職業としてのAV女優 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344982642

作品紹介・あらすじ

業界の低迷で、100万円も珍しくなかった最盛期の日当は、現在は3万円以下というケースもあるAV女優の仕事。それでも自ら志願する女性は増える一方だ。かつては、「早く足を洗いたい」女性が大半だったが、現在は「長く続けたい」とみな願っている。収入よりも、誰かに必要とされ、褒められることが生きがいになっているからだ。カラダを売る仕事は、なぜ普通の女性が選択する普通の仕事になったのか?長年、女優へのインタビューを続ける著者が収入、労働環境、意識の変化をレポート。求人誌に載らない職業案内。

感想・レビュー・書評

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  • AV女優を職業として考えてみる。ハローワークには登録されることのない仕事だが、求人募集は頻繁。労働時間は1日だけの拘束。携わるスタッフは、後で警察や弁護士の世話にならないようコンプライアンスを徹底した労働環境を作り出す。

    また、働く本人にとって、なにはともあれ「女優」の仕事だ。注目を浴びて、誰かを喜ばせて、ほめられる。そんな満足感、高揚感を得られるという仕事はなかなか存在しない。

    そう考えると、同じ裸をさらすなら、風俗よりはマシと思える。著者曰く、意外と就職希望者は多いらしい。本書でインタビューに応じる関係者も、AV女優業について比較的ポジティブな意見が多い。

    が、それはかつての話だ。就職希望者が増え、AV女優の賃金は下落。レンタルビデオ店の減少とともに活動の場も少なくなり、とりあえず事務所に名前を登録しただけの自称AV女優がほとんどらしい。当然ながら反社会的な事件に巻き込まれることもある。

    ではこれから、AV女優は仕事に対してどう向き合うべきか。いつまで勤められるのか。退職後の人生設計はどうなっているのか。

    結局、AV女優業はなくなることがなく、一定の需要はあるだろう。経験を退職後の人生に活かす元AV女優もいる。が、それはかなり狭き門。著者の結論としては、就職すべき職業ではない、だ。

  • 競争が激しいAV女優の世界。撮影環境の治安は良くなってきたが...

    ●感想
     一つの職業としてAV女優を取り上げる。AV女優も資本主義的構造になっており興味深い。AV女優はアイドル業界、芸能界と同じく競争が激しくなっている。昔のように簡単に稼げる職業ではなくなった。多くの新人が毎年登場し、たくさんの人が消えていく。恵比寿マスカッツのような、一般人にも認知されるようなAV女優は皆「単体女優」と言われるトップ層。むろん、その地位まで上り詰められるAV女優は少ない。撮影環境の安全性が上がった分、応募も増えているのだろうか。SNS等インターネット系メディアの発達によってAV女優の活躍をよく目にするようになり、一見キラキラした職のようにも見える。だがそれは他の芸能系稼業と同じく、レッドオーシャン。死屍累々の上に立っている者だけが世間一般認知されるのだ。


    ●本書を読みながら気になった記述・コト
    *AV女優が所属するモデルプロダクションは裏稼業のような雰囲気を持つ。AV女優という職は法律的にはグレーゾーンになる。そのため、その管理、運営を行うプロダクションの人柄も裏稼業から流れてきている場合が多い。
    *AV女優になるきっかけは経済的理由が多い。地方出身で上京してきたが、生活が苦しく、より高い収入を求めてAV女優に応募するケースが多い
    *AV女優は人気職業となった。誰もがラクして稼げる時代は終わった。全体の応募数のうち、実際に撮影まで到達できるのは2割ほどになっている
    *世間に認知されているAV女優は「単体女優」とうカテゴリで、トップ層に位置する。誰もが単体女優になれるわけではなく、ルックスが求められる。大半は単体女優にはなれず、消えていく
    *AV女優とは賞味期限が短い。毎年大量の新人が登場し、多くの女優が消えていく。それを理解できずに生活水準をコントールできない人物が、AV出演によって生活を狂わせていく
    *行き過ぎた演出によって、女優が大けがを負ったり、PTSDを発症する撮影もあった
    →現在は大分改善されている。ナンパモノなど野外での企画撮影も、条例の改定などによって撮影ができなくなってきた。撮影空間の治安は良くなっている

