冬雷

著者 :
  • 東京創元社
3.88
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本棚登録 : 370
感想 : 64
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488025540

作品紹介・あらすじ

大阪で鷹匠として働く夏目代助。ある日彼の元に訃報が届く。12年前に行方不明になった幼い義弟・翔一郎が、遺体で発見されたと。孤児だった代助は、日本海沿いの魚ノ宮町(おのみやまち)の名家・千田家の跡継ぎとして引き取られた。初めての家族や、千田家と共に町を守る鷹櫛神社の巫女・真琴という恋人ができ、幸せに暮らしていた。しかし義弟の失踪が原因で、家族に拒絶され、真琴と引き裂かれ、町を出て行くことになったのだ。葬儀に出ようと故郷に戻った代助は、町の人々の冷たい仕打ちに耐えながら、事件の真相を探るが……。『雪の鉄樹』で最注目の新鋭が濃密な人間ドラマを描く、最高傑作!

感想・レビュー・書評

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  • 遠田潤子さん3冊目
    読む前からもう苦しい話だとわかってるんです。
    でも図書館でどれにしようか…と悩むわけです笑
    遠田潤子の前後に楽しい本読めばいいか♪
    と借りてしまうんですね〜。

    このやめられないのが遠田シンドロームと言われるやつなのかΣ(-᷅_-᷄๑)

    出だしからある女性の遺書で始まります…
    ある田舎の町で鷹匠をしていたらしい主人公
    過去に何かがあって町から逃げ出したらしい…
    うわーまただわ…らしいらしいともうダメ!
    気になって仕方ない(*_*)

    今回もなんて辛い運命の主人公なの…
    因習に囚われた町、身勝手な町の人々、鷹匠に神楽、そして生贄のような存在…
    もう横溝正史の金田一のような町とラストの全員揃っての謎解き笑笑

    続けて読めない遠田潤子…面白かった(〃ω〃)

  • 『圧倒的な筆力で人間の激情を描ききった濃密な長編ミステリー』と賞されていたが、
    なるほど、ページをめくる手が止まらず読み終わった時は空が白み始めていた。

    孤児の夏目代助が名家の跡継ぎとなり、鷹匠の責任を果たすため努力してきたのも「家族」を求め続けていたためだろう。
    けれど義弟が生まれ歯車が狂いだした。
    代助があまりに良い子だけに読んでいて辛い。

    冬雷が鳴る日本海の暗さと閉塞感に包まれた村社会の中で、鷹匠の代助と巫女・真琴が執り行う神事が凛と張りつめて美しい。
    ふたりが温めてきた愛情が切ない。

    伝統やしきたりを守ることが、迷信を盲信し呪縛となり、歪みを生み出してしまう。美と醜、神聖と卑属が背中合わせにあるようで怖い。
    抗えない自然災害への畏怖は、神事によって平安を保とうとする。だから因習は変えてはならないと頑なな村人たち。
    村社会の中で生きる人々の激情に圧倒された。

    ミステリーを読み慣れていない為か、え~!まさか!なんで?の連続でした。
    ミステリーは寝不足になりますね。

  • 久しぶりの遠田作品。遺書から始まる内容に、ページをめくる手が止められなくなった。
    11歳で冬雷閣の跡取りとして、養子になった代助。鷹櫛神社の跡取りとして巫女をしている、同じ歳の真琴。二人は互いにひかれあいながら、成長していく。15になった年、養母の京香が実子を妊娠したことから、代助と真琴の運命が狂っていく。

    遠田作品は、毎回これでもかというほど、不幸のてんこ盛で、主人公には辛い人生が多い。
    ホラーもグロも全然平気だが、こういう話のほうがドーンと落ち込んでしまう。
    しかしながら、鷹匠に神社、怪魚と姫と民話のような内容も映像がみえるようで、ハラハラした。
    田舎特有の閉鎖感や、人間関係はそこでしか生きて行けない人間にとっては、日常でしかないことが恐ろしい。
    代助と真琴は、今度こそ幸せになって欲しい。

  • 面白かった。鷹匠と神社、閉鎖的な小さな港町の古い慣習と因縁。後半の展開が怒涛すぎた。

  • 先生らしい作品で今回も面白かった
    親子、血のつながりをテーマにしながら古くから続くしきたりに支配された住民達の異様性がなんとも恐ろしかった。

  • 重い…この重さがこの方の作風なのでしょうね。今回は救いがなくもなかったのと、推理的な要素もあったおかげで引き込まれるように読みました。

  • ☆3.6

    代助は千田家の後継ぎとなるため十一歳で養子になった。
    千田家があるのはとても田舎で、そこで行われる神社の大祭に特別な役目があるため、神社の加賀美家と共に重要な家として扱われていた。
    代助は後継ぎの役目として鷹の緑丸の世話をし、鷹匠の訓練をし始めた。
    神社の加賀美家は大祭で舞を踊る巫女を代々勤めており、今代は母親を早くに亡くした真琴がその役を担っている。
    特別な家の二人は周りに遠巻きにされ、同い年の代助と真琴は日頃から一緒に過ごすことが多くなる。
    そのうちに自然とお互いに大事な存在となってゆくのだが……

    とても重いお話で、いろんなものを耐えて耐えてそれでも顧みられることのない二人がとても可哀想だった。
    二つの家にある関係や田舎につきものなしがらみに強く縛られ、羨ましがられることもあるけれど自由なんてない。
    諦めることがイコール大人になることな世界で、どれだけ彼らに抵抗できただろうか。
    どうか、どうか、この先の彼らの未来が笑顔でいられるものであるように。

  • 遠田さんの作品、今回も壮絶だけど、一気読み。田舎の古いしきたりに縛られた村民たちと、村の長として君臨する伝統を継ぐ名家と神社。村のしきたりなんてくだらないと思う反面、それを継承していくことは日本の文化や歴史を守るための大切なことなのも確か。ただあまりにも狭い世界の閉鎖的すぎる考え方にうんざり。主人公、代助の村人たちに翻弄される悲運が苦しく悲しい。最後は、少し救いがあって良かった。

  • 面白かったー!
    田舎の代々続く鷹匠と神社の話。
    設定的にどうも重そうで苦手だったが、自殺した元ストーカーの遺書から物語が始まり一気に引き込まれた。

    冬、海、寒そうな感じと色に例えるとグレーな印象の話。
    ただ代助と真琴の関係、愛美、鷹匠と神社の関係等、先が気になり一気読み。

    犯人は予想通りの人物だったが、田舎特有の嫌な感じや、お家(?)を守るためという名目で結局誰も幸せになれず残念。

    最終的に代助と真琴は結ばれそうでよかったとは思う。

    それにしてもイライラさせるキャラが多かったわ〜

  • 遠田潤子らしい、人生の艱難辛苦を耐え忍んで生きる人々の物語。相変わらずツラいのにページを繰ってしまう重たオモロい小説。

    孤児院から鷹匠にもらわれる主人公、神楽をおどる巫女のヒロイン、彼らをめぐる人間関係のあれこれ。「あの子は実はあの人の子で」「彼ら夫婦は破たんしていて、あの人とあの人が出来てて」「田舎の風習、土地のしがらみから逃れられない」「狭い世間でのプライバシーのない監視社会」…

    これらを合わせると、お昼のメロドラマや昭和おしん的艱難辛苦ワールドになってしまうのだが、遠田潤子はそれをブルーズに変えてきた。この作品もそうなのだが、若干メロドラマ臭が増えているように思う。そこが☆ー1減点なのだが、

    俺の好みが変わったのか、遠田潤子が作風を変えてきたのか…

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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