- Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396636180
感想・レビュー・書評
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あら、「まち」読んでないわ
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1.この本を選んだ理由
小野寺さんファンなので、ずっと頼もうと思っていて、念願かなって、手にすることができ、早速読み始めました。
最近、読みたい小説読んでなかったので、嬉しかったです。
読書はストレス緩和になるって、どこかで目にしましたが、ほんと、そうなのかもしれない。
2.あらすじ
荒川沿いに住む三上一家。傑の妹の若緒が交通事故で怪我をして、足を引きずるようになる。その事故の原因となるのが、運転していた傑の友達の大河。そんな環境で、両親がぎくしゃくするようになり、傑と大河も会わなくなって、全ての歯車が悪い方向に向かっていく。
家庭は崩壊に向かい、仕事はうまくいかない、友人関係も悪くなっていく。
そんな中で、傑は自分と向き合っていく。
3.感想
このシリーズが好きなんですが、いままでの作品と同じ感じで、個人的にすごいよかった。
この淡々と進んでいく雰囲気が好き。
すごい急展開とか、そうなの?みたいのはなく、ゆっくり歩いてる感じが伝わってくる作品です。
主人公が悩み続けていく姿が、自分の思考と重なっていく感じがあるからか、この淡々とした感じが、実に面白く感じてしまう。
いろいろの葛藤の中で、人は前を向いていきていく。
そんな日々の生活感がしみじみと伝わってくる作品だと思う。誰しもが、いろいろな課題や問題と対面して生活している。生きるって、そういうもんだよなっと、感じさせてくれる。
主人公のセリフで、「おれはいやなやつだ。」というのがある。おれは、いやなやつだといいながら、自分の嫌な部分と真っ直ぐ向き合うところとか、すごいかっこいいやつだ。私の場合は、「おれはばかなやつだ。」が、はまる。ほんとに、ばかであることに1人で笑ってしまうことがあるぐらいだ。私もばかな自分と向き合って、カッコよく生きていきたいと、思ってます。
4.心に残ったこと
セリフがいい!!
「道は左右どちらへも延びてる。左は上流川へ。右は下流側へ。そのどちらへ行くのが前向きなことなのか。」というセリフが2回出てくる。この「どちらへ」という感覚がすごい好き。
「二週間、わたしが自分自身を何も更新してないことがわかった。」なんて、セリフ、これもいい。自分自身を更新するって言い方がいい。
「カッコ悪い行動をしているのがカッコよく見える。」なんても、すごいよくわかる。
「人間は水と同じで、やっぱ低きに流れる。」というセリフが、一番心に残ったかな…
高みに上がることがゴールではないけど、低きに流されることだけは、いやだなと…
5.登場人物
三上傑
三上若緒 妹 大学3年生
三上達士 父
三上春 母
福地美令 傑彼女
城山大河 傑友達
古里航輔 傑友達
小磯風吾 傑友達
長沼かなで 傑彼女
亮英
喫茶店 羽鳥
羽鳥憲吉さん
羽鳥菊子さん
職場
高萩康久 店長 44歳
間瀬 社員
泉田
花木操子
佐橋有穂
アパート筧
江藤瞬一
郡唯樹 こおりゆいき
横尾成吾 作家
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主人公・三上傑の妹である若緒は、恋人の城山大河と(傑の友人でもある)ドライブデート中に事故を起こし、その後遺症で左足を引きずるようになってしまった。事故以来、家族ぐるみの付き合いだった大河を巡り、三上家はどこかぎくしゃくしている。教員の父は大河に一定の理解を示し、納得いかない母は突っかかり、喧嘩が絶えない日々が続いている。
いつも通り、主人公の傑のキャラクターがなかなか良い。傑物、豪傑、の傑から取った名前で「すぐる」というのだが、『残念ながら、おれは傑物でも豪傑でもない。どちらかと言えば凡人だ』と自らを語る。妹である若緒を心配しながら見守る優しい兄貴だ。
若緒の強靭な精神力には感心させられる。不慮の事故で不自由になった足を嘆かずに強みにして、就活に苦戦しながらも、ついに希望先を勝ち得るのだから。しかも、恋人の大河に別れ話を持ち出したのは若緒だったことが終盤に明らかになる。理由は、今後大河が事故の責任を負い関係を続けていくことになるのは嫌だったからと、家族の前で話した。あまりにもカッコよすぎる若緒が凹んでいる私に喝を入れて来る。兄貴の傑がパートのおばちゃん、気まずくなっていた大河との関係を修復していったように、崩れかけていた家族も元通りになっていった。
たぶん、交通事故が起きなくても、いつか若緒と大河は別れることになっていただろう。
本作は『ひと』『まち』に続く三部作。登場人物に以前の作品に出てきて彼らが友情出演(笑)していて、『まち』の主人公だった瞬一がめでたく消防士試験に受かっていることが知れる。というか、傑と瞬一は同じ街に住むランニング仲間なのだ。自分が住んでいる街も同じように様々な人たちが色んな物語を持っているのだろう。いつもウォーキングで挨拶しすれ違う人たちの顔が浮かんだ。