  • いまの時代、体を売るという(私からすれば)最終手段を選んでも、たいしてお金にならないという現実を知る。
    かならずしもネガティブな面ばかりではない
    (承認欲求が満たされる、表社会に不適合でも、うまく生きていける場所ができる、やめてからもそういう経験を生かしたり受け入れてくれる環境はある…)にしても、非常にリスクの高そうな選択をしても高収入とは限らないし、ましてや願っても仕事にありつけない人もいるって厳しい世界。

    そうとう顔とルックスと性的魅力とが優れていないかぎり生きていけず(売れないしヒエラルキーの上位にいられない)、
    そして絶対に時間の経過とともに価値は下がる。

    いろいろな現実を知ってもする、と決める人はなにかしらの結果を出すのだろうけれど、自分には向かないし生きていけない世界だと思った。
    AV製作の歴史を追っていって過去の凄惨な事故(事件か?)を読んだら寒気がするくらい怖かったし。たとえ現在はそんなひどい扱いは減っているとわかったとしても。

  • AV女優の個人的な境遇ではなく、AV女優という職業に焦点を当てたのは面白い。単体、企画単体、企画ごとの収入モデルケースがていじされてたりたなかなかに興味深い。それ以外にも物珍しい話が詰まっていて面白い(ビデ倫て今はもうないんだねー)。まあ深い考察なんてのはあまりないが。
    気になったのは、売春を貧困女性のセーフティネットとして積極活用しようというNPOが存在するという記述。さらっと書かれていたのだが、これってけっこう微妙な問題じゃないのか。セーフティネットとしての効果の有無だけでなくて、精神的・肉体的リスク、法的位置づけ、そして倫理の問題など考えなくてはいけないことは多い。

  • AV女優は、なり手が増えすぎて、合格率14%、しかもそのうちのごく一部しか仕事が無い。売れっ子AV女優は、超エリート職業になってしまっている。

  • 最後まで読んで初めて知ったのですが

    >本書はAV女優でもしようかな?と思っている女性や、娘を持つ親たちに読んでほしい。たとえアルバイト気分でも、職業は現実を知ってから選ぶべきである。

    なのだそうです。

    言われてみると、「どのような方法でAV女優になるか」「意外に狭き門で、なってからもなかなか仕事のない人もいる」「仕事の種類」「収入」「歴史(黒船も登場する)」「トラブル」「引退後の生活」など、就活としてこの業界を知りたい人には大変良いガイドブックかもしれません。

    大成功するのはやはり元々の有名人。元AKBと言われると、私でも見てみようかと思います。著者の予想では「次に出る有名人は高○○○では?」と。彼女が5本も出演すれば10年ぐらいはなにもしなくても生活に困ることがないくらいは稼げるのではないかと言います。

    著者は多少いいことも言いながら、結局あまり薦めてはいません。でもこの女優さんたちを取材することを仕事としている彼にとっては、なくなったら困る職種なのではないかしら?

    読みながら思い出したのですが、私が短大に入ってすぐのころ、渋谷をぶらぶらしていたら大学生のお兄さんに声をかけられ、近くの事務所に連れて行かれ、待ち構えていた雄弁な女性とそのお兄さんに挟まれ、サインしてお金(たいしたことないけど、当時の私には痛かった)を払ってしまいました。帰宅して母に言ったらものすごくおこられました。でもその経験のおかげで、その後自分は「甘い誘惑にきっぱり断れる人」になることができました。小さい失敗はしたほうがいいのです。

    でももしも、かろうじて一個ひっかかった短大に通う、勉強がいやでたまらない18歳の私が、地方出身ひとり暮らしでお金がない状態で東京でスカウトに声をかけられうまくおだてられたら…。「火曜サスペンスドラマの脇役だよ」といわれて行ってみたら実はAVで、すでに準備ができているところに一人立たされたら…。

    就職活動しているかたへ。人前で堂々と言える仕事につきましょう。

  • 毎年4000〜6000人が入れ替わり、出演料が3万円〜という様なAV女優についての情報も書かれているが、読み進めていくと、この本はAV業界をモチーフにしたビジネス書であることが分かる。

    一般のビジネス書に書かれている、コモディティ化、環境与件の変化、破壊的イノベーション、ブルーオーシャン戦略、マズローの欲求5段階、労使関係、派遣問題、リスクマネジメント、セカンドキャリア...etc.多岐に渡る内容が一冊に凝縮されている。

