いま世界の哲学者が考えていること

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  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478067024

感想・レビュー・書評

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  • 哲学の潮流をまとめた一章は大変勉強になった。ただ、この章と他の章との結びつきはイマイチわからない。とはいえ、IT、バイオ、政治経済、宗教、地球環境の各分野で、哲学者に留まらずどういった人が、どういう考えを持っているのかダイジェスト的に学べて良かった。今後、読んでみたい本も増えます。

  • 現代のそれぞれの大きな変革テーマに対して、どう善く生きるか、という哲学的アプローチでの議論を概略掴める書。問いが問いだけに明快な答えがもちろんあるわけではないが、様々な議論に触れて思索のきっかけになった。


    ・IT革命:スマートフォンのドキュメント性→公共的なアクセス可能、消滅せずに生き残ること、コピーを生み出せること。SNSは発信もできるが監視もされる(パノプティコン) 多数による少数の監視(シノプティコン)
    ・人工知能のフレーム問題。目的に対して検討範囲を規定しないと無限に検証しつづけて意思決定できない。シンギュラリティはデータの範囲に規定されるので、未知なる目的設定ができない限り、データの範囲に収まる??
    ・バイオテクノロジー:ポストヒューマン。トランスヒューマニズムは後世への影響がなければカラダを鍛えることや治療と同じ?
    ・クローンとは一卵性双生児なので全く同じではない。生においてどのような遺伝プログラムを、受け継がせるかを最初から他者が決定することの是非。自分独自の生が出生から始まるという、出生性の欠落。
    ・格差は経済ではなく、政治問題。富める者が問題ではなく、貧困の救済こそが問題。
    ・通貨の本質は信用と精算
    ・9.11からのテロとの戦いを十字軍と表現する愚かさ。宗教は本質的に対立する構造ではない
    ・神を信仰することが絶対的ではなく、信仰にあっても自分自身の指針となる、一つの選択肢となる世界へ
    ・科学と宗教は全く別の領域で機能している
    ・環境プラグマティズムは昨今のESG投資の考え方のベースとなっている?

  • 知的
    かかった時間150分弱?

    現代的な課題と、それらについての哲学者たちの議論を概観した本。著者も書いているが、意外と類書はない…かもしれない。そして、筆者も書いているけど、網羅的に書いているので、羅列というか総花的な印象は否めない(特に資本主義、経済、環境の前半、あたり)。著者自身はものすごく本を読んでいる(研究者としては普通なのか?わからん)が、この人自身がどこまでわかっているのかな?と思う部分もあった。が、しかし、基本的には意義深い本だと思う。

  • 思えば哲学というのは
    言語・数学・科学・政治…などなど、
    多岐に渡る分野の基なんだよなぁ…というのを改めて思い出させてくれる1冊。
    哲学=人生論のイメージを持っているなら目を通しておいて損はなし。
    「Withコロナ」時代の直前に書かれたものですが、今こそ読んで、この先を考えていく足掛かりにしたいところ。
    現代哲学をリードする哲学者の著書のブックレビュー的側面もあって、興味の湧いた人・本からさらに深めていけそうな構成もとても良いです。
    星が1つ欠けてるのは、この本だけじゃ理解は完成しないぞ!気になるところからこの先も読むべし!の意味で。

  • 17世紀哲学は認識論的転回(意識を分析する)
    20世紀哲学は言語論的転回(言語を分析する)
    言語論的転回は、ポストモダン思想との関係
    ポストモダン→真理を信じない、その先にあるものを考える。道徳的な善悪や法的な正義に正解はなく、それぞれの文化、生活様式によって答えは変わるよ、という思想
    21世紀以降の哲学は、言語哲学から心の哲学や、メディア・技術論的転回、思考から独立した存在を考える実在論的転回へと変わっていく

    IT革命は人類に何をもたらす?
    現代社会:スーパーパノプティコン、自分の情報がどんどんデジタルで蓄積され、収集され、「監視が自動的に行われていく」
    シノプティコン:多数者が少数者を監視する
    今の社会は管理社会。個々人は、断片的な情報にまで分割され、絶えず記録されていく

