田村はまだか

著者 :
  • 光文社
3.29
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本棚登録 : 984
感想 : 260
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334925987

感想・レビュー・書評

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  • ススキノのバーで、小学校の同級生であった田村久志を「田村はまだか」と、一晩中待ち続ける男女4人、プラス、マスターの花輪晴彦。彼らによれば、小6のときに、この世の空虚さを指摘してしまった中村里香に対し、田村は「どうせ死ぬから生きてるんじゃないか」と語りかけ、その後も2人はまっすぐに愛をつらぬいて、いまでは豆腐屋の主人と女房であるという。そんな、小学生のときから渋い男であった田村に惚れこんだまま40歳を迎えた4人は、胸をときめかせつつ、一晩中彼の登場を待っているのだ。
    そりゃ、いくらなんでも出来すぎだ。と言うと身も蓋もないようだが、小学校の頃に男子に失恋したのを40まで引きずってる女なんて、ないわな、やっぱ。
    が、独特のリズムをもった文体はなかなかいいし、4人それぞれのエピソードもいい。腕白小僧みたいな雰囲気を残す池内暁が、へなへなと力を抜きつつ生きてるような二瓶正克に「全速力で走れよ、きみ」と言われるエピソード。「保健室のおばさん」である加持千夏と高校性男子の「キッド」が互いの脆さをそっと抱きとめる最後の会話。いやいや、女を知ってるポーズだけの坪田隼雄と「ブルースター」の脳内恋愛のエピソードだって、なかなかいい。というか、田村久志と中村里香の出来すぎた話よりは、脇のエピソードの方がよっぽどいいんではないか。
    計算して構成しているのであろうが、あまりに出来すぎた男、田村と中村のカップルの存在って、この連作にほんとうに必要だったのかなあという気もする。私はどちらかと言うと、出来すぎてて気持ちがちょっと下がりましたけどね。

  • 田村、まじかよ!!!

  • 小学校の同窓会、三次会まで流れて来たバーで旧友「田村」を待つ5人・・

    「田村はまだか」 「パンダ全速力」 「グッナイ・ベイビー」「きみとぼくとかれの」
    「ミドリ同盟」 「話は明日にしてくれないか」の六話からなる話です。

    それぞれの思い出や人生が語られている。
    バーのマスターがその話のキーワードになる言葉を、
    お客の印象に残った言葉としてノートに書き留めているという設定も面白い。


    やっぱり第一話が良かったです。

    孤高の小6、あっぱれですね。
    あのタイミングの「好きだよ」は大人でもいえない・・
    班長の「紙吹雪が見えたよう・・」ぴったりの表現です。
    生活環境が不遇であっても、みんなを引きつけるはずです。

    白黒だった世界が天然色に染まる瞬間・・てあるんですね。
    私は逆のこと2回経験しました・・
    一瞬にして、まわりの世界にフィルターがかかったみたいに色彩がなくなってしまうってこと・・
    母を亡くした時ともう一回・・
    今でも、その時のことはセピア色でしか思い出せません・・
    だから、読みながらいろんなこと考えてしまいました^^

    第二話も好きです・・
    淡々とした自分の世界をもっている二瓶正克・・
    田村の父親?っていう伏線が面白い。

    どの話も、マスターが何を書き留めるか・・
    私ならコレっていうのけっこう当ってました(笑)

    結末は、ちょっとキツイものもあったけど、
    面白く読めました。

  • 『田村のことを思うとき、おれたちの心は混じりけのないものになる』
    5人の男女がススキノのスナックで、田村を待っている。
    クラス会の三次会である。彼らは40歳。
    その5人の酔客のよしなしごとを、穏やかな面持ちで聴いているマスター。
    田村はなかなか来ない。その訳が終盤に明かされる。

