文庫ベストテン第一位」「この感動はホンモノだ」と本の帯にあったのでつい購入。重いけれど印象に残る泣ける本でした。物語は32歳の庭師の主人公が自分に敵意を持つ中学生やその祖母に対して、ただただ尽している場面から始まる。なぜ主人公はその2人に対してそこまで虐げられてるのかなかなか著者は書いてくれない。中盤以降、やっと悲惨な事件の内容がわかってくる。この本に登場してくる人はみな心に闇を抱えてる。だからとても重いけどラストは希望が持てる。ラストはちょっと泣きそうになりました。

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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