雪の鉄樹 (光文社文庫 と 22-2)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334772734

感想・レビュー・書評

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  • 『ーーー今日の仕上がりではない。先を見ろ。五年、十年後の庭を考えて仕事をしろ。』
    若き庭師が、雪をかき分け、茨をかき分け、十数年かけて世話し続ける庭の話。庭師の才能に溢れた心安らぐ日本庭園がお楽しみ頂けます。

  • 主人公が善人通り過ぎてイライラ、歯がゆい。
    イライラさせられながらも没入したというこは、面白かったということでしょうか。

  • 過去をなかなか明かさない物語の展開に歯がゆさは感じるものの、ちょっと思い付かないプロットが素晴らしい植木屋の恋!

  • 何とも苦しい。罪の償いというのには何とも哀しい。母の顔も知らず父にも祖父にも関心を持たれず生きてきた青年。両親のいない少年とその祖母に献身を尽くす贖罪の日々。なぜこんなにも自分を犠牲にするのか?13年前の出来事とは?重苦しいのにグイグイ引きつけられて一気読みでした。愛を知らない青年に再生の光が差し込んできたことが良かった。

  • 『緑陰深きところ』が良かったので他の作品を読んでみたくなった。
    読み始めて、『緑陰深きところ』と構成が同じでがっかりして、テンプレかと思った。
    でも読み始めたからには読み切ろうと思い直してページを捲る。すると、1/3くらいから面白くなって、結果的に一気読みしてしまった。

    内容はかなり突飛というか、なかなか居ない立場の登場人物ばかりに思えたけど、殺人事件や事故や自殺は頻繁に起こるのだから、私の周りで起こっていないだけで世の中には作品の中のようなことが多々起こっているのかもしれない。悲しいことだけど。

    認めることと頼ることはとても大事だと改めて思う。

  • 物語は、事の真相が全くわからないまま、半ば以上まで進む。主人公はひどく屈折した愚直な男性で、終始イライラさせられっぱなし。もう読み進めるのを止めようか?と思ったあたりで、急速に一つ一つが明らかになってゆく。その引っ張り加減が絶妙で、結局最後まで読まされてしまった。
    正直、人に薦めたくなる作品ではないし、誰にも共感できない。だが、棘のように刺さる。妙に忘れ難い。
    煩悶、懊悩する人々に、自身が重なるようになり、まるでロシア文学を読んでいるように感じた。
    人間とは、文学でどこまで深く潜っていけるのか?作者の挑戦心のようなものを感じた。
    心に余裕があるときに一読を。

  • 本のタイトルから想像する情景をわざと裏切るかのように、最初のページを読み始めると、そこには夏がある。

    祖父が経営する曽我造園の庭師として働く曽我雅雪は、どうやら7月7日に何かがあるらしい。
    ーあと何年。あと何日。
    その日を指折り数えるかのように繰り返される雅雪の心の声のつぶやき。彼が心待ちにしているのか、話が随分進んでも分からない。それが彼にとって一体どのような存在であるのか、知らないのは読者であるわたしと、赤ん坊のときに両親を亡くして祖母と二人暮らしの遼平だけだ。
    遼平はずっと雅雪に面倒をみてもらっている。それなのに、なぜか雅雪を激しく憎んでいる。遼平の両親の死に雅雪が関係しているようなのだが、雅雪が加害者というわけでもないようだ。全身を覆う火傷の痕は、そのことに関係しているのだろうか。

    今、かろうじてわたしに見えるのは朧げなシルエットだけ。この向こう側に何が潜んでいるのか分からない。苦し気な息遣いはさっきからずっと耳に届いてこの胸を締めつけるが、もしかしたらそれは見るに堪えないものなのか。


    すべての登場人物がでてきたあとに、やっと真実がわたしと遼平にもあきらかになる。そして、ここでようやく細木老人が言っていたことや、原田が雅雪をあんな風に責めるようなことを言ったのかが理解できるのだ。
    こんな生き方って、あるのだろうか。
    自分の人生を自分の思うように生きられない。
    そんな雅雪にわたしは何度も苛々し、心無い言葉を投げつけてしまう遼平に対して腹を立て、数々の人たちを軽蔑しながら読んだ。 
    自分が苦しみの真っ只中にいるときは、他人の辛さなんて想像しようとしない。でも世の中の大抵の人が、自身の痛みを抱えながら生きているということを忘れないようにしたいと思う。

    日本庭園の美しさに想いを馳せた。
    壮絶過ぎるラストに圧倒された。
    最後の一行まで読み終わった後、脳がジーンと痺れて息が詰まった。

  • 贖罪の理由がわかるまで、まるで東海テレビ制作の昼帯ドラマを見ているような熾烈な仕打ちになんとか救われますようにと願わずにはいられず、ページを繰る手が止められませんでした。終盤の展開は胸に迫るものがあります。本の厚さにびびりますが読まないと損ですよ

  • そんな家族だと他所からレッテルを貼られたら、そうでなくてもそんな気分になってしまいそう。ま、それだけ魅力的な人々なのかもしれないけれど、だらしがないとも言えるわけで。他人のためにここまでやれるかなぁ?

  •  読んでいて、このお話に希望があるのか?と辛くなりました。

     主人公の家庭環境、卑屈なまでに誠意を尽くそうとする性格、被害者家族の仕打ち、挙げたらキリがない程の絶望感です。

     只、辛くても読み切ってよかった。

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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