つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫 よ 18-1)

著者 :
  • 筑摩書房
3.66
  • (450)
  • (719)
  • (805)
  • (138)
  • (31)
本棚登録 : 6457
感想 : 797
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480421746

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 衝撃的な展開があるわけでもなく
    心に突き刺さるような言葉があるわけではないが

    この本を読んでいる数時間

    スッと知らない街に招かれて
    読み終えた後にはサラッと現実に戻してくれる
    気持ちのいい後味の良さ

    まるでつむじ風みたいだったなぁ

  •  善良な人々だが、悪意ある人々に追いやられたような、生活を送っている。「私」は昔、戯曲を書いた事があるから、売れない女優・奈々津に台本を書くよう頼まれ、「ね?わたしを助けてやってください。女優・奈々津を女にしてください」とまで言わせながら、煮えきらない程である。
     ノスタルジックな、ファンタジーめいた小説である。村上春樹もファンタジックな小説を描くけれども、彼には社会性があり、悪への反撃を含む。読み了えて、ああ良い小説だったなあ、で済んでしまっては、読み捨てられる可能性が大である。

  • すごい不思議な感じがする本だった。すごく好き。どんなジャンル?って聞かれても答えられない。通っているカフェの本棚でたまたま見つけて通っている中で何回かにわけて読んでた。そのカフェにはこの本を読みに行っているような感じだった。すごい私好みの本。

  • 「雨降り先生」と呼ばれる主人公が通う食堂は、名前がない。そこは十字路にあって、いつもつむじ風が吹いていることから、「つむじ風食堂」と呼ばれているー。
    もう、最初から、クラフトエヴィング商會の世界観全開で、現実から少しずれた世界で風変わりな人たちが真面目に風変わりな談義をしている。
    自分はどこにいるのか。
    どこに行くのか。
    わからないけど、偶然にも出会った人たちと、毎日を積み重ねていくというのが、人生なんだな。
    勝手に生きてるようで少しずつ相手のことを気にかけ、思いやりながら。
    読めば何か役に立つ、とか、ドキドキワクワクするとかではないんだけど、読むと心の中に何かが灯るような感じがする。
    ラスト、大事なものが消えてしまうくだり、取り戻せないの?という哀しさと、でも、それがあるべき姿におさまったということなのか、という諦念が混ざって、なんとも言えない気持ちになりました。

  • 目が離せなくなる絶妙なバランスのシンプルな表紙。中のフォントも素敵。何度読んでも色褪せず、新しかったり懐かしかったり、ああ。すき。
    コロッケはクロケット。すき!
    夜にあいてる果物やさん。明かりがあたたかい。「オレンジ」という単語ひとつでもわくわくする。

  • 月舟町にある月舟アパートメントの屋根裏に住む通称雨降り先生を中心に、古本屋の主人デニーロ親方、読書家である果物屋の青年、謎多き帽子屋の桜田さん、駆け出しの舞台女優・奈々津さんなど、つむじ風食堂に集う人々が紡ぐ、温かく少し不思議な物語。

    取り立てて大きな事件は起こらない、終始穏やかな小説。描かれているのはたくさんの日々に埋もれそうな些細な一日の出来事だけど、話の流れが何だか不思議だったり、哲学的な言葉や思想が紛れていたり…淡いのにぴんと張りつめているような空気もある、独特な読み心地だった。
    時折挟み込まれる、手品師のお父さんのエピソードがおもしろく、そのおもしろいところが切ないという、これまた独特な感じ。
    これは文章の雰囲気によるものなのか、それとも内容やエピソードの組み込み方によるものなのか。
    両方、かな。
    怖くない寓話というか、穏やかな中に色んな教訓が隠されているような。
    うまく言えないけれど(笑)癒やされながら読んだのに妙に心に残った。
    既に映画化もされているらしいからそれも気になる。

  • 使いこまれたシルバーのカトラリーや、きちんと繕われたツイードのコートを(勝手に)連想させる、ていねいに綴られた物語。抽象的な話題が、ゆるやかに成立する空気が好き。情報過多な日々、時にはつむじ風食堂に集う人々みたいにあったかくてのんきな哲学したいなあ。

  • 2015.6.28に閉店してしまったくすみ書房さんで閉店前日に購入した本のうちの一冊。
    本の内容とは違うけどちょっと本屋さんの感想。

    くすみ書房さんは、すみずみから経営している人がいかに本が大好きなのかが伝わってくる、本当にすばらしい本屋さんでした。見て回っているうちにどうしてこういう本屋さんがなくなってしまうのかやるせなくて涙がでそうになるくらい。
    そこで特設コーナーをおいて紹介されていたのが筑摩書房の本。その中でもひときわ美しい装丁のこの文庫本を、二度と来ることが叶わない本屋さんの形見にと購入しました。

    本の内容はある街と、ある物書きの男性を中心とした淡々としながらも一つ一つ美しいお話。
    白い皿、オレンジ、星の本、人工降雨、果物屋の青年、手品、エスプレーソ、クロケット。どれも骨董みたいに美しくて滑らかな文章は読んでて心地よさを感じました。文庫なのに凝ったつくりになってて洒落てるのに童話のような優しさがある本。大切にしたい。

  • 私は本来は、本書のような起承転結がはっきりしていないお話は苦手で最後まで読みきれなかったりするのだが、本書はわりと読み易かった。

    夜道を歩く人に灯りを提供するために遅くまで店を開けているのが果物屋さんであることは、どこか他の本でも読んだことがある。

    階段に置かれたオレンジの件では、題名は忘れたが白い帽子の下に捕まえた蝶の代わりに置かれた夏みかんの話をなんとなく思い出した。

    そして前半を読んでいる間に、どの部分がとは説明しがたく漠然とだけれど「坊ちゃん」ぽいなという奇妙な感覚になった。
    後から、他の方のレビューに「吾輩は猫である」や「夏目漱石」っぽいとの記述を拝見し、ああやっぱりと納得。

  • 「種も仕掛けもございません。」ーあるじの心意気の食堂、お父さんの手品、ドーナツカウンターの喫茶タブラ、夜更けの果物屋さん、どれもあったらいいなぁ。幻想的で哲学的でしみじみとした、読むヒーリング音楽のよう。 三部作となってるそうでそちらも楽しみ。

全797件中 51 - 60件を表示

著者プロフィール

1962年、東京生まれ。小説を執筆しつつ、「クラフト・エヴィング商會」名義による著作、装丁の仕事を続けている。2001年講談社出版文化賞・ブックデザイン賞受賞。『つむじ風食堂とぼく』『雲と鉛筆』 (いずれもちくまプリマー新書)、『つむじ風食堂の夜』(ちくま文庫)、『それからはスープのことばかり考えて暮らした』『レインコートを着た犬』『モナリザの背中』(中公文庫)など著書多数。

「2022年 『物語のあるところ 月舟町ダイアローグ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

吉田篤弘の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
クラフト・エヴィ...
クラフト・エヴィ...
クラフト・エヴィ...
クラフト・エヴィ...
村上 春樹
吉田 篤弘
78
吉田 篤弘
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×