    AVの裏側に垣間見ることができる現状が、他のビジネスと共通しているところが面白い。いや、逆か。最古のビジネスとされるこの業界にこそ学ぶべき事があるのかも知れない。
    一般企業が「理念」をうたい社員のベクトルを合わせようと必死なのに比べて、この業界は「理念」など敢えて掲げる必要などない。ひたすらに厳しい生存競争を繰り広げるリアルなドキュメントでもある。

  • 殿方であれば気になるアイテム、AVビデオ。
    AVがあったからこそビデオデッキが、これほどまでに普及したという伝説もありますが、、、

    そのAV業界の内幕を描いた異色作。
    過去は落ちるとこまで、落ちた女性のセーフティーネットだったという。
    振り返って現在は。「倫理観」も薄れAVへの応募者激増中。
    しかし衰退中の業界にあるだけに、狭き門となっているとか。
    しかも、「単体」を頂点としたヒエラルキーが存在し、そのヒエラルキーも
    数年で崩れ去り新しいヒエラルキーが、、、の繰り返し。

    AV業界の裏側を知るだけでも、ムダな知識として吸収出来た気がする。
    AV業界に飛び込むには、ある程度の勇気と相当の「客観性」が必要なんだなぁ。引退後の生活を鑑みて、、、その両立は難しいとは思いますが。

  • 広い意味での「売春」の倫理性を問う。という視点はまったく無くて、広い意味でのブラック企業の解説本である。約15年間、700人ものAV女優のインタビューをこなしてきた著者だからこそ書けるその実態。この20年間の労働実態の変遷もよくわかった。

    内容(「BOOK」データベースより)
    業界の低迷で、100万円も珍しくなかった最盛期の日当は、現在は3万円以下というケースもあるAV女優の仕事。それでも自ら志願する女性は増える一方だ。かつては、「早く足を洗いたい」女性が大半だったが、現在は「長く続けたい」とみな願っている。収入よりも、誰かに必要とされ、褒められることが生きがいになっているからだ。カラダを売る仕事は、なぜ普通の女性が選択する普通の仕事になったのか?長年、女優へのインタビューを続ける著者が収入、労働環境、意識の変化をレポート。求人誌に載らない職業案内。

    かつて「北の国から」で宮沢りえが演じた「元AV女優」というイメージは少数派になっている。むしろ、「最高の離婚」で尾野真千子がふらふらとAV撮影旅行に行きかけたのが今の実態をよく掴んでいたのだと思う。
    2013年5月15日読了

  • 出版された頃、読売新聞の読書欄の紹介されていたことで気になって読んでみた。

    SODの登場以降、AVがかなりオープンに語られるような風潮になったと思いますが、未だに法的にはかなりグレーな部分が多いのですね。
    著者に言わせれば、それでもAV業界の方が、芸能界よりも反社会勢力との関わりは浅いらしいです。
    少しだけしか書かれていませんが、「売春を貧困女性のセーフティネットに」という考えの元、NPOがこういった業種に参入してくる可能性があることも驚き。
    90年以降の歴史を書いた第3章が面白かった。

  • 歴史とともにAV女優になる人や、環境が変わっていっていることがわかって面白かった。
    また、金額の話も具体的に色々出ていて、勉強(?)になった。

    タイトル通り、エロ要素のない本だが、タイトル通り、職業としてのAV女優のメリット・デメリットがわかる内容だと思う。

  • AV女優を取り巻くこれまでと、今。及川奈央が大河に出て、蒼井そらが中国で人気を集める裏側で、無数に生まれては消えて行く女優たち。
    歴史も振り返りつつ、何が変わったか、今どういう状況なのかをまとめる。
    ひと頃に比べると、クリーンでライト、「ふつう」になったように見えて、軽い気持ちで出演する人が増えている。その背景や、それが何をもたらしたかは本書のキモ。あくまでも、商品であり、消費されるものであるという重い事実。そして最後には「軽い気持ち」の代償をじっくり考えるように警鐘を鳴らす。

  •  これらの価格帯を見てどう思いますか?

