たかが殺人じゃないか (昭和24年の推理小説)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488028107

感想・レビュー・書評

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  • 引率の先生含めた、推研と映研の五人の高校生たちが遭遇する、二つの殺人(密室殺人と解体殺人)の謎は、オーソドックスながら、丁寧なストーリー構成と巧みな伏線で、推理好きの方なら楽しめる作品だと思います。ちなみに私の場合、ベタすぎるオチも全く気付きませんでした。情けない。それでも、悔しいというよりは、痛快すぎて笑ってしまったが。

    また、戦後が舞台ということで、戦前と戦後の価値観が大きく変わろうという境目において、悩みながらも青春を謳歌する主人公たちの、爽やかな姿が印象的で、新たな価値観というのが、そもそも存在していない未知のものだと、なかなか理解することができないことを、改めて再実感しました。今を生きる自分にとっては当然なことでも。

    もう少し細かく書くと、最初から探偵役がいるわけではないので、物語の中で一緒に考えるというよりは、自ら読みながら伏線や気になるところを見つけていく感じで、青春要素がやや強いようにも思われました。しかし、探偵役が成長している一面も描写されていて、これが二作目なのだと実感。推理の要素は古典的な本格ものなので、一作目も読んでみたくなりました。犯人の動機や切ない胸中にも共感しましたし、表紙の絵が、あの切ない名シーンを描いていることも素朴な良さがあり、好きです。

  • 高校の推理・映研の生徒が第1発見者の事件
    1.密室殺人2.首切殺人
    戦後初の男女共学という背景が新鮮。
    「犯人はおまえだ!」で始まる大胆なミステリー。
    犯人がわかっても,興味をひき最後まで読ませる内容

  • その時代背景がよくわからないので読みづらく、非常に時間がかかった。半分までは我慢して読む。後半解決編は面白く読めた。

  • 年またぎはさておき、今年の1冊目はこれと決めていた。昨年、国内主要ミステリ部門3冠達成の本作品。作者はレジェンド、辻真先先生である。

    単体でも読めるが、シリーズ2作目なので1作目を読んでおくと、より深く楽しめる。前作から引き続き登場するのは、探偵役の那珂一兵。他の辻作品でも活躍するキャラクターだが、前作から12年後の本作では大人になった姿を見せてくれる。さらに、別宮操も再登場。お騒がせキャラだった前作から、彼女もまた大人になり、なんと教職に就いている。そして、今回は彼女の教え子たちが事件に巻き込まれてしまう。愛知県警からは犬飼も再登場し、文字通り、咬ませ犬役を演じている。

    舞台は昭和24年の高校。GHQの学制改革により義務教育が9年、高校が3年の六・三・三制となり、新制度下で1年だけ高校に通うこととなった風早勝利ら推理研究部、映画研究部の高3メンバーが主人公である。男女共学制度も同時に始まり、当時の大混乱ぶりが伝わってくる。この時代の、この学生たちにスポットを当てた辻先生、すごい。

    本シリーズの特徴は戦前・戦後の昭和を描いていることであり、その時代を御歳88歳の辻先生は実際に経験しているということ。これは他の追随を許さない辻作品の強みだろう。ボーイミーツガールなジュブナイルものは先生の得意とするところだが、他の辻作品同様、本作も甘い結末とはならないのである。

    第一の殺人は密室もの、第二の殺人はバラバラものと、まさにミステリの王道。何気なく散りばめられた小道具が伏線となり、それらが解決に結びつく様は見事。実現可能かと言われれば正直「?」だか、ミステリという様式美に則った傑作である。そして、最後の一行で読者は思わず声を上げるだろう(だから間違ってもパラパラと開かないように)。

    よいミステリが一冊でも多く読める年となりますように!

  • このミス、国内の1位 おめでとうございます。出版されたときにはノーチェックでしたのでお詫びと敬意を込めて即、買いに走り、即読了。
    たまたま、高校生が主人公の本を続けざまに読んでしまっていたので、若い(たとえ、昭和24年であっても)高校生の活力や魅力や向学心やちょっとアレな部分にも一種の憧れを持って読めたこと感謝の極みですね。

    『読者への質問状』以降、雪崩れるように読み進められて前半の冗長さが一気に翻り伏線回収もおみごと!

