つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫 よ 18-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480421746

感想・レビュー・書評

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  • 月舟町という街を舞台に紡がれていく夜、ゆっくりと流れるひとときはどこかゆらゆらしていて朧げで、儚げで、まるでつかみどころのない、蜃気楼が見せるような物語の印象。

    その街と、時を紡ぐ人々が織りなす世界をひたすら眺め味わう時間に心がふわふわし、何気ない会話、言葉に心が共鳴する。
    そうだ、自分も今、この瞬間にどこか遠い地で本を読んでいる人がいる、ということを思うのがたまらなく好きなんだよなぁ…と。

    吉田さんの描く夜。そっと心に幸せな風をひと風吹かせ去っていく。
    そしていつだって心穏やかにさせてくれる。
    この心地良さがクセになる。

    • あいさん
      こんにちは(^-^)/

      くるたんのレビューも心地よいです(⁎˃ᴗ˂⁎)
      さすがだなぁ。
      私、この本好きだけどうまく掴めなかったん...
      こんにちは(^-^)/

      くるたんのレビューも心地よいです(⁎˃ᴗ˂⁎)
      さすがだなぁ。
      私、この本好きだけどうまく掴めなかったんだよね。
      もっと読解力、想像力を身につけないと(〃∀〃)ゞ
      吉田作品もまた読みたい作品のひとつ。
      今日から久し振りに購入した本を読むよ。
      加納朋子さんの新刊✧*。(ˊᗜˋ*)✧*。
      くるたんなら知っているだろうなぁ。
      2019/07/22
    • くるたんさん
      けいたん♪(●'∇')ハロー♪

      ありがとう♡
      いやいや、私もこれは二回読んだよ。つまり一回じゃ味わえきれなかった(o´ェ`o)ゞエヘヘ
      向...
      けいたん♪(●'∇')ハロー♪

      ありがとう♡
      いやいや、私もこれは二回読んだよ。つまり一回じゃ味わえきれなかった(o´ェ`o)ゞエヘヘ
      向こうでけいたんのレビュー再読したよ♪素敵だったよ♡
      そして懐かしかったわ♡

      加納朋子さん、「いつかの岸辺へ跳ねていく」かな⁇評判いいからけいたんのレビューも期待しちゃう(*≧∀≦*)

      私な「人生写真館の奇跡」を読んだよ。すごく良かった!すごく好きーー♪
      ご紹介に感謝だよ♡
      2019/07/22
  • つむじ風が扉の前でくるりくるりと廻っている、名無しの食堂。

    万歩計に、行ってみたい場所というロマンを勝手に乗っけて
    「二重空間移動装置」に格上げしてしまう帽子屋さん。

    舞台の幕にぽつんと開いたふたつの穴からのぞく黒ビロードの袖口。
    その袖口から出た手が操る、花や小鳥やワイングラス。

    豆腐屋の「水門」を抜け、36段の急な階段を昇って辿り着く屋根裏部屋。
    その部屋の中の、ふたごのような「雨の机」と「その他の机」。
    その机で、エスプレッソ・マシーンが人口降雨機となる日を夢想する先生。

    オレンジの果皮に電球の灯を反射させた淡い光で本を読む果物屋の青年。

    ごめんなさいのかわりに階段の33段めにひっそりとオレンジを置き
    お願い事をするのに上から物を言うのは失礼だから、と
    ぺったんこの靴を履いて先生の部屋のドアをノックする奈々津さん。

    映像や音や匂いが魔法のようにたちのぼって
    いつのまにかつむじ風食堂の隅の席で、猫のオセロの背中を撫でながら
    愛すべき月舟町の住人たちの会話に耳を傾けている私がいて。。。

    どこか浮世離れした、温かく懐かしい記憶だけしっかりと刻んで
    鋲で止めてあった形見の袖口という
    かたちあるものは鮮やかに消し去ったお父さん最後の手品のように
    読み手を不思議な時間に誘ってくれる、愛おしい本です。

    • まろんさん
      kara2sorakaraさん、コメントありがとうございます(*^_^*)

      詩的な雰囲気が好きだったり
      本を読むと頭の中で映像化してしまう...
      kara2sorakaraさん、コメントありがとうございます(*^_^*)

      詩的な雰囲気が好きだったり
      本を読むと頭の中で映像化してしまうのが好きだったりする方には
      きっとお気に入りにしていただける本だと思います♪
      2012/09/04
    • 永遠ニ馨ルさん
      さっそく読んでいただけたんですね!!(*´▽`*)!!