    この小説には、心がやわらぐ‘ちょっとイイ話’が出てくる。
    しらふで読むより、軽くお酒を呑んで
    ほろ酔い加減になった頃読むといい感じかもしれない。

    作中の会話は自然で、ユーモアのセンスが感じられる。
    一行一行が短めでシンプルな文章。
    その個性的な表現法は好みが分かれるかもしれません‥。

    第30回吉川英治文学新人賞受賞作。

  • だいぶ前に読了。
    以下、メモ。

    2009年吉川英治文学新人賞受賞作。
     かつて「孤高の小学六年生」と言われた男を待つ、軽妙で感動の物語。
    深夜のバー。小学校のクラス会の三次会。四十歳になる男女五人が友を待つ。
     大雪で列車が遅れ、クラス会同窓会に参加できなかった「田村」を待つ。
    「田村」は小学校での「有名人」だった。有名人といっても人気者という意味ではない。その年にしてすでに「孤高」の存在であった。
     貧乏な家庭に育ち、小学生にして、すでに大人のような風格があった。

     そんな「田村」を待つ各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たち。
     今の自分がこのような人間になったのは、誰の影響なのだろう----。
     四十歳になった彼らは、自問自答する。

     それにつけても田村はまだか? 来いよ、田村。

     酔いつぶれるメンバーが出るなか、彼らはひたすら田村を待ち続ける。

     そして......。

     自分の人生、持て余し気味な世代の冬の一夜を、軽快な文体で描きながらも、ラストには怒濤の感動が待ち受ける傑作の誕生。

  • 話は面白いんですけど、まあそうかということかと言う感じ

  • 「田村はまだか」、面白いタイトルです。朝倉かすみさん、2008.2発行。北海道は札幌で小学校5~6年を過ごした同級生とスナック「チャオ!」のマスターの話。やはり同級生の中村理香と結婚した田村久志がなかなか店に来ない。「田村はまだか」。みんな40歳。田村を待つ男3人、女2人、それぞれの人生が、田村を肴に語られていく。長~い一夜の物語。田村はなぜ到着しないのか、最後に、ひと波乱が準備されていました・・・。(私はこの波乱、好まないですが・・・)

  • 黄昏流星群みたいな話だった…。
    読む前に思ってたのとだいぶ違ったなぁ。

    私30代半ばだけど、40になった時にこんな人生経験してないだろうなと思った。
    昭和の時代の40歳の人たちの話かな。

    ラスト、田村が、田村の実父であろう二瓶さんに会った時に「彼らの人生、まだまだこれからだな!」って思ったけど、そもそも現代の40歳には人生これからだという悲壮感自体がないから、やっぱりこれは一昔前の小説であって、黄昏流星群ぽいなぁと思った。

    あ、この本で、初めて「副耳[ふくじ)」なるものを知りました。
    表紙の男性は、電話かけてるところかと思ってたけど、副耳を触っているところなんです。

  • ワタシの中にスッと入ってきた一冊。


    mixiで中学の同級生を見つけ、卒業以来の
    再会を果たして以来、ワタシの中では同級
    生と飲むのがちょっとしたマイブーム。

    そんな中で読んだこの小説に登場する男女
    五人は、小学校の同級生で、この日はクラス
    会の三次会。
    後からやって来ることになっている田村を待つ
    五人の会話や、一人ひとりのこれまでの経緯
    は、本当にスッと入ってきた。

    しかも、この五人は丙午というから、ワタシの
    一つ下の学年。

    なんだか自分もその場にいるような気分で
    読ませていただきました!


    ちなみに、この小説は去年の冬に出版された
    時から知ってはいたのだけれど、手が伸びな
    かった。でも、読書家のマイミクさんが、この
    本の著者である朝倉かすみさんの別の作品を
    取り上げていたのをきっかけに、手に取った。
    結果、"当たり"で、マイミクさんには感謝感謝
    です。

  • Yから勧められて。後半冗長になる。

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著者プロフィール

1960 年生まれ。北海道出身。04 年「肝、焼ける」で第72 回小説現代新人賞、09 年「田村はまだか」で第30 回吉川英治文学新人賞、19 年「平場の月」で第35 回山本周五郎賞受賞。

「2021年 『ぼくは朝日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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