ソラリス (スタニスワフ・レム コレクション)

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  • Amazon.co.jp ・本 (369ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336045010

感想・レビュー・書評

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  • SF。ホラー。
    難しそうというイメージで敬遠していた作品。
    思っていたよりも全然読みやすい!
    ホラーとしてもラブストーリーとしても読めるからでしょうか。
    とはいえ、解説の著者のエッセイによると、主題はあくまでも"未知なるもの"とのコンタクト。
    ソラリス学について描写した「怪物たち」「思想家たち」の章は、非常に濃密で、はっきり言って読みにくいが、大事な箇所だと信じて頑張って読みました。この部分で読者の想像力がおおいに試されそう…。
    "人間には理解できない存在"を描き切った、もの凄い作品ということは確かです。

  • レム亡くなってしまいましたね。
    もう、あの全てのSFに喧嘩をうる尖った作品は読めなくなると思うと寂しい限りです。

    ひとりレム追悼第一弾はやはり「ソラリス」!中学生の時からなんど読み返しただろう。

    宇宙でであった生命体らしき存在と意思を通じ合わせることができるのか?理解するということはどういううことか?を突き詰めていくなかに、自分とも向き合わなければならない状況に追い込めれていったり、同じ人間同士ですら理解できているのか?と思ってしまうなど、読むたびに違った印象をもつ、まさに作品自体がソラリスなのだ。傑作!

    ハヤカワのソラリスTシャツ欲しかったな。

  • ファーストコンタクトものでありながら、非接触SFとでも言えばいいのか……知性を持った地球外生物を描きつつ、最初から最後まで意思疎通が全くない状態のまま、話は静かに、それでいて厳かに幕を閉じる。
    人間という形態とは異なる、共有するものが全くない、<他者>という存在。物理的にはもちろん、感情も理性も超越した精神性とコンタクトを取るということは、一体どういうことなのか。

    思考実験的でありながら、最後まで理解の端緒をちらとも見せずに読者を虚空に放り込むストーリーに感嘆。
    コンタクトこそが目的のための手段であり、あらゆるものの入り口であったはずなのに、それが信仰のようになってしまうことの絶望感が生々しい。徒労とはいつだって生々しく、そして人間臭いことなんだなぁ。
    それがわかっていても、そこに「自分と共通した何か」を見つけようとする、いや、そこからしか可能性がない、ということに人間というものの尺度をしみじみ感じた。

    何かと噂は耳にしていたので、あらすじから、自分の性格ならばラブロマンスとして読むかもしれないな、と思っていた。
    しかし、その予想は外れた。非共有。共に持ち得るものがないということ。それは愛も同じなのかもしれない。(地球という)限られた世界で暮らす私達にとって、<他者>にはいつだって、どこかしら<私>が含まれているのだろう。
    スケールの違いから生まれる、埋まることのない断絶に、シニカルな悲哀と温かな虚無を感じた。

  • 2013年1月7日
    面白いSFは哲学的か宗教的になりますね?。
    しばらくして、また読んでみたい作品です。

  • ジャンルでくくることができない、様々な要素が混ざった作品。
    名作、とはこういうものを指すのでしょう。

    壮大かつ斬新な創造世界に頭を奪われ、
    甘く切ない、耽美の世界に心を奪われます。

    全くの創造に対し、非常に行き届いた描写が記されていることにただ圧倒されました。
    そして、優美なストーリーラインが、その合い間をきれいに縫っていきます。

    ブレードランナー、を思い出しました。
    同じく頭も心も虜になった映画の一つです。

    時折、ふと思いだして、その余韻をじわじわと噛みしめたくなる小説です。

  • 何かと“コンタクトする”とはどういうことか。太陽系以外の惑星系も次々と発見されている。いずれは“ソラリスと出会う”だろう。理解しえないものが目の前に圧倒的に立ち現れたとき、答えも出せずに立ちすくんでいるのは恐怖だ。
    P119〜121のやりとりはクラークの様に宇宙進出主義の無邪気な私を打ちのめす。恐怖を打ち消すために生み出す答えはこれまでのちっぽけな人間脳をただ単に投影・拡張した(人間形態主義の)ものでしかない。ラストのケルヴィンやスナウトの様に引き受けていく事ができるか。
    いわんや近しい他者とも。

  • 旧来の文庫版とは全く印象の異なる新訳版!!ソラリス学に関する薀蓄等、後の「完全な真空」「虚数」をも彷彿させます。良書!!

  •  同種であるはずのヒトでさえ、それが他者であれば(たとえ自分であっても)、その行動が何を企図するものなのか、わからないことは多いのに、まったく別の生命体ということになれば、その「意図」を理解しようとする試みは、徒労にすぎないのかもしれない。けれども、ヒトは考えてしまう生き物なのだろうと思う。だからこうした小説が成り立つし、それを読んでまた考えたり語ったりする者が現れるのだ。

  • SFを読むならと勧められた本のうちの一冊。原作は1961年に発表されており、ちょうど60年前の小説ということになる。
    今でこそ有り様が違うために理解することすらできない未知数の存在というのはフィクションでもまま見るけれども、これはその元祖といえる本なんだろうか。読み進めてずっと宇宙ステーションの中だけで物語が進んでいくので、一大スペクタクルを期待していた私は正直肩透かしを食らった気分だった。舞台はそれが過ぎ去った時代からスタートしている。

    読んでいてなにより辛かったのは授業のような「ソラリス解説」だった。物語のソラリスについて、その研究歴史についてじっくりと説明される。これがなきゃ文量は半分で済んだんじゃないかというくらい書かれている。訳者解説が無かったら私はこの話の魅力の半分も理解できたか分からない。「ソラリスがどれだけ理解しようとしても未だ理解できない存在か」ということを理解するために、様々な面からアプローチがあったという事実を知ることは大切なのは分かるが、読み進めるのが大変だった。