      このお話には、木の床を靴で歩くような温かみある音がずっと流れている気がします。
      ま...
      さっそく読んでいただけたんですね!!(*´▽`*)!!

      このお話には、木の床を靴で歩くような温かみある音がずっと流れている気がします。
      まろんさんの素敵レビューから、以前読んだ物語のいろんなシーンがありありと甦ってきてまた読みたくなっちゃいました♪
      2012/09/05
    • まろんさん
      永遠ニ馨ルさん、
      『それからはスープのことばかり考えて暮らした』の後にはぜひこれを、と
      薦めてくださってありがとうございました♪♪♪
      月舟町...
      永遠ニ馨ルさん、
      『それからはスープのことばかり考えて暮らした』の後にはぜひこれを、と
      薦めてくださってありがとうございました♪♪♪
      月舟町も、吉田篤弘さんも、ますます好きになってしまう1冊でした。

      木の床を靴で歩くような温かみある音。。。うんうん、確かに!
      そして、色でいったら
      『それからはスープ・・・』の方は、柔らかなセピア色。
      この『つむじかぜ食堂の夜』は、夜やエスプレッソの黒に、
      月光やオレンジの果皮に反射する淡い光が射しているイメージでしょうか。
      ほんとに素敵でした(*^_^*)
      2012/09/05
  • ブクログやってなかったら出会わなかったであろう一冊。
    他の方のレビューを読んで、なんか気になったので手に取ってみるブクログの醍醐味。

    とある食堂の夜を中心に繰り広げられる凛とした空気感、優しさ、静謐さに溢れた”濃紺の背景に輝くひとつの星”の装丁のイメージどおりの物語。

    決して尖った人は出てこないのだが、”らしさ”を持った人々が食堂というアンカーを持ちながらそれぞれの人生を歩んでいる姿をときにシリアスにときにユーモラスに切り取っている。
    いろいろ悩みや不安、満たされない思いもあるのだろうが、こんな日常を送れたらと思ってしまうような穏やかで悪意のない世界。

    でも現実にはやれ「それが仕様です」だの、「そのアプローチじゃない」だの、どうでもよいビジネスワールド。
    だからこそ本を読んでしまうのです。

    • fukayanegiさん
      ベルガモットさん、こんばんは。

      なんか自分に聞いてもらえて嬉しいです!
      自分もそんなに読んでいるわけではないですが、この作品は間違いなく面...
      ベルガモットさん、こんばんは。

      なんか自分に聞いてもらえて嬉しいです!
      自分もそんなに読んでいるわけではないですが、この作品は間違いなく面白いですし、これを読んでからの『それからはスープのことばかり考えて暮らした』への広がりはぐっとくるものがあります。

      あとは『屋根裏のチェリー』の世界観もものすごく好きだったのでおすすめです。
      2022/12/04
    • ☆ベルガモット☆さん
      fukayanegiさん、お返事ありがとうございます!

      魅力的なレビューで読んでみたくなりました~
      ミステリーはビビりなので読めてな...
      fukayanegiさん、お返事ありがとうございます!

      魅力的なレビューで読んでみたくなりました~
      ミステリーはビビりなので読めてないのですが、吉田篤弘さん作品をいくつか☆5つつけておられたのでおススメをお尋ねしてみました。
      『屋根裏のチェリー』と迷っているところです。ありがとうございます。
      2022/12/04
    • fukayanegiさん
      ベルガモットさん

      『屋根裏のチェリー』も捨てがたいのですが、ここはやはりつむじ風繋がりで本書ですかねw
      なんか繋がりがあるとそれだけで楽し...
      ベルガモットさん

      『屋根裏のチェリー』も捨てがたいのですが、ここはやはりつむじ風繋がりで本書ですかねw
      なんか繋がりがあるとそれだけで楽しさ増しますし。
      2022/12/05
  • #つむじ風食堂の夜 #吉田篤弘 さん
    #読了
    映画を以前観てしまっていたので吉田さんの作品の中でも後回しにしていたこの作品をやっと読むタイミングになったので噛み締め、読んだ。
    センチメンタルで懐かしい。優しい風にそっと吹かれているような幻想的な物語。
    古本屋「デニーロの親方」がツボ。