    クローン人間が批判される理由の一つに、「新たに生まれる子供は、原型のコピーであり、人間の尊厳を切り崩してしまう」
    これに対する反論:人間が道徳的に価値があるのは、ただゲノムがユニークな場合であるのみなのか?そうではない。
    クローン批判②:どの遺伝プログラムを受け継がせるかを、最初から他人が決定している。「出生性」という、人間は出生することによって、自分独自の生命が始まるという考えが、クローン人間には無くなる。

    ルネサンス以降の近代社会では、印刷術によって可能となった書物の研究である「人間主義(ヒューマニズム)」が展開されたが、現在ではIT革命とバイオテクノジー革命により、「人間主義」も終わろうとしている。

    ピケティの「21世紀の資本」
    世界的に格差は拡大し続けており、このまま資本主義を持続するためには、格差是正のために資本に対する累進課税が必要。→しかし、何故格差の拡大は悪なのか?どのぐらいの税率なら妥当なのか?
    ライシュは、「格差は経済活動ではなく政治活動である」とした。
    フランクファーとは、「格差による不平等は問題ではない。大切なことは誰もが十分に持つことである。これにおいては、問題は格差ではなく貧困なのだ。」とした。

    グローバリゼーションのトリレンマ:
    ①ハイパーグローバリゼーション
    ②国民国家
    ③民主政治
    人々はこのうちの2つまでしか選択できない。
    ①、②を選べば強力な新自由主義を、
    ②、③を選べば緩やかにグローバル化する国民国家を、
    ③、①を選べば世界連邦を選択することになる。

    リフキンは資本主義の次に、「共有型経済」が来るといった。テクノロジーにより限界費用がほぼゼロでモノを生産でき、資本主義において利益が枯渇する。
    シュンペーターは、資本主義は「成功するからこそ、自らの手で崩壊を招く」といった。技術革新が進めば進むほど、進歩を自動化する傾向を持つから、それが進み続ければ自らの成功の重さに耐えかねて自壊する。

    現代社会は脱世俗化(宗教への回帰)が起こっている。

    ベックの2つの近代化
    1、個人的で普遍的な宗教、プロテスタント
    2、個人的でコスモポリタン的宗教、自分自身の神

  • 現代よくわからんなーと思っていた中で手に取った一冊。近代までの思想史を知っている前提だが、多領域にわたってのトレンドをニュートラルに案内してくれた。ブックガイドもありまずまずの満足度。

  • ・IT革命は人類に何をもたらすのか
    ・バイオテクノロジーは、「人間」をどこに導くのか
    ・資本主義は21世紀でも通用するのか
    ・人類が宗教を捨てることはありえないのか
    ・人類は地球を守らなくてはならないのか

  • 現代の哲学の大まかな流れが理解できた。

    こうして人類レベルで物事を考えると自分の無力さを感じるが、個人としてできる範囲で活かしていきたい。

  • 哲学を通して、様々な現代的課題を俯瞰するもの。
    多くの人物の意見が紹介され、とても難しかった。

    現代の問題を考える一助になり得ると思うが、
    自分自身が内容を消化できたようには思えない。
    勉強不足ですね、きっと。

  • 1章の哲学を除けば、2章以降は日々僕たちが直面する問題に対する専門家の考えを知ることができる。 IT革命ではSNSやマイナンバーと監視社会、人工知能が人から仕事をうばうか、3章バイオテクノロジーではクローン、再生医療、犯罪者の取り扱い、4章資本主義では、ピケティ、自由と資本主義、グローバル化、仮想通貨と国家、5章宗教では、多文化主義の共生や世俗化、無神論のドーキンス、6章地球環境では、温暖化、人間中心主義と環境維持は対立するかという問題、など。面白かった。

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著者プロフィール

玉川大学文学部名誉教授。九州大学大学院文学研究科単位取得退学、博士(文学)九州大学。専門分野:哲学・倫理学。主要業績:『異議あり!生命・環境倫理学』(単著、ナカニシヤ出版、2002年)、『ネオ・プラグマティズムとは何か』(単著、ナカニシヤ出版、2012年)

「2019年 『哲学は環境問題に使えるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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