空の拳

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (485ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532171155

感想・レビュー・書評

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  •  あまりに有名な「ボックス!」よりも、もっとすっきりせずぐたぐたした感じに映るかもしれない。
     けれど、多くのボクサーたちは、こういう感じなんだよね。とてもリアルな感じがする。
     
     本当に慣れるまで、何が当たったのか、いつ効いたのかなんて、全く分からない。
     たった数分なのに、ずっと見ていても気付かない。
     
     まだ始まらない。すっと何かに成れない。
     そういうもどかしさを十分に味わえる。

  • おすすめ度:95点

    2010年12月15日~2012年2月1日日本経済新聞夕刊連載。
    特に大きな事件があるわけではない。でもいい小説。
    出版社に入社したものの、希望の文芸ではなく、「拳」というマイナーなボクシング雑誌への配属となった主人公。
    世間とは全く異質の空気が流れているボクシングの世界を体験していく。
    ボクシングジムに入会し、さまざまな人物と出会っていく。それは主人公が今まで出会ったことのない、世間から離れた異質な世界であったが、どんどんその世界にのめり込んでいく。
    最後の方での焼肉屋で、ボクサーのひとことで、涙が思わず流れたシーンは秀逸。
    淡々とした文章であるにもかかわらず、グイグイと読者をその世界に引きずり込み、読者を飽きさせない筆者の力量には感嘆させられる。
    続きが読みたい!

  • 嫌いなんだよね〜、ボクシング。
    好きでも嫌いでもない、とか、興味がない、とか、そういうのでなく、嫌い。苦手。スポーツなのはわかっているけれど、あの殴り合いに見ていて気分が悪くなるから。
    だから、角田さんの新作がボクシングと聞いて、そうは言っても、ボクシングはせいぜい物語の添え物、ひとつの材料だろうと都合よく考えていた。だって苦手だし。
    ところがどっこい、よもやのがっつりボクシング…!本当にはじめから終わりまでずっとボクシングだった。

    出版社に勤務するヘタレ青年、那波田空也が、不本意にも会社の窓際雑誌「ザ・拳」に異動が決まり、ボクシングジムに通いながらボクシングの世界を垣間見る、そんなストーリー。

    正直なところ、半分くらいまであまりペースに乗り切れず、やめてしまおうかと何度も思った。ちょっと退屈だった。
    でも、主人公空也や、ボクサー立花、坂本、中神など、登場人物たちが少しずつ変わっていく、社会人として、ボクサーとして、人間として、少しずつ成長していることにある時気がついて、そこからは目が離せなくなった。

    これから社会に出て行く人には、ちょっとヒントになるかも。
    私のボクシング嫌いは変わらなかったけど。

    驚いたことをひとつ。
    ボクシングのプロテストって、結構経験浅くても受けられるものなんだな…。

  • 1・徒手空拳。何も持たず、身一つで立ち向かうこと。
    2・青コーナーから見た正義と赤コーナーから見た正義は違う。

    時折女言葉が出る新人編集者の空也君が、実績も実力も何もないのに自信過剰な自分を持て余す冒頭。サイズの合わない服を着ているようなおさまらなさ。自分にもおぼえのある、力みすぎた気恥ずかしさ。
    経験を積み重ねていくうちに、マイナスの部分の贅肉が取れ、筋肉がつき、魅力に変換される。
    肉体だけでなく、精神的にも、仕事の上でも。

  • 最後は泣いていました。いや、感動的な場面があったわけじゃない。…重ね併せるものがあったんですね。
    話は同じような歳のボクサーと記者。ボクシングを通して成長していく様を書いた話であります。どんなスポーツでもそうだけど、練習しかない。勝ち上がりたいから練習をする。見えない対戦相手が怖いから練習をする。…それを思い出しただけで込み上げてくるものがありました。へなちょこの記者、空也は…私に似てる。
    しかし、なんで「空也の拳」だったのかは不明。人に勧めるかというと…。

  • 知識ゼロのずぶの素人編集者が見たボクシング日誌
    ストイックな物語ではないし勝敗に一喜一憂する話でもない
    独特の視点から描かれる世界観
    これが現在のボクシングジムのリアルな現状なのか
    タイトルを目指すプロ選手
    プロ試験合格のみを目標とする練習生
    体力維持のためフィットネスジムとして利用する女性会員
    一緒くた
    これらすべて含めて現在あるボクシングなのだ
    目標は違うにしても一人一人に人生があり
    それを応援する人、される人、生活、感情が表現された気持ちの良いストーリーになっている
    http://momokeita.blog.fc2.com/blog-entry-235.htmlより

  • 桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/782441

  • ボクシング好きな人には、その魅力が伝わってくるものでした。

  • ボクシングに「関わってしまう」人たちのそれぞれの物語

  • 3.5 間違いのない感じ。少し話が予期できてしまうが一人一人の感情がよく伝わる。

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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