  • 月舟町シリーズは三部作で、それらプラス1冊の番外編もある。
    何も知らなかった私が、吉田篤弘さんの初読みとして手にしたのはシリーズ2作目の「それからはスープのことばかり考えて暮らした」だった。
    そして今回1作目の「つむじ風食堂の夜」を読み終えた。

    吉田さんの作り出す世界が、終始心地好い。
    風変わりなキャラクター達が、夜毎つむじ風食堂で繰り広げるとめどない会話。
    洒落のきいた言葉遊びのようなやり取り、
    そもそも答えなど無いような議論、あえて核心を突かぬような物言い……いやいや、机上の空論と思う無かれ。
    話すことは考えること。
    彼らは不器用だけど、実は全て分かっているような気さえしてくる。

    きっと彼らは、あーだこーだと言葉を交わしながら、自分の位置を確かめているんじゃないかな。
    「あっちこっちから風が吹いてきて、それがくるりとひとつのつむじ風になるでしょう?それが"ここ"ってやつじゃないですか?」

    主人公の先生もまた、手品師だった今は亡き父親の思い出をなぞりながら、「オノレ・シュブラックの消滅」議論や、東西の果ての話、タブラさんとの会話などを経て、自分の位置を見つめ直してゆく。

    そして然り気無く、私達読者も街の住人たちに励まされているように感じた。
    「昔から何度も反芻してきた重要な自問。
    それを忘れてしまったのか、あるいは知らないうちに問いそのものが価値を失ってしまったのか。
    それが歳をとったっていうやつ。
    決して何かをあきらめたとか、そういうんじゃなく、何かもっと自然にどうでもよくなってしまう。」(本文の一部を抜粋し繋いでます)
    けれど帽子屋さんは言う。
    「これからが人生本番なんです。いやほんと」

    そんな流れの中に、素敵なエピソードや言葉が散りばめられている。
    呪文のような「エスプレーソ。タブラカタブラ。シューッ。」。
    「すべて平等に雨が降ってる」「でも、雨って、そのうちやむからいいんじゃないの?」。
    つまりは万歩計である「二重空間移動装置」。
    まるで月そのものがごろんとしているように、ほのぼのと明るいオレンジ。
    そのオレンジをめぐる、奈々津さんと先生のやり取り。
    300万円の「唐辛子千夜一夜奇譚」。
    父親そっくりの帽子。
    まだまだ沢山あって、この文章も染みる、この言葉も素敵…と付箋を立てていたらバサバサになった 笑

    今回も美味しい食べ物が物語に香りと味を添え、読者それぞれのイメージも思い出も掻き立ててくれる。
    クロケット定食、エスプレーソ、オレンジ…。

    そして吉田さんは、ため息を「皆、口々に魂を吐き出した」と表現する。
    この辺り、後の螺旋プロジェクト「天使も怪物も眠る夜」に活かされているのだろうな。

    あぁ、月舟町の住人になりたいな。
    もしかしたら住み慣れたこの街が、既に私にとっての月舟町なのかもしれないけど。



    ワニの涙 とは、偽善者が悲報に接して噓泣きをするような、偽りの不誠実な感情表現のことを指す言葉。
    ワニには涙管があり、目の潤滑のために涙を流すが、一般的には、水辺から長時間離れ、目が乾いているときに見られる。ただし、それが食事により起きる可能性があることが実証されている
    (Wikipediaより)

    • フリージアさん
      傍らに珈琲を。さん、こんばんは。
      『フィンガーボウルの話の続き』のほうに、コメントありがとうございました。吉田篤弘さんの文章の心地よさ、いい...
      傍らに珈琲を。さん、こんばんは。
      『フィンガーボウルの話の続き』のほうに、コメントありがとうございました。吉田篤弘さんの文章の心地よさ、いいですよね。この著書も好きな作品です。これからも、色々な本の感想楽しみにしています。
      2024/02/13
    • 傍らに珈琲を。さん
      フリージアさん、こちらにもお越し頂き有難う御座います。
      あの不思議な世界観が心地よくてクセになっちゃうんですよね♪
      フリージアさん、こちらにもお越し頂き有難う御座います。
      あの不思議な世界観が心地よくてクセになっちゃうんですよね♪
      2024/02/13
  • 読んでいると、思わず顔がほころんでくる。
    懐がほっこりと暖かくなるような、寒い夜にはぴったりのほのぼのとしたお話だった。
    帽子屋さんの万歩計の話が素敵です。
    この場所にいながら、月舟町へ行けるという感覚、読んだあと、つむじ風のようにすうっと去っていくような不思議な感じが心地よいです。