今回も、日常の平凡な暮らしの中に語られる小野寺さんの術中にはまってしまった。 -
「ひと」「まち」に続き「いえ」
いつもの荒川沿い、平井ですね。
筧ハイツに並ぶ一戸建てに住む主人公。
今までの主人公達の「いい子」ではなくて
等身大の25才独身、実家住み、スーパー勤務
ちょっとネガティブでいい事も悪い事も考える
そしてそんな自分に後悔する。
特別仲が良いとも思ったことのない妹が、事故で足に後遺症が残った事で自分自身や周囲の人との関係が悪い方に流れていく。
今回は「頑張れ〜!」ではなく、見守りますって感じです。
ウチの子達も兄妹ですし、この2人の関係はとてもわかりますね(^ ^)
「いえ」公式サイトに物語の舞台である筧ハイツ近辺の地図があってちょっと嬉しい(//∇//) -
ひと、まちを読んで、この本にたどり着いた。2冊は、青年の旅立ちを描いたもの。こちらは趣が違い、一緒に住んでいる家族がテーマだった。新鮮な感じがした。
「まち」と同じ場所で繰り広げられる物語。喫茶店羽鳥、図書館、筧ハイツ・・・。おなじみの建物をはじめ、大好きな江藤君が登場していて、胸が高まった。
家の中には空気の流れがある。誰かに何かが遭ったとき、それは一気に変化する。家族皆に影響が及ぶことがある。そう思う。
この家族はその流れを変えられるのか?ドキドキしながら読み進めた。
一番苦しい思いをしたはずの妹(若緒)が、一番前向きに歩みを進めていく。強く健気で、胸に刺さった。
「就活してみて、思った。私、これで結構覚えて貰えるの」弱みに見えることを味方につけたこの言葉に号泣した。
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ひとはまちでいえに住みます
やっと三つがそろいました
↑は著者である小野寺さんのコメント。
コメント通り『ひと』『まち』に続く下町荒川青春譚 第3弾。
小野寺史宜さんは大好きな作家さんのひとり。
『ひと』はとても好きな小説。
本屋大賞で第2位になっているが
個人的にはこの年の本屋大賞は『ひと』だったと思っているぐらい。
『いえ』の主人公
三上傑はスーパー・ハートマート両国店の社員だ。
自分のことを”凡人”と言う傑。
だけど、その凡人さを自覚していることが傑の魅力でもある。
プラスorマイナスのどちらかに大きく傾いてしまいそうな時
周りの人たちのアドバイスや意見に耳を傾けることができるのが傑だ。
時々、反発もするけれど
ニュートラルな気持ちで”ひと”と対峙することができる。
だからプラスorマイナスのどちらかに振り切ってしまうことがない。
スーパーでパートさんたちとトラブルが発生したときも
もう少しでマイナスに振り切ってしまいそうになったときでも
自分の誤りに気付くことができて、素直になれる。
すごいぞ~、傑!!!
『いえ』のもうひとつの魅力。
それは、傑の住む『まち』の人々が登場すること!
いや~、これは本当にうれしい。
サプライズプレゼントをもらったような感激!
中でも『まち』の主人公だった
江藤くんの夢がかなったことが本当にうれしかった!
私も「おめでとう~!」って心の中で叫んでた。
『ひと』『まち』『いえ』
さて、次はどこへ続くのだろう…
『いえ』ファンの方は祥伝社の特設サイトもおすすめ↓
https://www.shodensha.co.jp/ie/ -
2022年2月祥伝社刊。書き下ろし。ひらがな二文字シリーズ3作目。スーパーのパートさんとの関係改善の話なんかは楽しい。筧マンションの人の話は余計なような。総じて話自体のまとまりにかけ、面白みは少なかった。長編の意味がないように思う。
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小野寺さんの文体がクセになる。今回も、これこれ。とついつい読んじゃう。
素直な人たちの物語を素直に読む時間。素直に心も痛むけど、素直に心温まる。 -
何が面白いのかさっぱり分からないのに、読んでいてとっても面白い。そんな作家小野寺さん。本作は「ひと」「まち」に続く作品で「いえ」です。「ひと」がスマッシュヒットになったので夢をもう一度っていう感じが否めないものの、やはりこの路線が一番いいなあ。
今回は妹と友人が付き合って、その後交通事故で妹が足に後遺症を負ったとしたら・・・。という大問題を軸に、いつもの普通の人たちがそれぞれに生活しているという非常に淡々とした物語。
ちなみに僕小野寺さんの本好きなので、次の作品に関わるものや人が出てきますので、お好きな人にはたまらないかと。
「ひと」の総菜屋さん、「まち」の主人公、「喰っちゃ寝て書いて」の作者が書いた本、「ホケツ!」の本、「ライフ」と「縁」も多分関係あると思うなあ。
ちょっと盛り込み過ぎではないかと思うものの、本筋に関わってくる訳では無いのでファンの密かな楽しみって感じですね。
そして話としては人と人の関係は、許し許されで一遍通りではないよなあと感じさせられました。色々な鬱屈はみんなあるけれど、しっかり向き合うと皆それぞれ一生懸命生きているだけなんだと。これ大人になると結構感じる事で、決してきれいごとという訳でもないと思います。やはり人の心情を細かく書くの上手いなあ。文学的には書き過ぎなのかもしれないけれど。