    ・単体…100万~250万円(1本あたりの出演料、芸能人・元芸能人を除く)
    ・企画単体(キカタン)…30万~80万円(1日あたりの日当)
    ・企画…15万~25万円(1日あたりの日当)

     これは、モデルプロダクションに登録し、その際に裸の写真から自分の"スペック"から全てをデータベース化されてランク付けされ、その上で業界内に配布されたことを前提に、実際のお仕事として「2絡み、1擬似」をした場合の相場だそうです。

     単体、企画単体(キカタン)、企画…AV女優にはヒエラルキーがある、ということくらいまでは知っていました。
     が、本書を読んでビックリ。長期不況という社会的状況や、AV女優という存在が認知されるようになりかつてほどAV出演に抵抗がなくなっているという価値観の変化、そしてセルビデオの登場等によって以前よりビジネスライクでシステマティックな世界になったことなど、複数の要因はありますが、別の意味でここまで厳しい世界になっているとは思いませんでした。
     厳しいとは、仕事が過酷であるとか、後々まで自分の性行為が映像として残るとか、そういう昔からあったことではありません。供給過剰かつ高いクオリティが要求されるようになったAV女優という職業は、今や裸になる覚悟をもって飛び込んでも仕事がない状態すらざらにある、ということです。一部の超絶クオリティの女の子に「単体」として仕事が集中し、少なからぬ「企画」AV女優にはそもそも仕事が回ってこない。この構造は、まさにAV業界の「格差社会」です。
     最近の子が、普通の生活すらもカツカツでAVの仕事を選んだが、大して生活水準が変わっていないという話は、読んでいると『闇金ウシジマくん』を思い出します。
     あと、お金よりも承認欲求を満たしたくてやっているというのもドキッとしました。承認欲求が目的だと、自分の市場価値がどんどん下がっていっても、より長く業界にしがみつこうとする、というのも切ない話です。
     デフレについては、物価が下がることで賃金も下がったり失業したり、と経済的な文脈で語られることがほとんです。しかし、本当に怖いのは「貧すれば鈍す」で、人間としての尊厳の面においてまでデフレが進行することなのではないか、と読んでいて思わされました。


     考えさせられたのは、ソフト・オン・デマンドの台頭などで、業界の空気がかなり明るい方向に変わったことです。それまでのエロ業界と言えば、今よりもアウトロー色が強く、女優もいわゆる"メンヘラ"な人たちが多かったわけです。が、タイトなスケジュールで確実に良品質な「商品」を作らなければならないAVの現場において、今や心に問題を抱えているような人たちはトラブル発生のリスクがあるので使われなくなっている、ということです。
     今よりもダークだった頃のAV業界は、確かにそういう心を病んだ女性を搾取する構造があったとは思います。が、一方で、そういう人たちの最後のセーフティーネットとして機能してきた部分もあったわけです。
     今はAV女優のクオリティが上がり、腕に注射痕があったり手首にリストカットの跡があったり、一目見て「こらシャブ中や!」と分かるような人たちは見かけなくなったわけです。が、彼女たちは今どこにいったんだろう? と考えると、それはそれで一つのアジールが無くなったとも言えるわけです。

     AV業界の歴史と実態については、特に女性は目を背けたくなるような話もあると思います。が、AV業界というのは僕らが生きている社会の一部を構成するものであると同時に、かつてほど隔絶していない地続きの世界にあるものと言えます。業界に入る・入らない、商品にお世話になる・ならない、に関係なく、知っておくべき内容だと思います。

    • shin1830さん
      参考になりました。
      『闇金ウシジマくん』を観てみたいです。
      参考になりました。
      『闇金ウシジマくん』を観てみたいです。
      2012/09/05
  • タイトル通りのAV女優就職指南書本。

    前から思っていたけど、やっぱりAV女優でも稼げなくなっているようだ。
    競争が激しすぎる。

    多くの女性は一山いくらにすらなれないことからも、ルックスってのは現代社会においてかなり大事な要素なのかもしれない。

    そういう意味では整形っていうのは成長産業なのかもしれない。

    後、おもしろかったのがAV女優であってもかわいければ結婚はできるということ。
    確かに野村義男の嫁もそうだし、割り切ろうと思えば大丈夫なのかも。

    結局大事なのは過去じゃなくて今だし。

    社会勉強として読むにはいい本です。


    では、バイちゃ!

