名もなき毒

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (489ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344012141

感想・レビュー・書評

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  • 『誰か』シリーズの第二弾であるこの『名もなき毒』。
    宮部みゆき、やっぱりすごいなぁって思いました。

     毎回色々な角度から犯罪を切り取って話を展開させていくけど、読んでいてじんわりじんわりと恐ろしくなりました。
     
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    「普通の人間とはどういう人間です?」
    「私やあなたが、普通の人間じゃないですか」
    「違います」
    「じゃ、優秀な人間だとでも?」
    「立派な人間といいましょうよ」北見氏は疲れた顔で微笑んだ。「こんなにも複雑で面倒な世の中を、他人様に迷惑かけることもなく、時には人に親切にしたり、一緒に暮らしている人を喜ばせたり、小さくても世の中に役に立つことをしたりして、まっとうに生き抜いているんですからね。立派ですよ。そう思いませんか」
    「私に言わせれば、それこそが『普通』です」
    「今は違うんです。それだけのことが出来るなら、『立派』なんですよ。『普通』というのは、今のこの世の中では『生きにくく、他を生かしにくい』と同義語なんです。『何もない』という意味でもある。つまらなくて退屈で、空虚だということです」
    だから怒るんですよ、と呟いた。
    「どこかの誰かさんが『自己実現』なんて厄介な言葉を考え出したばっかりにね」
    煙に巻かれているような気がするのに、その一方で私はひどくたじろいでいた。

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    「原田さん(犯人の名前)は、顔の見える相手が憎たらしいんですね。世間が憎いから、誰でもいいからやっつけちゃえっていう、通り魔とかとは違う。自分のそばに顔が見えて、その顔が笑ってるのが憎いんじゃないでしょうか」
    彼女を笑っているのではなくても。
    自分は同じように笑うことができないから。
    だからお兄さんの幸せを壊した。

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    本文からの抜粋だけど、
    ここらへんが何となく私が怖く感じた箇所でした。

    犯人は「普通=何もない自分」という今の自分の状況に怒り、そして自分の周りの人が幸せそうなことに怒り、周りの人を許せなくなりその幸せを壊していく・・・・
    それを繰り返しているわけです。

    でも、こういう人って、確実にこの日本でも増えてきている。昨今の事件の報道なんかみていると思ってしまいます。


     人間って日常の何気ない一つ一つを幸せであるって感じられる「幸せ力」が大切なんだと思いました。
     

  • ドラマを先に見たんだけど
    ドラマの脚本家さん、かなり原作に忠実に書いてあるなーと感心した。

  • 再読

  • 今多コンツェルン広報室に雇われたアルバイトの原田いずみは、トラブルメーカーだった。
    解雇された彼女の連絡窓口となった杉村は、振り回される。
    折しも街では、連続毒殺事件が注目を集めていた。
    人の心に巣食う毒を圧倒的筆致で描く吉川英治文学賞受賞作。杉村三郎シリーズ第二弾。

  • そういう意味での「毒」かぁ

  • テレビ版じゃさらっと流されてた気がするけど
    北見さんが悲しいな。
    杉村さんはこっちのがしたたかな印象。
    話の流れは分かるもののいまひとつ
    言いたいことまで辿りつけてないような・・難しい;;

  • 前作より好きでした。
    原田いづみがこわすぎる・・・こんな人いない、でも絶対と言い切れない。
    いろんな問題が交錯しながら話が進んでいって一気に解決に向かうところがちょっとうーんって思ったけど、ドラマ見ていて疑問だったところがやっぱりきちんと説明されていたのでよかった。
    ドラマの演出も悪くなかったけど原作のほうが好きでした。
    結構長かったけどちょっとずつ読み進めて早く読めました。
    それだけ面白かったんだと思う。

  • ドラマが先でこちらを後から読んだ訳ですが
    「あのドラマ、結構真面目につくっていたんだな」と思いました。
    毒のない小泉孝太郎=ぴったりはまり役。

  • 途中まで、読んだことがあったっけ?と思うほど、シリーズ?のものと重複していました。
    シックハウスのお話しかと思ったら、人間の毒に対するお話だったんですね。

  • 宮部みゆきは火車以来の2作目。
    火車が最高におもしろかったからハードル上げすぎたかも。
    個性的、魅力的な登場人物が全くいない。
    名前がなぜか憶えづらい。無駄が多い。
    話があっちに行ったりこっちに行ったりするのは、新聞の連載ものならしようがないのかなぁ。
    読み進めると犯人や真実が気にならなくなってくる。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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