いま世界の哲学者が考えていること

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  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478067024

感想・レビュー・書評

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  • 最新哲学書のガイドブックとして読むのが良いかと。

  • 今世の中で起こっている問題を、哲学者がどう捉えているのか。タイトル通りの本。
    基本的にほんのさわりしか紹介しないので、この本で議題になっている話題に少しでも触れてきた場合は、物足りない。
    入門書。



    ピーター・バーガーの脱世俗化の話で、先進国でも宗教に入信する人は増えてきているっていう話が面白かった。

    ドーキンスの「神は妄想である」が世界中で150万部のベストセラーになった一方で、アメリカでは根強くキリスト教の天地創造論を信じる人が少なくない。
    科学と宗教を対立して論じない、ということを主張したグールドの見方は面白いけど、やはりそう割り切って納得できるものでもない気がする。
    人間の精神との向き合い方については、やはり宗教の教えがとても身に染みることが多々あるし、そこは科学で如何ともしがたい部分だと思う。
    でも宗教が世界を説明する1つの手段である以上、やはりそこは科学と対立せざるを得ないんじゃないかなあ。
    ローマ教皇が科学について論じた、みたいな本もあった気がするので、「宗教と科学」というテーマで調べてみても面白そう。


    なぜ、脱魔術化の時代において再魔術化が行われたのか。
    特に科学的に考えるのが当たり前とされていそうな地域でも、それが行われているのが不思議だ。
    拠り所を求めているのだろうか。

    まあ、実際に自分は科学のほとんどを知らないのにそれを信じている、という点でそれはもう立派な科学教信者のような気もするが。

  • タイトルよりはかなりライトな内容。分野によって深い、浅いがはっきりしている。バイオテクノロジーな関するハーバーマスの問題提起は面白かった。
    「遺伝内容を意図的に決することが意味するのは、クローンにとって、その誕生以前に、他の人がそれに対して定めな判断を、生涯にわたって恒常化させ続けるこのめある。」

  • ちょっと前に話題になってた哲学入門書を読んだ。哲学本は基本的に誰々の哲学もしくはある時代の思想的潮流を扱ったものが多い。この本はポストモダン以降の哲学をある意味、総花的に扱ったことが新しい。その中心に据えられる主題はITとBTがもたらしたパラダイムシフト。自分は次なる"大きな物語"の所在を手掛かりに読み進めたが、各人が何らかのフレームを持って読むと、何かしらの発見がある一冊といえる。

    ヘーゲル『法哲学』(1821年)の序文において「ミネルバのフクロウは、迫り来る黄昏とともに飛び立つ」と書いた。p22

    リオタール『ポスト・モダンの条件』「大きな物語の終焉」p36
    それに代わって、リオタールがポストモダンとして提唱したのが、小さな集団の異なる「言語ゲーム」でした。他とは違う「小さな物語」を着想し、多様な方向へ分裂・差異化することが、ポストモダンの流儀となりました。

    メディア・技術論的転回とは何か?p45

    【メディオロジー】p48
    中間者こそが力を持つ、媒介作用こそがメッセージの性質を決定づけ、関係性が存在よりも優位に立つ。(中略)私は社会的機能を伝達作用の技術的構造とのかかわりにおいて扱う学問を「メディオロジー」と呼んでいる。(Cf. 『メディオロジー宣言』)

  • いま私が考えていることは毎週末お腹痛くなるのどうしたら治るのかなってことです。

  • 人工知能・管理社会・生命科学などのSF的テーマや、資本主義・環境破壊・宗教・テロなどの 現代社会・世界の問題について、哲学的な様々な視点で分かりやすく解説してくれている哲学入門書。
    以下、いくつかのテーマについて感想。

    1.IT革命は人類に何をもたらすのか

    大型コンピュータにより市民がシステムに管理される社会というのは、古くはジョージ・オーウェル「一九八四年」、最近でも伊藤計劃「ハーモニー」やアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」などのSF小説・アニメでテーマとなってきたが、人工知能・ビッグデータ・IOTの開発により、現実がSFに近づいてきた。
    政府やGoogle・FacebookなどIT企業による監視社会になってしまうとか、ロボットや人工知能に人間の仕事(知的労働も)を奪われる、等の警鐘を鳴らす科学者や作家も多い。
    ただ、利便性と自由はトレードオフ関係。
    Google検索、Amazonのレコメンドやオンラインショッピングは、もう生活になくてはならないものだし、Facebookでの情報交流・人との出会いも、人生を豊かにするためには手放せない。
    だから、どこまで情報をさらすか、を自身で制御しながら付き合っていくしかないのだろう。
    そのためにも、もっと多くの人がSF小説を読むべき。技術の行き過ぎによるディストピアのイメージを、皆が共有しておくことは大事だろうから。