  • 現在のAV女優の状況を知る事ができる貴重な一冊。AV女優がいくら位稼げるのか、どんなトラブルがあるのかが記載されているのでちょっとAVにでも出て稼ごうかなと思っている女性にはちょうどいいかも。男にとってもAVの裏側を知ることができるので、AVの見方がちょっと変わるかも。

  • 「事故承認」という病が本書にも描かれている。

    まだ何者でもなく、何も持たない人間が突如その存在を求められたらのぼせ上がってしまうに決まっている。
    男と違って女の子はただ若い女の子であること自体に価値を持ちうるので、やっかいだ。

    いま日本全体が"ブラック企業"化して、モノの値段だけでなく労働力、人の価値もデフレ化している。性産業だけが例外な分けが無い。

  • 決してHな本ではありません。あくまでも「職業」としてどういうものかと語れた1冊。
    なかなか華やかようで、普通の「職業」なんですね。それでいて、アイドルやモデルのような芸能界とも違うというね。
    男ならお世話にならない人はいないけど読み終わると見かた変わって楽しめくなるは

  • タイトル通りの本。
    昔と今では業界も違うし、女優の意識も違う。見る方にとっていいのかどうかは別として。
    で、才覚のある、見目のいい人には決して悪い就職先とは言い切れない。
    もっとも、誰でも脱げば金になるという時代はとっくに終わっていることも事実。
    引退した後の路にも、ふた通りあるのも過酷な事実。

  • 中村淳彦さんの『職業としてのAV女優』を読みました。 AV業界全般の変遷や仕組みについて書いたノンフィクションです。
    中村淳彦さんは、社会の暗い部分にスポットを当てたノンフィクションの本を多く書いています。

    幻冬舎のWebサイトで『中年童貞』にインタビューするコラムなども担当されていて、中年童貞になるにあたっての背景などを訊いています。そこには過去のいじめなど社会的な問題が見え隠れしていて、とても考えられます。

    ○AV女優が一般的な存在になってきている
    この本を読んで驚いたのは、かつて裏社会的でタブーだったようなAV女優が一般的な職業になってきているということです。それにはいくつの理由があるそうです。

    ○環境整備が進んで業界が健全化してきたこと
    AV業界は合法と違法の間に位置するパチンコ業界のようなもの。数々の摘発や裁判を経て危険な経営を行う企業は淘汰されていったため、業界全体が安全路線へ移行しているそう。また、安心して仕事ができるように性病や衛生面に関する環境整備が進んだことで、『危険な業界』というイメージから『安全な業界』へとイメージが変化しているそうです。

    ○価値観の変化からAV女優=恥ずかしい仕事と思わない人が増え始めた
    かつてはスカウトが中心で、自ら足を踏み入れる人の少なかったこの業界も現在では、アイドルになるのと同じ感覚で自ら足を踏み入れる人も増えたそうです。また、親や家族に自分の仕事のことを躊躇せずにオープンにしている女優も多いんだとか。

    ○懸念
    AV業界の環境整備が進んでいることはとても良いことだと思うのですが、リスクももちろんあります。 イメージが変わったとはいえ、自分の裸が映像として残り続けることは揺るぎない事実。しかもデジタル全盛の現代では、1つの作品がバンバンコピーされてどんどん拡散していきます。また、AV女優のイメージが変わることで新たな問題も・・

    ○AV女優がなくなったことで、女性のセーフティーネットが1つ減った。
    かつてAV女優は、社会のセーフティーネットとして機能している側面があったそうです。 大衆に裸を晒すことになるAVの仕事は、多くの人がやりたがらないから、賃金が高くて、誰にでも望めがチャンスのある仕事でした。
    ところが、AV女優を自ら志望する一般女性がとても増えたことで、結果的にAV女優は、容姿端麗、水商売経験無しなど高いレベルを求められるようになっていきました。貧困層や他の職業を継続することが困難な、精神的に不安定な女性が働けない状態になってきているのです。
    セーフティーネットとして健全ではないかもしれないけど、ホームレスを脱却するため、AV女優を志すも、需要がなく売春を続けている女性の事例などもあるそうです。

    ○新たな展開
    驚きなのが社会のセーフティネットとして、AV女優を斡旋するNPO団体などが現れる動きもあるんだとか。色んなことを考える人がいますね。 一見ぶっ飛んでいますが、良い側面もあるそうな。深くは知らないので僕はなんとも言えません。
    近年インターネットの登場などにより業界全般がどんどん変貌しています。AVなど性風俗の世界にも例外なく様々な変化がおきています。 今後の日本は、人の暮らしはどのように変わっていくのでしょうか。