  • 登場人物も場所も日本なのに、どこか外国の映画みたいな不思議な物語たち。

    ふわっと掴みどころがなく、だけどそこに温かさがあったことは憶えている。読んだ後に、さっきまで悩んでいたことって何だっけ?と思うような短編集。

  • 静かに流れていく月船町の日常。

    まったり、のんびり。
    キラキラ、ドキドキ。
    私の欲しい感情を全部満たしてくれる作品です。

    小説であることを忘れて、お話の中にすーっと入り込んでいく心地良い気分を味わいました。

    「自信ってなんです?」
    「ここってどこのことなんでしょう?」

    所々に出てくる哲学的な問いかけが、またまたとても興味深いです。
    自己啓発本などで、こういうことを指南されると拒絶してしまうのですが…
    帽子屋さんや果物屋さんが説く言葉はすんなり心に入ってきて、それはもう大切に大切にしまっておきたくなります。

    読み進むにつれて、自分自身も月船町の片隅に住んでいるような心地になり、残りページが少なくなってくると、だんだん寂しくなります。

    今回は図書館で借りたのですが、月船町シリーズ3部作は、手元に置いておきたい作品。心の安定剤です。


    ちなみに、映画は★★☆☆☆でした。
    私の中では、小さな十字路にひっそりと佇んでいるイメージだったつむじ風食堂。
    映画では、大きい通りの立派な建物が舞台です。ちなみにロケ地を調べたら、なんとT字路。そこはこだわってほしかったな。

    • ひろさん
      はじめまして。ひろと申します。
      いいね!とフォローありがとうございます(*´꒳`*)
      yumiさんの感想がとても素敵で、吉田篤弘さんの作品を...
      はじめまして。ひろと申します。
      いいね!とフォローありがとうございます(*´꒳`*)
      yumiさんの感想がとても素敵で、吉田篤弘さんの作品をいろいろ読んでみたくなりました♪
      どうぞよろしくお願いします。
      2022/06/24
    • yumiさん
      ひろさん、はじめまして。
      こちらこそフォローありがとうございます。吉田篤弘さん、いいですよね!ひろさんが感想を書かれている”月とコーヒー”も...
      ひろさん、はじめまして。
      こちらこそフォローありがとうございます。吉田篤弘さん、いいですよね!ひろさんが感想を書かれている”月とコーヒー”も読んでみたいな〜と思っていました♩ひろさんの本棚に並んでいるような、温かい気持ちになれる作品、私も好きです^ ^
      こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。
      2022/06/24
  • つむじ風食堂に通う私と店の常連さんのやり取りを中心にしたストーリー。
    なんだかふわっとした話だけど、そのお店を接点にして、他の常連さんと交流が広がっていくような、そんなお気に入りのお店があるっていいな。

  • その食堂は、とある地図の片隅にある月舟町にある。

    無口な店主や雨降り先生、古書店のデニーロの親方、夜更けまで町灯りとして店を開いてる果物屋、不思議な帽子屋、背の高い舞台女優。そんな街の住人が、いたり、いなかったりする食堂だ。

    ふとした夜に寄ってみても、誰かいる。そんな街の拠り所のような場所。

    それぞれの日常がすこしずつ絡まりあったり、絡まり合わなかったりしながら、小さな物語が生まれている。そして、物語は続いていく。

    お腹いっぱいになるし、おいしいし、誰かいるから寂しくないし、猫のオセロはくっきりと白と黒にわかれてるらしいし。やわらかく街の人を受け止めてくれる、この食堂で働きたい。

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著者プロフィール

1962年、東京生まれ。小説を執筆しつつ、「クラフト・エヴィング商會」名義による著作、装丁の仕事を続けている。2001年講談社出版文化賞・ブックデザイン賞受賞。『つむじ風食堂とぼく』『雲と鉛筆』 (いずれもちくまプリマー新書)、『つむじ風食堂の夜』(ちくま文庫)、『それからはスープのことばかり考えて暮らした』『レインコートを着た犬』『モナリザの背中』(中公文庫)など著書多数。

「2022年 『物語のあるところ 月舟町ダイアローグ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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