    2. バイオテクノロジーは「人間」をどこに導くのか

    目からウロコだったのは、クローン人間が何故ダメなのかという議論。クローン人間は一卵性双生児を意図的に作るという技術であり、完全に同じコピー人間ができるわけではない。子供が欲しくても出来ない夫婦にとっては必要な技術なのではないか、という意見も一理ある。
    また近年では、出生前診断で障がい児の可能性がある子を中絶するケースが増加している。これの是非判断って難しい。
    こんな風に、生命科学の分野では、科学技術の発達により倫理的に許される境界が移動して、社会や法律が変わってくるということは、過去何度もあったこと(遺伝子組み換え・妊娠中絶・体外受精)。
    クローン人間が制限付きで認可される時代も遠くないのかも。
    もう一つ、この章で興味深いのは、脳科学の研究により非道徳的で犯罪者になる可能性の高い人間が分かるようになる、という時代が来るかもしれないのだけど、そういう人に対し隔離などの処置を取ることの是非についての議論。映画「マイノリティーリポート」やアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」では未犯罪者でも逮捕していたのだけど、それは今の倫理観では許されないだろう。
    でも、脳の道徳的判断をつかさどる部分が不十分なために犯罪を起こしたことが確実な人間(いわゆるサイコパス)がいた時に、その脳の部分を薬か何かで補って道徳的な人間に変化させることは、牢屋に入れることとどちらが効果的なのだろう。また、どちらが倫理的に正しいのだろう。
    そんな風に、頭の中をグラグラさせてくれて、読んだ人同士で感想を語り合いたいと感じさせてくれる本だった。
    上記以外のテーマも、「資本主義」「宗教」「環境保護」のこれからについての議論で、新たな視点を教えてくれるもので面白かった。
    哲学というと堅苦しいけど、特にSFネタを絡めたテーマは、自分にとってはとても興味深かった。

  • 企画としてはいいと思うんだが、どうしても取り上げている哲学が著者の専門寄りになっている。分析哲学、特に確率論は、21世紀にかけて最もホットな分野だし、それこそAIのディープラーニングから生態系、量子論にと必須の知識になっている。それにまったく触れないのはわざとだと思うが、ちょっとなぁ。言語論的転換の先に哲学は確率論的転換をしたと考える学者もいるくらいなのに。
    同じテーマを分析系の学者に書かしたものも読んでみたいところだ。

  • 哲学の観点から見たIT革命、BT革命(バイオ・テクノロジー革命)、資本主義、宗教、地球環境。例えば、ゲノム編集やクローン人間など、激論を招きそうな論点についても多面的で、示唆に富む。

  • 思ったより内容がライトだった。買って読むほどではなかったな…

    監視化する社会
    パノプティコンの話はおもしろい。監視する側される側の非対称性。SNSによってシノプティコン化する社会。FacebookもGoogleも世界の人とインターネットをつなげようとしている。人間とlot。
    2045年には技術的特異点。

    人類は地球を守らなければいけないのか?という問いで買った感はあるんだけど。それよりエイズ、tpp、マラリアの方が優先度たかいよねって。コペンハーゲンコンセンサス。

    他は結論ないからよくわからんかった。

  • 一番面白かったのは、第3章の後半、バイオテクノロジーの章で、最後にチラッと脳科学研究の話になるところ。
    絶対王政的な残虐刑から近代的な刑罰制度への転換は「人々が合理的で理性的な判断に対する一般的な能力を持っていること」が前提(フーコーが「監獄の誕生」で言及している)だが、脳科学研究が進むにつれて、器質的に困難な人が結構いることが明らかになって来て、このまま行くのムリじゃね?的な。うーん。かと言ってどうするよ?

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著者プロフィール

玉川大学文学部名誉教授。九州大学大学院文学研究科単位取得退学、博士(文学)九州大学。専門分野:哲学・倫理学。主要業績:『異議あり!生命・環境倫理学』(単著、ナカニシヤ出版、2002年)、『ネオ・プラグマティズムとは何か』(単著、ナカニシヤ出版、2012年)

「2019年 『哲学は環境問題に使えるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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