  • 「日本の風俗嬢」を読んだので、こちらも読んでみた。
    お金まわりなど実情を書いている職業案内といった本で、意識が変化してきている…の話はその過程で少し書かれている感じだった。

  • 名前のない女たちは、「うううー」と心が痛くなりながら
    読んだけど、こちらは第三者的に業界を語っている本であるため、読み物・自分の知らない世界のこととして楽しく読めた。。
    AV女優のその後では、まさに個人の数だけ人生があるなーって感じ。。
    行き当たりばったりに結婚して離婚して子供はネグレクト、ってのは悲しすぎる・・・。負の連鎖ってこうやって続くんだなー・・・と暗くなる。。

  • リアルなAV女優を取り巻く環境や状況についてのルポ。
    熾烈な戦いの上に成り立っているのだなぁ。。

  • 結構読み応えがあったし、勉強になった。
    ・AVも今は健全な業界に変わってきている
    ・単体・企画単体・企画というヒエラルキーがある
    ・志願しても14%しか合格しないし、なったとしても稼げるのはごく一部

  • 完成した作品の視聴者ではあっても、その内実を知ることはほとんどないAV業界の歴史、過去と現在の実態をAV女優という存在を通して垣間見ることが出来る。
    思った以上に最近は健全になりつつあるも、一方でやはり闇の業界なのだなと感じた。

  •  私はこれまでこの職業について、何らかの経済的な事情や脅されて仕方なく始めたものとばかり思っていたが、どうやらそうではないらしい。今日では「たくさん稼いで、早く足を洗いたい」という人は少なく、「出来るだけ長く続けたい」という人が多いというのだ。

     遊んでいるような人が多いかと思えば「経験人数は一人だけ」「元メガバンク」「現役看護師」という人もいたり、何より供給過剰の今は、求められているのは容姿端麗かつ有資格なのだという。
     かつては精神的に病んでいる人も多く、その例として桜一菜は「辞めちゃって稼げなかったのも自分の弱さ。お金に走るってことはちゃんと仕事をするって事だから、まともな人とも出会えるし、向きあって付き合える。自分がまともじゃないから人と向きあうことが出来ない」と心の内を明かしている。が、そのことを筆者は「AV業界が悪いのではなく、彼女達が機能不全家庭で育ったため。売れなくなると居場所がなくなり、精神状態がより悪化する」と論じている。
     観る側にとっては美人が肌をさらけ出してくれるのだからありがたいが、その一方で、これまで必要とされていた、良い意味でも悪い意味でも「病んでいる」女性のセーフティネットが無くなっているのが、今日の業界の姿なのだそうだ。

    「AV女優の数は6000人から8000人で、その内3分の2は毎年入れ替わる。実際稼動しているのは全体の3割」、稼げているのは「単体」と呼ばれている一握りの女優、収入は出演料の3〜4割(本書の例では月収15.6万の女優もいる)、明らかな嘘をついて引きこもうとしていたのは昔の話で、今は賃金体系を明示している、スカウトマンはスカウトした女優の売上金の15〜20%を半永久受け取れるなど、厳しい実情が浮き彫りになっている。

     それにしても、一度出回ったものが半永久的に残り続けるネット社会となった今日において、文字通り「自分を売る」職業に就こうという人がいることに驚かされる。筆者は「一度やってしまったものはしょうがない」という割り切りと、相応の金銭感覚を維持することで、幸せな「その後」の生活が送れるというが、果たして業界の何%の女優がその日々を過ごせるのだろうか。
     
    自分用キーワード
    パーツモデル パブ規制 『てぃんくる』(女性向け高収入誌) 単体・企画単体・企画(AV女優のランク。報酬は順に、100万〜250万、30万〜80万、15万〜25万となる。) 東京都迷惑防止条例改正条項(これにより、路上でのスカウトが出来なくなった) MUTEKI、アリスJAPAN(芸能人専門AVメーカー) 援デリ ビデオ安売り王(ビデ倫の審査を通らない、インディーズ物を流通させ、AVの販売手法を大きく変えた) 東良美季『東京ノアール』(ノンフィクションのAVドキュメント小説) ソフト・オン・デマンド(専門的な撮影技術を持ち込み、利用者が満足できる物を提供することを第一とした) 桃井望(業界を震撼させた変死の当事者) 美咲沙耶(2007年に自殺した女優) 木下いつき(陵辱作品に出演したところ、網膜剥離寸前まで傷めつけられた) バッキー事件(非常に過激なジャンルを扱うメーカーによる傷害事件)  