    「え、まさか…」の展開でやはりこれなら、大御所、1位ですわ!と快哉を叫んでいます。
    好きか、嫌いかはまた違う話しになりますが。

  • 時は戦後間もない昭和24年。進駐軍の命による学制改革で六三三制となり、最初の男女共学になった高校生が主人公。ミステリ作家を目指す主人公の風早勝利は、昭和7年生まれの著者と同年代であり、帝国主義と民主主義がせめぎ合うその当時の時代背景がリアリティ色濃く描かれているのが特長。従来“探偵小説”と呼ばれていたのが“推理小説”に言い換えられるようになったのもこの頃。理由の説明は本書に委ねる。
    思春期ならではの男女高校生達の甘酸っぱい青春群像劇として面白い。本格ミステリとしては、ハウダニットは破天荒で無理があるものの、ホワイダニットは刺さった。読み終えて初めて心に響くタイトルが良い。またラストにあかされる、大胆かつ稚気あふれる仕掛けはさすが!

    週刊文春ミステリーベスト10 1位
    このミステリーがすごい! 1位
    本格ミステリ・ベスト10 4位
    SRの会ミステリーベスト10 7位
    ミステリが読みたい! 1位

    〈昭和ミステリ〉シリーズ
    1. 深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説
    2. たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説
    3. 馬鹿みたいな話! 昭和36年のミステリ

  • 終戦から4年後の昭和24年の愛知県を舞台に、新制高校3年生の男女が2つの殺人事件に巻き込まれる。

    誰が犯人?ということより、なぜ殺人をしたのか?というホワイダニットの方に多くの伏線がはられていた。
    タイトルの「たかが殺人じゃないか」というのも、戦中はより多くの敵兵を殺すことを命題に課されていた日本人が、終戦を迎えた途端に「殺人は悪だ」という価値観を受け入れざるを得なくなり、それを受け入れられなかった人間のセリフ。
    「たかが殺人じゃないか」という印象的な言葉には、人の命を軽々しく扱った時代の後遺症というか、そういう悲しさを感じた。

    犯人が誰かというのは、おそらく多くの読者が第2の殺人の時点で気づくのではないかな。個人的には、「実はまだ死んでなかった」というお決まりのパターンを想像していたけど、「死んでいたけど解体されていなかった」というオチだった。
    どちらの場合だとしても、犯人は自ずと絞られてしまう。

    この本では、戦後日本の教育、風俗の混沌が背景に描かれている。
    著者の辻真先さんは1932年生まれの御年89歳(2022年1月時点)。
    今なお現役の作家さんだ。
    戦争をリアルタイムで経験した作者だからこそ書けた当時の日本の現状なんだろう。
    自分が生まれ育った国の、たかが数十年前の出来事を全く知らないわたし。まだまだ知らないことはたくさんある。だから本を読むのは面白い。

  • 年間ランキングトップ総なめの本作。いろいろな仕掛けがあるんだけれど。メタ的な仕掛けが一番響いた。とにかく昭和な一冊。

  • 戦後間もない高校を舞台とする小説
    読み始め、やや取っ付きにくさを感じましたが、学生のやりとりが軽妙でテンポが良く、面白そうな予感がします

    これが、いざ事件が発生すると軽薄じゃないかと感じましたが、物語が進むと印象が変わっていきました
    舞台をこの時代に設定したことにも、意味があるのですね

    犯人は簡単に予想できます
    殺人のトリックにも少し無理を感じましたが、そこに至る動機、絡み合う人物関係はとてもよく練られていると感じます

    「たかが殺人じゃないか」、これを口にしたのは予想外の人物でした

  • 戦後数年経った時代背景を思わせないような、登場人物の活き活きとした様を感じた。爪跡は至る所に残ってはいるが、確実に前を向いて生きている。そんな中での殺人事件。タイトルの「たかが殺人じゃないか」が、思わぬところで出てきて、感服した。読み進めていると、何となく犯人もわかってきたが、動機やトリックもしっかり納得できるものだった。そして、冒頭のセリフと文末のセリフ。無限にループにして読めるな、と思った。こんな終わり方、初めて出会って感動。

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著者プロフィール

1932年、名古屋市生まれ。名古屋大学文学部卒業後、NHKに入社。テレビ初期のディレクター、プロデューサーをつとめたのち、脚本家に転身。『鉄腕アトム』、『エイトマン』、『ジャングル大帝』、『サザエさん』、『巨人の星』、『デビルマン』など、1500本超のアニメ脚本を執筆した。また、推理小説作家としても活躍しており、『仮題・中学殺人事件』、『迷犬ルパンの名推理』、『あじあ号、吼えろ!』、『完全恋愛』(牧薩次名義)など多数の著作がある。現在、デジタルハリウッド大学教授。国際アニメ研究所所長。本格ミステリ作家クラブ会長。

「2009年 『『鉄腕アトム』から『電脳コイル』へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻真先の作品

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