    「ソラリス」は言われるように、ミステリー、サスペンスホラー、ラブストーリーと多面的な要素を構造に組み込まれた魅力的な物語だと思う。だから読者によってそれぞれ違った受け取り方が可能だ。それこそ映画監督がソラリスから郷愁を見出して映画を作り上げたように。
    けれどもこの本では、多面を要していてもそれぞれが十分にものを含んでいるとは言い難い、少なくとも私にとっては上記に挙げる要素のどれも物足りなかった。香り付けのように感じる。どちらかというとエンタメではなく、哲学的な要素が強い印象だ。
    (思い出の中の彼女をトレスした「お客さん」が主人公ケルヴィンに彼にとっての彼女そのものの言動や行動を取ったことで、そして自己犠牲という判断をしたことで、彼女を愛する、または一人の人間の自我を見出したとして、愛しているのは結局自分もしくは自分の脳ではないのだろうか。本物の彼女はすでに死んでいる上に、愛着を持った始まりはそもそも外見、つまり思い出の人を模されたことによるものだ。抱く共感も、内心の想像も全て霞のようなものを相手しているに過ぎない。他者の存在しないそれが恋や愛だとは私は思えず、相手に対して不気味さが残るホラー色が強い。
    私がケルヴィンだったら思い出の彼女を侮辱されたかのように感じて怒っていたかもしれない。けど愛着を持つ主人公の気持ちもよく分かる。
    人の深層心理から汲み取ってみせるソラリスは、人によって恐怖の対象だろう。だからこそ他の研究者達が他人から酷く隠したりしていたのだと思う。他者の目に容易に映るようになってしまった思い入れのある存在が無遠慮に周りに認識されてしまうことは、人にとって恐ろしいことだ。
    ソラリスの作り出した、その人にとって意識に強く残っている存在が、他人の目に映る時も人によって姿を変えずそのままというのも、不思議ではあるけれど)

    より温かみを感じたのは、翻訳された間接的な文章からも伺えるスタニスワフ・レムの冷徹さがありながら、理解不能のソラリスという存在に対して対峙を試みるラストへ物語が決着したということだった。
    未知の存在に対して理解しようとする道を閉ざさないこと、排他的になってはならないこと、また「違う存在に対して自分や人の性質を投影し、共通を見出すことによって理解しようとすること」は本質から遠ざかりかねないことを徹底して描いている。骨太で、作者の信条を感じながらそれでいて読者に問いかけを投げてくれる、良い本だった。

  • 1961年ワルシャワにて初版。
    以来30以上の言語に翻訳され「20世紀文学の古典」とされる作品。

    構えて読み始めたが、沼野氏の訳は親しみやすく、前半は物語に引き込まれて一気に読んだ。
    後半以降、度々展開される「ソラリス」研究のくだりは、あまりに学術的で、あまりに描写が鮮明で、もう何の話かついていけないけど、レムの頭の中すげえと恐れおののきつつ若干ページを飛ばす。(スミマセン) 

    「人間は他の世界、他の文明と出会うために出かけて行ったくせに、自分自身のことも完全には知らない」p265
    ソラリスの意図が理解できないまま、長い歴史を人類は翻弄されてきた。
    不可解な現象を前に右往左往する様は滑稽ですらある。

    これまで描かれてきた物語では、地球外生物と出会った人類は、平和的関係を築くか、はたまた生死をかけて戦うか、どちらにせよ「地球上に認められる諸条件をただそのまま無限の宇宙に持っていっただけ」p363 であった。
    一方、レムが『ソラリス』で示したのは、「コンタクト」そのものであり「理解不能な未知の現象に出会った場合の製作見本(モデル)」p364 であった。

    ラストで、「海と会うため」p341 一人ステーションの外に出ていく主人公。
    そこで「用心深い、しかし臆病とは言えない無邪気さ」を見せる海に触れ、「まるで一切努力もせずに、言葉もなく、何も考えることなく、この巨人に対してすべてを許せるような境地」p343 に至る。

    異質な他者と対峙した時、それに対する「違和感を保持しながら、それでもなお他者と向き合おうとする」p359 姿勢をとり続けること。
    親切な訳者解説で、この大作をどうにか理解できました。地球上においても、”未知との遭遇”を経験した際に覚えておきたい。

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著者プロフィール

スタニスワフ・レム
1921 年、旧ポーランド領ルヴフ(現在ウクライナ領リヴィウ)に生まれる。クラクフのヤギェロン大学で医学を学び、在学中から雑誌に詩や小説を発表し始める。地球外生命体とのコンタクトを描いた三大長篇『エデン』『ソラリス』『インヴィンシブル』のほか、『金星応答なし』『泰平ヨンの航星日記』『宇宙創世記ロボットの旅』など、多くのSF 作品を発表し、SF 作家として高い評価を得る。同時に、サイバネティックスをテーマとした『対話』や、人類の科学技術の未来を論じた『技術大全』、自然科学の理論を適用した経験論的文学論『偶然の哲学』といった理論的大著を発表し、70 年代以降は『完全な真空』『虚数』『挑発』といったメタフィクショナルな作品や文学評論のほか、『泰平ヨンの未来学会議』『大失敗』などを発表。小説から離れた最晩年も、独自の視点から科学・文明を分析する批評で健筆をふるい、中欧の小都市からめったに外に出ることなく人類と宇宙の未来を考察し続ける「クラクフの賢人」として知られた。2006 年死去。

「2023年 『火星からの来訪者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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