     

  • 興味を持って手にしたからという事も大きいと思うが、面白かった。面白かったというと語弊があるかな…。10年毎の世相の変化、需要と供給の変化は、想像以上だった。業界裏話的な面白さに留まらない、社会問題を色々と改めて考えたいという気持ちにもなった。

  • 巷で噂になっていたので手に取ってみた。風俗などなど興味がありつつも手を出せずにいた分野なので面白かったけど、引っかかる部分も多々。

    単体を降ろされた女優が触法行為を警察に密告したことや、無理矢理のSM撮影で負傷したことが強姦致傷罪として立件されることに筆者が否定的な立場をとっているのが驚き。私の感覚では、そんなの当り前じゃないの?という感じ。SM撮影で復帰が困難になるほど身体的・精神的に傷つけられた人に対して「それが強姦致傷罪になったら誰もAVなんて撮れなくなる」などと言っているのが正直信じられない。どんな業界であれ犯罪は犯罪と思う。

    精神や生活が壊れてしまうのは「AV女優」という職業が原因ではないと強調されていたけど、それも引っかかる。直接的原因ではないにせよ、体を売るという行為、AV業界と関わったことがそうした傾向を後押ししているのは本文からも感じられるような。

    結局この人って業界寄りの人なのでは…という印象を随所から受けた。

    AV産業の変遷・社会的な意識の変化・インタビューなどなどは、普通に生きていたら知ることのない世界の話なので面白かった。「名前のない女たち」シリーズも読んでみたい。

  • 真面目な本として面白かった。一般にいかがわしい業界と思われているが、その実はどうなのか。今では非常にシステマティックで、かなり健全になりつつあるらしい。危ないアンダーグラウンドな世界というのは、大体過去のもので、その過去から現在への変遷も分かりやすく書かれている。
    そして、今では志願する人も多数で、全然稼げない業界になっているとは意外だった。
    それだけたくさんの人が応募しているがゆえに、この本は多くの人に読まれた方がいいのかもしれない。

  • AVを頂点とする性風俗産業の今が垣間見られる一冊です。
    ハダカ・カラダで稼ぐことへのハードルが極端に下がる一方、まとまった金額を稼ぐのは厳しくなっていく…。
    著者の中村淳彦さんは『デフレ化するセックス』(未読です)でも、同様のことを述べられているようです。
    AV女優のワーキングプア化の仕組みが語られているのは興味深いです。

    こういう世界は、アウトサイダーの出来事で他人事のように感じられてきましたが。
    ハードルが極端に下がっている現在、あとがきにある「娘を持つ親たちにも読んでほしい」っていうのは同感かなと思いました。

    そういう親としての結論は、キレイ事の建前を並べたところで、今も昔もこういう世界に一度でも足を踏み入れてしまうと、その後は厳しいのかなと思います。
    とはいえ、ワープア化と表裏一体の現在どっちが良いのかは…。

    それと第3章で、ビデオ安売王→ソフトオンデマンドへの経緯が、AV側からのアプローチで語られているのは面白かったです。

  • 生きるための最後の手段として、AVを選択するのかと思いきや、実態はそうでもないのが、驚きである。とはいえ、色々とリスクの高いAVにも、デフレの波が押し寄せているというのは、なんとも世知辛い世の中である。

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著者プロフィール

1972年生まれ。ノンフィクションライター。AV女優や風俗、介護などの現場をフィールドワークとして取材・執筆を続ける。貧困化する日本の現実を可視化するために、さまざまな過酷な現場の話にひたすら耳を傾け続けている。『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)はニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞ノミネートされた。著書に『新型コロナと貧困女子』(宝島新書)、『日本の貧困女子』(SB新書)、『職業としてのAV女優』『ルポ中年童貞』(幻冬舎新書)など多数がある。また『名前のない女たち』シリーズは劇場映画化もされている。

「2020年 『日本が壊れる前に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中村淳彦の作品

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